フェア・アイザック決算の内容:史上最高の1年を終えて、来期の見通しを出さず、値段の開示も絞ると宣言した【FICO・2026年7〜9月期】

アメリカで住宅ローンの話をすると、まず名前が出てくる点数があります。FICOスコアです。

その点数を作っている会社、フェア・アイザック(FICO)が2026年9月期を締めました。売上は通期で+27%。CEOはこの1年を「FICOの歴史で最も成功した会計年度」と呼びました。

同じ決算説明会で、そのCEOはこうも言っています。

「2027年度の見通しは、現時点では出しません」「これが、今日皆さんが予想していた話でないことは承知しています」

3ヶ月前の同じ場では、見通しを引き上げていた会社です。今回は見通しを出さないだけでなく、主力の点数の値段についても、今後は細かく明かさないと宣言しました。

■ フェア・アイザックの決算説明会の内容(要点)

  • 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
  • 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月4日
  • 結果:売上 6.6億ドル
  • 数字だけ見れば、歴史上いちばん良い年でした
  • 上方修正から「出しません」へ
  • 「透明性は役に立たなかった」
  • 「市場を大きくする」は出ず、「維持したい」が出てきた
FICO chart_article.png

日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。

※この記事で扱うのは、2026年11月4日に行われた、2026年7〜9月期(同社の会計年度では2026年度の第4四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストへ説明し、質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。発言はそのまま記録に残ります。

目次

その前に——「FICOスコア」って、何でしょう

名前から「個人の信用情報を持っている会社」と思われがちですが、違います。返済の記録そのものを持ち、売っているのは信用情報会社です。FICOが持っているのは、その記録を1つの点数に変える計算式です。

日本でも住宅ローンの審査では、銀行が信用情報機関に過去の返済履歴を照会します。アメリカでは、その履歴をFICOの式で点数にしたものが、貸し手どうしの共通語として使われてきました。

値段は驚くほど小さなものです。CEOは今回、これまでの自社の点数の値段を「10ドルとか4.95ドルとか」と表現しました。10ドルなら1ドル150円で1,500円。住宅ローンの諸費用全体から見れば、ごくわずかです。

ただ、この小さな値段が会社の中心にあります。スコア事業は当四半期の売上の6割強を占め、そのスコア事業の58%が住宅ローン向けです。式は一度作れば使い回せるので、売上を動かすのは「1回いくらか」と「何回使われたか」の2つになります。 今回、この2つの全体の見込みを、経営陣は語りませんでした。

数字だけ見れば、歴史上いちばん良い年でした

  • 当四半期の売上 6億5,700万ドル(前年同期比 +27%・1ドル150円で約985億円)
  • 当四半期の調整後の一株利益 11.10ドル(+43%)/会計基準どおりでは8.12ドル(+26%)
  • 通期の売上 25億3,500万ドル(+27%)/調整後の一株利益 42.99ドル(+44%)
  • 通期のフリーキャッシュフロー(事業で手元に残った現金) 10億3,400万ドル(+40%)

💡一株利益(EPS)=会社の利益を株数で割ったもの。調整後(non-GAAP)は、会社が通常の事業以外と考える項目を除いた数字で、会計基準どおりの数字(GAAP)とは別物です。

3ヶ月前に引き上げた通期の見通しは、売上25億3,000万ドル、調整後の一株利益42.43ドルでした。どちらも小幅に超えて着地しています。調整後の数字では言ったことを守っています。会計基準どおりの純利益と一株利益は、後で触れる和解費用などの特別項目があり、見通し(8億5,000万ドル、36.86ドル)に届きませんでした(実績8億3,500万ドル、36.32ドル)。

ただし前の四半期と比べると、売上は6億7,400万ドルから6億5,700万ドルへ、スコア事業の売上は4億5,900万ドルから4億1,400万ドルへ減っています。前年比の+27%だけでは見えない動きです。

上方修正から「出しません」へ

3ヶ月前:「2026年度の見通しを引き上げます」
今回:「2027年度の見通しは、現時点では出しません」

理由は「価格移行の真っ只中にいる」こと。住宅ローンの価格を、顧客ごとに作り込む方式へ切り替えている最中で、プログラムも契約もまだ固まっていない、と説明しました。住宅ローン市場の先行きが不確かなことも挙げています。

順番も厄介です。CEO自身が説明したとおり、同社の会計年度は10月1日に始まり、価格は1月1日に切り替わります。つまり新しい年度はもう始まっているのに、売上の中心を決める値段が交渉中という状態です。

一方で、ずっと出さないとは言っていません。今年度中に出さない可能性を聞かれて、CEOは「価格がもう少し固まれば、見通しを出すことになる可能性が高いと思います」と答えました。長期の自信が変わったわけではない、とも強調しています。

「透明性は役に立たなかった」

見通し以上に踏み込んだのが、値段の話です。3ヶ月前のCEOは、来年の値段を「まだ決めていない」としながらも、聞かれれば仕組みの考え方を話していました。

「(新しい版の点数を)別々に課金すれば売上が跳ね上がることは容易に想像できますが、それは現在の計画ではありません」

今回、平均価格は来年上がるのか下がるのかと聞かれて、CEOは質問に答える代わりに方針の変更を説明しました。

「プログラムと価格についての透明性と詳細は、FICOにとって特に役に立ってきませんでした」
「今後は、すべての詳細を共有するつもりはありません」「価格がいくらかは共有しません」「FICOスコアの平均価格が上がるのか、下がるのか、横ばいなのか。それにはお答えしません」

言い分はこうです。点数の値段は諸費用のごく一部で、信用情報のファイルも含め、他の項目のほうがずっと高い。それでも値段を明らかにしてきたせいで攻撃され、「住宅の手頃さの問題の象徴(poster child)」にされてしまった。社内で議論した結論として、透明性は助けにならなかった、と。

はぐらかしではなく、理由を正面から説明しています。ただ、読み手の側から見れば、この会社の売上を動かす2つのうち1つは、10月に発表済みのプログラムの価格を除いて、公式に見えにくくなりました。

「市場を大きくする」は出ず、「維持したい」が出てきた

もう1つの「何回使われたか」でも、言葉が動いています。

相手は、競合の点数であるヴァンテージスコアです。住宅ローンの審査で両方の点数を使える仕組みになり、貸し手が2つを取り比べて借り手に有利なほうを使う動きが出ています。CEOはこれを「ゲーミング(gaming)」と呼び、今回も「現実に起きている」と繰り返しました。

3ヶ月前(CEO):「数量を失っているか。いいえ、失っていません」「ヴァンテージスコアは市場に上乗せされるもので、市場を大きくします」
今回(財務責任者):「この四半期、競合への意味のある数量の流出は見られませんでした」
今回(CEO):「ヴァンテージとの競争に直面する中で、できる限り多くの数量を維持したい」

流出を否定しているのは同じです。ただ、3ヶ月前のCEOの答えは「いいえ」でした(当時も財務責任者は、監視は簡単ではないと断っています)。今回の財務責任者の説明には「意味のある(meaningful)」という語が付きました。「市場を大きくする」という説明は今回は出ず、値段と数量のどちらを優先するかと聞かれたCEOは、両方を考慮すると断ったうえで「できる限り多くの数量を維持したい」と述べました。3ヶ月前にCEOが自分の計算として示した「ヴァンテージのシェアは20%台を超えないと見ている」という上限も、今回は語られていません。

実際の数量は向きが変わりました。住宅ローン向けの数量は、3ヶ月前の「前年比1桁台前半の増加」から、今回は「1桁台後半の減少」へ。会社はこの減少の理由を、競合ではなく高い金利だと説明しています。

それでも住宅ローン向けの収入は+72%でした(前の四半期は+97%)。数量が減って収入が7割増えるのは、前年より1回あたりの単価が大きく上がったからです。財務責任者も、スコアの企業向け収入の伸びは「主に住宅ローン向け点数の単価の上昇による」と述べています。ただ前の四半期と比べると、住宅ローン向けの平均単価は下がりました。単価の低いHELOCへ構成が移ったためです。

💡HELOC(ホームエクイティ・ライン・オブ・クレジット)=自宅の持ち分を担保に、枠の範囲で借りられるローン。

そこへ、10月に始めた新しい枠組みが入ってきます。「FICOプリファード・プログラム」です。会社の発表によれば、登録した貸し手には2027年の住宅ローン向け卸値を今と同じ10ドルに据え置き、従来の点数と新しい版(10T)を組み合わせて渡します。人気があると会社は言います。ただ、他にもプログラムがあり、その中身は明かしません。少なくともこの枠組みに登録した分については、ここまで成長を引っ張ってきた値上げに蓋が付きます。

💡10T=FICOスコアの新しい版。家賃の支払いデータも織り込みます。アメリカの政府系住宅金融機関(ファニーメイとフレディマック)は導入を審査中で、政府機関のFHA(連邦住宅局)は2027年1月1日から使える形になります。

広がっているものもあります。10Tを試す貸し手のプログラムは70社から84社へ。点数を直接売る契約を結んだ再販業者は、数量ベースで約60%から約73%へ。

💡再販業者=信用情報会社3社の記録を1つにまとめて貸し手へ届ける業者。FICOの点数はこれまで信用情報会社を通じて売られてきましたが、この再販業者へ直接売る経路(直接販売)を広げている最中です。

ただ、再販業者の比率が「90%に近づく」という、3ヶ月前の時点で交渉中とされた見込みは、今回語られていません。直接販売の仕組みも、3ヶ月前は「稼働への重要な節目」が審査待ちと言っていたものが、今回は「稼働しています。話してきたすべての形で稼働しているわけではありませんが」になりました。再販業者による点数の計算は、まだ承認待ちです。

そして10Tは、3ヶ月前のCEOの言葉では「従来の点数の代金を払えば無料で付く」ものです。採用が増えることと、売上が増えることは、まだつながっていません。

もう片方のソフトウェアは、数字が上を向きました

この会社にはもう1つ事業があります。銀行の与信や不正検知の判断を担うソフトウェアで、当四半期の売上は2億4,300万ドル(+19%)。スコア事業(4億1,400万ドル・+33%)と並ぶ柱です。

このソフトウェアは、判断の仕組みを1つの基盤に載せる製品(FICOプラットフォーム)へ、古い製品から顧客を移している途中です。

数字は明るいものが揃いました。

  • 新規契約(年額ベース)4,500万ドル(前の四半期は2,900万ドル)/直近12ヶ月で1億4,000万ドル(+36%)・会社は年間で過去最高と説明
  • プラットフォームの継続収入 4億5,300万ドル(+72%)/既存製品からの移行分を除くと、伸びは30%台半ばから40%台半ばへ
  • プラットフォーム既存顧客の売上維持率 156%(前の四半期は148%)

💡継続収入(ARR)=契約が続く限り毎年入ってくる売上を年額にしたもの。売上維持率(NRR)=去年の顧客が今年いくら払っているか。156%は、同じ顧客からの売上が1年で1.56倍になったという意味です。

ソフトウェア責任者は、この勢いが「過去6四半期ほどにわたって積み上がってきた」と言いました。財務責任者は「2027年にかけても非常に高いプラットフォームの成長率を見込んでいます」と述べています。ただし、CEOはソフトウェアのリストラ後の利益率を聞かれた答えの中で、売上の伸び率について「いまの高い水準にとどまるとは限りません」とも述べました。同じ答えの結びでは、規模が大きくなるにつれて利益率も伸び率も改善すると見込んでいます。

そして規模の話があります。+72%は移行分込みの数字で、古い製品の継続収入は18%減の3億9,800万ドルです。両方を足したソフトウェア全体の継続収入は8億5,100万ドルで、+14%。 速いのは確かですが、+72%という数字ほどではありません。売上維持率の156%にも、移行分が一部含まれています。

聞かれ続けて、答えなかったこと

質疑応答では、2027年の価格・数量・見通しを、少なくとも7社の証券会社が形を変えて聞きました。あるアナリストは「同じ質問を別の言い方でしてみます」と前置きしています。

  • 最悪の場合はどうなるのか(値上げなし・全員がプリファードに登録・金利で数量減)=採用率は言えない、他のプログラムの詳細も出さない
  • 2027年の住宅ローンのうち、どれだけが契約で固まるのか=「申し訳ありませんが、お答えできません」
  • 住宅ローンの数量をどう見ているのか=内部の見積もりは共有しない
  • リストラの節減額はいくらか=多くは再投資に回るとし、金額は示さず

別のアナリストは、貸し手に得をさせる枠組みなら裏に鞭があるのではと聞きました。CEOの答えは「鞭は見当たりません」で、プリファードに入ってもヴァンテージの点数は買える、魅力は価格の確かさだ、という説明でした。貸し手が差し出すのは、FICOを使い続けるという約束です。会社の発表の言葉は「FICOにコミットした貸し手」で、業界紙は、申込みごとに必ずFICOの点数を取るのが条件だと報じています。契約の詳しい条件は公表されていません。このアナリストも同じ理解を述べましたが、CEOはそこには答えていません。

数字の側にも、割り引いて読む部分があります。一番大きいのは一株利益です。調整後の純利益は+28%なのに、一株利益は+43%。差は自社株買いで、2026年度に30億2,800万ドルを投じて発行済み株式の約10%を買いました。株数が減れば、同じ利益でも1株あたりは増えます。ただし第4四半期は買い戻しを止めて借入の返済に回しました。CEOは、負債の比率をもう少し楽な水準まで下げているところだと説明したうえで、買い戻しには必ず戻ると述べています。総債務は52億6,000万ドルです。

ソフトウェアにも、収入のでこぼこがあります。特定の時点で一括計上する収入が四半期の数字を動かすと財務責任者が述べていて、来年度はプロフェッショナルサービス(導入支援など人手で提供する仕事)の収入が大幅に減るとも予告しました。

一方、今回の特別な3項目の扱いに作為は見えません。独占禁止法の集団訴訟の和解に備えた費用6,500万ドルとリストラ費用2,700万ドルという損を除き、他社への出資持ち分の売却益4,800万ドルという益も同じように調整後の数字から除いています。良いものだけを残す除き方ではありません。

比べる相手が、市場の予想だけになりました

2027年9月期の市場の予想(コンセンサス・2026年11月5日時点)は、調整後の一株利益の平均が47.24ドル(21人・幅は38.98〜53.04ドル)、売上の平均が26億9,000万ドル(20人)です。2026年度の実績と比べると、一株利益で約10%、売上で約6%の増加にあたります。説明会の翌日の数字なので、今回の話を受けた修正がまだ入っていない可能性があります。

💡コンセンサス=アナリストたちの予想の平均。テストの点を本人が予告せず、周りだけが「このくらいだろう」と言っている状態を想像してください。

ただ、会社がこの予想と比べられる数字を出していないので、今回は上とも下とも判定できません。予想の幅は、一株利益で14ドル以上あります。

値上げで伸びた会社が、次の値段を細かく語らなくなった理由

スコア事業の伸びは値上げが支えてきました。ところが今は、同じ値上げを2つの方向から押さえる力が働いています。 1つは競合です。審査で2つの点数が使えるようになり、貸し手に選ぶ余地が生まれました。もう1つは世論で、CEO自身の言葉によれば、FICOは住宅の高さの象徴として攻撃されてきました。

CEOは今回、価格と数量の関係をこう語っています。

「ヴァンテージとの競争に直面する中で、できる限り多くの数量を維持したい」「私たちには株主に対する利益の約束もあります」「その両方を最適化しようとしています」

顧客ごとに違う値段を付け、その細部を公表しないという今回の転換は、この2つの間を探るための方式と読めます。全員に同じ値段を公表していれば、1回の値上げが競合にも世論にも見えてしまう。公表しなければ、相手ごとに値段を変えられます。ただしそれは、外からは、値段の力が保たれているのか失われつつあるのかが見えにくくなるということでもあります。

その間に、もう一方のソフトウェアが育っています。新規契約が今後の継続収入につながることは、財務責任者も「高い新規契約は、当然、来年の継続収入の増加につながります」と説明しています。ただ売上の規模はまだスコア事業の約6割です。スコアの霧をソフトウェアだけで晴らせる大きさにはなっていません。

次の決算で確かめられること

  1. 見通しが出るか。 出るなら、2026年度の実績(売上25億3,500万ドル、調整後の一株利益42.99ドル)を明確に上回る水準か
  2. 数量の減少の説明に「競合」が入るか。 意味のある流出は無いという今の説明が保たれるか
  3. 10Tの導入と、再販業者による点数の計算を、ファニーメイとフレディマックが実際に認めるか
  4. ソフトウェアの移行分を除いた伸びが、40%台半ばを保つか

これらが良い方向に揃えば、今回の後退した言葉は「交渉中だから言えなかっただけ」だったことになります。逆に見通しが出ないまま数量の説明が変われば、値段の力が弱まっているという読みが強くなります。

ここに書いたのは、2026年11月5日時点で分かっていることだけです。新しい値段は2027年1月1日に始まります。プリファードの10ドル以外の金額と全体の平均価格を、会社は話さない方針です。だからこの会社は、見通し、数量、言葉の留保という、残った手がかりを前の回と突き合わせて追うしかありません。新しい値段が数字に現れる回まで、同じ作業を続けます。


※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。

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