CVSヘルス決算の内容:2社に分かれると発表し、分かれて失う効率の金額は出さなかった【CVS・2026年7〜9月期】

薬局、医療保険、薬の値段の交渉役。アメリカの医療のお金の流れを1社にまとめてきた会社が、その形をやめると言い出しました。

CVSヘルスです。質疑の最初に立ったアナリストは、「2006年11月1日、20年前に」CVSと薬の交渉役ケアマークが一緒になった、と切り出しました。その20年後の発表です。

■ CVSヘルスの決算説明会の内容(要点)

  • 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
  • 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月4日
  • 売上は1,080億ドル超、3部門とも利益は前年を上回りました
  • 3ヶ月前は「まだ早い」、今回は「少なくとも70億ドル」
  • 「技術企業へ」もケアマークの価格モデルも、今回は確認できませんでした
  • 今年の増額は市場の予想を超え、来年の増額は今年分の持ち越しでした
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※この記事で扱うのは、2026年11月4日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストの質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。発言は記録に残ります。

同じ説明会で、今年の見通しは上がり、来年の健康サービス部門の下限も初めて出ました。経営陣の言葉は3ヶ月前より確かに強くなっています。ただ、分離で失う効率がいくらなのかは、聞かれても金額が出ませんでした。来年の増額にも、よく見ると新しい上積みはほとんど入っていません。

目次

その前に、CVSヘルスは「大きな薬局チェーン」ではありません

CVSという名前からは、アメリカの街角のドラッグストアを思い浮かべると思います。その店舗は、この会社の柱の1本にすぎません。

日本なら、病院で処方箋をもらって薬局で自己負担分(多くの人は3割)を払います。薬の公定価格は国が決めるので、窓口で値段の交渉は起きません。

アメリカでは、民間の保険や企業が薬代を負担する場面が多く、値段の交渉を専門に引き受ける業者がいます。これがPBM(薬剤給付管理会社)です。どの薬を保険で払うかの一覧を作り、製薬会社から割引を引き出し、薬局への支払いを決めます。

この会社は、3つの段階を全部持っています。

  • エトナ:医療保険。加入者のお金を預かり、医療費を払う側です
  • ケアマーク:PBM。薬の値段を交渉する側で、高額な薬を扱う専門薬局もここに近い事業です
  • CVSの店舗:処方薬を実際に手渡す側です

保険、交渉、手渡しを1社に集めれば強い。これが長く、この会社の説明でした。今回の分離は、そのうち店舗の側を別の会社にする話です。だから投資家の質問は「店舗を切り離すと、何がいくら失われるのか」に集まりました。

分け方はこうです。残るCVSヘルスは、エトナ、ケアマーク、専門薬局、高齢者向け診療のオーク・ストリート、在宅の健康評価のシグニファイ・ヘルスを持ちます。新しいCVSファーマシーは、店舗、通販の薬局、店内診療所のミニッツクリニック、消費者向けの健康サービス基盤「Health100」を持ちます。

会社によると、分離後の株主は両社の株を持つ形で、米連邦所得税の上では非課税を見込んでいます。完了は2028年前半の予定で、取締役会の最終承認などの条件が付いています。

売上は1,080億ドル超、3部門とも利益は前年を上回りました

  • 売上 1,080億ドル超(1ドル150円で約16兆2,000億円。前年同期の1,028億7,000万ドルから約5%増)
  • 医療保険部門の調整後営業利益 約9億ドル(前年同期から6億ドル近く増加)
  • 健康サービス部門(ケアマークなど)の同利益 21億ドル(前年同期比 3%近い増加)
  • 薬局・消費者部門の同利益 16億ドル超(同 10%超の増加)

3部門の合計から本社などの部門の費用約4億6,000万ドルを差し引くと、全社の調整後営業利益は42億ドル近くになります。

💡調整後=会社が一時的と考える項目などを除いた数字(non-GAAP)。会計基準どおりの数字(GAAP)とは別物です。

調整後の一株利益は2.09ドルで、前年同期の1.60ドルから31%増えました。会計基準どおりでは1.68ドルです。前年同期は3.13ドルの赤字でしたが、これは買収で計上した資産(のれん)の価値を57億ドル切り下げた損失が主因です。

💡一株利益=会社の最終的な利益を株の数で割った数字。1株あたりの取り分の目安で、この会社の見通しもこの数字で語られます。

3部門でいちばん動いたのは医療保険です。集めた保険料のうち医療費に消えた割合(医療費比率)は91.3%で、前年から約1.5ポイント改善しました。財務責任者は、主因を高齢者向け保険(メディケア)の事業の改善だと説明しています。

店舗の側は、利益は伸びましたが、既存店の処方数の伸びは前の四半期の7%から「4%近く」へ下がりました。前の四半期はライトエイド関連の取引が上乗せになっていた、と経営陣自身が「追い風」と認めていた数字です。今回の4%近くのほうが素の姿に近いと読めます。

3ヶ月前は「まだ早い」、今回は「少なくとも70億ドル」

言葉がいちばん変わったのは、2027年の話です。

3ヶ月前:「2027年の具体的な話をするには、計画の段階としてまだ早いと思います」
今回:「健康サービス部門では、少なくとも70億ドルの調整後営業利益を生むと見込んでいます」「2027年がこの部門の利益の底になると確信しており、そこから成長に戻ると見込んでいます」

3ヶ月前に出ていたのは全社の一株利益の目安だけで、部門の数字はありませんでした。今回は70億ドル(約1兆500億円)という下限と、「底」という言葉が付きました。ただし底と言うからには、2027年のこの部門は減益の方向です。下限の中には、後で出てくる340Bの減少と、ケアマークの加入者の減少が入っています。

自社株買いも向きが変わりました。

3ヶ月前:「現在の見通しは、今年の自社株買いを一切前提にしていません」
今回:「(財務の改善によって)第4四半期に自社株買いプログラムを再開できるようになります」

借金の比率の目標を予定より早く達成したことが理由です。2028年までの成長の言い方も、「年率10%台半ばに引き続き自信がある」から「10%台半ばのうち高いほう」に上がりました(いずれも調整後の一株利益)。

「技術企業へ」もケアマークの価格モデルも、今回は確認できませんでした

強くなった言葉の裏で、消えたものがあります。確認できる範囲で4つです。

  • ケアマークの価格モデルの移行:3ヶ月前は「正味の費用に基づく価格モデルへの移行が加速すると見ています」と語りました。定価でなく、割引を引いた後の費用を基準にする形です。米連邦取引委員会(FTC)との和解案にも触れました。今回はどちらの言葉も出てきません
  • 顧客の継続率:3ヶ月前は「継続率は過去の実績をやや下回る方向で推移しています」でした。今回、この言葉は無く、「力強さに欠ける販売シーズンと、保険会社の顧客の加入者減少」に変わりました
  • 「技術企業へ」という言い方:3ヶ月前のCEOは「消費者向けヘルスケア企業から、消費者向けヘルスケア技術企業へ移りつつある」と語りました。今回の技術の話はHealth100や調剤業務のAIといった個別の話で、この言い方は出てきません
  • GLP-1薬の話(食欲を抑え、血糖を下げるホルモンの働きをまねた薬):3ヶ月前はCEOの冒頭発言でイーライリリーとノボの名前を挙げていました。今回の言及は質疑の1か所、「この四半期のGLP-1の処方は23%伸びました」だけです

加入者の減少について、分離後に薬局会社のトップに就く予定の幹部は「一部は保険会社の顧客の戦略上の判断で、ケアマークの商品への評価ではない」と説明しました。エトナの処方薬保険の動きもその例に挙げています。次の2028年の販売シーズンは「力強い」と見込みを語りましたが、これは期待の言葉で、契約の金額はまだありません。

今年の増額は市場の予想を超え、来年の増額は今年分の持ち越しでした

💡ガイダンス(見通し)とコンセンサス=前者は会社が自分で出す業績の予想、後者はアナリストたちの予想の平均です。会社が自分の見込みを上げても、周りがもっと高く見ていれば驚きにはなりません。

数字を並べるとこうなります。

  • 2026年の調整後一株利益:前回7.90〜8.10ドル → 「少なくとも8.20ドル」。市場の予想の平均8.04ドルと、その上限8.15ドルも超えています
  • 2026年の売上:前回「少なくとも4,140億ドル」→「少なくとも4,200億ドル」。市場の予想の平均は4,178億7,000万ドルです
  • 2027年の調整後一株利益:前回の目安8.44ドル → 「少なくとも8.65ドル」。市場の予想の平均は8.54ドルで、予想の幅(8.43〜9.05ドル)の内側です

今年の増額は市場の予想の平均から約2%上、来年は約1.3%上です。どちらも小幅です。今年の増額幅も、3ヶ月前の0.60ドルから0.20ドルに縮みました。

来年の数字については、質疑で「自社株買いの効果があまり入っていないように見えるが」と質問が出ました。財務責任者の答えは率直でした。

「おっしゃる読みのとおりです。今年の見通しを20セント上げて、実質的にそれをそのまま持ち越しました」

前提の自社株買いは、株数が増える分を打ち消す程度にとどまるとも言っています。買い戻しの余力は、見通しの外に残した形です。正式な2027年の見通しは2月の説明会に持ち越されました。

分かれて失うものに、金額が付いていません

会社が2つになると、本社の機能も上場の費用も2つになります。同居をやめて別々に暮らすと、冷蔵庫も光熱費の基本料金も2つになるのと同じです。1社だから安く済んでいた分が失われることを「負の相乗効果」と呼びます。

ここを、複数の証券会社が別々の角度から聞きました。ある質問者は、薬局とケアマークが互いを強くしてきた例がたくさんあるのに、分かれてもその差別化を失わないのかと聞きました。CEOの答えは、これまで作った独自商品は「両社の間の商業契約で守られます」でした。契約の中身も期間も出ていません。

別の質問者は、過去の買収では費用の削減が大きな根拠だったと指摘し、失う効率の規模と、どちらの会社が負うのかを聞きました。財務責任者はこう答えています。

「この行動で生まれる戦略上の価値は、負の相乗効果を大きく上回ります」「確かに管理可能な範囲で、この種の取引と同程度です」

金額も配分も出ませんでした。一時費用は見通しに織り込んであり、詳しくは分離の進行に合わせて示す、という説明です。

未解決はもう2つあります。

340Bです。 低所得の患者を多く診る病院などが薬を割引で買える、アメリカの制度です。ケアマークにはこの制度に関わる事業があり、3ヶ月前には、この事業に圧力がかかっていると語り、製薬会社が制度の対象施設に制限をかけていることがその一因だと説明していました。ただ、それがケアマークの利益をどう減らすのかは、確認できる範囲では語られていません。財務責任者は同じ回に「来年の逆風になると見ています」「340Bの大きさについては特に言及しません」と言いました。今回、先ほどの、薬局会社のトップに就く予定の幹部はこう言っています。

「340Bについては、今後話題にする必要があるテーマではないと考えています」

金額は今回も出ていません。「2027年の計画で、この部門の利益に占める割合は、これまでよりさらに小さい」という説明だけです。質問者は、契約の仕方が変わったのか、なぜ2028年に持ち越さないと言えるのかを聞きましたが、この2点に具体的な答えはありませんでした。財務責任者が述べたのは「来年末までにおおむね安定する」という見込みまでです。金額が出ないまま、話題のほうが閉じられようとしています。

独立後の2社の成長率です。 質問に対して、財務責任者は「現時点で2028年より先の見通しは示していません」と答えました。分離の完了が2028年前半なので、それぞれの会社として走り始めた後の数字はまだありません。

数字の側にも、割り引いて読むものがあります。通期の営業キャッシュフロー(本業で実際に手元に入った現金)の見通しは115億ドルから「少なくとも155億ドル」へ、40億ドル上がりました。割合でいちばん大きく動いた数字です。ただ、財務責任者は理由に「運転資本の改善と、一部の支払いのタイミング」を含めています。運転資本とは、ここでは入金と支払いの時期のずれから生まれるお金のやりくりのことです。9月までに153億ドルが入っているので、下限のままなら10〜12月の積み増しは2億ドルです。事業の伸びと同じものとしては読めません。

2年前には、この決断は選べなかったと経営陣は言います

「何が変わったのか」という質問も出ました。CEOの答えは、外の環境より会社の中の話でした。

「2年前にこの仕事に就いたとき、私たちはこうした決定ができる状態にありませんでした。メディケアの事業で苦しんでいたからです」

当時は店舗の部門も5%の減益を見込んでいた、と続けています。苦境からの決断ではない、という言葉は、説明会の中で繰り返されました。店舗の側は約20年、ケアマークとの間に壁を置いて独立して動いてきたので、切り離しても統合の利点は商業契約で補える、というのが理屈です。

その状態を変えたものは、部門ごとに違います。

医療保険は、利益の回復です。 2027年も「もう1年、意味のある利益率の改善」を見込むと言いました。数字は出ていません。理由は価格の見直しと給付の削減など、高齢者向け保険で自分たちが打った手です。エトナの責任者は、高齢者向け保険が2026年に「黒字の領域へ入りつつある」と述べ、想定より早いものの、改善はまだ複数年の途中だとも言っています。ただ、これは目標の利益率に戻れば伸びが止まる種類の回復です。

健康サービスは、2027年が底という宣言です。 340Bの減少と加入者の減少を、高額な専門薬と診療事業の改善で一部埋めて、それでも下限は70億ドルという構図です。経営陣はこの逆風を「一過性」と呼びますが、金額も続く長さも確かめられていません。

店舗は、堅い増益です。 2027年は「1桁台前半」の増益を見込み、これで3年連続の増益になると言います。

3つを並べて分かるのは、伸びの中心が利益の回復であって、売上の変化ではないことです。市場の予想の平均でも、売上は2026年の4,178億7,000万ドルから2027年の4,300億8,000万ドルへ、約3%の増加です。分離の発表は会社の形を変える話ですが、この先1年半の売上の伸びを変える具体的な材料は、今回の説明会にはありませんでした。

2月の説明会で、金額がいくつ出てくるか

強い言葉の多くは、今年の上振れの持ち越しと金額の付かない説明に支えられています。その言葉が実際に崩れるのは、次のどれかが起きたときです。

  • 2月の正式な見通しで、2027年の調整後一株利益が8.65ドルを下回る
  • 健康サービス部門の利益が70億ドルを下回る
  • 話題にする必要はないと言った340Bが、2028年の逆風としてまた出てくる

反対に、負の相乗効果の金額と商業契約の中身が出て、それでも8.65ドルの下限が動かなければ、ここまでの見方のほうが厳しすぎたことになります。

分離の完了までは、まだ1年半ほどあります。その間、説明会のたびに、3ヶ月前に出なかった金額が出たかどうかを1つずつ追っていきます。


※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。

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