ユニティ・ソフトウェア決算の内容:広告配信は見通しの2倍伸び、会社自身が「予見できなかった」と認めた【U・2026年7〜9月期】

3ヶ月前の説明会で、ゲームエンジンとゲーム広告のユニティは、4〜6月期の広告配信の伸びが前の四半期比で23%だったと報告しました。会社自身の見通しは12〜13%で、そのほぼ2倍です。

この7〜9月期は、見通しが20%で実績が40%でした。2四半期続けて、自分で出した数字の2倍を出しています。

スマートフォンなどのゲームを作るための土台のソフト(ゲームエンジン)と、そのゲームの広告配信を手がける、アメリカのユニティ・ソフトウェアです。ところが、見通しをここまで上回ったことについて、見通しの出し方を変えるのかと聞かれた財務責任者(CFO)の答えは、「予見できなかった段階的な変化でした」。次の四半期も同じように伸びるのか、という質問は、3人のアナリストから形を変えて出ました。

■ ユニティ・ソフトウェアの決算説明会の内容(要点)

  • 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
  • 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月5日
  • 戦略事業の売上は59%増、上場以来初めての黒字になりました
  • 「黒字になる見込み」が、3ヶ月で「黒字になった」に変わりました
  • 見通しの上限を、売上で約8%、利益で約35%超えました
  • 次の四半期は、さらに伸びが速まる見通しです
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※この記事で扱うのは、2026年11月5日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、編集部の予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに説明し、質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。発言はそのまま記録に残ります。

目次

その前に——ゲームを作る道具の会社が、なぜ広告で稼ぐのでしょう

「ゲームエンジン」と聞くと、ゲームそのものを動かす部品を思い浮かべるかもしれません。実際は、ゲームを作るための作業台に近いものです。画面に絵を出す、キャラクターを動かす、当たり判定を取る。どのゲームにも要る仕事をまとめて引き受けるので、作り手は中身づくりに集中できます。経営陣によると、ユニティのエンジンで作られたゲームを遊ぶ人は毎月30億人近くいます。

ふつう、ゲームを作る道具の会社と、ゲームの広告を配る会社は別々です。道具はソフトの利用料で稼ぎ、広告は広告会社が配ります。ユニティはこの2つを1社で持っています。会社の言い方では、道具の事業が「Create(作る)」、広告の事業が「Grow(育てる)」です。

スマホの無料ゲームを遊んでいて、途中で別のゲームの広告が流れた経験があれば、それがGrow側の仕事です。ゲーム会社は新しい遊び手を集めるために広告を出し、ユニティはその広告を「このゲームを遊んで、お金も使ってくれそうな人」に向けて配ります。その予測を担うのが、Vector(ベクター)という広告配信の仕組みです。

ここで効いてくるのが、道具の会社であることです。ユニティのエンジンで作られたゲームの中では、エンジンの実行部分(ランタイム)が動いています。遊び手がどこで飽きて、どこでお金を使ったか。その手がかりは、広告の予測にも使われ始めています。CEOは今回、ランタイムが遊び手の行動をリアルタイムでゲーム会社に返せることを、「ほかのどこにも存在しない、独自の優位性」と呼びました。

つまりこの会社の広告の伸びは、予測の精度で決まります。 精度が上がれば、ゲーム会社は採算を崩さずにより多くの広告費を使えます。今回の決算は、その精度がどこまで上がったか、そしてそれが続くのかの話です。

戦略事業の売上は59%増、上場以来初めての黒字になりました

  • 戦略事業の売上 5億9,700万ドル(前年同期比 +59%)。1ドル150円で約895億円です
  • うち広告(Grow)4億3,200万ドル(前年同期比 +90%、売上の69%)
  • うち道具(Create)1億6,500万ドル(前年同期比 +11%)
  • 純利益 1億2,200万ドル(会計基準どおりの数字・純利益率20%)。1ドル150円で約183億円です
  • 調整後EBITDA 2億5,700万ドル(利益率41%、前年同期比 +18ポイント)

💡戦略事業の売上=売却や縮小を決めた事業を除いた売上。この会社は8月に、モバイルゲームのパブリッシング(出版)事業(Supersonic)の売却を終えています。
💡調整後EBITDA=会社が定義する利益の指標で、会計基準どおりの数字(GAAP)ではありません(non-GAAP)。

広告配信のVectorは、前年同期比 +126%、前の四半期比 +40% でした。四半期ごとの金額は開示されていません(3ヶ月前の説明会では、年換算で10億ドルを大きく超えたと言っています)が、伸び率は毎回出ています。

フリーキャッシュフローは過去最高の2億2,000万ドル、期末の現金は26.5億ドル。11月15日に満期を迎える転換社債は、手元の現金で返すと言っています。

💡フリーキャッシュフロー=本業で稼いだ現金から、設備などへの支出を引いて手元に残るお金。

CEOは冒頭、こう切り出しました。

「今日は、そのまま数字に入りましょう。私たちが言える最上級の言葉は、もう数字の中に入っています」

「黒字になる見込み」が、3ヶ月で「黒字になった」に変わりました

いちばんはっきり変わったのは、黒字の言い方です。

3ヶ月前:「GAAPベースの純利益の黒字化の見込みを、2026年10〜12月期から7〜9月期へ前倒しします」
今回:「ユニティにとって初めての、GAAPベースで黒字の四半期をご報告できることを、この上なく喜んでいます。7〜9月期の純利益は1億2,200万ドルでした」

CFOは続けて「上場以来、初めての黒字の四半期です」と念を押しました。前倒しすると言った四半期に、そのまま着地しています。

広告の予測に使うランタイムの手がかりも、段階が変わりました。

3ヶ月前:「4〜6月期の終わりに向けて、私たちは史上初めて、ランタイムからの信号をVectorの予測モデルに直接取り込み始めました。この取り組みはまだごく初期ですが」
今回:「Vectorに広告費を使っている上位1,000社のうち、30%がランタイムのデータを私たちと共有しています。この数字は今後も増えると見ています」

「取り込み始めた、まだごく初期」から「上位1,000社の30%」へ。広告主のうちどれだけが共有しているかという数字は、今回初めて出ました。新しく作られたゲームのプロジェクトでデータ共有に同意する割合が90%を超えていることは、以前から言っている数字で、今回も「引き続き」と言っています。

ただし、変わらなかった言葉もあります。3ヶ月前は「私たちが組み上げてきたフライホイールが回り始めています」。今回は「ユニティのフライホイールは、回り始めたばかりです」。同じたとえを、同じ温度で続けています。

💡フライホイール=一度回り始めると勢いで回り続ける、重い回転盤。「作る人が増える→ゲームが増える→広告の需要が増える→道具がもっと使われる」という循環をたとえています。

見通しの上限を、売上で約8%、利益で約35%超えました

3ヶ月前に会社が出した見通しと、今回の実績を並べます。

  • 戦略事業の売上=見通し5億4,000万〜5億5,000万ドル → 実績 5億9,700万ドル
  • Vectorの前の四半期比の伸び=見通し19〜21% → 実績 40%
  • 調整後EBITDA=見通し1億8,500万〜1億9,000万ドル → 実績 2億5,700万ドル

💡ガイダンス=会社が自分で出す業績の見通し。

この差の大きさについて、アナリストから「見通しの出し方を変えたのか、それとも今回が特別なのか」という質問が出ました。CFOの答えは率直でした。

「ご指摘のとおり、見通しに対する上振れの幅はかなり大きなものでした」「今回は、予見できなかった大きな段階的な変化でした」

ここで言う「段階的な変化」は、少しずつの変化ではなく、階段を一段上がるような、ある時点での大きな跳ね上がりのことです。

見通しの出し方そのものは変えない、とも言っています。その時点で見えている材料で見通しを出し、予想外の改善があればそれは見通しを大きく超える形で出る、という説明です。

次の四半期は、さらに伸びが速まる見通しです

10〜12月期の見通しは、戦略事業の売上6億8,300万〜6億9,100万ドル(前年同期比 +65〜67%)、調整後EBITDA 2億9,000万〜2億9,500万ドル(利益率42%)です。

CFOはこれを「7四半期連続で、売上の伸びが加速することになります」と説明しました。広告(Grow)は前年同期比105〜107%増、Vectorは前の四半期比21〜23%の伸びを前提にしています。

市場の予想とも比べておきます。2027年通期の売上について、アナリスト予想の平均は約26.9億ドルでした。ただし、この予想の平均が今回の決算を織り込んだ数字かは分かりません。そのうえで、今回の10〜12月期の見通しの中央値(約6.87億ドル)を単純に4倍すると約27.5億ドルで、この1四半期の水準だけで来年1年分の予想を上回る計算になります。

💡コンセンサス=その会社を調べているアナリストたちの予想の平均。テストで言えば、自分の目標点ではなく、周りが「このくらい取るだろう」と思っている点数です。

ユニティが答えなかったことと、数字を押し上げたもの

40%の伸びがこの先も続くのか。今回の説明会でいちばん多く出た質問がこれでした。

伸びの決め手と持続性をあわせて聞いた最初のアナリストに、CEOは「この事業に、たった1つの決め手はありません」と答え、こう続けました。

「毎四半期が40%の四半期になるわけではありません。ですが、この先も健全な水準で伸びることには、強い自信があります」

その後、別の2人のアナリストが「持続性のことは考えていない、とおっしゃいましたが」「この点に戻るつもりはないのですが」と前置きしながら、同じ論点を聞き直しました。CEOは「持続性はたっぷりあると見ている。心配していないだけだ」と答えたうえで、見通しを20%に置いて40%を出し、次は23%まで上げた、という事実を示しました。開発中の製品の中身を聞かれた場面では、競合上の理由と、顧客へ先に説明したいという理由で「製品改善の一覧を読み上げるのは控えたい」と答えました。1四半期に6〜10個の大きな変更がある、と規模だけを示しています。
利益の伸びには、本業の伸びとは別の要素も入っています。

  • 広告宣伝などの費用が前の四半期比で2,200万ドル減った主な理由は、Supersonicの売却です。CFO自身がそう説明しています
  • 費用である償却費が下がり、そのぶん会計基準どおりの利益が押し上げられます。CFOによると、7〜9月期の7,700万ドルが、10〜12月期は5,000万ドル、2027年は1四半期あたり1,500万ドルになる見通しです。本業が伸びなくても、この分だけ純利益は増える方向に働きます
  • 道具(Create)の伸びは減速します。10〜12月期の見通しは前年同期比4〜6%増で、今期の11%増は、1人あたりの単価の上昇と中国の好調によるものでした

💡償却費=過去に買ったものの値段を、何年かに分けて少しずつ費用にしていく会計上の費用。現金は出ていきませんが、利益からは差し引かれます。

そして、3ヶ月前に具体的に語られていたのに、今回は一言も出てこなかったものがあります。Netflixとの提携(「今後何年にもわたって、Netflixのゲームをユニティのエンジンで包括的に支える」)、5月にベータ版を出したゲーム開発向けの自社のAIエージェント、6月30日に一般提供を始めたゲーム内課金の仕組みです。また「2026年10〜12月期にベータ版、2027年1〜3月期に本格版」と時期まで示していた新しい世代のソフトウェア(Unity 7)は、コーディング用のAIエージェントに開いたという中身は今回も語られましたが、名前と時期には触れませんでした。代わりに今回は、10月に発表したGoogleとの提携と、ブラウザでゲームを作れる新しい道具「Spark」が語られました。Sparkは年内に限定ベータ、本格的な提供は「2027年」で、価格は未発表、提携の金額や条件も示されていません。

伸びは「出稿の量」から来ていて、手数料を上げた結果ではありません

広告会社の売上が急に伸びたとき、まず疑われるのは「手数料を上げただけではないか」です。CEOは、この点を自分から先に答えました。

「念のためはっきり申し上げると、Vectorの成長が加速しているのは、主にインストールの量が増え、遊び手1人あたりの価値が上がったためで、手数料率の変化によるものではありません」

ゲーム会社が採算を崩さずに使える広告費が増え、それがユニティの売上になっている、という説明です。この見方が正しければ、伸びはゲーム会社の側の損になっていません。

その広告費の出どころも、まだ広がる余地があります。モバイルゲームの広告市場について、CEOは「少なくとも400億ドルあり、2桁で伸びている」と述べました。広告主のアカウント数は前の四半期比で27%増えましたが、この四半期の伸びの9割は既存の広告主からで、新しく来た広告主は「使い始めたばかり」だとCFOは言っています。

上流では、道具の側の変化も始まっています。ゲーム作りにコーディング用のAIエージェントを使う人が急に増え、ユニティを毎日使う作り手の数は8月初めから25%増えたといいます。CEOの説明では、作り手がユニティでゲームを作り始めた時点で、Vectorなどのサービスが最初からつながる形に変わりつつあります。作る人が増えれば、広告を出すゲームも増える。冒頭のフライホイールの、いちばん最初の部分です。

ただしCEO自身、Vectorは「まだ7四半期目」で、伸びは「着実な成長と、ときどき来る段階的な変化」でできていると言っています。段階的な変化は「必ず来るが、いつ来るかが正確に分かるとは限らない」。今回の40%は、その段階的な変化のほうでした。

次に確かめられること

次の決算では、この3つを確かめます。

  1. Vectorの前の四半期比の伸びが、今回の見通しの21〜23%に届くか
  2. 戦略事業の売上が、見通しの下限の6億8,300万ドルに届くか。届いて伸びが前年同期比65%以上なら、会社の言う「7四半期連続の加速」になります
  3. ランタイムのデータを共有する広告主の割合(上位1,000社の30%)が、続けて数字で語られるか

今回語られなかったNetflixとの提携や自社のAIエージェントが、次の説明会でまた出てくるのか。次も出てこなければ、Netflixとの提携と自社のAIエージェントは、会社が投資家に語る話の中心から外れたことになります。

2四半期続けて見通しの2倍を出した会社が、見通しとの差を「予見できなかった」と説明しました。正直な答えです。同時にそれは、次の四半期の数字を会社自身もまだ読み切れていない、という意味でもあります。


※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を編集部が整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。

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