データセンターの電気が足りません。送電網につなぐ順番待ちは何年も続き、電気代が上がるのを嫌う住民の反発も強まっています。そこで「送電網を待たずに、データセンターの隣で自分で発電する」という商売が伸びています。
その商売のまん中にいる会社のひとつが、ソラリス・エナジー・インフラストラクチャーです。もともとはシェールオイル・ガスの掘削現場で使う物流設備の会社でしたが、いまは売上の8割強を発電の事業が占めています。
■ ソラリス・エナジーの決算説明会の内容(要点)
- 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
- 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月5日
- 結果:売上 3.4億ドル/1株利益 0.45ドル
- 3ヶ月前は「交渉中」、今回は「署名した」
- 長期契約は2.3GWから3.2GWへ、受注残は160億ドルを超えました
- 10〜12月期の見通しは、3ヶ月で2度引き上げられました
- 3ヶ月前に名指ししていて、今回は名指しされなかったもの
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※この記事で扱うのは、2026年11月5日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、編集部の予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。
💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。発言はそのまま記録に残ります。
その前に——「メーターの裏で発電する」とは、どういうことでしょう
ふつう、建物は電力会社の送電網から電気を買います。電気は電力会社の発電所でつくられ、送電線を通って届き、建物の入口にある電力メーターで量を測られて請求されます。
この会社がやっているのは、その逆です。メーターの内側、つまり建物の敷地の側に、発電所そのものを置きます。 英語で behind-the-meter(メーターの裏)と呼ばれるやり方です。使うのは天然ガスで回すタービン発電機で、トレーラーに載せて運べる大きさのものを何台も並べます。
日本で近いものを挙げるなら、工場の自家発電です。大きな工場は昔から、電力会社に頼らず自分の敷地で電気をつくってきました。違うのは規模と期間です。この会社が並べるのは非常用の予備ではなく、データセンターが毎日使う電気の本体で、契約期間は平均で約11年です。
これが今回の決算の結論に効いてくるのは、電気を「何年間、いくらで買ってもらえるか」が先に決まる商売だからです。発電機を置けば売上が立つのではなく、長期の契約を結んだ分だけ、将来の売上が前もって積み上がります。だからこの会社の決算では、その四半期の売上と同じくらい「契約がどれだけ積み上がったか」が意味を持ちます。
3ヶ月前は「交渉中」、今回は「署名した」
💡ハイパースケーラー=巨大なデータセンターを自前で持つ大手のクラウド企業。アマゾン、マイクロソフト、グーグルなどを指します。
3ヶ月前の決算説明会で、会長は交渉をこう語っていました。
「いま私たちは、複数のハイパースケーラーやAIの計算基盤の会社と、追加で複数ギガワットの需要について活発に交渉しています」
今回、同じ会長の言葉はこうです。
「先週、これまでで最大かつ最長の電力契約に署名しました。期間15年、900MWの契約で、相手は投資適格の大手の産業・テクノロジー企業です」
3ヶ月前は交渉の話でしたが、今回は署名の話です。ただし会社は、この契約が3ヶ月前の交渉から生まれたものかどうかを説明していません。期間は最初の15年に、さらに15年延ばせる選択権が付いています。3ヶ月前に期間を延ばした契約は「10年+延長8年」でしたから、長さでも過去最長です。
💡MW(メガワット)=発電する力の大きさ。1,000MWで1GW(ギガワット)。原子力発電所の大きな1基が約1GWなので、900MWはその1基分に近い規模です。
相手は新しい顧客ではなく、以前から取引のある既存の顧客です。会社が「分野の広い産業・テクノロジー企業」と呼ぶだけで、社名と契約金額は明かしていません。
契約の経緯を聞かれた共同CEOは、「本当の意味での競争入札ではありませんでした」と答え、すでに付き合いのある顧客と、地域の分散や設備の使い道、採算を見て決めたと説明しました。続けて社長は、設備そのものには多くの顧客が関心を持っており、「その意味では競争だった」と補足しています。
今回も「既存と新規の顧客と活発に協議を続けている」とは述べました。ただし、3ヶ月前の「複数のハイパースケーラーと複数ギガワット」のような件数や規模は出てきませんでした。
長期契約は2.3GWから3.2GWへ、受注残は160億ドルを超えました
契約の量は、署名の言葉どおりに増えています。
- 長期の電力契約=3ヶ月前の約2.3GWから、今回は3.2GW。まだ相手の決まっていない300MWを合わせると、会長の言い方で「3.5GW超」
- 受注残=160億ドル超(1ドル150円で約2兆4,000億円)。契約の大きさで重みをつけた平均の契約期間(加重平均)は約11年
- 全設備が契約どおり動いたときの年間の調整後EBITDA=16億ドル超(同じレートで約2,400億円)という見込み
💡受注残=契約は済んでいるが、まだ売上になっていない分の合計。ここでは「この先11年ほどで、契約どおりに入ってくる予定の売上」です。
💡調整後EBITDA=本業でどれだけ稼いだかを見るための利益の一種で、会社が独自に調整を加えた数字(non-GAAP)。会計基準どおりの利益とは別物です。
当四半期の実績も過去最高でした。
- 売上 3億4,100万ドル(前の四半期比 +55%)
- 調整後EBITDA 1億3,600万ドル(前の四半期比 +26%)
- 会社の株主に帰属する純利益 約3,500万ドル。合弁会社(Stateline)の他社持ち分の影響を除いた調整後の純利益は4,300万ドルで、1株あたり0.45ドル(市場の予想は0.22ドルでした)
発電の事業だけで見ると、売上は2億8,400万ドルで前の四半期から79%増えています。
契約の解約については、今回、経営陣が説明会で条件を口頭で説明しました。顧客が都合で解約した場合、残りの期間の将来売上の50%(割り引かずに計算した額)を受け取り、設備は会社の手元に残るという条件です(2月に開示された契約書のひとつに、同じ条件が書かれていました)。「顧客が途中で抜けたらどうなるのか」は、この商売に対していちばん繰り返し投げられてきた疑問でした。
10〜12月期の見通しは、3ヶ月で2度引き上げられました
会社は今回、目先の見通しを再び引き上げました。
- 2026年10〜12月期の調整後EBITDA=1億6,500万〜1億8,500万ドル(前回は1億4,500万〜1億8,000万ドル)
- 2027年1〜3月期の調整後EBITDA=2億2,000万〜2億6,000万ドル(前回は2億〜2億4,000万ドル)
💡ガイダンス=会社が自分で出す業績の見通し。ここでは四半期ごとの調整後EBITDAの幅で示されています。
前回の幅は、9月8日の臨時の引き上げで出たものです。7月の決算説明会の時点では、10〜12月期は1億〜1億2,000万ドルでした。今回の上げ幅は中心の値で8〜9%ですが、7月の説明会から見れば10〜12月期は約6割上がっています。会長は「2027年は2026年の2倍を超える」とも言いました。
会社は売上と1株利益の見通しを出していないので、市場の予想と正面から比べることはできません。市場は2027年の売上を2026年の約1.8倍と見ていて、「EBITDAで2倍超」はその水準と同じか、やや上という位置です。予想を大きく引き離した、という話ではありません。
3ヶ月前に名指ししていて、今回は名指しされなかったもの
3ヶ月前に具体的に語っていたことのいくつかは、今回は細かく語られませんでした。
ひとつは、小型原子炉です。 3ヶ月前、会長は小型原子炉を開発する Deployable という会社に触れ、「Deployable の技術の商用化を手伝っていく」と話していました。今回、その社名は出てきません。発電機の種類について質問されたときも、会長は「触れはしました。ただ、レシプロエンジンや原子力や風力を名指しで具体的に挙げなかっただけです」と答えています。
もうひとつは、上で触れた交渉の規模です。 協議が続いているとは言いましたが、「複数ギガワット」という数字は出ていません。
どちらも、次の決算説明会で続きを追う価値があります。
答えが出なかったことと、見通しの立たない伸び
質疑応答でいちばん繰り返し聞かれたのは、サービス事業のことでした。この会社は今期、発電設備の据え付け・保守を手がける GESA と、用地の整備や建設を手がける Omega の2社を買収して連結に入れています。そのうち、外部の電力会社などから受けている仕事がどれくらいの割合か、その稼ぎが来年も続くのか。2つの証券会社のアナリストがそれぞれ形を変えて聞きましたが、割合の数字は示されず、社長は「サービスの側については、長期契約ほどの見通しはまだ持てていません」と述べ、見通しを出すのは来年1〜3月期までにとどめました。
数字の上でも差が出ています。売上は前の四半期比で55%伸びましたが、調整後EBITDAの伸びは26%でした。売上の伸びに利益の伸びが追いついていません。 会社はこの差の理由を説明していません。サービスの売上の比率が上がったことが一因とみられます。会長は、建設の部分について「多少でこぼこする」とも認めています。
ほかにも、今回の数字を読むうえで外せない点があります。
- 発電の事業で実際に売上を生んだ設備の量は、平均820MWで前の四半期比−14%。自社の設備は+20%でしたが、一時的に借りていた他社の発電機を予定どおり返したためです
- まだ相手の決まっていない300MWが動き出すのは2029年の見込みで、だいぶ先です
- 設備投資は約5億4,700万ドルで計画を下回りましたが、理由は支払い時期のずれで、10〜12月期に回る予定です
ここまでを並べると、今回の上振れは2つの層に分かれます。11年の長期契約という動かない層と、買収したサービス事業という見通しの立たない層です。前者は積み上がりました。後者は売上を大きく押し上げましたが、その先の見通しはまだ立っていません。
なぜ今、この会社にこれが起きているのか
理由は、データセンターが送電網につながれないことにあります。共同CEOは冒頭の説明で、データセンターが送電網から電気を引くことについて「規制と政治の環境は厳しい」と述べ、一般家庭の電気代を守ろうとする動きが勢いを増していると説明しました。送電網に頼らないで済む発電は、その逆風をそのまま追い風に変えます。
会長は、この使われ方の変化をこう言いました。
「これは、とりあえず仮の電源を置いておいて、あとで単純に置き換える、という話ではありません」
仮設の電源から、長く使い続ける電源へ。15年という契約の長さが、その言葉を裏づけています。
時間の道筋も具体的です。期末近くに、長期契約のプロジェクト2件で最初の部分に通電しました。3件目は2027年1〜3月期に売上が立ち始める見込みで、今回の900MW契約は2027年前半に通電を始め、2028年半ばにかけて立ち上がる予定です。新たに調達した200MWも2027年に売上を生み始めます。来年にかけての売上の多くは、すでに契約の中にあります。
顧客の集中についても、今回の説明会で数字が示されました。いま契約している設備が全部動いたとき、どの1社も調整後EBITDAの35%を超えない見込みだと会社は説明しています。
会長は、投資家向け資料に描いた将来の伸びのうち、いちばん先の部分について、こうも言っています。「その半分の大きさになるか、5倍の大きさになるか」。強気の言葉の中に、幅の広さを自分で認める一文が入っていました。
次の決算で確かめたいこと
今回の見立ては「長期契約の層は着実に積み上がった。ただし、今期の伸びの一部は見通しの立たない層が支えた」です。次の決算説明会から、少なくとも次の点を追います。
- 900MW契約の通電が、2027年前半から後ろにずれていないか
- 3件目のプロジェクトが、予定どおり2027年1〜3月期の売上開始に向かっているか
- サービス事業の外部向けの仕事が、来年4〜6月期以降も見通しを出せる形になっているか
署名された900MWは過去最大でしたが、相手は既存の顧客でした。新しい顧客との契約が出てくれば、顧客の顔ぶれそのものが変わります。
ここに書いたのは、2026年11月5日の説明会までに分かっていることだけです。契約の通電の時期も、サービス事業の稼ぎも、まだ動きます。
送電網を待てないデータセンターと、その隣で電気をつくる会社。この組み合わせが本物の長い商売になるのかは、四半期ごとの契約と通電の記録でしか確かめられません。
※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。