客はいるのに、運転手が足りません。配車アプリと料理宅配のウーバーが今回の決算で認めた問題は、短く言えばこれです。
■ ウーバーの決算説明会の内容(要点)
- 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
- 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月4日
- 「加速する」と言った米国の配車は、3ヶ月後に「少し鈍化した」になりました
- ブラジルの話だった供給不足に、インドとカナダの名前が加わりました
- 料理と食料品の宅配は、買収を除くと2四半期続けて加速しました
- 無人車の話は「都市の数」から「台数」に変わりました
日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。
※この記事で扱うのは、2026年11月4日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。
💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストの質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。発言は記録に残ります。
数字そのものは強い決算でした。
- 取扱高 598億ドル(前年同期比 +20%)。20%超は5四半期連続
- 売上 148億ドル(同 +10%)。売上に数える範囲が変わる事業モデルの変更(3ヶ月前の説明では英国の配車)で、伸びが8ポイント押し下げられた後の数字
- 調整後の一株利益 0.88ドル(同 +35%)。会計基準どおりでは 0.25ドル(同 −92%)
- 過去12ヶ月のフリーキャッシュフロー 104億ドル(過去最高。1ドル150円で約1兆5,600億円)
💡取扱高(グロスブッキングス)=乗客や注文者が支払った総額。運転手や飲食店の取り分も含むので、会社の売上より大きくなります。
💡調整後(non-GAAP)=会社が本業の実力を見るために一部の項目を除いた数字。会計基準どおりの数字(GAAP)とは別物です。
💡フリーキャッシュフロー=本業で入ったお金から設備投資などを引いて、手元に残るお金。
それでも最高経営責任者(CEO)は、冒頭で自分からこう言いました。
「モビリティは健全な成長を続けましたが、私たちの想定を下回りました。いくつかの海外市場で、運転手の供給が消費者の強い需要に追いつかなかったためです」
モビリティとは配車事業のことです。強い数字を語る冒頭の発言に、「想定を下回った」が入っていました。
その前に——配車アプリの「供給」って、何でしょう
「供給」と聞くと工場や在庫を思い浮かべますが、ウーバーの場合は違います。この会社が売っている移動の供給は、基本的に、個人の運転手が「今日はこの時間に働く」と決めた時間の合計です。
ふつうのタクシー会社なら、車と乗務員を会社が抱えて、シフトを組めます。ウーバーは組めません。運転手は他の仕事に移ることも、ガソリン代が高い日に休むこともできます。
雨の夕方にタクシーアプリを開いて、なかなか車がつかまらない。あの状態が、国の単位で起きていると考えてください。客はアプリを開いているのに、乗せる人がいません。
だから、この会社の供給不足は需要不足とは別の痛み方をします。客がいるので成長の話は壊れません。ただ、運転手を呼び戻すにはお金がかかり、そのお金は乗客の値段か会社の利益のどちらかから出ます。今回の決算は、この綱引きが表に出た回でした。
「加速する」と言った米国の配車は、3ヶ月後に「少し鈍化した」になりました
いちばんはっきり変わったのは、米国の配車についての財務責任者の言葉です。
3ヶ月前:「米国は今年を通じて加速すると見ています」「残りの期間についても、この見通しを維持します」「総じて、広がりがあり、持続的です」
今回:「海外の動向と比べて、米国の成長は比較的底堅いです」「第3四半期に成長は少し鈍化しましたが、海外市場ほどではありません」
「少し(a bit)」と言い、「海外ほどではない」とも言っています。崩れたという話ではありません。ただ、3ヶ月前に「加速」と言った場所で、今回は「鈍化」が使われました。年内に加速するという見通しについては、撤回も維持も口にしていません。
世界全体の配車の取扱高で見ると、伸びは為替の影響を除いて +20%から+17% へ下がりました。
3ヶ月前の説明会では、米国の好調にサッカーのワールドカップがどれだけ効いたのかが質問に出ています。財務責任者の答えは「恩恵は確かにあったが、おおむね想定どおり」「一度きりの出来事よりはるかに広い」でした。今回の説明会では、ワールドカップの話は出ていません。鈍化のうちどれだけが大会の反動なのかは、語られないままです。
全体を語る言葉も一段下がりました。CEOの総括は、3ヶ月前の「またしても傑出した四半期(outstanding)」から、今回は「またしても力強い四半期(strong)」へ。3ヶ月前の全社の取扱高は「見通しの上限を上回った」でしたが、今回聞かれたのは配車部門の「想定を下回った」です。対象の範囲が違うので単純には比べられませんが、自分の想定に届かなかったと今回の説明会で認めたのは事実です。
米国に材料が無いわけではありません。保険費用が下がる追い風は続いており、カリフォルニアは他の地域より伸びています。低価格帯と高価格帯の商品は全体の3倍のペースで伸びました。利用が進んでいない地域では、過去12ヶ月にウーバーを使った人が対象者の10%未満で、密集した地域の50%とまだ大きな差があります。
ブラジルの話だった供給不足に、インドとカナダの名前が加わりました
3ヶ月前、供給の問題はブラジルの話でした。現地で料理宅配の競争が激しくなり、中国系の DiDi(99Food)や Meituan(Keeta)が最大手の iFood と争う中で、バイクの配達員の取り合いが起きていました。同じ人が料理も人も運ぶので、配車に回る人が減ったのです。CEOは「シェアは維持している」「私たちの領域の外の競争だ」と説明していました。
今回、財務責任者が挙げた理由はもっと広いものでした。
「ブラジルやインドのような市場では、燃料価格の上昇の影響が見られ、供給の状況にかなり大きく響いています」
燃料高は、中東の戦争の激化と結びつけて説明されました。運転手にも乗客にも値段に敏感な人が多い新興国で、最も強く出るそうです。カナダでは移民をめぐる動きが、年末の繁忙期の供給不足として効いていると名指ししました。CEOはさらに、9〜12月はもともと繁忙期で、前年比の圧力と季節の圧力が重なったと補足しています。
あるアナリストはそこを直接聞きました。前回はブラジルの話だったのに市場が増えている、四半期の中で何か変わったのか、と。答えは「多くは、今年ずっと見てきた動きの続きです」。
財務責任者は「これは良い問題です」とも言いました。この規模になってなお、ぶつかっているのは需要でなく供給の制約だ、という意味です。改善の兆しとして挙げたのは、10月に世界全体で運転手の稼働時間の伸びが加速し、ブラジルとインドで目立って良くなったことです。ただ、説明会で数字は出ていません。繁忙期のさなかの1ヶ月の話でもあります。
では、その費用はどこから出るのか。CEOの説明はかなり率直でした。
「去年はインセンティブをより多く、値段を下げるために乗客へ回していました。今年は乗客向けを減らして、そのお金を運転手向けに使っています」「それは時に、乗客の値段が上がることを意味します」「利益とのトレードオフも行います」
インセンティブとは、運転手への報奨や乗客への割引のことです。利益率が保てるのかという質問には、財務責任者が「利益率の軌道に大きな変化があるとは言いません」と答えました。同じ回答で財務責任者は、第4四半期の配車の供給投資が、取扱高のうち会社の売上になる割合(テイクレート)に響くとも述べ、ただし利益率の面で大きなものではないとしました。この四半期の配車部門の利益は、前年同期比で+27%でした。乗客の値段を上げながら運転手を呼び戻し、それで乗る人が減らないのか。答えが出るのは、これからです。
料理と食料品の宅配は、買収を除くと2四半期続けて加速しました
宅配の側は、配車と逆の向きでした。ウーバーイーツを含む宅配の取扱高は285億ドルで、前年同期比+22%(為替の影響を除くと+23%)です。
「宅配の買収を除いた成長と、米国の宅配が加速したのは、これで2四半期連続です」「中核のレストラン事業も加速しています」
中核のレストランが加速した理由として、CEOは米国の加盟店の数が前年比で約12%増えたことを挙げました。宅配の取扱高の70%は会員が占めているとも述べています。
ここには注意点があります。為替を除いた伸びだけを並べると、前の四半期の+25%から+23%へ下がっています。それでも「加速」と言えるのは、買収の出入りがあるからです。
3ヶ月前の財務責任者の説明では、トルコの大きな買収(トレンディオル・ゴー)は1年たって伸びの計算から外れます。代わりに入る買収(Getir など)はずっと小さいので、正味では逆風になるとのことでした。その説明どおりなら、+25%から+23%への低下には、買収の押し上げが小さくなった分が含まれます。23%にも Getir などの寄与は入っていますが、前の四半期より小さいはずです。ただし買収を除いた伸び率そのものは、説明会では語られていません。
伸びの中身で大きいのは食料品と日用品です。
「ランレートは現在150億ドルで、ランレートは前年比40%で伸びています」
💡ランレート=足元の勢いが1年続いたらいくらになるか、という年換算の数字。実際の1年間の合計ではありません。
150億ドルは1ドル150円で2兆2,500億円です。
ただし、宅配にも配車と似た課題があります。配達員の確保についてCEOはこう言いました。
「いま私たちが抱えている最大の課題は、そこです」
配車の問題と「韻を踏んでいる」という言い方でした。客の伸びに運ぶ人の伸びを合わせ続ける、という課題の形が2つの事業で似ています。
競合のドアダッシュは、説明会の6日前の10月29日に、食料品宅配のインスタカートを買収することで合意したと発表しました(完了はまだ先です)。この案件についての質問に、CEOは「正直、私たちにはあまり影響しないと思います」と答えました。依存先を増やしたい加盟店から連絡が来ているという話はありましたが、影響の大きさの数字はありません。
無人車の話は「都市の数」から「台数」に変わりました
自動運転についての語り方も変わりました。
3ヶ月前:「最も重要な節目は、サービス開始と、展開している都市の数です」「いまは7都市で、年末までに15都市に広げる計画どおりに進んでいます」
今回:「自動運転では、私たちの焦点は提携と試験から、運転手のいない商用サービスへ移りつつあります」「年末までにウーバー上で約700台、2027年末までに2,000台超の完全無人車を見込んでいます」
時期のついた台数を出したのは前進です。ラスベガスでは、自動運転の開発会社ズークスが今月ウーバー上でのサービスを始める予定で、同じく自動運転を開発するモーショナルもその後まもなく完全無人に移るとのことです。
一方で、3ヶ月前に語っていた数字が、今回は説明会に出てきませんでした。
- 「年末までに15都市」
- 「12万台の車両の約束(vehicle commitments)」
- 電気自動車メーカーのルーシッドについての「保証された数量のある大きな注文」
今回の説明会では、15都市も、12万台も、ルーシッドという名前も出ていません。ルーシッドについて質問した人もいませんでした。プレスリリースにもありません。ただし会社は書面の説明文も別に公開しているので、そちらに書かれている可能性は残ります。「電話で一度も口にしなかった」という話です。
カリフォルニアで予定している、自動運転を開発するニューロのサービスについても、3ヶ月前は年内の開始予定として名前を挙げ、今回は「来年」と言っています。もっとも、今回の文は完全無人の商用サービスの話なので、同じものが遅れたとは言えません。
規模も確かめておきます。ハロウィンの週、ウーバーとウーバーイーツを合わせた利用は約3億2,000万回でした。仮に2,000台の全部が1日28回(会社が挙げた「20回台後半」)走っても、週に約39万回です。約3億2,000万回の0.1%ほどにしかなりません。CEO自身も「本当の目標は、2028年以降の数万台」と言っています。自動運転がこの会社の売上を動かすのは、まだ先の話です。
そこまでの間に決めなければならないのが、誰がその車の代金を払うかです。財務責任者は「いま私たちが取り組んでいる仕組みについて、多くを話せる段階にはありません」と前置きしたうえで、今年サンタンデールと組んだ、欧州の既存の車両事業者向けの融資枠(最大10億ユーロ)をひな型に挙げ、長期的には第三者の資金で賄うと言いました。CEOの説明では、初期は車を自社で抱えます。無人車は中古で売るときの値段がまだ誰にも分からず、レンタカーのような融資の組み方ができないからです。
「ただ、私たちはビジネスモデルと稼働率の優位を確立し、それを銀行に示さなければなりません」
その稼働率について、会社は強い比較を出しました。ウェイモとテスラが今年始めた新しい市場では1台1日あたり「10回台前半」、ウーバーのネットワーク上で人の運転手と無人車を組み合わせる市場では「20回台後半」。ただ、これは会社が選んだ物差しによる比較で、市場も条件も同じではありません。
ハロウィンの週の約3億2,000万回のうち、AIエージェント経由の配車は4回でした
AIエージェントの話は、最後の質問で出ました。聞かれたのは、自社アプリに組み込むAIの狙いと、外部のAIサービス上での機会です。CEOが「いまはごく小さい」と話し、促された財務責任者が数字を出しました。ハロウィンの週の約3億2,000万回に対して、AIエージェント経由はウーバーイーツで約500件、配車は「全部で4回」です。
CEOは「グーグルのような存在に依存していた時代に戻りたくない」と話し、アプリへの直接の利用を優先すると言いました。自社アプリ内の買い物の補助では、かごの金額が平均の約2倍になっているとも述べています。外部のAI各社とは条件を交渉中です。「全部で4回」について、財務責任者は「ごく初期で、利用はまだごく限られている」と添え、CEOは「もっと増えてほしい」と続けました。脅威が小さいという説明として出された数字ではありません。
見通しは18〜22%で変わらず、上がって見えるのは利益の側です
第4四半期の見通しは、取扱高が632億5,000万〜652億5,000万ドルで、為替を除いて前年同期比 +18〜22%。財務責任者は「ここ数四半期と変わらない」と説明しました。
💡見通し(ガイダンス)=会社が自分で出す次の四半期の業績予想。
調整後の一株利益は0.95〜0.99ドルで、+34〜39%、中央で+37%です。この四半期の+35%より少し高い数字で、財務責任者は「利益の伸びはむしろ広がっている」と語りました。
供給への投資額も、無人車の資金の具体策も、語られませんでした
質疑では、供給の話が質問者を変えて3回戻ってきました。持続性と投資の規模、米国の動向、利益率です。自動運転も、質問者を変えて3回聞かれました。それでも具体が出なかった点は次のとおりです。
- 供給への投資の金額と期間(「的を絞った投資」で、運転手の獲得・定着・稼働に向けるという説明まで)
- 無人車の資金調達の具体的な仕組み(ひな型としてサンタンデールとの最大10億ユーロの融資枠を挙げ、「今後発表がある」)
- テキサスなど自動運転が普及した地域で配車にどう影響しているか
- 700台から2,000台への地域の配分の数字(質問者は「米国と海外で半々」と確認しましたが、説明会では経営陣は触れませんでした)
一株利益の+35%と−92%は、どちらも額面どおりには読めません。
+35%は、調整後の純利益の+29%より高く、差には自社株買いで株数が減った効果が含まれているとみられます。この四半期の自社株買いは7億5,000万ドルでした。会計基準どおりの−92%は逆に見た目ほどの話ではなく、前年に税金の一時的な益と、持っている他社株などの値上がり分(投資の評価益)があり、今期は値下がり分(投資の評価損)4億7,600万ドルが出たためです。
外部の要因は、両方向に効いています。燃料高は戦争に結びついた逆風で、落ち着けば和らぐ可能性があります。米国で保険費用が下がる追い風は再投資に回す前提で、利益としてそのまま残る話ではありません。
10月の改善のうち、運転手への投資で買った分がどれだけかは分かりません。投資を進める中で改善の兆しが出た、という語り方で切り分けはなく、その投資がいつまで必要なのかも、説明会では語られていません。
運転手を買い戻す値段は、次の説明会で出てくるのか
この決算の今の姿は、「客はいて利益も伸びているが、配車の供給を買い戻すのにいくらかかるのか、説明会ではまだ語っていない」というものです。
次の説明会で、この姿が悪い方へ崩れたと分かるのは3つです。
- 配車が再び「想定を下回った」と言われ、10月の改善が続かなかった場合
- 全社の取扱高の見通しが18〜22%の範囲を下回った場合
- 「約700台」「2,000台超」が引き下げられた場合
逆に、説明会で運転手の稼働時間の改善に数字が付き、そのうえで配車の利益率も保たれていれば、供給は利益を削らずに買い戻せたことになります。
「加速する」は3ヶ月で変わりました。「約700台」も「10月の改善」も、3ヶ月後に同じ言葉で語られるとは限りません。次の回も、今回の発言と1行ずつ並べて読みます。
※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。