AIのデータセンターは電気が足りない。この話は、もう何度も聞いたと思います。
では、その電気を作る機械は誰が売っているのか。発電用のガスタービンと、送電・変電の機器をまとめて売っている会社の一つが、GEベルノバです。元はゼネラル・エレクトリックの電力部門で、2024年に分かれて独立しました。
日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。
※この記事で扱うのは、2026年10月28日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。
💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。
その前に——ガスタービンの「予約枠」って、何でしょう
この会社の決算は、ほかの会社と数え方が少し違います。売上より先に、「何ギガワット分を押さえているか」を毎回発表します。
ガスタービンは、ジェットエンジンに近い仕組みでガスを燃やし、その力で発電機を回す機械です。火力発電所の心臓部にあたります。この会社は、発電所向けの大型機(HA)と、航空機エンジンから派生した小型機(エアロ)の両方を作っています。
この機械は、注文してもすぐには届きません。工場の生産枠が何年も先まで埋まっているので、買い手はまずお金を払って生産の枠を予約します。それが「予約枠(スロット予約)」です。のちに正式な注文に切り替わります。
人気の車で、手付金を払って納車待ちの列に並ぶのに近いです。違うのは、並んでいるのが電力会社とデータセンターの運営会社で、1台が発電所1つ分だという点です。
この決算を読むときに大事なのは、ここからです。予約枠と正式な注文を合わせた「契約済みの出力」が、これから何年分の売上になるかの目安になります。 しかも、値上げした後に入った注文ほど、後ろの順番で出荷されます。つまり、列の後ろに並んでいる注文ほど高く売れている。この会社のこれからの利益は、その列がどれだけ長く、どれだけ高い値段で並んでいるかで決まります。
2027年の目標だった受注残に、1年早く届きました
3ヶ月前、社長はこう言っていました。
3ヶ月前:「受注残は1,760億ドルに達し、マージンも改善しています。前の四半期から130億ドル増え、2027年に2,000億ドルに届く軌道にあります」
今回:「受注残は1,760億ドルから、約2,000億ドルへ拡大しました(第3四半期に)」
数字の意味を先に押さえておきます。
💡受注残(バックログ)=注文は受けたが、まだ売上になっていない仕事の総額。これから売上に変わっていく「在庫の注文」です。
2027年に届くと言っていた水準に、次の四半期でほぼ届きました。実数は1,970億ドルです。1ドル150円で計算すると、約29.5兆円になります。
言葉が変わったのは、受注残だけではありません。データセンター向けの新しい製品でも、3ヶ月前は「これから」だった話が、今回は「済んだ」話になっています。
3ヶ月前:「おそらく、下期にはMVUPSが出てき始めます」
今回:「最近、ハイパースケーラーと最初のMVUPSの注文に署名しました」
MVUPSは、中くらいの電圧で使う大型の無停電電源装置です。停電の瞬間にデータセンターの電気を途切れさせないための機械で、買い手のハイパースケーラーは、巨大なデータセンターを自前で持つ大手のクラウド企業を指します。
もう一つ、変圧器の新製品でも同じことが起きました。
3ヶ月前:「並行して、屋外向けの6メガワットのSSTの開発を始めました」
今回:「屋外向け6メガワットのSSTについて、ハイパースケーラーから採用の通知をすでに受けています。第4四半期に契約を進めます」
SSTは、半導体で電圧を変える新しい種類の変圧器です。
「おそらく」から「署名した」へ。「開発を始めた」から「採用の通知を受けた」へ。どちらも、3ヶ月で一段ずつ前に進んでいます。SSTはまだ契約前なので、「受注した」とは言っていません。そこは区別しておきます。
年末に押さえている出力の見通しも上がりました。3ヶ月前は「少なくとも125ギガワット」、今回は「少なくとも130ギガワット」。そして、3ヶ月前に「これから迎える」と言っていた節目について、今回は「到達した」と言いました。正式な注文の出力が、予約枠の出力を上回ったという節目です。予約が注文に切り替わっていることを意味します。
注文は前年の2倍、出荷は値上げ後の機械に変わり始めました
この四半期の数字です。
- 受注 293億ドル(前年同期比 +96%)。1ドル150円で約4.4兆円
- 受注対出荷比 2倍超。出荷した分の2倍以上の注文が入りました
- 機器の受注残 1,040億ドル(前の四半期から約160億ドル増、前年同期比 +92%)
- 調整後EBITDA 19億ドル(前年同期比 +123%)、利益率は6.9ポイント改善
💡受注対出荷比=入ってきた注文を、出荷して売上にした額で割ったもの。1倍を超えると、仕事の列が伸びています。
💡調整後EBITDA=会社が一時的だと考える項目を除いた、本業のもうけの目安(non-GAAP)。会計基準どおりの利益とは別の数字です。
ガスタービンでは、この四半期に5ギガワットを出荷し、11ギガワット分の注文と予約枠を結びました。出したのが5で、入ったのが11。列は短くなるどころか、伸びています。契約済みの出力は、年初の83ギガワットから100、116、そして122ギガワットまで積み上がりました。
いちばん大きく変わったのは、発電部門の利益率です。21.4%。前年同期から8.3ポイント上がり、3ヶ月前に会社自身が示していた「約17〜18%」を大きく上回りました。社長は理由をはっきり言っています。
「このマージンは、より良い価格での5ギガワットのガス発電機器の出荷の、最初の四半期を反映しています」
値上げした後の注文が、この四半期から出荷に乗り始めた、ということです。2026年に入ったガスの注文は、1キロワットあたりの価格が前年の注文より約50%高いと会社は言っています。
会社の見通しは3つとも上がりました。ただ、売上の上振れは小さめです
通期(2026年)の見通しは、前回からこう変わりました。
- 売上:455億〜465億ドル → 465億〜475億ドル
- 調整後EBITDAの利益率:12〜14% → 13.5〜14.5%
- フリーキャッシュフロー:115億〜125億ドル → 160億〜170億ドル
💡ガイダンス=会社が自分で出す業績の見通し。
💡コンセンサス=その会社を調べているアナリストたちの予想の平均。会社の見通しが前回より上がっても、周りがもっと高く見ていたら、それは「足りない」数字になります。
利益率とお金の見通しは大きく上がりました。一方で、売上の見通しの中心(470億ドル)は、市場の予想の平均(約463億ドル)を1.5%ほど上回るだけです。この会社の今回の話は、売上が予想より大きく伸びるという話ではありません。同じ量を、前より高い値段で売っているという話です。
2027年の数字は出しませんでした。1月に先送りしています。出発点についてだけ、社長はこう答えました。
「今年の下期が、2027年の見通しを考え始める出発点として適切でない、と考える理由はありません」
データセンター向けの受注は、3ヶ月で半分になりました
ここからは、良い話の陰にあるものです。
送電・変電の部門で、データセンター向けの受注が減りました。 3ヶ月前は「第2四半期に、電化部門で27億ドルのデータセンター向け受注を取りました」と言っていました。今回は「第3四半期に約14億ドル」。ほぼ半分です。年初からの累計は60億ドルを超えていますが、減った理由について、経営陣は説明していません。
💡電化部門=変圧器、開閉装置、直流送電(HVDC)など、作った電気を運んで配る側の機器を売る部門。
部門全体の受注も、前年同期比で−9%でした。こちらには説明があります。前年に、サウジアラビアで16億ドルの大型案件があり、それと比べているからです。ただ、有機的な売上の伸びも、3ヶ月前の29%から今回は16%に下がっています。報告上の伸びは51%ですが、それは買収したプロレックの売上が足されているためです。
3ヶ月前に語っていて、今回出てこなかった話もあります。 2つです。
1つ目は、生産能力の計画です。3ヶ月前は「年30ギガワットの出力」を目指す計画を語っていました。今回は一言もありません。
2つ目は、発電と電化を組み合わせた売り方です。3ヶ月前は「年間で最大5億ドルの追加受注」を見込むと言っていました。これも今回は出てきません。
どちらも取り下げたとは言っていません。ただ、3ヶ月前に数字つきで語っていたことが、今回は数字ごと消えています。
数字を押し上げていたもの
好決算に見える数字の中に、一時的に膨らんでいるものが3つあります。
お金の見通しの上方修正は、主に前受金です。 この四半期のフリーキャッシュフローは54億ドルでしたが、そのうち53億ドルは運転資本からの現金で、会社は「主に、増えた受注と予約枠の手付金による」と説明しています。予約の列に並ぶ人が払った手付金が、先に入ってきているわけです。商売が強い証拠ではありますが、まだ機械を作って渡す前のお金です。
この四半期の値段の高さは、売れた機種の組み合わせにも助けられています。 第3四半期だけで見ると、ガスの注文単価は2025年10〜12月期より20ポイント超高かった。ただし、単価の高い小型機(エアロ)の比率が高かったためで、会社自身が「第4四半期の1キロワットあたりの価格は、第3四半期より低くなる」と認めています。第4四半期は10〜20ポイントの範囲だと言っています。
小型機の勢いも、続かないと会社が先に言っています。 社長は「第2・第3四半期のペースが第4四半期も続くとは言いません」と述べ、2027年の予約のペースも「第1・第2四半期より、第3・第4四半期に近い」と答えました。上期の記録的な予約の速さは、繰り返さないということです。
ほかに、年金の移管による8,400万ドルの益がありました。ただしこれは調整後の数字からは除かれています。
質疑応答でも、答えが出なかった場面が2つありました。黒字化した風力事業を今後どうするのかを聞かれて、社長は「米国市場の行方を1年見てから判断する」と答え、売却などの具体には触れませんでした。電化部門の利益率が30%を超えられない理由を聞かれた場面でも、答えは次回の投資家向け説明会に送られています。風力は、通期の損失見通しが約4億ドルから4億〜5億ドルへ広がってもいます。
なぜ今、この会社に注文が集まるのか
背骨は単純です。AIのデータセンターが、すぐに使える大きな電気を欲しがっている。 それを作る機械の生産枠は限られている。だから枠の値段が上がり、値上げ後の注文が、これから何年もかけて出荷されていく。
発電の側では、この四半期に大型機55台、小型機57台の注文が入りました。2032年の出荷枠も複数売ったと言っています。発電部門のサービスの受注も、この四半期に+10%、年初からで+17%伸びています。機械を売った後の点検や部品で稼ぐ部分で、サービスの受注残は930億ドルあります。社長は、サービスの比率が上がるほど発電部門の利益率は上がると答えました。機械が増えれば、そのあと何十年も続く仕事が増える構造です。
電化の側では、データセンター向けの受注が減ったとはいえ、機器の受注残は420億ドルあります。利益率は19.1%で、会社は通期で18〜20%の上の方に向かうと言っています。そこに、MVUPSの初受注とSSTの採用通知が加わりました。
同じ顧客に、発電機と、電気を運ぶ機器と、停電を防ぐ機器を一緒に売れる。 ここがこの会社の立ち位置です。ただし、それを数字で示すはずだった「組み合わせで年5億ドル」の話は、今回は出てきませんでした。
時間の感覚も書いておきます。値上げ後のガスの注文は、2026年の下期から出荷に乗り始めました。四半期5ギガワットの出荷が続けば、これから1年半ほどの売上と利益率に、そのまま効いてきます。一方で、SSTが売上になるのは2027年以降です。今の数字を動かしているのは、新製品ではなくガスタービンの値段です。
次の決算で、僕の読みが外れていたと分かる形
今回の読みは「値上げ後の注文が出荷に乗り始め、列はまだ伸びている。ただし、データセンター向けの電化の受注には陰が出た」です。違っていたら、次のどれかで分かります。
- 年末の契約済みの出力が130ギガワットに届かない(第4四半期の予約が、会社の言う13ギガワット超を下回る)
- 発電部門の四半期の利益率が19%を下回る
- データセンター向けの電化の受注が、14億ドルからさらに減る
逆に、良い方へ外れる形もあります。1月に出る2027年の見通しが、今年の下期を出発点にした水準を上回ったときです。
ここに書いたのは、2026年10月28日の説明会までに分かっていることだけです。
正直に言うと、この会社の決算でいちばん気になっているのは、良かった数字ではありません。データセンター向けの受注が半分になったのに、会社がその理由に触れなかったことです。次の回で、その数字がどちらに動くかを見ます。
※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。
※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。