サークル決算の内容:3ヶ月前は市場から「切り離されている」、今回の流通量は「軟調な中で前年比横ばい」【CRCL・2026年7〜9月期】

暗号資産の市場全体が1年で約40%縮んだのに、自社のデジタルドルの流通量は19%増えた。3ヶ月前の決算説明会で、財務責任者はそう説明し、その利用が「デジタル資産市場の浮き沈みから切り離されている」ことの表れだと語りました。

今回は話者が最高経営責任者(CEO)に代わり、言葉も変わりました。

「USDCの流通量は四半期末で約740億ドルと、デジタル資産市場が軟調な中で前年比横ばいでした」
「そこは率直に申し上げます。残高は横ばいでしたが、利用は伸び続けています」

話しているのは、ドルに連動するデジタル通貨USDCを発行するサークルです。

■ サークルの決算説明会の内容(要点)

  • 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
  • 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月4日
  • 総収入は17%増。一度きりの1億8,200万ドルを除くと、前年同期を下回ります
  • 流通量の説明から「切り離されている」が消え、語る中心が残高から利用へ移りました
  • 決済額は4倍近くに。その収入の金額は、まだ出ていません
  • 財務責任者の退任と、答えが出なかったこと
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日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。

※この記事で扱うのは、2026年11月4日に行われた、2026年7〜9月期の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。

目次

その前に——ステーブルコインは、値上がりを狙うコインではありません

コインという名前から、ビットコインのように値段が上下するものを想像しがちです。USDCは逆で、1USDCを1ドルに保つように作られています。サークルは銀行などのパートナーを通じて、1ドルと1USDCを1対1で交換しています。

いちばん近い身近なものは、Suicaのチャージ残高です。利用者がお金を入れ、そのお金を発行側が預かる形になります。ただしサークルは、預かったドルを準備金として運用し、その利息を受け取ります。今回の総収入8億6,500万ドルのうち、6億5,800万ドルがこの利息でした。

ここが、この決算を読む土台になります。電車に何回乗っても、チャージ残高は増えません。 USDCも同じで、たくさん使われても、残高が増えなければ利息の元本は増えません。だから「残高は横ばい、でも利用は伸びている」という一文は、良い知らせと悪い知らせが同時に入っています。

💡流通量=世の中に出回っているUSDCの残高。経営陣は「流通量はストック、取引量はフロー」と説明しました。

総収入は17%増。一度きりの1億8,200万ドルを除くと、前年同期を下回ります

この4つの数字だけ見れば、良い四半期です。

  • 総収入 8億6,500万ドル(前年同期比 +17%・1ドル150円で約1,300億円)
  • 純利益 2億2,600万ドル(継続事業ベース・前年同期比 +5%)
  • 一株利益 0.84ドル(希薄化後=将来増える可能性のある株も数えた値・前年同期は0.64ドル)
  • 調整後EBITDA 3億1,700万ドル(前年同期比 +85%)

💡調整後EBITDA=利息・税金・減価償却などを除いて、会社が調整を加えた利益の目安(non-GAAP)。会計基準どおりの利益とは別物です。

この数字には、CEOが自分から断ったものが入っています。自前のブロックチェーン「Arc(アーク)」のトークンを事前に販売した分の収益、1億8,200万ドル(約270億円)です。販売総額2億4,200万ドルの約75%を、Arcの稼働という節目を越えたので今回まとめて計上しました。

これを除くと、総収入は約6億8,300万ドルで、前の四半期の7億100万ドルを下回ります。調整後EBITDAの利益率は、含むと70%、除くと50%です。配分費用(取引所などにUSDCを置いてもらう対価)などを引いた後の利益率(RLDCマージン)は、含むと52.4%、除くと39.7%です。39.7%は前年同期とほぼ同じで、前の四半期より約1.5ポイント低い水準です。利息の収入も、前年同期比で8%減りました。流通量の平均が増えても、利回りが0.61ポイント下がった分を埋められませんでした。

会社はこの除外後の数字を自分で開示しています。隠してはいません。ただ、一度きりの収益を除くと、総収入も調整後EBITDAも前年同期を下回る、という事実は動きません。総収入は前年同期の約7億4,000万ドルに対して約6億8,300万ドル、調整後EBITDAは約1億7,100万ドルに対して約1億3,500万ドルです。

流通量の説明から「切り離されている」が消え、語る中心が残高から利用へ移りました

3ヶ月前の「切り離されている」は、根拠のある発言でした。市場が約40%縮む中で、流通量は実際に19%増えていたからです。今回、流通量の説明にこの言葉は出てきません。代わりに置かれたのが「軟調な中で前年比横ばい」でした。

残高が大きく減ったわけではありません。期末の流通量は733億ドルから739億ドルへ、3ヶ月で1%増えています。変わったのは前年比の伸びと、平均の残高です。前年比は+19%から横ばいへ、四半期の平均は前の四半期の高値から4%下がって733億ドルになりました。

そこでCEOが語る中心を移した先が、利用です。

  • ブロックチェーン上でのUSDCの取引量は 13.9兆ドル(前年比+49%)
  • ステーブルコイン全体の取引量に占めるシェアは 79%(1年前は66%)。残高のシェアは約27%
  • USDCの発行と償還(ドルとの交換)は過去最高の 2,080億ドル(前年比+42%)

強い数字です。USDC1ドルが四半期に約190回動いた計算だとCEOは言いました。ただ、伸び率そのものは減速しています。取引量の伸びは前の四半期の+151%から+49%へ、発行と償還は+105%から+42%へ。

もう1つ、小さいけれど分かりやすい変化があります。トークン化されたマネーファンドのUSYCです。短期の安全資産で運用するファンドを、ブロックチェーン上で持てる形にした商品です。

3ヶ月前:「資産は30億ドルを超え、世界で最大のトークン化マネー・マーケット・ファンドであり続けています」
今回:「資産は24億ドルで前年比230%増、世界で最大級のトークン化マネー・マーケット・ファンドの1つです」

3ヶ月で残高が減り、「the largest」が「one of the largest」になりました。

一方で、看板は下ろしていません。同じ日の決算資料で、USDC流通量の複数年の目安年率40%は据え置きです。ただ、語り方は変わりました。3ヶ月前の財務責任者は「複数年にわたり、サイクルを通じて年率40%の成長は達成可能だと考えています」と数字を口にしました。今回の説明会は「複数年・サイクルを通じた枠組みは変わっていません」「成長は一直線にはならないと認識しています」です。前年比横ばいの四半期に、40%の目安と「一直線ではない」の留保が並んでいます。

決済額は4倍近くに。その収入の金額は、まだ出ていません

新しい事業の側には、本物の変化があります。

3ヶ月前に「Arcがやってきます」だった語りは、今回「9月16日に稼働し、拡大しています」になりました。日付は前回の予告どおりで、驚きではなく実行です。稼働から約6週間で、10月下旬の資産は約15億ドル、1日の取引は約50万件です。

勢いがあるのは決済網のCPN(サークル・ペイメント・ネットワーク)です。銀行や送金会社が、自前で仕組みを作らずにデジタルドルの決済へつなぐための網だと説明されています。

  • 6月末:年換算の決済額 約150億ドル
  • 7月31日:230億ドル
  • 9月末:410億ドル(加盟金融機関は6月末の175から205へ)
  • 10月30日:580億ドル超

💡年換算の決済額=直近30日の決済額を1年分に引き延ばした数字。1年間の実績でも、サークルの売上でもありません。

では、その決済からいくら入ってくるのか。ここで数字が止まります。

収益化の言葉は確かに進みました。前回の「CPNの収益化を始めることに期待している」が、今回は「2027年にはCPNから相当規模の収入を見込んでいます」です。ただ金額は無く、話の前提には買収の完了と統合があります。アジア太平洋や新興国に送金網を持つタザペイを4億ドル相当の株式で買う案件で、完了は2027年の見込みです。

足元の実績は逆を向いています。Arcの事前販売を除いた「その他の収入」は2,500万ドルで、前の四半期から約800万ドル減りました。前の四半期も約800万ドル減っているので、2回続けての減少です。今回の理由は、収益化したブロックチェーン連携の件数が減ったことだと説明されています。

個人株主からも、まさにこの点を問う質問が出ました。「売上と利益がUSDCの採用に追いついていません。利息以外の収入が意味のある規模になるのはいつですか」。CEOの答えは「今四半期のその他の収入は過去最高でした」から始まり、続いて財務責任者が「2027年度のその他の収入の見通しには、現時点ではコメントしません。次回の決算で、より正式な見通しを出す際に話します」と言いました。過去最高の中身の大半は、上で見た一度きりの事前販売です。

さらに、CEOはこの論点に自分から釘を刺しました。決済会社の料率と比べるのは「間違った比較です」と述べ、目指すのは既存の決済業界の利益構造の再現ではなく、「それを圧縮すること、大きく圧縮することです」と続けました。単価を下げて量で取る、と読める発言です。率直ですが、決済額の伸びがそのまま収入の伸びにならないことも、本人が言っていることになります。

財務責任者の退任と、答えが出なかったこと

今回の説明会は、財務責任者ジェレミー・フォックスジーン氏の締めくくりの場でもありました。会社は9月25日に退任の計画を発表しており、在任は後任が早く決まらなければ12月末までです。後任は探している段階です。2027年のその他の収入の見通しを出すと言っている次回の説明会に、予定どおりなら今の財務責任者は座っていません。

質疑では、はっきりした答えが出なかった点や、これから数字に響く点が残りました。

  • バイナンス(世界最大級の暗号資産取引所)との新契約の条件:5年契約と1億ドルの出資は語られましたが、CEOは「提携の経済条件の詳細は開示しません」。財務責任者は、利益率の見通しから逆算すれば10〜12月期の低下が分かると述べ、別の質問には前払い費用は無いと明言しました
  • 利益率の押し下げ:利息から配分を引いて残る割合(RLDCマージンとは別の、利息だけで見た数字)は37.8%で、前年同期より約0.7ポイント高いものの、前の四半期より約0.8ポイント低下。主因はハイパーリキッド(暗号資産の先物などを扱う分散型の取引所)との契約で、10〜12月期にはバイナンスも丸ごと乗ります
  • コインベース向け費用が減った理由:アナリストに聞かれましたが、契約ごとの増減にはコメントしないという答えでした
  • 最大のボトルネック:名指しを求められて、CEOは採用の実例を並べました。単一の答えはありませんでした

バイナンスをめぐる先週のセキュリティ侵害の件も、2人のアナリストが別々に聞きました。CEOは資金の引き出しがあった一方で、直近24時間で25億ドルの純入金があったと答えましたが、USDCの提携にどの程度響くかの数字はありません。

通期の見通しは、その他の収入3.1億〜3.3億ドル、RLDCマージン41.7〜43.7%、調整後の営業費用5.7億〜5.85億ドルが据え置きです。上方修正はありません。営業費用は上限寄りと説明されました。

会社は売上の見通しを出していないので、市場の予想(アナリストたちの予想の平均)とは直接比べられません。今回の決算より前の時点で、2026年通期の売上の市場予想は約30億3,000万ドルでした。1〜9月の実績は約22億6,000万ドルなので、届くには10〜12月期に約7億7,000万ドルが要ります。今回の事前販売を除いた約6億8,300万ドルとの差を、残る事前販売分や利息がどこまで埋めるかは、まだ分かりません。

USDCが使われても、残高に変わるとは限らない理由

経営陣が転機として挙げるのは、法律です。CEOはいまを「並外れた変曲点に近づいている」と表現しました。根拠は、2027年1月に施行されるGENIUS法です。デジタルドルが米国の制度の中に正式に位置づけられれば、これまで待っていた大企業や金融機関が動ける、という話です。

💡GENIUS法=米国のステーブルコインの法律。施行の予定自体は前回も語られており、今回の新事実ではありません。

米国の会計基準を作る団体が、ステーブルコインを現金または現金同等物として扱う基準の最終化に近づいている、ともCEOは述べました。財務責任者は、企業の財務部門が使い始めるには、法律、会計と税のルール、既存の業務システムとの接続が必要だと整理しています。

サークルの土台には、需要の出どころが2つあります。

1つはデジタル資産の市場です。バイナンス、ハイパーリキッド、コインベースに配分を払ってUSDCを置いてもらう構造で、会社はこれを「配分への投資」と呼びます。今期は配分・取引などの費用が4億1,200万ドルかかっています。市況が弱いと残高に響くのは、主にこちら側です。

もう1つは決済と金融機関です。CEOの挙げた実例では、ロイズ銀行がUSDCで国際決済を行い、ビザが送金の仕組みをUSDCで資金供給できるようにし、ウォルマートの金融子会社ワンペイがUSDCに対応しました。CPNの580億ドル超もここに入ります。

問題は、後者の出発点が通り抜けるお金だということです。法定通貨からUSDCへ、また法定通貨へと抜ける「ステーブルコイン・サンドイッチ」が出発点だと、CEO自身が認めました。発行と償還の2,080億ドルは、配管が機能している証拠であると同時に、入ってすぐ出ていく動きでもあります。だからCEOは「残高が定着してほしい」と言い、財務責任者は利用の増加が「より長い期間で流通量の増加につながる」と語りました。どちらの発言にも、時期は付いていません。

利用が残高に変わるのか、決済額が収入に変わるのか。この決算の論点は、その2つの変換です。

2027年の数字が出る回に、見るもの

次の説明会には、はっきりした確認点が3つあります。

  1. 2027年のその他の収入の見通しに、CPNの金額が示されるか。「相当規模」に数字が付かなければ、言葉だけが先に進んでいることになります
  2. 期末の流通量が739億ドルを上回るか。GENIUS法の施行を迎える局面で残高が動かなければ、「利用が残高を連れてくる」という説明の時期がまた先へ延びます
  3. バイナンスの分が丸ごと乗った後の利益率と、タザペイの買収完了の時期

ここに書いたのは、11月4日の説明会までに分かったことです。決済額の伸びは本物で、Arcも予定どおり動き出しました。一方で、サークルの収入はいまも大半が利息で、その元本は3ヶ月前の説明ほど市場から離れてはいませんでした。どちらが先に数字を変えるのかは、四半期ごとに前の回と並べていくしかありません。


※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。

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