データドッグ決算の内容:売上は35%増、上振れのうち最大顧客の分は「お答えしません」でした【DDOG・2026年7〜9月期】

企業のシステムを見張るソフトウェアの会社が、7〜9月期の売上を自社の見通しの中央より約5,700万ドル上に着地させました。AI以外の顧客の伸びは加速し、アメリカの防衛機関や日本の大手銀行2行との大型契約も取っています。

一方で、次の10〜12月期の売上見通しは、いま終えた四半期とほぼ同じ金額です。

強い実績と、前の四半期からほとんど増えない見通し。そのあいだを説明する数字が1つあります。上振れのうち、最大の顧客の分はいくらだったのか。アナリストにそう聞かれた財務責任者の答えは、「お答えしません。具体的には言いません」でした。

■ データドッグの決算説明会の内容(要点)

  • 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
  • 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月4日
  • 売上は見通しの上限を超え、利益はそれ以上に超えました
  • 最大の顧客は使用量を減らし、それでも最低額を「大幅に」上回りました
  • 10〜12月期の「25〜26%」は、弱さなのか、床なのか
  • 3ヶ月前に無かった言葉は「早期更新の逆風」でした
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日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。

※この記事で扱うのは、2026年11月4日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストへ説明し、質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。

目次

その前に——データドッグは「最低額+使った分」で稼ぎます

監視ソフトと聞くと防犯カメラを思い浮かべるかもしれませんが、見張る相手は人ではなく企業のシステムです。サーバー、アプリ、動作の記録、最近ではAIの部品まで。ネット通販が止まったときに、どこが壊れたのかを1つの画面で追えるようにします。顧客は約33,500社で、別々に使っていた複数の道具を置き換えて1つにまとめる形で広げてきました。

この記事で大事なのは、製品より料金の仕組みです。

携帯電話の料金に近いと考えてください。毎月の基本料があり、使った分が上に乗ります。データドッグの大口顧客も同じで、「最低でもこれだけは払う」という金額を契約で約束し、実際の請求は使った量で決まります。

だから売上には床があり、天井がありません。財務責任者の説明はこうです。

「顧客は最低契約額を下回ることはできませんが、それをどれだけ上回るかはさまざまです。そこは私たちが管理できるものではありません」

この床と実際の使用量の差が、今回の決算の分かれ目です。見通しは床で作り、実績は使用量で決まります。

売上は見通しの上限を超え、利益はそれ以上に超えました

  • 売上 11億9,700万ドル(前年同期比 +35%。1ドル150円で約1,800億円。見通しは11億3,500万〜11億4,500万ドル)
  • 調整後の営業利益 3億3,400万ドル(利益率 28%。見通しは2億6,000万〜2億7,000万ドル。前四半期と前年同期の利益率は23%)
  • 調整後の一株利益 0.81ドル(前年同期は0.55ドル)
  • 調整後の粗利率 81.2%(前四半期は79.6%、前年同期は81.2%)
  • フリーキャッシュフロー 2億5,100万ドル(売上に対して21%。前四半期は25%。回収と支払いの時期で四半期ごとに動くという説明で、直近12ヶ月では26%)

💡調整後=株式報酬など、会社が定めた項目を除いた数字(non-GAAP)。会計基準どおりのGAAPの数字とは別物です。この記事の利益の数字は、断りがない限りすべて調整後です。一株利益=会社の利益を株数で割った、1株あたりの利益。粗利率=売上から提供にかかった費用を引いて残った割合。フリーキャッシュフロー=事業で稼いだ現金から設備投資を引いて、手元に残る分。

通期の見通しも上がりました。

  • 売上:44億5,000万〜44億7,000万ドル → 45億1,500万〜45億2,500万ドル
  • 調整後の営業利益:10億1,000万〜10億3,000万ドル → 10億9,500万〜11億500万ドル
  • 調整後の一株利益:2.50〜2.54ドル → 2.73〜2.75ドル

💡ガイダンス(見通し)=会社が自分で出す業績の予想。市場の予想は、それとは別にアナリストたちが出す予想の平均です。

市場の予想は通期の売上が約44.7億ドル、一株利益が2.53ドルで、新しい見通しはそれぞれ約1%、約8%上回ります。ただしこの予想の集計が決算前の値なのかは確認できていないので、参考程度に見てください。

最大の顧客は使用量を減らし、それでも最低額を「大幅に」上回りました

話の中心にいるのは、社名の出ない1社です。3ヶ月前、会社はこの「大手のAI企業」と9桁ドル(1億ドル以上)の契約を更新したと発表し、同時に使用量が減ると明かしました。

3ヶ月前:「最大の顧客については、使用量の減少が見られます。これは7〜9月期と通期の見通しに織り込んでいます」
今回:「最大の顧客は7〜9月期に使用量を減らしましたが、使用量は最低契約額を上回ったままでした」「この顧客は7〜9月期に、最低契約額を大幅に上回って支出しました」

減ったという話は取り消されていません。ただ、減った先が床よりかなり上でした。3ヶ月前、CEOは「この顧客の分は、見通しのリスクを完全に取り除いた」と説明していました。見通しを低めに置いた分、実績との差は上振れとして出ます。

そこでアナリストが聞きました。見通しに対する上振れのうち、この顧客が最低額を超えて使った分はいくらなのか。

「お答えしません。具体的には言いません。(中略)それを上回って使えば、計算上は上振れになります」

上振れにこの1社が入っていることは認めて、金額は出しませんでした。見通しの置き方については、財務責任者は7〜9月期を「使っていた額に対して保守的に」、10〜12月期を「最低契約額で」と表現し、CEOは「前提は変えていません」と付け加えています。

10〜12月期の「25〜26%」は、弱さなのか、床なのか

次の四半期の見通しは、売上11億9,000万〜12億ドル、前年同期比で+25〜26%です。

+35%からの+25〜26%で、見通しの中央は7〜9月期をわずかに下回り、上限でも約300万ドル上です。通期の売上見通しは中央で約6,000万ドル上がりましたが、7〜9月期の上振れが約5,700万ドルなので、上げ幅のほとんどはすでに終わった四半期の分です。通期の数字から逆算すると、10〜12月期の見込みは3ヶ月前からほぼ動いていません。

ただし、この数字には最大の顧客が最低額で入っています。

「最大の顧客を除くと、ガイダンスが示す10〜12月期の売上の伸びは、30%台前半から半ばです」

しかも前回の7〜9月期の見通しは+28〜29%で、実績は+35%でした。6〜7ポイント上に出ています。+25〜26%をそのまま次の実力と読むのは早すぎます。

6〜7ポイントの上振れのうち、顧客全体の強さの分と、1社が床を超えて使った分を、外からは分けられません。金額を答えなかったので、次の上振れがどちらから来るのかも読めません。最大の顧客を除いた7〜9月期の伸びも、「再び加速した」という言葉だけで数字はありません。

CEOは説明会の最後に、社員へのねぎらいとして「私たちは、さらに素晴らしい10〜12月期の真っ只中にいます」と言いました。見通しの数字からは、そこまで読み取れません。

3ヶ月前に無かった言葉は「早期更新の逆風」でした

見通しについて、前回から何が変わったのかを問われた答えです。

財務責任者:「変わったのは、7〜9月期に大口やAIの大口顧客と行った更新・延長だけだと思います。通常どおり、契約を延ばして約束額を増やし、そのぶん良い価格を出しています」
CEO:「想定よりずっと早く更新した大口顧客が何社かありました。10月にも1件あり、それは今日お話ししていません。どれも良い知らせですが、短期的には売上の逆風になります。それが前の四半期からの変更点の1つです」

仕組みはたとえると、こうです。毎月100万円分使う得意先が、「来年は倍使うと約束するから、単価を2割下げてほしい」と早めに言ってきた。約束の総額は増えます。けれど実際の使用量が増えるまでは、同じ量の請求が2割減ります。

会社は、これは予算の圧迫による値切りではないと切り分けました。早期更新はAI研究所やテック企業が相手で、理由は相手の事業の成長だという説明です。更新後の約束額も前より高いと、財務責任者は念を押しています。

ただ、逆風の金額は出ていません。同じ論点をアナリストが入れ替わりで聞き続けましたが、「いつ通常に戻るのか」にも時期の答えはありませんでした。CEOが認めたのは、数四半期で通常の伸びに戻るという質問者の理解に「その通りです」と答えたところまでで、更新のときに顧客が使い方を見直す動きもあると付け加えています。

先の売上を示す数字は、伸びがそろって鈍りました。

  • 請求額:11億8,000万ドル(+38%)→ 11億6,000万ドル(+30%)
  • 残存履行義務:34億7,000万ドル(+43%)→ 38億5,000万ドル(+38%)。1ドル150円で約5,800億円
  • そのうち1年以内に売上になる分の伸び:約40% → 30%台半ば

💡残存履行義務(RPO)=契約済みで、まだ売上になっていない金額。請求額(Billings)=その四半期に顧客へ請求した金額で、売上とは時期がずれます。

契約の長さについての言い方も、「伸びた」から「わずかに伸びた」に変わりました。会社は、事業の傾向を見るには請求額やRPOより売上のほうが良いと断っています。同じ断りは数字が強かった3ヶ月前にもありました。ただ今回は早期更新が重なるので、外からは影響がどこまでかを確かめられません。

AI以外の顧客は加速し、防衛機関と日本の銀行が契約しました

逆風とは別の場所で、はっきり良くなったものがあります。

AI以外の顧客の売上の伸びは、20%台後半です。 前四半期から約1ポイント上がり、前年同期は約20%でした。CEOは「5四半期連続の加速」と言っています。ただ、3ヶ月前の上がり方は「20%台半ば」から「20%台後半」だったので、加速の幅は細くなりました。

3ヶ月前の質疑でもCEOは「5四半期」と口にしていて、そちらは最大の顧客を除いた残り全体の話でした。数え方は揃っていません。

持続性を問われたときの答えも、言い方が変わりました。

3ヶ月前:「持続可能だと考えています」
今回:「成長率がさらに上がるのか、安定するのか。すでに非常に高い成長率で、かなり手応えがあります。どこへ向かうかは分かりにくいですが、その土台にある大きな流れには強い確信があります」

取り下げたわけではありません。すでに高くなった伸びが、まだ上がるかどうかは言わなくなった、という変化です。

政府は、見込みから受注に変わりました。

3ヶ月前:「案件の見込みは見えています。一般に、一晩で決まる案件ではありません」
今回:「アメリカの連邦防衛機関と、5年間、年換算で7桁ドルの契約を獲得しました」

アメリカ政府向けの高いセキュリティ認証を今年に入って取得したことの結果だ、と会社は説明しています。

そして、日本の銀行です。 同じ四半期に、準備した説明では「日本で最も重要な銀行2行」、質疑ではCEOが「日本の3大銀行のうち2行」と語りました。社名は出ていません。金額はそれぞれ年換算で7桁ドル、つまり年100万ドル以上1,000万ドル未満の規模です。基幹の金融システムを近代化する中で、クラウドと社内のシステムをデータドッグでまとめて見る、という説明でした。

ここで1つ、CEOが釘を刺しています。

「これらの受注は、まだ売上に現れてすらいません。契約を取った段階で、まだ本格的に使い始めた顧客ではないからです」

AI側の顧客も増えました。AI顧客は約750社から850社超へ、年100万ドル超のAI顧客は31社から39社へ。世界最大級のテック企業のAI部門とは年換算8桁ドルの拡大契約を結び、この会社の年間の約束額はほぼ3倍になりました。

GPUの監視は8倍に増え、課金はまだ広がっていません

AIの製品の話は、言葉が一段上がりました。AIを監視する製品(自動で仕事をこなすプログラム「エージェント」の監視など)について、3ヶ月前のCEOは利用量の急増を語りつつ「まだ超初期です」と言っていました。今回は、AI企業以外の利用が増えているとして「本物の需要、本物の利用量、本当に期待できる案件の見込みがあります」です。

数字は大きく見えます。監視しているGPUの台数は年初から8倍、エージェント監視に送られるデータは9倍。自社のAIエージェント「Bits.ai」は「当社の歴史で最も速く採用された製品」だと言います。

💡GPU=AIの学習や計算に使う半導体。

ただ、売上との距離は同じ説明会で語られています。インフラ監視の製品群は年換算の継続収入が20億ドルを超え、30%台半ばで伸びていますが、それがGPUのおかげかと問われたCEOは否定しました。

「その伸びは、GPUに直接関係するものではありません。(中略)製品はありますが、まだ広く課金していません。今の成長と今の数字に織り込まれているものではありません」

AIの学習に使う用途も「一般市場と呼ぶには、まだ早い」、Bits.aiも「まだ初期」です。Bits.aiの顧客への浸透度を数字で聞かれても、数字は出ませんでした。大きな倍率が付いているのは利用の量で、金額はまだ語られていません。

最大の顧客の額も、早期更新の逆風も、2027年も、数字は出ませんでした

ここまでで触れたものを含めて、説明会で答えが足りなかった点は4つです。

  • 最大の顧客の上振れ額:「お答えしません」
  • 早期更新の逆風の金額:要因としては認めましたが、数字はありません
  • いつ通常に戻るのか:長い目で見れば顧客層が広がって安定する、という答えで、時期はありません
  • 2027年の扱い:最大の顧客や早期更新の組を来年どう見込むかを聞かれ、「2027年のガイダンスは通期決算の説明会で出します」

3ヶ月前に数字つきで語っていて、今回出てこなかったものもあります。「大差で過去最高」と言った前四半期比の増収額1億1,500万ドルは、今回は計算すると約7,700万ドルで、この数字への言及はありません。増収額は実際に小さくなっています。

年1,000万ドル超のAI顧客が8社という内訳も、今回は出ていません。「前年の2倍以上」と言った大企業の新規受注も同じです。この2つは、出てこなかったからといって減ったとは限りません。

売上の伸びに占める新規顧客の割合は約30%で、「前の四半期の25%から上昇」という言い方が、今回は「前年同期の25%から上昇」になりました。割合そのものは3ヶ月前と同じ水準です。

7〜9月期の売上を上に押した要因の1つは最大の顧客が最低額を超えて使った分、10〜12月期の見通しを下に押すのは早期更新の値下げです。10〜12月期にはほかに、12月下旬に利用が減る季節性と、大型イベントのAWS re:Inventなどの販促費が入ります。営業利益率の見通しは24%で、7〜9月期の28%を下回ります。

粗利率の81.2%は、新しい水準と読まないほうが安全です。財務責任者自身が「80%前後を行き来してきた」と説明しています。

AI企業は広がり、4製品以上を使う顧客は54%から61%へ増えました

会社が早期更新を「良い知らせ」と繰り返す理由は、売上の構造が変わる途中にあるからです。

片側はAI企業です。CEOによると、一部の顧客はこの業界の誰も見たことのない速さで規模を広げていて、導入から数四半期で更新に来る顧客には、会社自身も「少し驚かされることがあります」と言います。ただAI企業の顧客層は広がっており、大口の数が増えれば1社の振れは目立たなくなる、というのが会社の説明です。

もう片側がAI以外の企業です。コードを書く作業にAIが使われるほど、作られるソフトは増え、複雑になります。テストや配布の工程に負荷がかかり、監視する対象も増えます。AI企業も含む顧客全体では、4製品以上を使う割合が1年前の54%から61%へ、10製品以上は8%から16%へ増えました。

AIの費用そのものも、新しい監視対象になりました。クラウド費用を管理する製品の顧客のうち、AIの費用を追っている企業は3分の1を超えています。

この説明が正しければ、最大の顧客の増減はやがて小さな話になります。正しいかどうかが分かるのは、最低額で置かれた1社を除いた伸びが、数字で続くかどうかです。

20%台後半と30%台半ばが、最初に確かめる線です

会社のこの説明が崩れる形は、次の3つです。

  1. AI以外の顧客の伸びが、20%台後半を下回る
  2. 1年以内に売上になる分(RPOの短期部分)の伸びが、30%を割る
  3. 最大の顧客を除いた10〜12月期の伸びが、30%台前半から半ばという見通しに届かない

早期更新を経た顧客の使用量が約束の増加に追いつけば、逆風は消えます。GPU監視の課金が始まれば、金額を語れる段階に入ります。


強い四半期でした。そのうちの一部がいくらなのかを、会社は言いませんでした。ここに書いたのは11月4日の説明会までに分かっていることで、最大の顧客の使用量も、早期更新の影響も、まだ動きます。

次の説明会では、また同じ質問が出るはずです。答えが数字になるのか、なお「お答えしません」のままなのか。そこを前回の言葉と並べて見ていきます。


※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。

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