AIの話になると、名前が挙がるのはいつも半導体の会社です。でも、その半導体どうしをつなぐ線と差し込み口を、誰かが作っています。
その「つなぐ側」の最大手のひとつが、アメリカのアンフェノールです。コネクタ、ケーブル、アンテナ、センサーを作っている会社で、この四半期、会社自身が「想定よりかなり強い」と言い切る決算を出しました。
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※この記事で扱うのは、2026年10月28日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。
💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストの質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。
その前に——「コネクタ」で、なぜAIの決算が動くのか
コネクタと聞くと、家電の裏に付いている小さなプラグを思い浮かべると思います。地味な部品です。実際、1個1個は安い部品です。
ただ、AIのデータセンターでは事情が違います。AIの計算は、1枚のチップでは終わりません。何千枚ものチップが、互いに大量のデータを受け渡しながら1つの計算をします。チップがどれだけ速くても、つなぐ線が遅ければ全体が遅くなる。だから、チップと一緒に、つなぐ部品も一段速いものへ作り替えられています。
身近なもので言えば、家のパソコンとLANケーブルです。回線を速くしても、古いケーブルのままだと速度が出ません。それを何千台ぶん、しかも桁違いの速度で、データセンター1つの中でやっている、と考えてください。アンフェノールが売っているのは、その中の高速の銅線、光ファイバー、それに電気を送るための部品です。
この記事の結論に効くのはここです。AIの設備が増えると、チップの数だけでなく、つなぐ箇所の数が増えます。質疑応答で、次世代の設計で部品の構成が変わる影響を聞かれたとき、社長はこう答えています。どの顧客も、銅・光・電源のつなぎ部品が「もっと要る」と言っている。
AIは、データ通信向けの売上の約4分の3になりました
その「もっと要る」が、この四半期の数字にどう出たか。
- 売上 102億ドル(前年同期比 +65%。オーガニック=買収した会社の分を除いた、もともとの事業の伸びで +37%)。1ドル150円で約1兆5,300億円です
- 調整後の一株利益 0.80ドル(前年同期比 +74%)
- 受注 121億7,000万ドル(前年同期比 +99%、前の四半期比 +13%)。約1兆8,300億円で、過去最高です
- 受注対出荷比 1.19倍
💡調整後の一株利益=会社が一時的と考える項目を除いた、1株あたりの利益(non-GAAP)。会計基準どおりの数字とは別物です。この記事の一株利益は、すべて調整後で、2026年9月3日の1株→2株の株式分割の後の数字です。
💡受注対出荷比=その四半期に入った注文を、出荷した金額で割ったもの。1を超えていれば、出す以上に注文が積み上がっています。
その中心が、データセンターなどのデータ通信向けの市場です。ここが売上の48%を占め、前年同期比で+117%(オーガニックで+77%)、前の四半期からも+30%伸びました。3ヶ月前に会社が出していた見通しは「前の四半期比で10%台半ばの増加」だったので、それを大きく超えています。
そして今回、初めて数字が出ました。
「前の四半期からの伸びの大半はAIによるもので、AIはいまや、データ通信向け売上の約4分の3を占めています」
3ヶ月前の説明会では、社長はこの比率を聞かれて「小数点まで数字を付けるつもりはない」と避けていました。今回は「約4分の3」と言っています。単純に掛け算すると、全社売上の約36%がAI向けという計算になります(これは僕の計算で、会社が出した数字ではありません)。
言い方も一段上がりました。3ヶ月前は「想定より強い結果(stronger than expected)」。今回は「想定よりかなり強い結果(significantly stronger than expected)」です。
会社の見通しは、市場の予想を上回りました
10〜12月期の見通しは、売上103億〜105億ドル、調整後の一株利益は0.81〜0.83ドル。通期では売上369億〜371億ドル、一株利益2.82〜2.84ドルを示しました。
💡コンセンサス=その会社を調べているアナリストの予想の平均。今回なら、通期の売上356億6,000万ドルが市場の「周りの予想」で、会社はそれより上の369億〜371億ドルを出しました。
一株利益の予想は2.69ドルでした。会社の見通しは、売上で約4%、一株利益で約5%、予想を上回っています。
前回の見通しとの比較でも同じです。3ヶ月前、会社はこの四半期の売上を93億〜94億ドル、一株利益を0.70〜0.71ドル(分割調整後)と言っていました。実績は102億ドルと0.80ドル。上限から売上で約8.5%、一株利益で約13%上に出ています。
買収したCommScope(通信インフラの会社)の見通しも、また上がりました。今年の売上は、買収を発表した時点で「36億ドルの会社」と説明していたものが、41億ドル、46億ドルと上がり、今回は51億ドルです。一株利益への寄与も、分割調整後で0.15ドルから0.18ドルへ引き上げています。
ただ、次の3ヶ月の言い方は下を向いていました
ここからが、僕が身構えた部分です。数字が強い一方で、3ヶ月前より弱くなった言葉がいくつもあります。
次の四半期の伸び方について。
3ヶ月前:「前の四半期の水準から、10%台半ばの、さらなる増加を見込んでいます」
今回:「この非常に強い第3四半期の水準から、1桁台半ばで、再び増加すると見込んでいます」
データ通信向けの次の四半期の見通しが、「10%台半ば」から「1桁台半ば」へ下がりました。高い水準からさらに伸びる、という意味では弱気ではありません。ただ、伸び方の段は一つ下がっています。
受注の広がりについて。
3ヶ月前:「この四半期は、すべての最終市場で受注対出荷比が1を上回りました」
今回:「この四半期は、1つを除くすべての最終市場で受注対出荷比が1を上回りました」
受注対出荷比そのものも、1.23倍から1.19倍に下がっています。まだ1を大きく超えていますが、向きは下です。
そして、消えた数字があります。 3ヶ月前、社長は「受注もオーガニックで前年比63%伸びた」と言っていました。今回、受注の総額(前年比+99%)は言いましたが、買収分を除いた受注の伸び率には触れていません。 受注がほぼ2倍になった中で、どこまでが買収で増えた分なのかは、今回の説明からは分かりません。
通信ネットワーク向けについて。 ここも言い方が変わりました。
3ヶ月前:「通信ネットワーク市場の顧客に対して、かつてないほど良い位置にいます」
今回:「通信ネットワーク市場の顧客に対して、良い位置にいることは間違いありません」
3ヶ月前にあった「データ通信量の加速が、長期の需要を生む」という言い方も消え、「顧客がネットワークを広げると決めたときには」に置き換わっています。この市場のオーガニックの伸び率は、−6%から−28%へ悪化しました。
答えなかったことと、数字に乗っていたもの
質疑応答で、具体的に答えた場面もありました。CommScopeの見通しがなぜ上がったのかには、買収時の36億ドルと今年の51億ドルを並べて答え、光ファイバーのガラスを含めて調達先を分け、長期の供給を確保したと説明しています。データ通信向けの+30%が前倒しの注文ではないかと聞かれた場面でも、「第3四半期の強さは、何かが前倒しされたものではありません」と否定しました。
一方で、答えなかったことが3つあります。
- 次の四半期の伸びが1桁台半ばに下がる理由は、聞かれても具体的に説明しませんでした。「季節性はあるかもしれない」という程度です
- エヌビディアの次世代設計への移行で、自社の部品の中身がどう変わるかは、「特定の顧客、特定の設計には立ち入りません」と答えませんでした
- 受注の納期が長くなっていることと、顧客側の資金調達の懸念は、2人が続けて聞きました。答えは「新興のクラウド事業者への依存が大きいとは言えない」「需要の大半は、世界で最も資本の厚い企業から来ている」という、数字の無い否定でした
数字に乗っていたものも書いておきます。売上の+65%のうち、約28ポイントは買収で増えた分です。前の四半期には関税の還付が8,000万ドル(分割調整後で一株約0.02ドル)入っていて、今回はそれが無い分、利益率の前の四半期比が押し下げられています。防衛向けの需要について、社長は紛争の行方と切り離せない「補充の需要」と言っています。
ただ、AIの部分が一時的なものかと言えば、会社の説明は逆です。前倒しは無いと明言し、さらにAIを除いても、全社のオーガニック成長率は10%台後半だと数字で答えています。売上の伸び65%のうち、買収を除いた37%が残ります。この四半期の強さの大半は、そちらでした。
なぜ今、アンフェノールにこれが起きているのか
理由はAIだけではありません。売上の半分を占めるデータ通信向けの外側でも、会社は伸びています。
産業向けは、オーガニックで+25%でした。会社によると、約18ある下位の市場の大半が2桁で伸びていて、挙げたのはビルの自動化、計測機器、石油・ガス、代替エネルギー、電化、工場の自動化、重機です。データセンターの建設がその一部に寄与しているとも言っていますが、主因ではないという説明でした。
つまりこの会社は、AIのデータセンターに「つなぐ部品」を売りながら、同時に、工場や送電や重機の「つなぐ部品」でも伸びています。AIの比率が上がって目立つのはデータ通信向けですが、AIを除いても10%台後半で伸びている、という数字はここから来ています。
お金も残っています。この四半期の営業キャッシュフローは21億ドル、フリーキャッシュフローは16億ドルで、どちらも過去最高でした。調整後の営業利益率は29.7%です。
💡フリーキャッシュフロー=本業で入ってきた現金から、設備投資を引いて手元に残るお金。
次の決算で、どこを見るか
今回の読みは、「AIで想定を大きく超えたが、次の四半期の伸び方の段は下がり、受注の中身の開示が薄くなった」です。
僕の読みが甘かったと分かるのは、こういう形のときです。
- 10〜12月期に、データ通信向けの売上が前の四半期より減る
- 受注対出荷比が1を下回る
- 受注の総額が、前の四半期より減る
逆に、良い方に外れる形もあります。次の回で「1桁台半ば」を再び大きく超え、買収分を除いた受注の伸び率をまた口にした場合です。今回消えた数字が戻ってくれば、それは消えた理由が「言いにくい数字だったから」ではなかったことになります。
受注がほぼ2倍になった決算で、会社は次の3ヶ月の伸び方を一段低く言い、受注の中身の数字を1つ出さなくなりました。強い数字と、弱くなった言葉が、同じ説明会の中に並んでいます。どちらが先に答えを出すのかは、次の回で分かります。
※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。
※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。