マドリガル決算の内容:初めて黒字になった四半期に、財務責任者は「黒字と赤字を行き来しうる」と先に言った【MDGL・2026年7〜9月期】

健康診断で「脂肪肝ですね」と言われたことのある人は、日本にもたくさんいます。その脂肪肝が進んだ先の病気に、アメリカで飲み薬を売っている会社があります。マドリガル・ファーマシューティカルズです。

薬の名前はレズディフラ。発売から10四半期、売上は季節的な一服を除いてほぼ毎回伸びてきました。そして今回、会社として初めて、四半期で黒字になりました。

■ マドリガルの決算説明会の内容(要点)

  • 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
  • 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月3日
  • 売上は+50%、患者は5万5,850人を超えました
  • 3ヶ月前は「準備中」、今回は「達成」
  • 同じ説明会で、弱くなった言葉もありました
  • 黒字の中身と、会社が答えなかったこと
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※この記事で扱うのは、2026年11月3日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実を整理したもので、予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。発言はそのまま記録に残ります。

目次

その前に——「MASH」って、どんな病気でしょう

この会社の話は、病気の名前が分からないと何も伝わりません。先に整理します。

MASH(マッシュ)は、日本語にすると「代謝機能障害関連脂肪肝炎」です。名前に「脂肪肝」と入っているので、ただの太りすぎの延長に聞こえます。実際は少し違います。肝臓にたまった脂肪が炎症を起こし、その炎症が続くと、肝臓が少しずつ硬くなっていきます。これを線維化と呼びます。

線維化の進み具合は、F0からF4までの5段階で表します。数字が大きいほど硬い。F4が肝硬変です。

💡F2-F3=線維化が中くらいから進んだ段階。F4C=F4のうち、肝臓の働きがまだ保たれている「代償性肝硬変」。

健康診断の「脂肪肝」の指摘は、多くがこの入り口の段階です。マドリガルの薬が対象にしているのは、そこから進んで、専門医にかかっているF2-F3の患者です。

この記事の結論に効くのは、ここからです。慢性の病気なので、薬は続けて飲むものです。 1回売って終わりの商品ではありません。患者が増えれば、その人数がそのまま次の四半期、その次の四半期の売上として積み上がります。だからこの会社では、売上と同じくらい「何人が飲んでいるか」が大事な数字になります。

売上は+50%、患者は5万5,850人を超えました

  • 売上 4億3,130万ドル(前年同期比 +50%。1ドル150円で約647億円)
  • 今年1〜9月の売上 累計11億ドル
  • 服用中の患者 5万5,850人超(1年前は2万9,500人超)
  • 純利益 5,540万ドル(会社として初めての黒字の四半期。約83億円)

💡純利益=売上から、薬の製造原価・研究開発費・販売費などを全部引いて最後に残る利益。ここがプラスになったのが今回が初めてです。

営業活動で入ってくる現金も、2四半期続けてプラスになったと財務責任者は述べました。手元の現金などは9億6,180万ドルです。

売上は前の四半期(3億6,430万ドル)から+18%。前の四半期も、その前の四半期から+17%でした。加速ではなく、同じくらいの速さで伸び続けている形です。

3ヶ月前は「準備中」、今回は「達成」

経営陣の言い方は、3ヶ月前からはっきり変わりました。大きいのは2つです。

利益について。 3ヶ月前の財務責任者は、まだ「準備」の段階でした。

3ヶ月前:「私たちは黒字化の準備も進めています」

同じ財務責任者が、今回はこう言い切りました。

今回:「第3四半期は、マドリガルにとってもう一つの重要な節目になりました。初めての黒字の四半期です。純利益は5,540万ドルでした」

市場の伸びについて。 社長兼CEOの言葉です。

3ヶ月前:「MASHの市場は、当面のあいだ二桁のペースで拡大すると見ています」
今回:「米国のF2-F3のMASH市場は加速しています。今年は30%を超える成長の軌道にあります」

「二桁」から「30%超」へ。市場について、今回はひとつ強い言葉を選んでいます。

もうひとつ、対象になりうる患者の数も書き換えました。肝硬変の段階(F4C)の米国の患者を、前回は「専門医にかかっている患者」として約24万5,000人と言っていました。今回は「対象になりうる患者」として36万人。45%以上の上方修正です。ただしこのF4Cの患者に向けた試験はまだ続いていて、ここは今の売上ではありません。

同じ説明会で、弱くなった言葉もありました

強くなった言葉の陰で、弱くなった言葉もあります。

前年同期比の売上の伸びは、前の四半期の+71%から+50%へ。患者数の言い方も、3ヶ月前の「1年前の2倍超」から、今回は「2倍近く」へ変わりました。人数は増え続けていますが、伸び率は落ち着いてきています。

そして、3ヶ月前に言っていたのに今回消えた言葉が3つあります。

  • 「レズディフラは期待を上回り続けています」「ご存じのとおり、第2四半期は期待を上回りました」——今回は「上回る」の語が無く、「非常に好調です」に置き換わりました
  • F2-F3の患者を対象にした、肝臓の組織を調べて結果を見る大きな試験の「2028年にデータが出る見込み」——今回は触れていません
  • 欧州について「売上への寄与はごくわずか」と、薬価の話——今回は出てきません

3ヶ月前は2回使っていた「上回る」が、今回は一度も出てきませんでした。

黒字の中身と、会社が答えなかったこと

初めての黒字には、前提があります。

1年前の同じ四半期には、事業提携に関わる一度きりの費用が1億1,730万ドル入っていました。研究開発費は1年前が1億7,400万ドル、今回が7,180万ドルです。この一度きりの費用が今回は無いことが、黒字の大きな部分を作っています。販売費などの計上の時期も効いていて、財務責任者は「第4四半期の販売費などは第3四半期より増える見込み」と言っています。

そして、最も正直だったのはこの一言でした。

「当面は、黒字と赤字を行き来する可能性があります」

初めて黒字になったその説明会で、会社の側から先にそう言っています。今回の黒字は「黒字が定着した」という意味ではありません。

来年の値引きの話も出ました。 薬の世界では、定価から保険会社などへの割戻しが引かれます。

💡グロス・トゥ・ネット=薬の定価(グロス)と、実際に会社に入る金額(ネット)の差の割合。「30%台後半」なら、定価の3分の1強が割戻しなどで消えるという意味です。

今年は会社の想定レンジ「30%台半ばから後半」の下限で済んでいます。ところが来年は、高齢者などを対象にした公的保険(メディケア・パートD)との契約を結ぶことで、レンジの上限付近になると財務責任者が数字で答えました。契約は来年の第1四半期の発効に向けて、まだ交渉中です。さらに第1四半期には、毎年の季節的な落ち込みが同じように来ると念を押しています。

💡ガイダンス=会社が自分で出す業績の見通し。

マドリガルは数字のガイダンスを出していません。第4四半期については、3ヶ月前と同じく「第3四半期から第4四半期への、市場予想の伸び率に安心している」とくり返しました。2027年についても「市場予想を見て、良い位置にいると思う」。市場予想の平均は売上約21億2,000万ドルで、会社はそれを上回るとは言っていません。並んでいる、という追認です。

いちばん多く聞かれたのは、試験の時期でした。 肝硬変の段階(F4C)の患者を対象にした試験は、病気が進む出来事(イベント)がある数に達したところで結果を出す設計です。担当の医療責任者は、時期を「2027年」から「2027年後半」に絞りました。はっきりはしましたが、年の後ろ寄りに決まったということです。

4つの証券会社が、形を変えて同じことを聞きました。イベントは計画どおりに集まっているのか。返ってきたのは「イベントの集まり具合について、具体的な数字は出していません」。そして社長兼CEOはこう答えています。

「2027年12月31日の時点でイベントの数が足りなければ、試験を止めることはしません」

4回聞かれて、数字は一度も出ませんでした。2028年にずれ込む余地は残っています。

なぜ、患者は増え続けるのか

それでも、この会社の売上の土台そのものは動いていません。

社長兼CEOが示した数字はこうです。米国でF2-F3と診断されている患者は、2025年末の46万人から、2026年6月末には53万人超へ増えたと推計しています。その前は31万5,000人でした。診断される人が増えていく病気です。

そして、診断率は約10%、その中で薬が使われている割合も約10%。

「10%の10%、つまり全体の機会のまだ約1%にいるだけです」

診断されていない人がまだ大半で、診断された人の中でも薬を飲んでいる人はまだ一部です。患者が1人増えるたびに、その人の処方が続いていきます。「着実に患者を増やし続けています」という言葉と、2万9,500人から4万9,000人、5万5,850人という積み上がりは、同じ向きを向いています。

競合についても、今回初めて距離を数字で語りました。「最も早い参入候補でも、今は2030年までは見込まれていない」「少なくとも15四半期のリードがある」。

ただし、肝硬変の段階への広がりは、試験結果が早くて2027年後半、承認はその先です。もうひとつの試験の結果は2030年代前半の見込みです。どちらも1年半の範囲の外にあります。この先1年半の売上を作るのは、今の対象であるF2-F3の患者がどれだけ増えるか、です。

次の決算で確かめること

今回の姿は「患者は着実に積み上がっている。初めての黒字は一度きりの費用が無いことに支えられ、来年は値引きが重くなる」です。これが崩れたと分かる形を書いておきます。

  1. 四半期の患者の純増が、今回の約6,850人を下回る
  2. 肝硬変の段階の試験結果が、2028年へ延びると発表される
  3. 来年のグロス・トゥ・ネットが、レンジの上限を超えて悪化する

反対に、来年の第1四半期に季節の落ち込みを越えて患者の増え方が保たれれば、値引きの重さを人数で吸収していく姿が見えてきます。


ここに書いたのは、2026年11月3日の説明会までに分かっていることです。黒字が続くかどうかは、会社自身が「行き来しうる」と言っています。試験の時期も、まだ動きます。

次の回は、黒字が2回続くかより先に、患者の増え方が季節の谷をどう越えるかを確かめます。第1四半期の患者数で、それが見えます。


※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

この記事で扱ったような内容は、ブログでは一部しか公開していません。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。

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