モディーン決算の内容:受注は初の10億ドル超、利益率は「19〜20%に戻る」の3か月後に15.4%【MOD・2026年7〜9月期】

AI向けのデータセンターでは、半導体と電気の話ばかりが目立ちます。ただ、計算した分だけ熱が出るので、冷やせなければ動きません。

その冷却装置を作っているのが、アメリカのモディーン・マニュファクチャリング(以下、モディーン)です。

■ モディーンの決算説明会の内容(要点)

  • 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
  • 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月4日
  • 売上は35%増、データセンターは95%増でした
  • 「構造的なものではない」は、「想定より長引いている」に変わりました
  • 部品の契約は「協議中」から「締結」に進み、受注は過去最高を更新しました
  • 売上の見通しは上がり、利益成長の下限は下がりました
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日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。

※この記事で扱うのは、2026年11月4日に行われた、2026年7〜9月期(同社の会計年度では2027年度の第2四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストへ説明し、質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。

今回、データセンター向けの1四半期の受注は初めて10億ドルを超えました。1ドル150円で計算すると約1,500億円です。一方で、3か月前に「19〜20%に戻る」と話していた利益率は15.4%でした。注文は取り切れないほど来ているのに、作って届けるほど費用が膨らむ。今回の説明会の大半は、この食い違いをめぐる問答でした。

目次

その前に——「チラー」は、何をする機械でしょう

家のエアコンは、部屋の空気を直接冷やします。データセンターの主力であるチラーは、まず水などの液体を冷やし、その液体を建物の中へ送ります。冷たい液体を作る大きな冷凍機、と考えれば十分です。大きなビルの屋上に並んでいる箱を思い浮かべると近いと思います。

モディーンはこのチラーと、室内の空気を冷やして送り出す空調機の両方を売っています。供給が限られる重要部品として、経営陣はファン、蒸発器、コンプレッサー、コイル(熱を受け渡す管)の4つを挙げています。このうちコイルは自社で作れますが、残る3つは外から買います。

この機械には、決算に効く性質が1つあります。経営陣の言葉では「データセンターに入る最後の製品の1つ」です。許可が下りて着工してから、据え付けまでに12〜18か月かかります。建物が待っている終盤に遅れると、顧客の計画ごと止めてしまいます。だから部品が足りないとき、この会社は高くても手配して運ぶ判断をします。利益率が約束に届かなかった理由は、ここにつながっています。

売上は35%増、データセンターは95%増でした

  • 売上 9億9,440万ドル(前年同期比 +35%)。10月に切り離した商用車・建設機械・発電向けなどの事業を除くと +59%
  • データセンター部門の売上 4億3,970万ドル(+95%)。うち南北アメリカは +132%
  • データセンター部門の調整後EBITDA 6,760万ドル(+66%)。利益率は 15.4%
  • 調整後の一株利益 1.35ドル(+27%)。会計基準どおりの数字は 0.56ドル(前年同期は0.83ドル)

💡調整後EBITDA=本業の稼ぎの目安として、会社が一時的と考える項目や減価償却などを除いて計算した利益(non-GAAP)。
💡調整後=会社が一時的などと考える項目を除いた数字。会計基準どおりの数字(GAAP)とは別物です。今回は、切り離しの準備で生じた2,950万ドルの税金も除かれています。
💡一株利益(EPS)=会社の利益を発行済みの株数で割った、1株あたりの利益。

売上がほぼ倍になった部門で、稼ぎの伸びは66%でした。全社の粗利率は1.6ポイント下がって20.7%です。理由について財務責任者は、材料費の上昇が大きいと説明しています。

💡粗利率=売上から材料費や製造の費用を引いた利益が、売上に占める割合。データセンター部門の利益率(調整後EBITDAを売上で割った率)とは別の数字です。

「構造的なものではない」は、「想定より長引いている」に変わりました

3か月前、7月30日の説明会で、CEOはこう言い切っていました。

「ここで押さえていただきたいのは、この利益率の圧迫は移行期の時期の問題であり、構造的なものではないということです」

財務責任者も、会社全体の利益率の話として「これらはすべて一時的なものだと考えています」と続けています。そして翌四半期のデータセンターの利益率について、こう数字を出しました。

「第2四半期に入ると、現時点では19〜20%の間まで戻ると見ています」

6月にはすでに、利益率は普段目指している水準に戻っていたという説明もあり、「とても前向きな兆候」とまで言っていました。

結果は15.4%でした。約4ポイントの未達について、今回の財務責任者の言葉は「想定をやや下回りました(somewhat lower)」です。続けて、こう認めています。

「サプライチェーンと材料費の影響は想定より大きく、想定より長く続いています」
「利益率は改善すると考えていますが、改善のペースは当初の想定より遅くなります。主な理由は、供給元全体で続くコスト上昇です」

原因の中身も入れ替わりました。3か月前に重かったのは、部品待ちの工場で余った人件費と固定費です。この部分は今回、ほぼ想定どおりに収まりました。代わりに出てきたのが材料費で、この四半期の押し下げは約3.75ポイントです。関税、物流、原材料の上昇に、数量を確保するために供給元へ払った上乗せが加わります。

部品の契約は「協議中」から「締結」に進み、受注は過去最高を更新しました

需要と調達の言葉は、はっきり上向きました。受注は4四半期連続で過去最高です。データセンターの売上4億3,970万ドルに対して、受注は10億ドル超ですから、売った額の2倍以上の注文を取ったことになります。

別の大型案件も出ました。社名を伏せた大手クラウド企業向けに、2027年末までに4億ドル超の空調機を納めます。1ドル150円で約600億円です。受注残も「過去最高」と言っていますが、金額は出していません。

💡受注残=注文を受けて、まだ納めていない分。

調達も進みました。3か月前のCEOは、重要な供給元とは長期契約を「積極的に協議している」という段階でした。今回は「協議」の語が「結びました」に変わりました。

「2027年の重要部品の数量を確保するため、主要な供給元と複数の長期契約を結びました」

4部品の内訳も具体的でした。ファンは1社と長期契約、もう1社とは12か月分をまとめて発注する契約を結びました。蒸発器も長期契約を結んでいます。コンプレッサーだけは「交渉中」で、比較的早く結べると見ています。

現場の数字も動いています。チラーの生産ラインは13本が稼働し、CEOによれば1四半期前はその半分でした。年度末の目標は20本です。9月は各チラー工場で初めて納期遵守率100%に届き、10月も100%でした。

売上の見通しは上がり、利益成長の下限は下がりました

見通しは、売上と採算で逆を向いています。

  • データセンターの売上の伸び:60〜80% → 80〜90%(上方)
  • 空調など商業向けの売上の伸び:5〜10% → 10〜15%(上方)
  • データセンターの利益の伸び:85%超 → 80%超(下方)
  • フリーキャッシュフロー:売上の4〜6% → 「プラス」とだけ(率が消えた)

💡フリーキャッシュフロー=事業で稼いだ現金から設備投資を引いて、手元に残る分。

データセンターの売上見通しを上げた分について、財務責任者は「大半は数量です」と答えました。値上げで膨らんだ分は多くないということです。

今後の利益率の道筋は、第3四半期(10〜12月期)が16.5〜17.5%、第4四半期(2027年1〜3月期)が「20%以上を目標」です。アナリストが「第3から第4にかけて4.5〜5ポイントの改善ですね」とまとめると、財務責任者は「良い要約です」と応じました。1四半期で上げる幅としては大きな数字です。3か月前は、下期全体で20%を超えて動くという説明でした。

全社の調整後EBITDAは、6億5,000万〜6億8,000万ドルから4億7,000万〜5億ドルに変わりましたが、この2つは単純には比べられません。10月1日に商用車・建設機械・発電向けなどの事業を切り離し、Gentherm(ジェンサーム)と統合したため、数字の範囲が変わりました。新しい範囲では50%超の伸びです。社名もModexus Solutions(モデクサス・ソリューションズ)へ変える議案を株主に諮る予定で、ティッカーはMODのままの見込みです。

市場予想との比較は、今回は言い切れません。今年度の売上予想は34.5億ドルで、会社の新しい見通し31〜32億ドルより高く見えます。ただ、切り離した事業を含む古い予想が残っている可能性があります。範囲の違う数字を並べても、上回ったか下回ったかは判定できません。

💡市場予想(コンセンサス)=その会社を調べているアナリストたちの予想の平均。

少なくとも4人が聞いた20%の根拠と、数字に混ざっているもの

いちばん多くの質問が集まったのは、下期の利益率を信じてよい根拠です。少なくとも4人のアナリストが、形を変えて同じ点を聞きました。最初の質問者は「なぜ見通しのリスクをもっと下げないのか」と尋ねましたが、その問いへの直接の答えはありませんでした。

答えの中で最も具体的だったのは、顧客とすでに話がついた価格転嫁です。財務責任者は「少なくとも2.5ポイント」の押し上げが見えていると述べました。材料費の押し下げは約3.75ポイントなので、まだ差があります。残りは数量の増加と新規案件の値付けで埋める計画です。財務責任者自身も、現状に手応えはあるとしながら「まだ把握していない値上げ要求も織り込んでおく必要がある」と話しています。第4四半期の20%は、あくまで「目標」です。

受注残が来年度をどこまで覆うのかは、11月18日の投資家向け説明会へ先送りされました。第4四半期の水準が来年度の出発点になるのかにも、答えはありません。

3か月前には語っていて、今回は出てこなかった話もあります。退任したデータセンター部門の責任者について「後任を探し始めました」と言っていましたが、今回は説明会で触れませんでした。CEOが兼務を始めた部門は、会社の最大の成長源です。強化版の3メガワットのチラーと、遅れを認めていたモジュール型の製品も、今回は話に出ませんでした。部品の確保についても、3か月前の「供給元が合意どおり納めれば、今年度の分は確保できた」という言い方を、今回は繰り返していません。

一時要因で好調を割り引く必要は、あまり大きくありません。データセンターの伸びを支えているのは数量だからです。混ざっているものは、むしろ周辺にあります。商業向け部門は暖房機器の季節前の注文に助けられ、会社は下期を慎重に見ています。同部門の今年度の利益率改善も、3か月前に話していた2ポイントから約1ポイントへ小さくなりました。欧州・中東・アフリカのデータセンター売上の6%減は、出荷の時期によるものと説明されています。

現金も確認しておきます。この四半期のフリーキャッシュフローは1億4,060万ドルのマイナスでした。会社は通年でプラスにすると言い、今年度は通常と異なる営業上の現金の動きが1億ドルあると説明しています。Genthermから受け取った約2億ドルは借入の返済に充てましたが、フリーキャッシュフローの計算には入りません。

高くても運ぶのは、顧客との案件が2031年まで続くと見ているからです

なぜ売上が伸びるほど、いまは利益が追いつかないのか。CEOの説明は率直でした。地元の部品が届かないとき、海外の供給元に切り替え、さらに緊急輸送を使う。謝って待ってもらう道もあるが、そうはしない。今回のリスクを問われた場面では、こう答えています。

「たとえ費用が余計にかかっても約束を早く果たしたいのは、長期の可能性を持つ戦略的な顧客だと考えているからです」

同じ答えの中で、案件は「2030年、2031年まで」続くと話しました。そして、ライン立ち上げの途中で利益率が圧迫されるのはよくあることで、「いまがまさにその局面です」とも言っています。足元の費用で、数年先までの席を買っている形です。

需要の側で、この判断を支える言葉は2つあります。製品全体の需要は「生産能力をはるかに上回っています」。もう1つは、規模の小さいデータセンター事業者の信用リスクを聞かれたときの言葉です。「通常は取引しません。上位10社で十分な需要があるので、その必要がありません」。ただし、確かだと言ったのは「直近の24か月」で、2028年より先の立地や規模については「少し不確実性があります」と認めています。

成長を支えるもう1本の柱が、商業向け空調の部門です。売上は23%増、利益率は15.1%で前年と同じでした。CEOによれば、モディーンは世界最大の独立系コイルメーカーで、この部門がデータセンターの冷却各社にコイルを売っています。さらに大手顧客のサプライチェーンに入る協議も進んでいます。用途を問われたCEOの答えは、半導体を液体で直接冷やす装置向けでした。業界でコイルの不足が深刻になる一方、モディーンは自社で作れます。データセンター部門で足を引っ張った部品不足が、こちらでは追い風になる形です。

次の答えは11月18日、その次は利益率16.5〜17.5%です

まず11月18日の投資家向け説明会です。新しい長期目標と、受注残が来年度をどこまで覆うのかが出ます。次に10〜12月期のデータセンターの利益率16.5〜17.5%、その次に2027年1〜3月期の20%です。

今回の説明を覆すのは、次のどれかです。

  • 10〜12月期の利益率が16.5%に届かない
  • 1〜3月期の利益率が20%に届かない、または目標そのものが消える
  • チラー20本の年度末稼働か、データセンター売上80〜90%増の見通しが下がる

反対に、コンプレッサーの長期契約が結ばれ、利益率も予定どおり上がれば、この四半期は立ち上げの途中の一コマだったことになります。

3か月前も、経営陣は自信を持って数字を出していました。今回の数字も、同じ口から出た予定です。注文は取れています。あとは、取った注文で20%を出せるかです。ここに書いたのは11月4日の説明会までに分かったことで、次の回では今回の言葉と数字を並べて確かめます。


※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。

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