工場の数字と店の数字が、逆を向いた四半期でした。
ビヨンド・ミートは、そら豆などの植物たんぱくからハンバーガーのパティやソーセージを作る会社です。日本のスーパーに並ぶ大豆ミートと同じ発想の、肉の代替品だと思ってください。
■ ビヨンド・ミートの決算説明会の内容(要点)
- 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
- 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月4日
- 粗利率は8.5%から19.3%へ、「ようやく日の目を見始めた」
- 「一時的」の語が消え、米国小売の数量減は5.7%から20.8%へ
- 2四半期続けて縮まってきた前年比の下げ幅が、マイナス8%で止まりました
- 海外の小売は伸び続け、単価はマイナスに変わりました
日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。
※この記事で扱うのは、2026年11月4日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。
💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに説明し、質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。
その前に——売れた量が減ると、なぜ原価が重くなるのでしょう
この決算は、ひとつの仕組みが分かると読めます。
「原価」と聞くと材料費を思い浮かべますが、それだけではありません。工場の家賃や機械の費用のように、売れても売れなくても出ていくお金も入っています。
パン屋でたとえます。家賃と設備代が1日1万円なら、100個売れる日の負担は1個100円、80個しか売れない日は125円です。粉の値段が1円も変わらなくても、1個あたりの費用は上がります。
製造や原料、物流の効率化について、ビヨンド・ミートのCEO(最高経営責任者)も同じことを言っています。
「この取り組みの効果の全体は、販売数量の減少によって弱められています。数量が減ると、固定費を吸収しきれないためです」
工場をどれだけ良くしても、売れる量が減れば効果は削られます。だから今回の粗利の改善と数量の減少は、別々の話ではありません。
粗利率は8.5%から19.3%へ、「ようやく日の目を見始めた」
売上は減り、粗利率は跳ね、赤字は残りました。
- 売上 6,450万ドル(前年同期比 −8.1%)。1ドル150円で約97億円。会社の見通し6,000万〜6,500万ドルの上のほう
- 粗利率 19.3%(前年同期 7.4%、前の四半期 8.5%)。2021年7〜9月期以来の高さ
- 1ポンドあたりの売上原価 3.90ドル(前年同期比 −10.1%)。5年ぶりの低さ
- 純損失 8,280万ドル(約124億円)、1株あたり損失 4.32ドル(どちらも会計基準どおりの数字)
💡粗利率=売上のうち、原価を引いて残る割合。1ポンドは約454グラムです。
1株あたり損失は、前年同期の37.96ドルから大きく縮んで見えます。ただ、この比較はあてになりません。前年の数字は、社債を株式に換える取引が終わる前の少ない株数で計算されたものです。8月13日には30株を1株にまとめる株式併合も行っており、数字はそれも調整した後のものです。純損失で見れば、9,700万ドルから8,280万ドルへの縮小です。
CEOの言葉も、3ヶ月前より強くなりました。
3ヶ月前:「この四半期の粗利率は、こうした実行の一部から得られた初期の成果を反映しています」
今回:「ここが今四半期で最も重要な点です。製造とサプライチェーンに組み込んだと私たちが考えている効率化が、ようやく日の目を見始めた、その初期の証拠です」
今回は「長期的に30%以上の粗利率に戻す」という目標も口にしました。30%という数字は、3ヶ月前の説明会にはありません。時期は示していません。新しい目標ではなく、2024年10〜12月期の説明会でも同じ水準を語っていました。
改善の中身は3ヶ月前に挙げた3点と同じです。ミズーリ州コロンビアの工場では、当時は試験の仕上げ段階だった連続生産のラインで外注していた分を社内に戻し、原料の契約を結び直し、倉庫をまとめました。
「一時的」の語が消え、米国小売の数量減は5.7%から20.8%へ
店の側は、逆の動きです。米国小売の売上は2,480万ドルで前年同期比−13.2%。売れた量は−20.8%でした。前の四半期は−5.7%です。
💡配荷=商品を置いてくれる店や棚の広がりのこと。
3ヶ月前、財務責任者は店の棚を失ったことについて、こう言っていました。
「第2四半期の業績に影響した配荷の減少の一部は、特定の商品のパッケージ切り替えに伴うもので、したがって一時的なものと見込んでいます」
あくまで「一部」の話で、カテゴリー全体の弱さは続くとも言っていました。今回、「一時的」という語はありません。代わりに並んだ原因は3つです。一部のクラブストア(コストコのような会員制の大型店)でのバーガーとディナーソーセージの配荷減少、主流の小売や量販店での朝食ソーセージの配荷減少、そして植物肉カテゴリー全体の需要の弱さです。パッケージ切り替えの分がその後どうなったのかは、説明されていません。
朝食ソーセージの話には、引っかかる点があります。同じ説明会で、CEOは「朝食での存在感を強めました」と言い、財務責任者は朝食ソーセージの配荷が減ったと説明しました。CEOが朝食を強めた店として名を挙げたのは、米国のスーパーのクローガー、スプラウツ、ホールフーズです。一方、財務責任者が配荷が減ったと言う主流の小売や量販店がどこなのかは語られておらず、この2つの話の関係は分かりません。
「安定化」という言葉の使い方も変わりました。
3ヶ月前:「米国小売の一部で、安定化の兆しがいくらか見えています」
今回:「バーガー、ひき肉、ディナーソーセージといった主力商品は、一部の小売先で底堅さの兆しを見せています。ただし、成績にはばらつきがあります」
3ヶ月前も「すべての取引先ではない」と断っていたので、範囲が急に狭くなったわけではありません。変わったのは、現状を語る文から「安定化」が抜けたことです。今回、米国小売についてこの言葉は「これから目指すもの」としてだけ出てきます。
2四半期続けて縮まってきた前年比の下げ幅が、マイナス8%で止まりました
売上の前年比は、ここまで順に良くなっていました。−19.7%、−15.3%、−8.2% です。3ヶ月前、CEOは説明会をこう締めています。
「売上の面では、19から15、そして8へと進んでいます。この境界を、できるだけ早く越えたいと願っています」
今回は −8.1% でした。CEOも冒頭で、前年比の下げ幅は前の四半期と「ほぼ同じ」だと述べています。締めの言葉は「まだ成長には戻っていませんが、売上は前の四半期からより安定し、海外の小売は13.3%伸びました」です。
次の10〜12月期の売上見通しは5,400万〜5,900万ドル。中央の5,650万ドルは、前年同期の6,160万ドルより約8.3%少ない水準です(編集部の計算)。中央値で見れば下げ幅は縮まりません(上限の5,900万ドルなら約4.2%減)。
💡ガイダンス=会社が自分で出す業績の見通し。この会社は次の四半期の売上だけを出しており、通期や利益の見通しは出していません。
ひとつ、公平に書いておきます。CEOは今回の売上を「前の四半期から安定していた」と表現しました。実数は6,880万ドルから6,450万ドルで約6.3%減っています。ただ、前年も同じ時期に7,500万ドルから7,020万ドルへ約6.4%減っており、落ち方は同じくらいです。次の四半期の見通しも、中央値なら今回より約12%少なくなりますが、前年の同じ時期も約12%減でした。悪いのは四半期ごとの落ち方ではなく、前年比の改善が止まったことです。
海外の小売は伸び続け、単価はマイナスに変わりました
4つの販路を並べると、明るい場所も見えます。
- 米国小売 2,480万ドル(−13.2%)
- 米国の外食向け 950万ドル(−9.7%。前の四半期は−27.6%)
- 海外の小売 1,790万ドル(+13.3%。3四半期連続の増加)
- 海外の外食向け 1,240万ドル(−19.4%。一部のファストフード向けのバーガーの減少が中心)
3ヶ月前、CEOは欧州とカナダを「最もはっきりした、近い将来の成長エンジン」と呼びました。その海外小売は、今回も伸びています。ただし伸び方が変わりました。前の四半期は数量+8.2%・単価+7.7%で、両方が効いていました。今回は数量+17.4%・単価−3.4%です。財務責任者は、単価の主な要因に値引きの増加と為替の逆風を挙げています。
米国小売はちょうど反対です。単価は前の四半期の−4.5%から今回+9.5%に変わり、要因には値引きの縮小も入っています。その一方で、数量は2割減りました。値引きを減らした国で量が減り、値引きを増やした地域で量が伸びています。この2つの因果について、会社は語っていません。
CEOが米国の弱さの理由に挙げるのは、インフレと「製品の健康性をめぐる誤った情報」です。欧州には同じ誤った情報の問題が無く、規模を縮める必要もなかったので採算も良いと説明しています。会社の見方として読んでください。
新しい商品の話には、まだ金額が付いていません。ステーキ風の新商品ビヨンド・ステーキ・フィレは、3ヶ月前より取扱店が増えました。CEOによると、ある大手小売では1オンス1.23ドルで、最も安い牛ステーキより約40%安い値段です。ただ、CEO自身の言葉は「手応えはまだ初期ですが、本物です」でした。たんぱく飲料イマースについても「数字はまだかなり小さいことを念頭に置いてください」と断ったうえで、前の四半期から大きく伸びて手応えがあると続けており、どちらも売上の金額は示していません。冷凍のチキン風商品が「クローガーの2,000店超」に入ったという話も、3ヶ月前と同じ数字です。
販管費の答えは数字が無く、利益には一度きりが混ざっています
質疑応答で質問に立ったアナリストは1人でした。最初の質問が、この会社の核心を突いています。今の見通しだと売上は年間約2.5億ドルの水準で、同じくらいの売上だった頃の販管費は今の約半分だった。どこまで下げるのか、という問いです。
💡販管費=人件費や広告費、本社の費用など、商品を作る以外にかかる費用。
CEOは問題を認めました。
「同じ計算は私たちにも見えています」「具体的な数字には踏み込みませんが、この売上水準では、いまの売上に収まるよう営業費用を削り続ける必要があるのは明らかです」「特効薬を探しているわけではありません」
水準は言いませんでした。同じアナリストの2問目、研究開発費が約500万ドルから約1,500万ドルに増えた理由には、すぐに答えが出ています。本社の賃貸契約を一部解約したのに伴い、賃料の費用2,080万ドルを今期にまとめて計上しました(賃料の加速計上)。その約半分が研究開発費に振り分けられたもので、次の四半期は元に戻るという説明です。答えられる問いには答え、いちばん重い問いには数字が出ませんでした。
実際、粗利の改善は下まで届ききっていません。粗利は590万ドルから1,240万ドルへ650万ドル増えましたが、調整後EBITDAの赤字は2,770万ドルから2,460万ドルへ、310万ドルの改善です。大きな特殊項目を除いた営業費用は、前の四半期の約4,210万ドルから約4,330万ドルへ少し増えています(編集部の計算)。差の残りには、前の四半期の粗利を押し下げていた中国撤退に伴う償却費(約160万ドル)のように、もともと調整後EBITDAに入らない分もあります。
💡調整後EBITDA=一時的な項目や減価償却などを除いて、本業の稼ぐ力を見る数字(non-GAAP=会計基準どおりではない数字)。
粗利の改善そのものは本物です。ただ、全部が工場の手柄ではありません。前年比の改善には、売れ残りなどに備えて在庫の価値を帳簿で切り下げる費用(在庫評価の引当)が減った分が入っていて、前の四半期比では、粗利率を2ポイント超押し下げていた中国撤退の費用が消えました。工場の効果がそのうちどれだけかは、分けて示されていません。
損益の下のほうも、両方向の一度きりで揺れています。
- 重くした側:長く使う資産の帳簿上の価値を切り下げた費用(減損)5,710万ドルと、賃料のまとめ計上2,080万ドル(どちらも現金の出ない費用)
- 軽くした側:訴訟の支払いに備えて積んでいた費用の見積もりを減らした分(引当の戻し)2,180万ドル(前の四半期も仲裁の決着で1,100万ドルの戻し)
- 軽くした側:デリバティブ(金融派生商品)の負債を評価し直して帳簿上に出た利益1,330万ドル(現金は入らない)
現金の使い方は確かに減りました。財務活動(借入やリースの返済などのお金の出入り。この2四半期はリース代の元本返済が中心です)を除いた四半期の流出は、前の四半期の約1,800万ドルから約1,290万ドルへ(今期は編集部の計算)。CEOが挙げた1,690万ドルは財務活動も含む現金全体の減少で、同じ基準の前の四半期は約1,960万ドルです(編集部の計算)。1〜9月の営業キャッシュフローは−3,730万ドルで、前年の−1億120万ドルから大きく縮みました。手元の現金は1億6,930万ドル(引き出しに制限のある分を含む)、借入の簿価は3億1,390万ドルです。
ただ、現金を守るために払っているものもあります。9月に額面1,500万ドルの社債を約155万株の株式と交換し、財務責任者は希薄化を認めました。2027年3月が期限の社債は、まだ1,450万ドル残っています。
💡希薄化=株数が増えて、1株あたりの取り分が薄まること。
そして3ヶ月前の「キャッシュフローをできるだけ早くプラスにする」という目標は、今回の説明会では出てきません。2027年について「明確な目標と計画を持って向かっています」とは言いましたが、これは営業費用を削る話の中の言葉で、目標の数字は示されませんでした。
工場の改善と店の縮小、どちらが先に決着するか
原価の立て直しは進み、需要は悪くなっている。需要の見立てが外れるのは、次の決算でこの3つが揃ったときです。
- 売上が前年同期の6,160万ドルを超え、前年比プラスに戻る
- 米国小売の数量の減りが1桁に縮む
- 粗利率が15%以上を保つ
3つ目は、反対側の確かめでもあります。次の四半期は売上が減る見通しなので、固定費はまた重くなります。量が減る中で粗利率が残れば、今回の19.3%は本物に近づきます。大きく戻れば、今回の数字には一度きりの要素も多かった可能性が出てきます。
もう1つ、数字が出るのを待ちたいのが販管費の水準です。「明確な目標と計画」と言った以上、次は金額が要ります。
ここに書いたのは、2026年11月4日の説明会までに分かっていることだけです。工場と店のどちらが先に決着するのかは、この時点ではまだ分かりません。「安定化」が現状を語る文に戻るのか、販管費が金額で語られるのか。次の説明会で確かめます。
※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。