ネット通販のレジで「4回に分けて払う」を選ぶ。その裏で、1件ずつお金を貸しているアメリカの会社がアファームです。
今回の決算説明会で、経営陣は今年度の成長の下限を引き上げ、それを数字で言い切りました。一方で、銀行のカードに分割払いを載せる新しい事業については、今回「辛抱」という言葉が出ました。同じ説明会の中で、強気になった話と、時間がかかる側の話が並んでいました。
■ アファームの決算説明会の内容(要点)
- 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
- 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月5日
- 取扱高は34%増、経営陣は成長の下限を「30%」と言い切った
- 伸びの理由は、「断っていた人に貸せるようになった」こと
- Affirm Edge は「辛抱」、開始時期の目安は8月と同じ
- 信用の質問が、2人のアナリストから重ねて出た
日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。
※この記事で扱うのは、2026年11月5日に行われた、2026年7〜9月期(同社の会計年度では2027年度の第1四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。
💡決算説明会=決算発表のあとに、経営陣が投資家やアナリストの質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。発言はそのまま記録に残ります。
その前に——「後払い」の会社は、何で稼いでいるのでしょう
「後払い」と聞くと、ツケで買って月末にまとめて払う、あの感覚を思い浮かべるかもしれません。アファームの仕組みは少し違います。買い物1件ごとに、小さなローンを組んでいるのです。
クレジットカードは、先に枠をもらって、その中で何度でも使います。アファームは逆で、レジに立ったその瞬間に「この人に、この買い物の分だけ貸せるか」を1件ずつ審査し、金利や回数を決めます。日本でも、ネット通販の支払い画面に「あと払い」「分割」が並ぶようになりました。あれを、審査と貸し付けまで自社でやっている会社だと考えると近いです。
お金の入り口は2つあります。お店やブランドから受け取る手数料(「金利0%で分けて払えます」を実現するための費用を、お店側が出すことが多い)と、利用者から受け取る金利です。
そして、ここが今回の決算を読むうえでいちばん大事なところです。貸すお金の多くは、自社のお金ではありません。 貸したローンを束ねて投資家に売ったり、ローンを買い取ってくれる相手に回したりして、資金を集めています。
💡ABS(資産担保証券)=たくさんのローンを1つに束ね、その返済を受け取る権利として投資家に売る証券。住宅ローンでも自動車ローンでも使われる、ごく一般的な資金の集め方です。
だから、この会社にとって大事な数字は2つに絞られます。どれだけ貸せたか(伸び)と、貸したお金がきちんと返ってくるか(信用)。信用が崩れれば、投資家がローンを買ってくれなくなり、伸びそのものが止まります。今回の質疑応答で、信用の質問が何度も出てきたのはそのためです。
取扱高は34%増、経営陣は成長の下限を「30%」と言い切った
- 取扱高(GMV):前年同期比 +34%
- 取引コストを差し引いた収益の、取扱高に対する割合:4.3%
- 貸したお金に対する資金調達コスト:6%(前年同期より下がった)
💡取扱高(GMV)=アファーム経由で支払われた買い物の総額。お店のレジを通った金額の合計で、会社の売上そのものではありません。
4.3%という取り分は、3ヶ月前の決算説明会で話題になった通期の目安(4.16%)を上回る水準です。伸びただけでなく、1ドルあたりに残る分も細っていない、ということです。
見通しの数字も動きました。8月の時点で、通期の取扱高の見通しは「640億ドル超」でした。伸び率にすると20%台後半です。今回、それを652.5億ドル超へ引き上げ、経営陣はこう話しました。
「私たちは成長に下限を設けました。その下限も、今は3から始まります。今年は少なくとも30%の成長にサインします」
「第2四半期の最初の月でも、事業はいま30%台後半のペースで伸びています」
「サインする(signing up for)」は、約束として引き受ける、という強い言い方です。8月に20%台後半だった下限を、今回は30%まで引き上げて引き受けました。なお、Edge のような新しい構想を見通しの数字に入れない、という姿勢は8月から変わっていません。
ただし、ここは正確に読む必要があります。この四半期が34%で、通期の下限が30%。アナリストからは「表面上は、年度の残りで減速することになりませんか」という質問が出ました。経営陣の答えは「減速について、具体的に指し示せるものはありません」「責任のある下限を置きたかっただけです」。9月と第2四半期の初めは、第1四半期の34%を大きく上回るペースだとも述べています。下限は、会社が届くと考える数字の天井ではなく、床です。
伸びの理由は、「断っていた人に貸せるようになった」こと
なぜ、この会社は30%を超えて伸び続けられると言うのか。今回の説明会で経営陣が挙げた中身は3つあります。
1つ目は、審査のモデルを作り替えたことです。 経営陣によると、新しい審査モデルは、従来の作り方で用意した次の候補モデルと比べて、返せる人と返せない人を見分ける力が2倍でした。その結果がこれです。
「おそらく2〜3ポイント多くの人を承認しています。しかもそれは、追加の損失がほぼまったく出ない形で貸せる人たちです」
これまで断っていた人のうち、実は返せる人を拾えるようになった、ということです。経営陣はこれを「30%成長にどう届くか、という問いへの、とてつもなく大きな後押し」と表現しました。
2つ目は、以前から話してきた、ブランドがお金を出す販促です。 メーカーやブランドが費用を負担して「金利0%の分割払い」を付ける仕組みで、対象の商品はアファームのアプリの中で約100万点(SKU)になったと言います。年末商戦への効果には「個人的にとても期待している」と述べつつ、「ここで話すことは大きく割り引いて聞いてほしい」とも付け加えていました。
3つ目は、自社カード向けの新しい施策で、その一部は「文字どおり数日、あるいは数週間で始まる」と言っています。
もう少し大きな話としては、ネット通販に占めるアファームの割合はまだ4%未満で、展開している市場は4つ。伸びる余地の話として、経営陣はこの数字を挙げました。
資金の側も揃っていました。貸借対照表に載っている資金の70%超は固定金利で、3年物・5年物のABSも出しています。直近のABSには、売り出した額の4倍を超える買い注文が集まったと言います。お金を出す側が、まだこの会社のローンを欲しがっている、ということです。
Affirm Edge は「辛抱」、開始時期の目安は8月と同じ
強気になった話の一方で、慎重な言葉が並んだ話があります。
Affirm Edge(アファーム・エッジ)。提携した銀行のデビットカードに、アファームの分割払いの機能を載せる取り組みです。3ヶ月前の言葉はこうでした。
「大半はもう出来上がっています。反応にはとても興奮しています。何四半期も言い続けていますが、1つ出たら、次々に出てくると思ってください。たくさん」
同じ答えの中で、経営陣は「銀行の動きは遅い」「必要なだけ時間をかける」とも述べていました。
今回、同じ Edge について出た言葉は3つでした。
「これは本当に、まだ初期です」
「今日お知らせできることはありません。ただ、ここでの合言葉は”辛抱”だと思います」
「少し時間がかかります。提携先の動きは速くないので、そのペースに合わせる必要があります」
開発はほぼ終わりつつある、という点は8月と変わりません。今回は「初期」「辛抱」と、時間がかかる側の言葉が前に出ました。開始時期は、株主向けの書簡が「2027年の前半に最初の試験運用」としています。8月の書簡も会計年度の後半、つまり同じ2027年1〜6月としていたので、目安は動いていません。ただ、説明会の答えの中では時期は示されませんでした。
説明会でほとんど、あるいはまったく話題にならなかった話も3つあります。
- イギリス:3ヶ月前は「どこから聞いても、大歓迎でした」。今回は、費用とワラントの説明の途中で出ただけです。経営陣は、国外への展開もあって提携先経由の新しい利用者が増えている、と述べたついでに「足がかりを得られたことに本当に興奮しています」と付け加えました
- リースと端末の買い替え:3ヶ月前は「そう遠くない時期に、もっとお話しできると思います」。今回は言及なし
- Affirm Money(同社の別のサービス):3ヶ月前は「1四半期後に、もう一度聞いてください」。今回は言及なし
「もう一度聞いてください」と言った3ヶ月後の説明会で、その話題を聞くアナリストはおらず、経営陣も答えの中で触れませんでした。悪い知らせが出たわけではありません。
信用の質問が、2人のアナリストから重ねて出た
この決算でいちばん繰り返し聞かれたのは、貸したお金が返ってくるかでした。
💡引当金=貸したお金のうち、返ってこないかもしれない分を、先に費用として見積もっておくもの。これが増えると、会社が「少し返ってこない分が増えそうだ」と見ていることになります。
💡延滞率=返済が遅れているローンの割合。
ある証券会社は、引当金の取扱高に対する割合が上がり、延滞率も「わずかに」上がったと指摘しました。経営陣の答えは具体的でした。9月に、審査の実験をした。その実験で貸したローンを、自社の貸借対照表に残した。だから引当金が増えた。 実験は「ほぼ9月に限ったもの」だと言っています。
別の証券会社は、角度を変えて聞きました。今夜の株価の反応は、引当金の増加と、景気が不透明な中で信用が問題になるという懸念によるものではないか、30%超で伸ばしながら信用を保てる力が誤解されているのではないか、と。経営陣は、貸す期間が短いので90日以内に修正できる、延滞率の変化の「多くは完全に季節的なもの」で、引当金は実験によるもの、と答えました。社長は、信用の成績は上場後6年間ねらいどおりで、意図して調整している、と続けました。そのうえで、ABSに4倍超の注文が集まっている、という資本市場の評価を挙げています。
同じ論点が2回聞かれ、経営陣は2回とも引当金の増加を9月の実験で説明し、2回目では延滞率の変化を季節要因によるものとしました。延滞率の上昇が季節の範囲に収まるかは、次の四半期の数字で確かめる点として残ります。
ほかにも、この四半期の数字には動きやすい項目がいくつか入っています。
- 資金調達コストは前の四半期より0.27ポイント上がりました。経営陣は、貸借対照表の構成が季節で変わるためだと説明しています
- 次の四半期の、会計基準どおりの営業利益率の見通しについて、アナリストから「市場の予想を少し下回った」との指摘がありました。経営陣は、大口の提携先に渡しているワラントの費用を、外部の予想が織り込み切れていないためだと説明し、それが差の大半だと述べています
- 8月の説明会で経営陣が述べていたとおり、ローンを束ねて売る取引の時期によって、売却益が四半期ごとに振れます
💡ワラント=あらかじめ決めた値段で株を受け取れる権利。業績に連動する形で提携先に渡していると、提携がうまくいくほど会計上の費用が膨らみます。
利益の見通しを押し下げた項目の大半は、本業の悪化ではなく提携先との取り決めから来ている、というのが経営陣の説明です。
次の説明会で確かめること
今回の決算は、伸びの話では3ヶ月前より強気になり、新しい事業の話では、時間がかかる側の言葉が前に出ました。差し引くと、この会社の姿は大きくは変わっていません。変わったのは、説明会で前に出た言葉の重心です。下限の引き上げを支えたのは、いま動いている後払いの本体と審査の精度で、新しい構想は8月と同じく見通しの外に置かれたままです。
この見立てが外れていたと分かる形は、次の3つです。
- 次の四半期の取扱高の伸びが30%を割る、または通期の下限30%が取り下げられる
- 引当金の増加を「9月の実験」で説明できなくなり、延滞率の上昇が季節の範囲を超えて続く
- Affirm Edge が、次の説明会でも「辛抱」のまま、経営陣の口から始まる時期が示されない
3つ目だけは、外れても伸びの本体には響きません。ただ、3ヶ月前に「次々に出る」と言った話が、書簡の時期どおりに始まるかは、この経営陣の言葉をどれくらい額面どおりに受け取れるかの目安になります。
経営陣は説明会の中で、「30%超の成長が何四半期続いているかを数え続けているのには、理由があります」と言いました。その数がもう1つ増えるか、今回の説明会でほとんど話題にならなかったイギリスと、まったく出てこなかった Affirm Money の話が戻ってくるかは、次の説明会で分かります。
※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。