3ヶ月前、この会社の社長は「1年後に100万人に届いていなかったら、がっかりする」と言っていました。
今回、同じ目標についてはこうです。「期限までに100万人に届かなかったとしても、それが何だというんでしょう。いずれ届きます」。
数字だけを見れば、今回はこの会社にとってかなり強い決算でした。売上の伸びは3四半期続けて40%を超え、来年の見通しも1四半期早く出しました。その同じ説明会で、ひとつの目標だけ言い方が柔らかくなっています。両方を並べて読みました。
スマホで口座を開くアメリカの銀行、ソーファイ・テクノロジーズの話です。
日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。
※この記事で扱うのは、2026年10月27日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。
💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。
その前に——ソーファイは「貸したローンを、自分で持つか、売るか」を選べる銀行です
「銀行」と聞くと、預金を集めて、それを貸して、利息の差で稼ぐ商売を思い浮かべると思います。ソーファイもそこは同じです。アメリカ全土で営業できる銀行の免許を持ち、預金を集め、個人ローンや学生ローン、住宅ローンを貸しています。
普通の銀行と違うのは2点です。
ひとつは入口です。ソーファイは、預金や投資、クレジットカードといった「お金の置き場所」で客を集め、同じ客に次々と別の商品を売っていきます。日本の読者に近いイメージは、スマホで口座を作るネット銀行で、そこに証券口座もカードもローンも一緒に入っている姿です。この会社は、1人の会員が持つ商品の数を毎回発表しています。今回は1人あたり1.56個で、前の四半期は1.54個、1年前は1.47個でした。
もうひとつは、貸したローンの行き先です。貸した個人ローンを自分の帳簿に残して利息を受け取ることもできるし、外部の投資家に売って手数料を受け取ることもできます。後者を、会社は「ローン・プラットフォーム事業」と呼んでいます。
💡ローン・プラットフォーム事業=ソーファイが審査して貸し出したローンを、外部の投資家がまとめて買い取る仕組み。ソーファイはお金を寝かせずに、組成の手数料だけを受け取れます。
この2つ目が、今回の決算の読み方を左右します。売るか持つかを選べるということは、同じ「ローンを1本貸した」でも、利息で稼ぐのか手数料で稼ぐのかを、会社が配分できるということです。今回の数字の一部は、この配分が変わったことで動いています。
売上は+44%、会員は1,710万人になりました
- 調整後の純収益 14億ドル(前年同期比 +44%)。1ドル150円で約2,100億円です
- 会員数 1,710万人(前年同期比 +35%)、商品数 2,670万件(同 +44%)
- 個人ローンの貸し出し 126億ドルで、過去最高
- 調整後の一株利益 0.18ドル(前年同期比 +64%、前の四半期比 +50%)
💡調整後(non-GAAP)=会社が「一時的だと考える項目」を除いて出した数字。会計基準どおりの数字(GAAP)とは別物です。この記事の売上と一株利益は、どちらも調整後の値です。
預金は四半期で58億ドル増えて513億ドルになりました。手数料で稼いだ売上は5億7,100万ドルで、売上全体に占める割合は42%(前の四半期は39%)。利息に頼る割合が、少しずつ下がっています。
会社自身は、40%を超える売上成長が「3四半期連続」、現金ベースの売上が10億ドルを超えるのは「4四半期連続」だと言っています。
社長の言葉は、もう一段強くなっていました
3ヶ月前の時点で、この会社の言葉はすでに強いものでした。
3ヶ月前:「デジタル金融で、勝者がほとんどを取る。その勝者になる道のりで、私たちは脱出速度に届き始めています」
今回:「2026年の終わりが近づくいま、私たちの確信は、これまでで最も強い」
最上級の言葉から、さらに最上級の言葉へ。ここだけなら、言い回しが変わっただけかもしれません。違ったのは、行動が一緒に変わったことです。
今回、この会社は翌年の見通しを例年より1四半期早く出しました。2027年の数字が、10月の時点で出てきたことになります。社長はこう説明しています。
「上場企業としての私たちを追ってきた方にとっては、これは行動の変化です」「見通しがきくようになったから、行動を変えました」
金利についての構えも変わりました。 3ヶ月前、利上げについての社長の答えは守りの言い方でした。
3ヶ月前:「利上げがあっても、私たちは大丈夫です。利上げが無ければ、利益にはおそらく上振れの余地があります」
今回(財務責任者):「金利が高い環境でも、低い環境と同じだけの確信を持って、力強い成長を届けられると考えています」
「大丈夫です」から「同じだけ確信がある」へ。しかも2027年の見通しは、利上げが2回ある前提で組まれています。高金利を「耐える条件」から「織り込み済みの条件」に移した、という言い方です。
見通しは、自分の前回も、市場の予想も上回りました
💡ガイダンス=会社が自分で出す業績予想。
💡コンセンサス=その会社を調べているアナリストたちの予想の平均。会社が自分の前回を超えても、周りがもっと高く見ていれば「足りない」と受け取られます。
2026年の通期。 売上の見通しは50億4,000万ドル。前回は47億5,000万〜48億5,000万ドルだったので、中心から約5%の引き上げです。市場の予想(48億7,000万ドル)も約3.5%上回りました。前の四半期にも見通しを引き上げているので、これで2四半期続けての引き上げです。
ただし、利益の引き上げ幅は売上ほど大きくありません。EBITDAは16億ドルから16億6,000万ドルへ、純利益は8億2,500万ドルから8億4,000万ドルへ、一株利益は0.60ドルから0.61ドルへ。売上は大きく上がりましたが、利益は小幅です。
💡EBITDA=利息や税金、設備の償却などを引く前の段階で見た利益。本業でどれだけ稼いだかを比べるときに使われます。
2027年(暫定)。 前の四半期には出していなかった数字です。
- 売上 64億ドル(+27%)。1ドル150円で約9,600億円です
- 純利益 12億8,000万ドル、一株利益 0.90ドル
市場の予想は、売上が61億1,000万ドル、一株利益が0.82ドルでした。売上で約4.7%、一株利益で約10%上回っています。
部門ごとの内訳も、財務責任者が数字で答えました。貸し出しの事業が+25%、金融サービス(預金・投資・カードなど)が+35%、テクノロジー基盤の事業が+25%で、成長に戻る見込みです。
そして資本の話です。銀行は貸せば貸すほど、規制上の自己資本が必要になります。成長の速い銀行は、どこかで増資を迫られるのが普通です。ここを聞かれた財務責任者は、2027年の見通しを達成するのに使う予定の無い枠が、リスク資産換算で290億ドルあると数字で示しました。冒頭の説明でも、「2027年の見通しは、追加の資本調達を必要としません」と言い切っています。
3ヶ月前の「がっかりする」は、「それが何だ」に変わりました
ここで冒頭の話に戻ります。
この会社には「SoFi Plus」という有料会員サービスがあります。3ヶ月前、社長はその目標をこう言っていました。
「1年後に、SoFi Plusの会員が100万人に達し、年間1億2,000万ドルの売上を生んでいなかったら、がっかりするでしょう」
今回の説明会で、同じ社長の口から出たのは次の2文です。
「この四半期、第3四半期のSoFi Plusの伸びは、私たちの想定を下回りました」「期限までに100万人に届かなかったとしても、それが何だというんでしょう。いずれ届きます」
現在の会員は約27万5,000人です。会社は伸び悩みの原因を「根本的には、一部の悪意ある利用者によるもの」、つまり不正への対応だと説明しました。一時的な理由かもしれません。ただ、「がっかりする」と期限つきで言った目標を、3ヶ月後に「それが何だ」と言い直したのは事実です。
消えた言葉もあります。前の四半期に具体的に語っていたことのうち、2つが今回は一度も出てきませんでした。
ひとつは「SoFi Coach」という会員向けの機能です。前の四半期には「導入以来、すでに50万回近い会話があり、90%以上が肯定的な反応です」と数字つきで語っていました。今回、この機能の名前は出てきません。
もうひとつは、外部の投資会社シックス・ストリートとの提携です。前の四半期に「最大10億ドルの個人ローンに投資することで合意した」と発表したものですが、今回は触れられていません。
数字の伸びのうち、物差しが変わった分
数字の中にも、そのまま前の四半期と比べられないものがあります。
いちばん分かりにくいのは、個人ローンの「リスク調整マージン」です。
💡リスク調整マージン=ローンの金利から、お金を集めるコストと、貸し倒れの損失を引いて残る取り分。ローン1本あたりの「本当の儲け」に近い見方です。
この数字は、前の四半期の約6.1%から、今回は約7.6%に上がりました。ただし今回から、計算の中に「組成手数料の利回り 1.4%」が新しく足されています。前の四半期は、金利12.9%から調達コスト3.1%と損失3.7%を引いた形でした。今回の構成要素(金利12.8%・調達コスト3.1%・損失3.4%)を前と同じ式で単純に引き算すると、6.3%前後です。損失が減った分の改善は本物ですが、6.1%から7.6%への上がり幅の大部分は、定義を変えた分です。
背景には、さっきの「利息で稼ぐか、手数料で稼ぐか」の配分があります。組成手数料は2億7,100万ドルで、前年同期の2.6倍になりました。会社は値付けの重心を、金利から手数料へ移しています。だから手数料も含めて測る、という理屈は通ります。それでも、物差しを変えた回に「改善」と読むのは、少し割り引いて見る必要があります。
経営陣が答えなかったことと、数字に混ざっているもの
質疑応答では、具体的に答えた場面のほうが多かった決算です。資本の質問には枠の金額で、2027年の部門別の伸びには率で答えています。そのうえで、答えが出なかった箇所が残りました。
ひとつ目は、2027年の見通しの検算です。 財務責任者が示した部門ごとの成長率をそのまま積み上げると、会社の見通しより約3億ドル多くなる、という指摘が出ました。この差について返ってきたのは「全社共通の項目が、わずかに増えます。それが率直な答えです」という一文だけで、内訳は出ていません。
ふたつ目は、テクノロジー基盤の事業の中身です。 この事業の売上は8,700万ドルで、前年同期比24%減でした。会社は以前から開示していた大口顧客の移行が理由で、その顧客を除けば+18%だと説明しています。ただ、2027年の+25%のうち、どれだけが社外の顧客で、どれだけがソーファイ自身の利用なのかを聞かれると、社長は「事業をそういう見方では見ていません」と答え、数字を出しませんでした。
みっつ目は、今年始めた中小企業向けの融資です。 社長の答えは「まだ立ち上げたばかりの事業です」で、規模の数字はほぼ出てきませんでした。
数字に混ざっているものも書いておきます。
- 保有するローンの公正価値で8億ドルを超える損失が出て、その大半を約7億3,400万ドルのヘッジの利益で打ち消しています。金利が動けば、ここも動きます
- 外部の投資家にローンを売る事業の収益は、会社自身が「時期によって変動する」と認めています
- 個人ローンの貸し出しの規模は、財務責任者が「全体の貸し出し額で、同じような規模の伸びは見られないでしょう」と、鈍化を自分から認めました
そして、この四半期の勢いがそのまま次に続くわけでもありません。会社の通期見通しから逆算すると、10〜12月期の売上は約13億7,500万ドル、伸びは約36%です。今回の44%からは減速します。
なぜ、ソーファイは来年の数字を早く出せたのか
ここまでの話を、ひとつの絵にまとめます。
この会社の成長は、会員を増やすことと、会員1人に持たせる商品を増やすこと、その2つの掛け算です。会社は今回から、商品1つあたりの年間の売上も毎四半期発表すると宣言しました。金融サービスは約90ドル(前の四半期は88ドル)、貸し出しは約942ドル(同920ドル)です。ただし社長自身、商品の構成が変わるので、全体の平均は2030年にかけて下がる見込みだと認めています。目標は2030年に商品1億件、会員1人あたり2個です。
そのうえで、来年の数字を早く出せた理由は2つ見えます。
ひとつは、ローンを自分で持つか売るかを、自分で選べることです。外部の投資家に売った今四半期の貸し出しは38億ドル、収益は1億5,300万ドルで、どちらも過去最高でした。新しい買い手も2社加わり、10〜12月期の売るペースは今四半期の38億ドルを上回っていると言っています。貸し出しが増えても、帳簿に積まずに手数料に換えられれば、自己資本はそれほど食いません。
もうひとつは、帳簿に残したローンからの利息が、毎四半期入ってくることです。今四半期の現金ベースの売上14億ドルのうち、9億2,700万ドルが利息の収入でした。そこに290億ドルの未使用の枠があります。
売る道と持つ道の両方があるので、金利が上がる局面でも、どちらかを太くして成長を続けられる。財務責任者の「高金利でも低金利でも同じ確信」は、この構造を指しているのだと思います。ただし同じ構造は、どちらに配分したかで数字の見え方が変わるということでもあります。リスク調整マージンの定義を変えたのも、その配分が手数料側に寄った回でした。
次の決算で、何を見ればこの読みが外れたと分かるか
今回の読みは「言葉と数字は同じ方向を向いている。ただし一部は物差しの変更と配分の変化で、有料会員の目標だけが後退した」です。外れたと分かる形は、次の3つです。
- 10〜12月期の売上が、会社の示す約13億7,500万ドルに届かない
- 2027年の売上見通し64億ドルが、正式な発表のときに引き下げられる
- 「必要ない」と言った増資を発表する
良い方に外れる形もあります。SoFi Plusが不正の影響を抜けて伸びに戻り、「それが何だ」と言った目標に、期限内に近づいていくことです。そのときは、今回の言い直しはただの言葉のあやだったことになります。
ここに書いたのは、2026年10月27日の説明会までに分かっていることだけです。2027年の数字は暫定で、利上げ2回という前提も、これから動きます。
確信が「これまでで最も強い」と言った同じ説明会で、期限つきの目標だけは「それが何だ」に変わっていました。強い決算ほど、こういう一文は数字の陰に隠れます。次の回では、SoFi Plusの会員数と、外部に売るローンの規模を、まず確かめます。
※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。
※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。