3ヶ月前、この会社が使っていた言葉は「見込んでいる」「追いかけている」「なりうる」でした。
今回は、その3つが「受け取った」「選ばれた」に変わりました。無人ジェット機の量産前の契約、巡航ミサイル用エンジンの2番手の調達先、誘導爆弾のエンジン。どれも前の四半期には、まだ契約や選定の形になっていなかったものです。
アメリカの防衛関連の中堅企業、クラトス・ディフェンス・アンド・セキュリティ・ソリューションズです。ミサイル用の小型ジェットエンジン、極超音速(音速の5倍以上)の試験機、無人の戦闘用ジェット機、ミサイルやレーダーの部品を、米軍と大手の防衛企業に作って売っています。
■ クラトスの決算説明会の内容(要点)
- 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
- 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月5日
- 「見込み」が「受注」に変わった四半期
- 受注は売上の2.2倍、受注残は過去最高でした
- それでも、来年の見通しは市場の予想に届きませんでした
- 3ヶ月前に語っていたのに、今回出てこなかったこと
日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。
※この記事で扱うのは、2026年11月5日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。
💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。発言はそのまま記録に残ります。
ただし、この決算は「全部が前に進んだ」話ではありません。受注は大きく伸びたのに、会社が初めて出した2027年の見通しは、市場の予想を下回りました。その両方を順に見ていきます。
その前に——ミサイルの「エンジン」って、どういう商売なんでしょう
ジェットエンジンと聞くと、旅客機の翼の下にある巨大なものを思い浮かべると思います。あれは何十年も整備しながら使い続ける、とても高価な機械です。
巡航ミサイルのエンジンは、考え方が正反対です。一度飛んだら終わり。 長く使う必要がないので、壊れにくさより「安く、大量に、早く作れること」が求められます。小さく、単純な作りの使い捨てのジェットエンジンです。
前の四半期、この会社はエンジン1基の平均の販売価格を5万ドルと言っていました。1ドル150円で約750万円。旅客機のエンジンではなく、乗用車1台くらいの値段の部品だと思ってください。
この商売の性質は、単価より数で決まります。社長は今回、アメリカ空軍の安価な巡航ミサイルの調達計画を例に挙げ、「2027年から5年間で2万8,000発の巡航ミサイル」を対象にした制式の計画だと説明しました。
だから会社は、先に作る準備をしています。
「2027年にミシガンの工場で3,000基のターボジェットエンジンを生産できるよう、いまサプライチェーンに発注をかけています」
そのうち約1,500基を2027年に、主に後半(7〜12月)に出荷する予定です。前の四半期の平均単価で掛け算すると約7,500万ドルになります。この会社の四半期の売上が4億7,000万ドル台なので、エンジン単体ではまだ大きくありません。 意味があるのは、ここが「選ばれて、数が決まる」段階に入ったことです。
「見込み」が「受注」に変わった四半期
経営陣の言葉が、3ヶ月でどう変わったか。3つ並べます。
無人ジェット機「ヴァルキリー」について。
3ヶ月前:「海兵隊からのヴァルキリーの追加受注を、今年末までに受け取ることを見込んでいます」
今回:「ごく最近、ヴァルキリーの低率初期生産(LRIP)と呼べる契約を受け取りました」
ただし、この契約は顧客の名前も金額も出していません。社長は「顧客側の制約により、詳細はお伝えできません」と言っています。前の四半期に見込んでいた海兵隊の受注と同じものかどうかも、明かされていません。
💡低率初期生産(LRIP)=本格的な量産の前に、少ない数で作り始める段階の契約。試作を終えて「作って納める」側に入ったという意味です。
巡航ミサイル用のターボファンエンジンについて。
3ヶ月前:「当社のターボファンエンジンと、パートナーのGEエアロスペースが追いかけてきた案件です」
今回:「当社とGEエアロスペースのエンジンが、統合空対地スタンドオフミサイル(JASSM)の2番手の推進システムとして選ばれたと発表されました」
こちらは技術開発の段階の契約も同時に受けています。
💡2番手の調達先(セカンドソース)=軍が同じ部品を1社だけに頼らないよう、2社目として指定する仕組み。1社目が止まっても供給が続くようにするためのものです。
射程を延ばした誘導爆弾(JDAM-LR)について。
3ヶ月前:「当社のエンジンを含むJDAM-LRは、それだけで当社にとって最大級の単独案件の1つになりうると考えています」
今回:「空軍がボーイングにJDAM-LRの契約(暫定契約)を出し、当社のJ85ターボジェットエンジンがエンジンの調達先として選ばれました」
エンジンが組み込まれていることは前の四半期から言っていました。変わったのは、兵器そのものに生産の契約が付いたことです。3本とも、同じ方向に1段進んでいます。
極超音速の事業も同じです。前の四半期は「極超音速とその他で約4億ドルの新しい資金を最近受け取った」と言い、今回は極超音速の事業について「すでに約6億ドルの資金を受け取っている」と答えました(2つの数字が同じ数え方かは説明されていません)。2027年にこの事業で出す売上の計画は、前の四半期の「少なくとも7億ドル」から、今回は「約7億ドル」という言い方になりました。金額は同じです。
受注は売上の2.2倍、受注残は過去最高でした
数字も、言葉と同じ向きを向いています。
- 売上 4億7,180万ドル(前年同期比 +35.7%、買収を除いた伸び +23.2%)
- 受注 10億4,000万ドル、受注対売上比率(book-to-bill)2.2倍
- 受注残 26億ドル(過去最高・1ドル150円で約3,900億円)
- 調整後EBITDA 5,090万ドル(売上比10.8%)
💡受注残(バックログ)=契約は取ったが、まだ売上になっていない仕事の合計。これから納める分の「予約の山」です。
💡受注対売上比率(book-to-bill)=その四半期に取った新しい受注を、その四半期の売上で割ったもの。1倍を超えると、納めた量より新しく入った仕事のほうが多い=予約の山が高くなっている状態です。
前の四半期に会社が出していた比率は「直近12ヶ月で1.3倍」でした。今回の2.2倍は1四半期だけの数字なので単純には並べられませんが、この四半期は、納めた量の2倍以上の仕事が入ってきたことになります。
売上は会社自身の想定(4億6,000万〜4億8,000万ドル)の中央をわずかに上回った程度です。強かったのは利益のほうで、調整後EBITDAは会社の想定(4,000万〜4,500万ドル)の上限を超えました。理由は、利益率の高い製品の比率が上がったことと、量が増えて固定費が薄まったことだと説明しています。
💡調整後EBITDA=本業の稼ぎを見るために、利払い・税金・設備の目減り分などを足し戻し、会社が一時的だと考える項目も除いた利益(会計基準どおりの数字=GAAPではなく、non-GAAPの数字です)。
事業別の伸び(買収を除く)では、極超音速とロケットの事業が +149%、エンジンなどのタービン事業が +27.1% でした。買収を除いた全体の伸びは、前の四半期の19.1%から23.2%へ上がっています。
それでも、来年の見通しは市場の予想に届きませんでした
ここで向きが変わります。
会社は今回、初めて2027年の見通しを出しました。売上21億〜22億ドル、調整後EBITDA 2億3,000万〜2億4,000万ドル。 これに対し、2027年の売上の市場予想の平均は約22億3,000万ドル(22人・決算発表の翌日時点の集計)でした。中央の21億5,000万ドルは予想を下回り、レンジの上端でも平均に届きません。
💡コンセンサス(市場の予想)=その会社を調べているアナリストたちの予想の平均。会社の見通しが良く見えても、比べる相手はこの平均です。
社長はこれを、自分から「慎重に出した」と言っています。
「本日の2027年の初回の見通しは、慎重に出そうとしています。現在のつなぎ予算、レームダック議会、1月に始まる新しい議会、分かれた政府、そして続いているサプライチェーンの課題のためです」
さらに「社内の2027年の予測は、本日の見通しよりかなり高い」とも言いました。ただ、数字として出てきたのは市場の予想を下回るほうです。「本当はもっと高い」は言葉で、紙に書いた数字は低い。この2つの間に差があります。
💡つなぎ予算(CR)=新しい年度の予算が議会で決まらないとき、前年の水準で政府の支出を続ける仮の措置。新しい計画にお金が付きにくくなります。
足元の見通しも、強くはなっていません。2026年通期の売上見通しは17億8,000万〜18億1,000万ドルへレンジを狭め、市場の予想(約18億ドル・同じ時点)とほぼ同じ位置です。そして10〜12月期の買収を除いた伸びの見通しは、前回の 19〜31% から今回 18〜26% へ、上端が5ポイント下がりました。
受注は大きく伸びた。見通しは引き上げに回らなかった。この決算の中心にある落差は、ここです。
3ヶ月前に語っていたのに、今回出てこなかったこと
言葉が前に進んだ場所がある一方で、後ろに下がった場所もあります。
台湾の案件です。 前の四半期、社長は「試験飛行がうまくいけば、顧客は来年前半にマイティ・ホーネットを生産に入れることを話しています。最初はオクラホマで作ります」と言っていました。今回は生産の場所を聞かれ、こう答えました。
「もしこれが実現すれば、もし通れば、最初の機体はアメリカで作り、国務省の承認が得られれば台湾で生産できる体制を作り、当社はライセンス料を受け取る計画です」
来年前半という時期には触れず、「2月の第4四半期の決算でもう少しお伝えできるはず」と結んでいます。
そして、言葉や数字が消えたものが3つあります。
1つ目は、産業用のガスタービンです。前の四半期は「現在、当社で最も急成長している事業の1つ」と紹介していました。今回は説明会でも決算発表の資料でも、産業用ガスタービンとしては一度も出てきません(数字はタービン事業全体の伸びに含まれている可能性があります)。
2つ目は、ヴァルキリーの海外の顧客です。前の四半期は「ほかに2社の国際顧客がいます。国務省の手続きを通過して、ごく近いうちに発表できることを願っています」と言っていました。今回、発表はなく、言い方は「ほかの国際的なヴァルキリーの顧客」とまとめた表現に変わっています。
3つ目は、ヴァルキリーの生産の速さです。前の四半期は「2027年に入るころには、平均で月1.5機まで上がると考えています」と数字で言っていました。今回も「ヴァルキリーとファイアジェットの生産を大きく引き上げている」とは言いましたが、2027年と28年に作る数は「顧客の需要と機種の組み合わせ次第で変わる」とし、月何機という数字は出しませんでした。
答えが出なかったことと、数字を押し上げたもの
質疑応答で最も多く出たのはヴァルキリーの話で、4人のアナリストが触れました。2027年の見通しにいくら入っているかを直接聞かれた答えは「見通しにヴァルキリーを含め始めています。含め始めています」で、金額はありません。2027年の受注の見通しを聞かれた場面でも「量産前の契約について、すでにお伝えした以上の詳細は出せません。申し訳ないですが、できません」と言い、ただし「事業部門別の見通しを出すときと、第4四半期の決算のときに、この契約による売上の立ち上がりが見えるはずです」と付け加えました。同じ質問の中の、海外での製造に関する受注については「秘密保持契約があるので一切コメントできません」でした。もう1つ、別の大型案件で2番手の調達先に選ばれたという話も「プログラム名は言えません」でした。いちばん大きく見える受注ほど、(少なくとも今回の時点では)中身が見えません。
逆に、極超音速は定量で答えています。約6億ドルの資金を受け取り済みで、2027年の約7億ドルへの道筋は明確、という答えでした。予算環境については、別の質問で会社全体の2027年の目標について「1兆1,500億ドルの2027年度国防授権法の中身に大きな変更がなければ、目標の達成に追加の財政法案(リコンシリエーション法案)は必要ない」と答えています。
数字の側にも、割り引いて見るべきものがあります。
- 売上の伸び35.7%のうち、買収した2社(ノマドとオービット)の分が4,370万ドル。買収を除くと23.2%です
- 無人機の部門は減収でしたが、これは前年同期に海外顧客へのヴァルキリー出荷1,610万ドルが一度きりで入っていたためです
- 調整後EBITDAの上振れは、主に製品の構成が有利だったことによるもの
- 現金は出ていっています。売掛金が膨らみ、売上の回収にかかる日数は114日から125日へ延び、フリーキャッシュフローはマイナス2,940万ドルでした
最後の点は、会社も隠していません。工場や設備に投資している最中で、現金を生む側に回るのは2029年の見込みだと説明しています。増資の予定はないとも言いました。
一方で、成長の中心にあるのは、軍の制式の計画や量産中の計画です。社長は「仕事の大半は、2026年度の予算で資金が付いた大型の計画に結びついている」と説明しています。一度きりのものは数字を飾ってはいますが、伸びの中心は一度きりのものではありません。
なぜ、いまこの会社にこれが起きているのか
先ほどの空軍の計画は、英語の名前を訳すと「手頃な価格で大量に用意するミサイル群」です。少数の高価な兵器だけでなく、安く、たくさん用意できる兵器に予算が付き始めています。使い捨ての小型エンジンは、その中心にある部品です。
この会社は、そこにエンジンと機体の両方で入っています。今回の受注を並べると、その形が見えます。
- エンジン:誘導爆弾(JDAM-LR)の調達先に選定、巡航ミサイル(JASSM)の2番手の調達先に選定、3,000基分の部品を先に発注
- 機体:ヴァルキリーの量産前の契約
- 極超音速:新しい3件の受注(ネメシスI、ネメシスII、クラーケン)と、約6億ドルの資金
- それ以外:エネルギー省の大型のレーザー兵器の計画、宇宙事業の数億ドル規模の新規受注、ミサイルやレーダー向けの部品
背骨は2本あります。1本目は、2027年の売上計画が約7億ドルの極超音速。2本目は、選ばれて数が決まり始めたエンジン。ただし時間の長さは同じではありません。極超音速と、2027年の主に後半に出荷するターボジェットは、ここから1年半以内の売上に入ってくる話です。一方で、JASSM用のターボファンが量産前の段階に入るのは2028年、ロケットモーターの量産も社長自身が「慎重に言えば2028年初め」としています。選ばれたものの一部は、まだ遠い先の売上です。
次の決算で、確かめること
今回の決算は「受注と選定で前に進み、見通しの数字だけが慎重だった」回でした。この読みが外れるのは、次のどれかが起きたときです。
- 10〜12月期の売上が、今回の見通し(4億8,000万〜5億1,000万ドル)の下側に沈む
- ヴァルキリーの量産前の契約が、次の回でも売上の見通しに金額として出てこない
- 3,000基の生産計画や、2027年に約1,500基を出荷する予定が、数字ごと縮む
逆に、良い方へ外れる形もあります。予算が年明けに決まり、社長の言う「社内の予測」に近い数字へ2027年の見通しが引き上げられた場合です。そのときは、今回の見通しの慎重さは、本当に慎重さだったことになります。
ここに書いたのは、2026年11月5日の説明会までに分かっていることだけです。予算の行方も、名前の出ていない受注の中身も、まだ動きます。
「選ばれた」と「売上になった」の間には、時間があります。この会社の次の数四半期は、その間を埋めていく回になるはずです。発表されなかった2社の海外顧客と、ヴァルキリーの金額が次に出てくるかどうか。次の決算でも、同じところを見ていきます。
※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。