AIの主役は、エヌビディアやGoogleのチップです。でもチップは、それ単体では1円も稼ぎません。
箱に組み込み、冷やす仕組みを付け、何千台もつないで、データセンターのラックに並べて初めて動きます。その「組む・つなぐ」を、GoogleやOpenAIから請け負っているカナダの会社があります。
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※この記事で扱うのは、2026年10月27日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。今回は投資家向けの説明会(インベスターデイ)も兼ねていて、来年の見通しが初めて数字で出ました。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。
💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。
その前に——「受託製造」の会社は、何で稼いでいるのでしょう
「受託製造」と聞くと、下請けの工場を思い浮かべるかもしれません。半分は合っています。他社の名前で売られる製品を、代わりに作る仕事です。
日本の読者にいちばん身近な例は、iPhoneを組み立てている台湾の鴻海(フォックスコン)だと思います。アップルが設計し、鴻海が作る。セレスティカも同じ立ち位置の会社ですが、作っているのはスマホではなく、AIデータセンターの中身です。Googleの自社製AIチップ(TPU)を載せたサーバーのラックや、サーバーどうしをつなぐネットワークの機械です。
💡ネットワークスイッチ=たくさんのサーバーをつなぎ、データの行き先を振り分ける機械。AIの計算は何千枚ものチップで分担するので、チップどうしをつなぐ速さがそのまま計算の速さになります。
ただ、ただの下請けとは違うところがあります。スイッチについては、設計から自社で引き受けていることです。顧客と一緒に設計し、それをそのまま作る。だから、まだ世に出ていないチップの段階から話に入っています。
この形には、裏側があります。受託製造は、売上のうち手元に残る割合(粗利率)が薄い商売です。この会社でも11%台。売上が一気に倍になるとき、部品は先に買わなければいけません。売上が伸びるほど、先にお金が出ていく。 この記事の結論は、ここに効いてきます。
3ヶ月前は「65%より速く」、今回は「400億ドル」
経営陣の言い方が、3ヶ月で明らかに変わりました。来年(2027年)の売上についてです。
3ヶ月前:「2027年は、2026年の見通しで見込んでいる65%成長と比べて、成長率が加速すると見ています」
今回:「400億ドルの売上を見込んでいます。2026年の見通しと比べて90%の増加です」
「65%より速くなる」という方向の話が、金額になりました。400億ドルは、1ドル150円で計算すると約6兆円です。
先の見え方も延びました。3ヶ月前は「2027年のうちに、2028年、場合によっては2029年の需要の話をしている」でした。今回は、年の数字がそれぞれ1年先へずれました。
「いま顧客と、2029年、場合によっては2030年まで続くプログラムの話をしています。チップがまだ開発されていない段階で、受注しているプログラムもあります」
ここで言う「プログラム」は、顧客ごとに受ける製品の案件のことで、ソフトウェアではありません。そして、前回は無かった一文が出ました。
「受注済みのプログラムだけで見た2028年の顧客の需要予測は、2027年の売上見通しを意味のある幅で上回っています」
ここは言葉を正確に読んでおきます。「2028年の売上見通し」ではありません。顧客が出している需要の予測で、しかも受注済みの分だけを数えたもの、という言い方です。
AMDの新しいAIラック「Helios」向けのスイッチも、言い方が変わりました。3ヶ月前は「2027年前半に本格的に立ち上がる」、今回は「年末までに立ち上げを始める」。言葉の種類が少し違うので、そっくり前倒しになったとまでは言えません。ただ、始まる時期の言い方は早まりました。
7〜9月期の数字も、会社の見通しの上限を超えていました
- 売上 58.3億ドル(前年同期比 +83%)。会社が出していた見通しの上限を上回りました
- 調整後の一株利益 3.30ドル(前年同期比 +109%)。こちらも見通しの上限を超えています
- 調整後の営業利益率 8.5%(+0.9ポイント)。会社の歴史で最も高い四半期です
- 調整後の粗利率 11.2%(−0.5ポイント)。製品の組み合わせの影響で下がりました
💡調整後(non-GAAP)=会社が「本業の実力を見るために」一部の費用を除いて出す数字。会計基準どおりの数字とは別物です。ここに並べた一株利益と利益率は、どれも調整後です。
通期の見通しも引き上げました。2026年の売上は205億ドルから210億ドルへ、調整後の一株利益は11.30ドルから11.55ドルへ。ただ、引き上げ幅は売上で+2.4%ほどで、大きくはありません。この決算の驚きは、ほとんどが来年の数字から来ています。
来年の見通しは、前回アナリストが置いた試算を約2割上回りました
💡ガイダンス=会社が自分で出す業績の見通し。
2027年の見通しは、売上400億ドル、調整後の営業利益率9%(+0.6ポイント)、調整後の一株利益21.50ドル(+86%)です。
これがどれくらい強いのか。比べる相手として、僕の手元には市場全体の予想の数字がありません。代わりに使えるのは、3ヶ月前の説明会で質問に立ったアナリストが置いた試算です。2027年に「130億ドルほど上乗せ」で、2026年の見通しに足すと約335億ドル。今回の400億ドルは、それを約2割上回ります。会社の数字ではなく、アナリスト1人の試算との比較なので、そのつもりで読んでください。
10〜12月期の見通しは、売上62.75億〜65.75億ドル(中央で前年同期比+76%)。中身は、サーバーやストレージの部門が約+160%、ネットワークの部門が約+65%です。
3ヶ月前の具体のうち、2つは消え、1つは下がった
数字が強くなった一方で、前回の説明会で添えていた裏づけは、2つが消え、1つが弱まりました。
1つ目は、案件の金額です。 3ヶ月前、CEOはOpenAI向けとAMD向けの案件について、こう言っていました。
「どちらも、2027年に数十億ドル規模になると見ている機会です」
今回も、顧客名ははっきり出ています。それなのに、案件ごとの金額には一度も触れていません。 全体の400億ドルは出したのに、その内訳は語らなかった、という形です。
2つ目は、注文の縛りです。 3ヶ月前は「顧客は、納期の長いチップについてキャンセルも返金もできない注文を入れている」と言っていました。在庫を抱える側にとっては、いちばん安心できる種類の注文です。今回、この話は出てきませんでした。
3つ目は、利益率の水準です。 3ヶ月前は「2026年を通して、粗利率は11%台半ばを保てるはず」。今回は「2027年も粗利率は11%台前半が続く」。対象の年が違うので単純には比べられませんが、口にした水準は一段下がっています。
経営陣が、数字で答えなかったこと
正直、この決算で一番驚いたのはここです。売上が倍になる準備のために、お金が出ていきます。
- 2026年のフリーキャッシュフローの見通しを、6億ドルから4.6億ドルへ引き下げ
- 2027年は、会社自身が「現金の流出(a net use of cash)」になると明言
- 8月に約35億ドルの増資(1ドル150円で約5,250億円)
- 在庫は45億ドルで、3ヶ月で11億ドル増えました
💡フリーキャッシュフロー=本業で入ってきたお金から、設備投資などで出ていったお金を引いた残り。会社が自由に使える現金です。
質疑応答では、4人のアナリストが角度を変えてお金のことを聞きました。2027年にどれだけ現金が出ていくのか、幅だけでも示してほしいと求められても、財務責任者は幅を出しませんでした。 答えは「8月の増資で足りる」「2028年にはキャッシュフローをプラスに戻すことを目指す」まで。顧客の資金繰りを聞かれた場面では「顧客の中に、財務的に苦しいところは見当たらない」と答えています。需要の質問には具体で返し、お金の質問には方向だけで返す。この差は、はっきりしていました。
ほかに、構造として覚えておきたいことが2つあります。ひとつは顧客の偏りで、上位3社だけで売上の35%・17%・14%を占めています(前の四半期は32%・17%・14%)。もうひとつは来年の形で、成長の中心になるGoogle向けとOpenAI向けは「後半に偏る」と会社自身が言っています。400億ドルの多くは、2027年の後半に積まれる前提です。
一方で、数字を飾った一時的なものはありませんでした。為替でも税金でも買収でもなく、伸びは受注した案件の量から来ています。悪く見える部分も含めて、全部が本業の数字です。
なぜ今、この会社に注文が集まるのか
答えは、AIの計算を支える2つの柱の両方に、この会社が立っていることです。
ひとつはネットワークです。データセンターのスイッチは、1つの差し口で毎秒800ギガビットを流す世代から、その倍の1.6テラビットの世代へ移り始めています。
💡800G/1.6T=スイッチの1つの差し口が、1秒間に流せるデータの量。数字が倍になるたびに、機械を丸ごと作り直す必要があります。
会社は1.6T世代のプログラムを10件受注していて、内訳は、ラックの中のチップどうしをつなぐ用途が4件、ラックどうしをつなぐ用途が6件。来年は「1.6Tの売上が800Gの売上を上回る」と見ています。外部の調査では、800G以上のスイッチで世界1位とされています。
もうひとつはAIの計算そのものです。GoogleのTPUを載せたラックを何世代にもわたって作り、OpenAIの「Jalapeno」という計算基盤も量産の立ち上げに入りました(本格化は2027年後半の見込み)。
💡TPU=Googleが自社で設計したAI専用のチップ。エヌビディアのGPUとは別の選択肢として、Googleのデータセンターで使われています。
10〜12月期の見通しでも、この部門が約+160%と、ネットワーク(約+65%)より速く伸びます。来年の設備投資15億〜20億ドルについても、会社は「これまでに受注したプログラムを直接支えるため」と説明しました。
ここで最初の話に戻ります。チップの会社がどれだけ売れても、それを組んでつなぐ会社がいなければ、データセンターは動きません。しかもスイッチの世代が変わるたびに、作り直しの仕事が発生します。この会社に注文が集まるのは、その両方の入口に立っているからです。そして同じ理由で、作る量が増えるほど、先に部品を買うお金が要ります。 注文が強いことと、お金が出ていくことは、同じ出来事の表と裏です。
400億ドルの見通しが崩れるとしたら、どこからか
今回の読みは「需要の強さは言葉でも数字でも裏づいた。弱点は、そこへ向かうお金の側にある」です。外れる形は、こう考えています。
- 2027年の売上見通し400億ドルが引き下げられる
- Google向けやOpenAI向けの量産、AMD向けの立ち上げが2028年へずれる
- 「1.6Tの売上が800Gを上回る」という見通しが取り下げられる
逆に、僕の心配が外れる形もあります。2027年の現金の流出に、会社が自分から幅を示せた場合です。そのときは、お金の側の不安を数字で消せたことになります。
400億ドルは見通しで、まだ1ドルも計上されていません。
来年の売上が倍近くになると言い切った会社が、同じ説明会で、そのためのお金がどれだけ出ていくかは言わなかった。強い話と答えなかった話が、1回の説明会に並んでいました。次の回で、そのどちらが先に動くのかを見ます。
※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。
※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。