ウェブサイトの「玄関」を世界中で預かっている会社が、1年のうちに3回、成長のギアを上げたと自分で言いました。
クラウドフレアは、ネットの裏側で動いている会社です。名前を知らなくても、この会社を通ったページを今日も何度か開いているはずです。
■ クラウドフレアの決算説明会の内容(要点)
- 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
- 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月5日
- 「とても強い四半期」から「過去最高の四半期」へ
- 数字も、同じ方向を向いていました
- 見通しは、自分の前回も市場の予想も上回りました
- 上振れの主役は「使った分だけ」の売上でした
日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。
※この記事で扱うのは、2026年11月5日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。
💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。発言はそのまま記録に残ります。
その前に——クラウドフレアは、何を売っている会社でしょう
「クラウド」と付くので、アマゾンやマイクロソフトのようにデータセンターを貸す会社だと思われがちです。中心はそこではありません。
ふつう、サイトを見に来た人のアクセスは、そのサイトのサーバーへ直接届きます。クラウドフレアを使うと、間にこの会社の網が入ります。世界中に置いた拠点で、近くの拠点がページを素早く返し、怪しいアクセスや大量の攻撃をそこで止めます。マンションでいえば、各部屋の前に立つのではなく、建物の入口に受付と警備員を置くやり方です。
この「入口」を押さえていることが、今回の決算の2つの話につながっています。
ひとつは、入口にプログラムそのものを置けることです。開発者向けの仕組み(Workers)で、アプリを入口の拠点で直接動かせます。今回紹介された大口契約では、ある急成長中のAI企業が1年・1,100万ドルの契約を結びました。従来の大手クラウドでは使っていない間の計算資源にも料金がかかるのに対し、こちらは「アプリはミリ秒で立ち上がり、実際に使った分の計算だけを払う」と説明されています。
もうひとつは、入口に立っているから、新しい弱点の知らせが早く届くことです。経営陣は、ネットのかなりの部分(会社の説明では2割超)がすでに自社の後ろにあるため、新しい脆弱性の非公開の通知を最初に受け取る側の一つにいると話しました。
AIのエージェント(人の代わりにネットを動き回るプログラム)が増えるほど、入口を通る量は増えます。売上がどこから伸びているかは、この2つで説明できます。
「とても強い四半期」から「過去最高の四半期」へ
3ヶ月前と今回で、経営陣の言い方ははっきり上がりました。
3ヶ月前(最高経営責任者):「非常に強い第2四半期でした」
今回(同):「ほぼすべての指標で、過去最高の四半期でした」
さらに今回は、「エンジンが全部のシリンダーで点火していて、もう一段上のギアを見つけたようなもの」「とてつもない四半期」とまで言っています。
そのうえ、成長の変化点を日付つきで自分から示しました。
「成長率は2025年10月に変曲し、2026年7月に再び加速し、そしてこの10月の初めにもう一度加速しました」
3ヶ月前に「研究目的の試験」と言っていたOpenAIとの取り組みについて、今回は「OpenAIはその対価を払っている」と話しました。準備原稿では、「Act 4」と呼んできた製品で初めての売上を第3四半期に計上したとも述べています。
3ヶ月前:「OpenAIとの、初めての種類の研究パイロットを最近発表しました」
今回(質疑):「OpenAIはその対価を払っています」
今回(準備原稿):「第3四半期に、私たちが『Act 4』と呼んできた製品で、初めての売上を計上しました」
💡Act 4は、この会社が自分の事業の「第4幕」と呼んでいるもので、AIエージェントの時代に、ネットの新しいお金の流れを作る側の製品群のことです。ここだけ覚えれば十分です。
会計上の黒字の時期も、言い切りに変わりました。
3ヶ月前(最高財務責任者):「(目標に対して)はっきり先行しています」
今回(同):「第4四半期に、会計基準どおりの黒字を達成する見込みです。今年の投資家説明会で示した『遅くとも2028年まで』という見通しより、大幅に早い時期です」
エージェントの予測も強くなりました。3ヶ月前は、5年でネットのアクセスは人間以外が人間の1,000倍に達しうると話していました。そのときは「これまで毎回読みを外してきた、という大きな但し書きつきで」と前置きしていました。今回は「1四半期たって、その賭けの時期については、もっと早いほうに張ります」です。前置きが消えています。
数字も、同じ方向を向いていました
言葉の強さは、数字で裏が取れます。
- 売上 7億8,250万ドル(前年同期比 +39%、前の四半期は+36%)。1ドル150円で約1,170億円
- 営業利益 1億3,710万ドル、営業利益率 17.5%(前の四半期から+3.7ポイント)
- 一株利益 0.38ドル(調整後)
💡調整後(non-GAAP)=会社が「一時的」「現金が出ていかない」と考える費用を除いた数字。説明会では、売上以外の数字はすべて調整後だと最初に断っています。会計基準どおりの利益は、まだ黒字になっていません。だから「第4四半期に黒字化」が大きな話になります。
売上は、3ヶ月前に会社自身が出した見通し(7億3,600万〜7億3,700万ドル)を約6%上回りました。
中身も伸びています。
- 年10万ドル以上払う顧客は5,000社超(この四半期だけで308社増、前年同期比+25%)
- 既存顧客が前年より何%多く払ったか(ドルベースの売上継続率)は122%(前の四半期120%、前年同期119%)
- 新たに増えた有料顧客は15万8,000超(前の四半期は8万超)。開発者は740万超から1,000万へ
- 12ヶ月以内に売上になる契約残高(cRPO)は前年同期比+37%(前の四半期は+35%)
💡売上継続率122%=去年100払っていた顧客の集団が、今年は122払っている、という意味です。辞めた顧客の分を差し引いても2割増えています。
営業の生産性は前年比で11四半期連続の改善で、新規顧客からの受注の伸びは、前の四半期に記録した「5年ぶりの高さ」をさらに上回ったと話しています。
見通しは、自分の前回も市場の予想も上回りました
💡ガイダンス=会社が自分で出す業績予想。比べる相手は「前回の自分」だけでなく、その会社を追っているアナリストたちの予想の平均(コンセンサス)です。
通期の売上見通しは、3ヶ月前の28億6,400万〜28億7,000万ドル(前年比+32%)から、29億6,300万〜29億6,400万ドル(同+37%) へ。中心で約9,600万ドル、率にして約3.4%の引き上げです。1ドル150円で約4,440億円になります。記事作成時点(11月6日)に集計されたアナリスト予想の平均(約28億7,000万ドル)も3%あまり上回りました。
通期の一株利益(調整後)の見通しは1.35ドルで、前回の1.25〜1.26ドル、市場の予想(同時点)1.26ドルのどちらも上回っています。通期の営業利益見通しも、4億4,300万〜4億4,500万ドルから4億6,200万〜4億6,300万ドルへ上がりました。
第4四半期の売上見通しは8億4,500万〜8億4,600万ドル(前年同期比+38%)。前回の通期見通しから逆算した第4四半期の値(約7億9,400万ドル)より6%以上高い水準です。
ただし、+38%は今回の+39%よりわずかに低い数字です。3回目の加速を「この10月の初め」と言った直後に、次の四半期をわずかな減速で組んでいます。理由を聞かれた最高財務責任者の最初の答えは「私たちは、いつも見えているものをガイドします」でした。続く質問では、上振れが一部の大口ではなく多くの顧客の小さな積み重ねで起きたことが、第4四半期の見通しの組み方に影響した理由の一つだと補っています。数字の内訳は示していません。
上振れの主役は「使った分だけ」の売上でした
なぜこれほど伸びたのか。会社の説明は具体的でした。
この会社の大口契約は、Pool of Funds と呼ばれる形が多くあります。
💡Pool of Funds=顧客が先に「この期間にこれだけ使う」という利用枠を契約し、その枠の中で複数の製品を使っていく契約です。交通系ICカードにまとめてチャージしておき、電車にもバスにも買い物にも使う形に近いものです。
今回の上振れについて、最高財務責任者はこう言っています。
「変動型の売上が引き続き強く、それが上振れの主な要因でした」
そして中身はこうです。多くの顧客が新たにこの契約に加わったか、契約した枠を予定より速く使い切った。だから更新が早まり、更新のときに、さらに大きな枠を契約した。チャージを使い切るのが早いので早めにチャージし直し、次はもっと多めに入れた、という流れです。最高経営責任者は「私たちが売るほぼすべてのPool of Funds案件で、Workersが大きな構成要素になっている」と付け加えました。
もうひとつの柱がセキュリティです。最高経営責任者は、AIが既存のソフトの欠陥を次々に見つけている結果、新しい脆弱性の報告が急増していると説明しました。
「AIの最先端を追っていない古い組織も、加速するペースでクラウドフレアを契約しています」
AIの顧客に偏っているのかという質問には、「AIに集中しているとは決して言えません」と答え、金融、政府、製造、医療、ネット通販と業種を挙げました。売上の地域別でも、アメリカが前年同期比+44%、欧州・中東・アフリカとアジア太平洋がそれぞれ+32%で、伸びは一地域に寄っていません。
12ヶ月以内の契約残高が+35%から+37%へ加速しているのは、この「早めの更新と増額」と同じ向きの数字です。
言われなくなったことと、まだ答えが出ていないこと
良い数字が並ぶ一方で、3ヶ月前にあって今回消えたものがあります。
パイプラインの話が消えました。 3ヶ月前は「新しい商談の創出は加速を続けていて、前の四半期比で5年ぶりの速さで伸びている」と言っていました。今回は、新しい商談の創出の伸びを数字で語る場面はありませんでした。年間契約額の伸びは「過去最高」、参加する商談の数も増えたと語られましたが、商談の創出がどれだけ伸びたかは示されていません。
粗利率の「安定する」が消えました。 3ヶ月前は粗利率73.1%で「8四半期ぶりに前の四半期から改善した」と言い、最高財務責任者は「今の水準あたりで安定すると思う」と話していました。今回は72.4%で、前の四半期から0.7ポイント、前年同期から2.9ポイントの低下です。安定するという言葉は繰り返されていません。開発者向けの仕組みは粗利がやや低いと会社自身が説明しているので、そこが伸びるほど粗利率には逆風になります(会社は、その分営業費が軽く済み、営業利益率に表れていると説明し、72.4%は長期目標の70〜77%の範囲内だとしています)。
契約残高全体の伸びは鈍りました。 12ヶ月以内の分は加速した一方で、残高全体(RPO、28億7,700万ドル)の伸びは前年同期比+38%から+34%へ下がっています。近い分は増え、遠い分の伸びは緩んだ形です。
このほか、3ヶ月前に名前を挙げていた新製品のいくつか(Wallet など)は、今回の説明会の記録では、名前で出てきませんでした。
数字の側にも、割り引いて見るべきものがあります。
- 上振れの主因が変動型の売上で、四半期ごとの振れが大きい
- セキュリティ需要は脆弱性の急増という出来事が起点で、最高経営責任者自身が「(悪い状況は)2年ほど続く」と期間を区切っている
- 前の四半期に人員削減を行っている(費用1億5,100万ドルは調整後の数字から除外)。会社は営業利益率の拡大を Workers の伸びのおかげと説明しているが、改善のうち、どれだけが人員削減の効果かは説明会では示されていない
- フリーキャッシュフローは8,210万ドルで売上比10%(前年同期は13%)
質疑で何度も聞かれたのに、数字で答えが出なかったことが2つあります。
ひとつは、Act 4がいつ本格的な売上になるのか。2つの証券会社が続けて聞きました。最高経営責任者は、収益化の道を2つに分けて答えました。AI企業の巡回を効率化する方は「すでに売上を計上していて、その額も大きい」(OpenAIが支払っている)。一方、少額決済や広告の方は「大きな収益源になるまでどれくらいかかるか、正確には分かりません」。10年先にはこれが事業の最大の部分になると思う、とも言いましたが、Act 4の売上の金額は出していません。
もうひとつは、1,000万人の開発者がどれだけお金になっているか。こちらも2社が角度を変えて聞き、大口の新規案件のうちWorkersを含む割合を問われた最高経営責任者は「何%の案件に付いているか、正確には開示していないと思います」と答えました。成長の主役として語っている製品の割合が、外からは見えないままです。
なお、この四半期には25億ドルの転換社債を発行し、13億ドルを返済しています。事業の数字とは別の、資金繰りの話です。
次の決算で確かめること
今回の決算を一言でまとめると、入口を押さえた会社に、AIのエージェントと脆弱性の急増という2つの追い風が同時に来て、その両方が「使った分だけ」の売上として表に出た四半期です。
これが一時的な上振れだったのかは、次の回で分かります。見る場所は3つあります。
- 第4四半期の売上が見通しの8億4,500万〜8億4,600万ドルに届くか。会社は「見えているもの」で組んだと言っているので、届かなければ見えていたものが変わったことになります
- 12ヶ月以内の契約残高の伸び(今回+37%)と売上継続率(今回122%)が下がらないか。早めの更新と増額が続いているかは、この2つに出ます
- 第4四半期に、予告どおり会計基準どおりの黒字を出せるか
逆に、粗利率が72%台で下げ止まり、Act 4の売上に金額が付くようなら、今回の「3度目の加速」は一度きりではなかったことになります。
ここに書いたのは、2026年11月5日の説明会までに分かっていることです。
経営陣は、成長が変わった月を3つ挙げました。2025年10月、2026年7月、そして今年の10月初め。最後の1つは、まだ決算の数字になっていません。次の回は、その10月が入った最初の四半期です。出たら、同じように前の回と突き合わせて書きます。
※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。