レボリューション・メディシンズ決算の内容:発売5週で売上1.98億ドル、その内訳は3人に聞かれても出さなかった【RVMD・2026年7〜9月期】

3ヶ月前、この会社の売上はゼロで、経営陣の言葉は「発売の可能性に向けて準備しています」でした。

今回の決算説明会で出てきた数字は、製品の純売上1億9,760万ドルです。1ドル150円で約296億円。アメリカで膵臓がんの新薬が承認されてから、まだ約5週間しか経っていない時点の数字です。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに説明し、質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。

会社の名前はレボリューション・メディシンズ。がんの原因になる「RAS」というたんぱく質を狙う薬を開発してきた、アメリカのバイオ企業です。

■ レボリューション・メディシンズの決算説明会の内容(要点)

  • 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
  • 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月4日
  • 「可能性」が3ヶ月で売上に変わりました
  • 売上は立ちましたが、損失はまだ大きいままです
  • 売上の見通しは出さず、示したのは費用だけでした
  • 3人が角度を変えて聞いても、内訳は出ませんでした
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※この記事で扱うのは、2026年11月4日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。

💡RAS=細胞に「増えろ」と信号を送るたんぱく質の一群。ここに変異が起きると信号が出続けます。会社はこれを膵臓がんの主な原因と説明しています。

目次

その前に——発売直後の売上には、3種類の患者が混ざっています

「発売5週間で約300億円」と聞くと、毎四半期これくらい、あるいはもっと売れていく薬に見えます。この決算を読むうえでは、その見方をいったん外す必要があります。

ふつうの新薬は、医師が少しずつ処方を覚え、患者が少しずつ増えていきます。ところがこの薬は、承認の時点で、すでに治療を待っている人が大勢いました。ダムの水門を開けた直後に似ています。最初に流れ出るのは、それまで溜まっていた水です。その後の流量は、川に毎日どれだけ水が入ってくるかで決まります。

会社は今回の需要を、自分から3つに分けて説明しました。

  • 承認前の提供制度からの移行組(この移行は完了済み)
  • 承認の時点で、使える治療を使い切って待っていた患者
  • 承認後に新たに対象となり、使い始めた患者

💡承認前の提供制度(拡大アクセス制度)=未承認の薬を、治験に入れない重い病気の患者へ先に届ける仕組み。日本の「拡大治験」に近いものです。

前の2つについて、営業の責任者は「有限(finite)」だと明言しました。水門の例で言えば溜まっていた水です。川の流量にあたるのは3つ目で、「発売が成熟するにつれ、売上は新たに対象となる患者の治療と、治療の継続期間を反映するようになっていきます」とも述べています。

だから今回の1億9,760万ドルは、大きさそのものより、3つの内訳のほうに意味があります。そして、その内訳は説明会でも決算発表でも出ていません。

「可能性」が3ヶ月で売上に変わりました

3ヶ月前:「初めての商業発売の可能性に向けて準備しています」
今回:「ラソンク(RASONQUE)の米国での発売は、力強いスタートを切りました」

8月26日、FDA(アメリカ食品医薬品局)は、この薬ラソンク(一般名ダラクソンラシブ、daraxonrasib)を、転移性膵腺がんの成人のうち、全身療法を1回以上受けた人と、多剤併用の全身療法の対象にならない人に向けて承認しました。会社によれば、中心となった世界規模の臨床試験の登録開始から2年足らずでの承認です。

欧州でも言葉が動いています。3ヶ月前は審査の時期を聞かれて「お伝えできることはあまりありません」でした。今回は10月15日に、欧州の審査委員会(CHMP)が肯定的な意見を出したと報告しました。ただし「欧州委員会の決定はまだ出ていません」と続いています。承認が確定したわけではありません。

売上は立ちましたが、損失はまだ大きいままです

  • 製品の純売上 1億9,760万ドル(前年同期は製品売上なし)
  • 1株あたり純損失 1.90ドル(前年同期は1.61ドルの損失)
  • 純損失 4億750万ドル(前年同期は3億520万ドルの損失)
  • 処方した医療者 約2,700人/商業ベースで治療した患者 5,000人超

💡純売上=定価ベースの売上から、保険者への割引などを引いた後の、会社の取り分に近い売上。

損失の数字はいずれも会計基準どおりで、調整を加えた数字ではありません。薬が売れ始めても赤字が続いている理由は費用です。研究開発費は4億1,710万ドル(前年同期2億6,250万ドル)、販売管理費は1億5,330万ドル(同5,280万ドル)まで増えました。

前の四半期の純損失6億4,400万ドルからは縮みましたが、縮んだ分の一部は本業の改善ではありません。現金の出ない評価損が、1億5,100万ドルから4,070万ドルへ減った分が含まれています。

広がり方は、数字が具体的でした。使われた場所は大学系などの学術施設が約40%、地域の診療施設が約60%で、会社は「全体の患者の分布に沿っている」と説明しています。専門施設だけで止まっている形ではありません。

手元資金は37億ドル(約5,550億円)。これに、10月に受け取った借入2億5,000万ドルが加わります。

売上の見通しは出さず、示したのは費用だけでした

2026年通期の営業費用21億〜22億ドルは据え置き。2027年は具体的な幅を出さず、現在のペースから増えるとだけ述べました。売上のガイダンスはありません。

💡ガイダンス=会社が自分で出す業績予想。

市場の予想(アナリスト予想の平均)と並べると、2026年通年の売上が約2億ドル(24名)、2027年が約12億6,000万ドル(23名)です。この四半期の約5週間だけで2026年の通年予想の水準にほぼ届いた形ですが、決算発表の直後の数字で、発表前の予想が多く残っているとみられるため、大きさの目安にとどまります。

もう一つの見方として、2027年の12億6,000万ドルを単純に4で割ると、1四半期あたり3億ドル強です。今回の5週間の数字と比べれば遠くなさそうに見えます。ただ、今回の数字には溜まっていた分が入っています。比べる相手になるのは、溜まっていた分が抜けた後の売上で、それはまだ誰にも見えていません。

3人が角度を変えて聞いても、内訳は出ませんでした

質疑応答で最初に出たのが、この数字の中身を問う質問でした。その後も含めて3人のアナリストが、別々の入口から聞いています。

1人目は、患者の内訳を聞きました。 答えは「詳しい内訳はお出ししません」。2人目は、1億9,800万ドルのうち在庫の積み増しがいくらかと、金額を求めました。 財務責任者の答えは「四半期末の流通在庫は2週間分未満でした」で、金額はありません。長期的には約2週間分で管理するとのことなので、積みすぎた水準ではないと読めますが、ドルの数字は説明会でも決算発表でも出ていません。

3人目は、溜まっていた需要と持続する新規需要を10月の状況から定性的にでも見分けられないかと聞きました。 ここでCEOは、営業の責任者に「残念なお知らせを伝えてもらいます」と振っています。営業の責任者が挙げた10月の事実は、承認前の提供制度が正式に終わり移行が完了したことだけで、続きは次の答えでした。

「四半期全体がそろわない今の時点で、これ以上の説明を足しても、おそらく役に立つ作業にはならないと思います」

冗談まじりですが、答えない方針ははっきりしています。ここが、この決算で解けていない最大の点です。

この初回の数字には、ほかにも初期ならではの要素が入っています。

  • 治療期間が短くなる可能性:会社自身が「初期の患者のかなりの部分は病期が進み全身状態も低い方で、その結果、治療期間が短くなる可能性があります」と述べました。一方、新規の患者については、治療期間は治験での想定に近いものを見込むとも述べています
  • 控除率:定価から純売上への控除は想定20〜30%の下限付近で、今後は範囲内で上がる見込みです
  • 保険:償還(保険が薬代を実際に支払うこと)の実績がある保険は膵腺がんの加入者の90%超をカバーしますが、正式な適用方針はこれからで、承認の対象外の使い方への制限を問われた答えの中で「適用方針の後には償還されなくなる請求もあり得ます」と認めました。ただし「想定していたこと」で、予想外の動きは見ていないとも述べています
  • 売上原価 30万ドル:承認前に作った製品を売っているためで、会社は「正常な水準と見るべきではない」と明言しました

会社はこれらを隠していません。「5週間では、発売の正常な軌道について結論を出すには早すぎます」と、最初の説明の中で自分から言っています。今回の数字は定常の売上ではない。これは外からの疑いではなく、会社自身の説明です。

一方で、3ヶ月前から動いたのに説明が少なかった点もあります。

大腸がんは、3ヶ月前に「今年の第4四半期」と言っていたデータ更新と開発計画のうち、計画の骨格(第3相試験の実施)は今回示されましたが、データ更新と試験デザインの詳細は「2027年前半」になりました。遅れとしての説明はなく、CEOは「今回は試験開始の少し後にお出しします」と述べただけです。

開発初期の別の薬RMC-5127については、3ヶ月前に「最初の用量から客観的奏効が見られた」と語っていました(客観的奏効=腫瘍が一定以上縮むこと)。今回の説明会と決算発表にその言葉はなく、語られたのは「推奨用量の候補を決める最終段階にあります」という進み具合と、前回と同じ2027年に初期データを出す予定、そしてCEOの「臨床の勢いが増している」という表現でした。奏効の話はありません。

副作用の現場での受け止めを問われた場面も、数字はありませんでした。答えは「今のところ順調(so far, so good)」で、詳しくは四半期全体がそろってからということです。

次の売上は、より早い段階の膵臓がん、肺がん、欧州から来るのか

売上の土台は、承認済みの1つの薬と、アメリカの膵臓がんという1つの病気です。この会社の話の広がりは、その外側にあります。

膵臓がんの中で、より早い段階へ。 今回の承認は主に治療歴のある転移性の患者が対象ですが、全米の診療指針であるNCCNガイドラインは、局所進行の患者なども含めて承認より広く掲載しました。もちろん承認された対象が広がったわけではなく、会社も初期の使用は「大半が既治療の転移性の患者」と説明しています。

1次治療(最初に受ける治療)向けの化学療法との併用はFDAのブレークスルーセラピー指定(開発と審査を早める枠)を受けましたが、未承認のまま開発中です。この薬の単剤と化学療法との併用を1次治療で調べる第3相試験は、米国の登録が完了し、世界全体の登録完了は2027年前半を見込んでいます。

💡第3相試験=承認の前に、多くの患者で既存の治療と比べる最終段階の臨床試験。

膵臓がんの外へ。 肺がんでは治療歴のある患者を対象にした第3相試験の登録が11月末までに締め切られる見込みで、最初の結果は2027年の予定です。ただし肺がんでは未承認で、結果も出ていません。大腸がんでは別の薬の第3相試験を、提携先のビーワン・メディシンズが費用を持って実施します。一定の商業権と引き換えです。

アメリカの外へ。 欧州は先ほどの審査の途中で、各国の価格交渉の準備も並行して進めています。ただし「発売の時期は、規制当局の承認と国ごとの条件次第です」と言っています。日本でも、承認を前提に発売の準備を進めていると述べました。

つまり、ここから1年半ほどの間に売上に効きそうなのは、まずアメリカの新規患者の積み上がりと、欧州の承認後の展開です。肺がんや、多剤併用を受けられる患者を含む1次治療への広がりは、結果が出るまでは可能性の話にとどまります。

丸3ヶ月売った次の回で、溜まっていた分と新規は分かれるか

今回は「溜まっていた需要が、どこまで持続する需要へつながるか」が分からないまま終わった回です。

次の四半期は、販売期間が約5週間から丸3ヶ月に延びます。期間が2倍以上になるので、売上が増えただけでは答えになりません。次回に確かめるのは、次の3つです。

  1. 経営陣が、溜まっていた患者と新規の患者を初めて数字で分けて語るかどうか
  2. 控除率がどこまで上がるか。正式な保険適用方針が出そろった後に、償還の流れが変わらないか
  3. 「2027年前半」に動いた大腸がんのデータの予定が、もう一度動かないか

逆に、丸3ヶ月販売したのに四半期の純売上が今回の1億9,760万ドルを下回り、経営陣が新規の患者で埋められていないと認めるなら、溜まっていた分が大きかったという見方が強まります。営業の責任者は内訳の問いに「四半期全体がそろわない今の時点で」と断って答えを控えました。次回に内訳を語ると約束したわけではありません。四半期全体がそろった次回に語るかどうかが、確かめどころです。


5週間では発売の軌道に結論を出すには早いと、当の会社が最初の説明で言っています。だから1億9,760万ドルの大きさには、まだ結論を出しません。丸3ヶ月の数字が出る次の説明会で、内訳の問いを当て直します。


※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。

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