同じ1時間の電話会議の中で、経営陣が二つの方向を向いていました。
AIのデータセンター向けは、3ヶ月前より一段強い言葉になりました。パソコン向けは、3ヶ月前より一段弱い言葉になりました。そして会社が出した次の四半期の見通しは、売上も利益も今回より下がる数字でした。僕は正直、最初どちらを信じればいいのか分かりませんでした。パソコンの中に入っている、あのCPUの会社の話です。
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※この記事で扱うのは、2026年10月29日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、僕の予測ではありません。次回の決算日は会社の発表待ちです。
💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストの質問に答える電話会議。発言はそのまま記録に残ります。
その前に——AIの時代に、なぜ「CPU」が足りないのか
AIの半導体と聞くと、たいていの人はエヌビディアのGPUを思い浮かべると思います。インテルが得意なのは、それとは別のCPUです。
CPUは、コンピューターの司令塔です。GPUは、同じ種類の計算を何千本も同時にこなす計算の作業員です。AIを学習させるような「ひたすら同じ計算を大量に回す」仕事はGPUが向いています。一方で、順番に判断し、段取りを組み、ほかの道具を呼び出すような仕事は、司令塔のほうの出番です。
台所にたとえると、GPUは何百個もの玉ねぎを一斉に刻むアルバイトの大部隊で、CPUは注文を受けて段取りを決める料理長です。刻む人だけ増やしても、料理長が足りなければ皿は出てきません。
今回、インテルの最高経営責任者は、データセンター向けCPUの市場が「主にエージェント型の処理に牽引されて、5年で今の400億ドルから2,000億ドル超へ、最大5倍に増える可能性がある」と語りました。
💡エージェント型の処理=AIに質問に答えさせるだけでなく、調べ物をして、判断して、次の作業を自分で進めさせる使い方。
1ドル150円で計算すると、6兆円の市場が30兆円を超える可能性がある、という話です。この会社がいま一番強く賭けているのは、ここです。ここが分かると、今回の決算の「強い半分」の意味が分かります。
3ヶ月で、サーバーの言葉は一段上がりました
データセンター向けの業界全体の見通しについて、財務責任者の言い方がこう変わりました。
3ヶ月前:「業界のサーバーCPUの出荷数量は、今年と来年、力強い2桁の伸びを見込んでいます」
今回:「業界のサーバーCPUの出荷数量は、2026年と2027年の両方で、30%を超えて伸びると見ています」
「力強い2桁」から「30%超」へ。幅のある言葉が、数字に置き換わりました。
市場規模についても変化があります。3ヶ月前は、競合が出した市場規模の数字について聞かれても、財務責任者は「数字は出さずに」と答えていました。今回は最高経営責任者が自分から、400億ドルから2,000億ドル超という数字を出しています。
数字も、その言葉と同じ方向です
財務責任者によれば、今回で「8四半期連続で、自分たちの見通しを上回った」ことになります。
- 売上 165億ドル(会社の見通しの中心は163億ドル)
- 調整後の一株利益 0.52ドル(会社の見通しは0.38ドル)
- 調整後の粗利率 44.1%(こちらも見通しを上回りました)
💡調整後(non-GAAP)=会社が一時的だと考える項目を除いた数字。会計基準どおりの数字とは別物です。この記事の一株利益と粗利率は、すべて調整後です。
中身を分けると、強いのはデータセンター・AI部門です。
- データセンター・AI部門の売上 73億ドル(前の四半期比+17%、前年同期比で約+80%。1ドル150円で約1兆950億円)
- この部門の営業利益は30億ドルで、売上の42%
- 前の四半期は63億ドル(前の四半期比+24%)で、2四半期続けて大きく伸びています
- 会社は、この部門の2026年の売上が「年初の想定を100億ドル近く上回って着地する」見込みだと言っています
もう一つ、地味ですが重い数字があります。製造装置メーカーへの確定発注が、前の四半期比で約40%増えました。作る量を本気で増やしにいっている、という意味です。
顧客の名前も1社出ました。最新世代のCPUをオラクルのクラウドに導入する契約です。最高経営責任者は「複数の顧客が、長期の供給契約を結びたいと言っている」とも語りました。ただし、名前が出たのはオラクル1社だけで、契約の金額は開示されていません。
弱い半分——パソコンは、言葉ごと冷えました
もう一方のパソコン向けです。ここは3ヶ月で向きが逆になりました。
3ヶ月前:「部品の制約と値上がりが広がる中でも、パソコン向けの市場は底堅さを保ちました」
今回:「パソコンの調整のペースは、この2ヶ月で加速しました」
会社が挙げた原因はメモリです。パソコンに入れるメモリが足りず、値段も上がっていて、そこに企業のIT予算の伸び悩みが重なり、パソコンメーカーが在庫を急いで減らしています。財務責任者は来年について、こうまで言いました。
「はっきり言っておきますが、メモリについて、来年は楽観していません」
会社の見立てでは、パソコンの市場(台数)は2026年が約12%減(下半期は20%超の減少)、2027年も約10%減です。パソコン向け部門の売上は81億ドルで、前の四半期比9%減でした。
明るい点もあります。AI機能を載せたパソコン向けの売上は前年同期比+35%、低価格帯の新しいCPUは出荷数量が前の四半期比で約70%増えました。ただ、市場そのものが縮むときに、部門全体を押し上げる大きさではありません。
次の3ヶ月の見通しは、今回より下がります
ここが、僕がどちらを信じればいいのか分からなかった部分です。
会社が出した次の四半期(10〜12月期)の見通しは、
- 売上 150億〜160億ドル(中心155億ドル)
- 調整後の粗利率 38%
- 調整後の一株利益 0.25ドル
今回の実績(165億ドル・44.1%・0.52ドル)から、売上も粗利率も利益も下がります。
💡ガイダンス=会社が自分で出す次の業績予想。
💡市場予想(コンセンサス)=その会社を調べているアナリストたちの予想の平均。
質問に立ったアナリストの1人は、「見通しは市場予想より約18億ドル低い」と言っていました。これは経営陣の言葉ではありません。ただ、通期の売上予想から1〜9月の実績を引いて逆算すると、10〜12月期の市場予想は約170億ドルになり、会社の見通しの中心はそれを15億〜18億ドルほど下回ります。
下がる理由は大きく3つあります。パソコンの在庫調整が10〜12月期に一番重くなり、少なくとも翌年1〜3月期まで続くこと。10月中旬にイスラエルの工場で起きた事故。そして、データセンター向けの供給が足りないことです。
データセンター・AI部門だけは、10〜12月期も前の四半期比で10%台半ばの成長を見込んでいます。強い部門は強いまま、弱い部門と事故が全体を引き下げる、という形です。
経営陣が答えなかったことと、数字に混ざっていたもの
質疑応答で、何度も聞かれて最後まで答えが出なかったことがあります。
供給の不足はいつ解消するのか。 3人のアナリストが角度を変えて聞きました。答えは毎回「2027年の前半のほうが、ウェハと基板が厳しい」まで。基板の生産能力を40%増やす話も、効いてくるのは2027年の後半だと財務責任者は言っています。需要が供給を上回っているのに、売上が伸びる速さは工場で決まる、ということです。
💡ウェハ=半導体を作る円盤状の材料。基板=チップを載せてつなぐ土台。どちらが欠けても、CPUは出荷できません。
市場予想との差18億ドルの内訳。 数字で答えたのはイスラエルの事故の分だけで、10〜12月期に約3億ドル、翌1〜3月期も同じくらいの影響が出ると言いました。残りの分解は示していません。
外部の顧客から製造を請け負う事業の顧客名。 前の四半期に続き、また聞かれました。最高経営責任者は冒頭の説明で「顧客の詳細は開示しないと一貫して言ってきた」と述べ、質疑でも「続報を待ってほしい」を繰り返しました。チップを組み立てる工程(パッケージング)の顧客については「この先2四半期で、2社ほど発表できる」と言いましたが、それ以上の時期は示していません。
そして、今回の好数字の一部は一時的なものでした。
- 外部顧客向けの製造売上は4億1,100万ドルで、前の四半期より1億1,800万ドル増えました。この増加は、財務責任者が自分で「主に、非経常の顧客案件によるもの」と説明しています
- 調整後の一株利益0.52ドルのうち約1セントは、230億ドルの増資で入った現金の受取利息で、見通しを出した時点では想定していなかった分です
逆向きの一時要因もあります。イスラエルの工場の事故は、10〜12月期の売上を約3億ドル、粗利率を約2ポイント押し下げます。次の四半期の見通しの弱さの一部は、この事故で説明がつきます。全部ではありません。
言わなくなったこと
3ヶ月前には具体的に語っていたのに、今回は消えた言葉もあります。
前の四半期、財務責任者は特定顧客向けの専用チップの事業について、「年率40億ドルの規模に達する」と金額で言っていました。今回その金額は出てこず、「この先数年でまた3倍になる」という言い方に変わりました。
チップを組み立てる先端技術について、前の四半期は「受注残が増えている」と言っていました。今回は「外部の顧客から大きな手応えがある」になり、受注残という言葉が消えています。
💡受注残=受けたけれど、まだ出荷していない注文の残高。
現金の見方も変わりました。前の四半期は「キャッシュフローは実際かなり良く見える」。今回は、来年の設備投資について聞かれて「来年はおそらく、フリーキャッシュフローが黒字になる展開ではない」と答えています。
💡フリーキャッシュフロー=本業で稼いだ現金から、工場などへの投資を引いた残り。家計でいえば、給料から住宅ローンの頭金を払った後に手元に残るお金です。
社内への言葉も変わりました。3ヶ月前の「またしっかり実行できた四半期でした」が、今回は「強い顧客の需要に応えられなかったことに、失望しています」と「チームに、大幅な実行力を求めています」です。
僕はこの部分に、むしろ好感を持ちました。メモリについて楽観していないこと、来年の現金が出ていくこと、自分たちが需要に応えきれなかったこと。悪い話を、具体的な言葉で自分から言っています。
AIの需要が、パソコンを冷やしている
強い半分と弱い半分は、実は同じ根から出ています。
最高経営責任者は、AIへの前例のない需要を背景に、業界が「歴史上でも最も大きな部類の供給不足」の中にあると話しました。パソコン側を冷やしているメモリの不足と値上がりも、その同じ流れの中にある、と僕は読んでいます。一方で、AIエージェントを動かすためのCPUの需要は増えています。インテルは、その両側に売っている会社です。
だから、この会社の数字は当分、二つの力の差し引きで決まります。データセンター側は、需要より工場の能力のほうが先に尽きています。アナリストの1人が、10〜12月期のデータセンター向け売上を年率に直すと300億ドル台半ばになると言い、財務責任者は「良い出発点だと思う」と答えました。パソコン側は、会社自身が2027年も市場が約10%縮むと見ています。
もう一つ、パソコンが弱いことには使い道もあります。パソコン向けに使っていた工場のラインの一部を、データセンター向けのCPUの製造に振り替えられる、と経営陣は答えています。ただし基板の不足は残るので、振り替えただけで全部が解決するわけではありません。
この見立てが崩れるとしたら
今回の読みは「データセンター側の格上げは本物で、ただし工場の能力とパソコンの冷え込みに、当面は頭を押さえられる」です。
これが違っていたと分かるのは、たとえばこんな形です。
- 次の決算(2027年1〜3月期)で、データセンター・AI部門の売上が前の四半期より減る
- 「業界のサーバーCPU数量が30%超で伸びる」という見通しが引き下げられる
- パソコンの在庫調整が、会社の言う「1〜3月期まで(一部は4〜6月期)」を越えて長引く
良い方に外れるなら、外部の顧客の名前が実際に発表されることです。「この先2四半期で」と言ったので、期限は経営陣自身が切っています。
ここに書いたのは、2026年10月29日の説明会で分かったことだけです。イスラエルの工場の影響も、メモリの値段も、まだ動きます。
強い言葉と弱い見通しが同じ回に並ぶとき、どちらが本当の向きだったのかは、1回の決算では決まりません。次の回で、30%超という言葉が残っているか、データセンターの売上が減らずに済んだか。そこを前の回と並べて読みます。
※この記事は、決算説明会の原文をAIで読み解いて書き、複数の検査(事実照合・表現・法務)を通したうえで公開しています。
※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。