アクソン決算の内容:ソフトは43%に加速、予約を30%台で終える見通しは繰り返されなかった【AXON・2026年7〜9月期】

警察官が胸に付けるボディカメラと、電気で相手の動きを止めるテーザー銃。アメリカの警察で、この2つの両方を握っている会社があります。

アクソン・エンタープライズです。カメラで撮った映像を保管・整理するクラウドソフト、通報を受ける911センターのシステム、そして空から近づくドローンを見つける対ドローン製品まで、警察の仕事に要る道具を一式で売っています。

■ アクソンの決算説明会の内容(要点)

  • 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
  • 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月5日
  • 対ドローンの売上は、工事のように「塊」で来る
  • ソフトは加速し、AIは初めて継続収入の金額で語られた
  • 「予約」の言い方は、3ヶ月で控えめになった
  • 連邦の案件は「有望」から「確信が持てない」へ
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※この記事で扱うのは、2026年11月5日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、編集部の予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。発言はそのまま記録に残ります。

今回の決算は、同じ説明会の中に2つの顔がありました。ソフトの売上は伸びが加速し、AI製品の年間の継続収入も、初めて金額で示された。その一方で、通期の売上見通しは引き下げられ、3ヶ月前に言っていた、予約を30%台の伸びで終えるという見通しは、繰り返されませんでした。

目次

対ドローンの売上は、工事のように「塊」で来る

この決算を読むには、1つだけ先に知っておく必要があります。アクソンの売上には、毎月少しずつ入ってくるものと、一度にドンと入ってくるものが混ざっているということです。

「対ドローン」と聞くと、銃のようなもので撃ち落とす道具を想像するかもしれません。アクソンの説明では、中身はむしろ設備工事に近いものです。経営陣は大型の導入に要るものとして、設置場所の準備、機器の据え付け、連邦政府の調達手続き、武器輸出の規制(ITAR)と輸出許可、受け入れ試験を挙げました。

普通のソフトの売上は、これと正反対です。クラウドの利用料は契約期間にわたって毎月少しずつ計上されるので、1件の大口契約が四半期の数字を急に動かすことはありません。

身近なもので言えば、スマートフォンの月額料金と、家のリフォーム工事の違いです。月額料金は毎月同じように入ってきます。リフォームは、工事が終わって引き渡した月に、まとまった金額が一度に入ります。そして工事は、資材や許可の都合で、終わる月がずれます。

社長はこれを、こう言いました。

「いまや、対ドローンの導入1件で、報告する成長率が四半期ごとに数百ベーシスポイント動きうる。これは私たちにとって新しい力学です」

数百ベーシスポイントという言い方は、少し分かりにくいかもしれません。

💡ベーシスポイント=0.01%のこと。数百ベーシスポイントは、数パーセントにあたります。

今回の下方修正の大半は、この「工事の終わる月がずれた」話でした。だからこそ、ずれたのが本当に月だけなのかが、この決算のいちばん大事な問いになります。

ソフトは加速し、AIは初めて継続収入の金額で語られた

  • 売上 9億900万ドル(前年同期比 +28%。1ドル150円で約1,364億円)
  • ソフトとサービスの売上 4億3,700万ドル(前年同期比 +43%)
  • 年間の継続収入(ARR)18億ドル(前年同期比 +40%)
  • 調整後EBITDA 2億3,600万ドル(前年同期比 +33%超、売上に対して25.9%)

💡ARR=契約が今のまま続いた場合に、1年間で入ってくる継続的な収入の額。月額料金の会社の「体の大きさ」を測る数字です。
💡調整後EBITDA=会社が一時的だと考える項目などを除いた、本業の稼ぐ力に近い利益(non-GAAP=会計基準どおりではない数字)。

全体の+28%は、前の四半期の+35%から落ちています。ただ、財務責任者は「延びた連邦の対ドローン案件がこの四半期に入っていれば、30%を超えていた」と説明しました。

中身で強かったのはソフトです。財務責任者は「売上の伸びは前の四半期からほぼ700ベーシスポイント加速し、前年比43%になった」と言いました。前の四半期の+36%から、+43%へ。ソフトとサービスの売上は会社全体の半分に近づいています。

そして、前の四半期には無かった数字が出てきました。CEOのリック・スミス氏の言葉です。

「私たちのAI製品は、すでに年間の継続収入で1億ドルを超えています」

3ヶ月前、AI関連について会社が示していたのは「700%近く伸びている」という伸び率だけでした。AI製品の予約の金額は以前の決算でも示していましたが、年間の継続収入の金額を示したのは今回が初めてです。財務責任者のブリタニー・バグリー氏も、リアルタイムの現場把握(リアルタイム・オペレーション)、記録管理、AI、対ドローンのソフト、911をまとめた新しいソフト群が、年換算で5億ドル近くに達し、前年の2倍を超えたと説明しています。

既存の顧客の使い方も広がり続けています。

💡売上継続率(NRR)126%=1年前からの顧客が、今年は1年前の1.26倍のお金を払っている、という意味。解約で減った分を差し引いても、追加の購入で26%増えています。

126%は前の四半期と同じ水準です。まだ売上になっていない契約済みの金額(将来の契約予約)も、前の四半期の151億ドルから158億ドルに積み上がりました。

ハードの側は、まだら模様です。カメラ、テーザー銃、対ドローンを合わせたハード全体の売上は+16%の4億7,200万ドル。その中で、対ドローンを含む部門は+106%の1億2,500万ドルと倍以上になりました。一方で、テーザー銃は2億3,300万ドルで、前年同期よりわずかに減りました。会社が挙げた理由は、旧型のテーザー7の販売が減ったことです。カメラについては、ボディカメラ「ボディ4」が前の四半期から25%伸びたと説明しています。

なお、テーザー銃は前の四半期に過去最大のテーザー10の大口案件が入っていたので、前の四半期と比べると数字はさらに見劣りします。

「予約」の言い方は、3ヶ月で控えめになった

ソフトは上を向いた。その同じ説明会で、受注の話になると言葉が変わっていました。社長のジョシュ・アイズナー氏の発言を、3ヶ月前と並べます。

3ヶ月前:「予約について言えば、私が見ているすべての指標が、これまでで最も良い状態にある」
今回:「チームは第3四半期も、また力強い予約の四半期を達成した」

「これまでで最も良い」から「また力強い」へ。数字の出し方も変わりました。

3ヶ月前:「契約期間で調整した5年換算の予約は、さらに大きく、30%超伸びた」
今回:「総予約と5年換算の予約は、年初からで20%超伸びている」

30%超から20%超へ。ただし、3ヶ月前の数字は第2四半期だけの伸びで、今回は年初からの累計です。比べている期間がそろっておらず、今回は第3四半期だけの伸びは示されませんでした。言い方が控えめになったことは確かですが、この2つの数字だけで予約の伸びが落ちたとまでは言えません。

💡予約(bookings)=その期間に新しく結んだ契約の金額。売上はその後、出荷や利用に合わせて計上されます。今日の予約が、明日の売上の元になります。

実は3ヶ月前、社長は予約の着地を数字で言い切っていました。

「パイプラインを見ると、5年換算の予約で、年を30%台で終えるはっきりした見通しがある」

今回の説明会の記録と株主向けの書面のどちらにも、この「30%台」という予約の見通しは見当たりませんでした。アナリストに第4四半期の予約を問われたときも、社長は「予約については手応えを感じている」と言うにとどめ、記録が途中で切れるまでの間に数字は出てきませんでした。新しい製品や海外の予約については前向きな言葉がありましたが(後で触れます)、全体の着地の数字は語られていません。

連邦の案件は「有望」から「確信が持てない」へ

いちばん大きく向きが変わったのは、連邦政府向けの話です。

3ヶ月前:「連邦の事業が大きな期待を見せていることに、ワクワクしている」
今回:「連邦の調達が、予算と選挙のサイクルの関係で、やや遅くなっている」「残念ながら、いくつか遅れが出ていて、それが今年中に実現するか確信が持てない」

遅れているのは、下半期に見込んでいた大型の連邦向け対ドローン導入3件、合わせて売上約1億3,000万ドル(約195億円)・予約約2億ドルです。第3四半期に予定していた3,000万ドルの1件と、第4四半期に見込んでいた2件で合計1億ドル。会社はこれを第4四半期の見通しから外しました。

ここで会社は、見通しの出し方そのものを変えています。財務責任者の言葉です。

「だから、ガイダンスの出し方を改めます。こうした案件は、その四半期に出荷できると確信できた時点で見通しに含めます」

つまり今後は、大型のハード案件は見通しに入れず、入ってきたら上乗せとして扱う、ということです。年内に間に合えば上振れ要因になる、とも言っています。

💡ガイダンス=会社が自分で出す業績予想。ここに何を入れるかを、会社は自分で決めています。

通期の見通しは、前回も市場の予想も下回った

  • 第4四半期の売上見通し:9億9,000万〜10億1,000万ドル
  • 通期の売上成長:3ヶ月前の 32〜34% から、中心で 30%超 へ
  • 通期のフリーキャッシュフロー:前回目標の 4億5,000万ドル から 3億5,000万〜4億ドル へ

前年の売上(約27億8,000万ドル)に当てはめると、今年の売上の中心は約36億2,000万ドル。3ヶ月前の見通しの範囲(約36億7,000万〜37億2,000万ドル)を下回り、11月6日時点で取得した市場の予想の平均(約37億1,000万ドル。決算を受けた見直しが済んでいるかは不明)にも届きません。

💡市場の予想の平均(コンセンサス)=その会社を調べているアナリストたちの予想を平均したもの。会社が「30%伸びる」と言っても、周りが「33%伸びる」と思っていたなら、それは期待を下回った数字になります。

それでも財務責任者は、「これらが実現しなくても、通期の成長の中心は5年連続で30%を超える」と強調しました。外した1億3,000万ドルは、今年の成長率で言えば5ポイント近くにあたります。

フリーキャッシュフローが下がった理由は、在庫です。第3四半期だけで在庫を1億ドル超積み増しました。社長は、需要に先回りするためと、地政学的な混乱で電池や半導体などの部品が手に入りにくくなる場合への備えだと説明しています。在庫の積み増しは2027年前半に目標水準に達し、その後は資金の流出が落ち着く見通しです。

利益率には別の逆風もあります。調整後の粗利率は59.2%で、前の四半期の62.9%から下がりました(前の四半期は関税の還付で押し上げられていました)。メモリーの価格上昇は、今年は会社全体の利益率で約0.5ポイントの重しになり、その影響は第4四半期に最も大きく、2027年と2028年も続くと会社は見ています。来年については財務責任者が「来年のほうが、より強く効いてくる」と認めました。2027年の見通しは出さず、次の第4四半期決算(2027年2月)で示すとしています。

時期の問題とされたが、確定した時期は示されなかった

質疑応答では、遅れた連邦の対ドローン案件について、3人のアナリストがそれぞれ別の場面で質問しました。遅れの理由、利益への影響、第4四半期の予約です。

返ってきた答えの中心は、財務責任者のこの一言でした。

「本当に時期だけの問題です」

需要に危険は無く、出荷に要る在庫の積み増しも進めている、と会社は言います。ただ、確定した着地の時期も、どれくらいの確度で入るのかも、示されませんでした。 社長は、連邦の会計年度が10月に始まったばかりで、この先2四半期ほどは顧客の側に導入の時期を選ぶ余地がある、と説明するにとどめています。利益への影響を問われた場面でも、数字は出ていません。

ほかにも、答えが数字にならなかった点があります。ドローン会社スカイディオとの独占販売で、アクソンが受け取る手数料の率は示されませんでした。スカイディオを将来すべて買い取るのかと聞かれたCEOは、「将来どうなるかは、これから見ていく」と答えるにとどめています。

一方で、具体的に答えた場面もありました。メモリーの影響を聞かれた財務責任者は、0.5ポイントの重しが来年はその4倍を超えることを率直に認めています。911の事業については、社長が、継続収入が昨年末から倍になったと数字で答えました。悪い話を数字つきで言えている箇所と、数字が出ない箇所が、はっきり分かれていました。

数字を四半期をまたいで比べるときは、動いた要素がいくつかあります。前の四半期の粗利率は関税の還付で、対ドローンはワールドカップ関連の大口出荷で、テーザー銃は過去最大の案件で、それぞれ押し上げられていました。今回の減速の一部は、その高い土台との比較です。逆に今回は、1億ドル超の在庫積み増しがキャッシュフローを押し下げています。どちらの四半期も、ならした姿より少しずつ外れています。

スカイディオへの出資で、空の両側を押さえにいく

今回の決算でいちばん大きな発表は、数字ではありませんでした。スカイディオへの12億ドルの追加出資です。これで完全希薄化後の持ち分は37%になり、アクソンはスカイディオと、米国とカナダの公共安全向けの独占販売の契約を改めて結びました。資金は現金と株式でおよそ6対4。その一部は、今回調達した11億5,000万ドルの転換社債でまかなっています。

アクソンは2021年からスカイディオのドローンを警察向けに販売し、2024年には出資もしていました。3ヶ月前もCEOは、対ドローンの話の中で「スカイディオと興味深い取り組みをしている」と話しています。今回の発表は、その長い付き合いを、会社として過去最大の投資にまで広げたものです。

💡転換社債=一定の条件で株式に換えられる権利の付いた借金。普通の借金より金利を低くできる代わりに、将来株式が増える可能性があります。

CEOが描いた絵は、こうです。911に通報が入る。スカイディオのドローンが最初に現場の上空に着く。映像がリアルタイムで集まる。ボディカメラを付けた警察官が、状況を知ったうえで到着する。AIが対応を支え、すべてが証拠と報告書の作業に流れ込む。そして対ドローン製品が、逆に空からの脅威を防ぐ。「空の両側を押さえる」という言い方をしています。

この絵が数字になって見え始めている場所が、2つあります。

1つは、州や地方の警察以外の顧客です。この四半期の上位3件の契約は、すべて州の矯正局(刑務所を運営する部門)で、1件が数千万ドル規模、2件が億ドル規模の複数年契約でした。海外の予約も年初から30%超、連邦の予約は昨年の5倍超に増えています。

もう1つは、新しい製品群の受注です。社長によると、新しい分野の製品の予約は年初からですでに10億ドルを超え、「パイプラインがそれを支えるので、第4四半期だけでこの数字が倍になる可能性もある」と言いました。

ハードにも次の波があります。新型のボディカメラ「ボディ5」が来年春に発売され、財務責任者は「次の大きなボディカメラの買い替えサイクルが始まる」と言っています。ただし同じ人が、発売前の第1四半期は買い替えに「少し間が空くかもしれない」とも認めました。

ここで、最初の問いに戻ります。アクソンが伸ばしているのは、月額料金のように積み上がるソフトと、工事のように塊で来るハードの両方です。ソフトの側は四半期ごとに加速しています。ハードの側は、案件が大きくなるほど、着地の月がずれやすくなりました。今回の下方修正は、その2つの性質の違いが大きく表に出た四半期でした。

次の決算で、どこを見るか

今回の読みは、「ソフトは本物の加速、ハードの延期は時期の問題とされたが、まだ確かめられていない」です。違っていたと分かる形は、こうなります。

  1. 次の決算までに、遅れた連邦の対ドローン案件(約1億3,000万ドル)の出荷も計上も報告されない
  2. 2月に示される2027年の見通しで、売上の成長が30%を下回る
  3. ソフトとサービスの伸びが、+43%から再び減速する

反対に、良い方へ外れる形もあります。延びた案件が12月31日までに入れば、会社自身が言うとおり上乗せになります。そして、30%台という予約の見通しがもう一度、数字つきで語られるかどうか。3ヶ月前に言えていたことを、次に言えるかが分かれ目です。


ここに書いたのは、2026年11月5日の決算説明会までに分かっていることだけです。連邦の案件がいつ入るかは、会社自身も「確信が持てない」と言っています。

この会社では、ソフトの伸びと、ハード案件の着地の時期が、同じ四半期の数字に重なって出てきます。どちらが数字を動かしたのかは、1四半期だけ見ても分かりません。前の回の言葉と並べて、毎回確かめていくしかありません。2月の決算で2027年の見通しが出たら、そこで今回の読みを確かめます。


※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。

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