ドラフトキングス決算の内容:予測市場の取引量は3ヶ月で5倍、通期の利益見通しは7割下げた【DKNG・2026年7〜9月期】

アメリカでスポーツの試合にお金を賭けるアプリといえば、まず名前が挙がるのがドラフトキングスです。社長は今回、この四半期のスポーツ賭けで、競合のファンデュエルと「業界1位でほぼ並んだ」と話しました。

その会社が、本業とは別の新しい事業に、今年だけで当初の2倍を超えるお金をつぎ込むと決めました。新しい事業の数字は3ヶ月で何倍にも膨らみ、主にその投資のために、今年1年の利益の見通しは約7割下がりました。伸びた数字と削った数字が、同じ決算説明会の中に並んでいます。

■ ドラフトキングスの決算説明会の内容(要点)

  • 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
  • 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月6日
  • 予測市場は「立ち上げ」から「3番手の取引所」になった
  • 本業の言葉は、3ヶ月で一段下がった
  • 7〜9月期の売上は16%増、利益はマイナス3億1,700万ドル
  • 今年の見通しは下げ、来年は予測市場の売上が乗る
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日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。

※この記事で扱うのは、2026年11月6日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。

💡決算説明会=決算発表のあとに、経営陣が投資家やアナリストの質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。発言はそのまま記録に残ります。

目次

その前に——「予測市場」って、何でしょう

名前から「先のことを予想して教えてくれるサービス」を想像するかもしれません。中身は違います。予測市場は、出来事に値段がつく取引所です。

たとえば「日曜の試合でチームAが勝つ」という契約が売り買いされます。Aが勝てば1枚1ドルを受け取れ、負ければゼロ。その契約が仮に60セントで取引されていれば、市場は「Aが勝つ確率は6割くらい」と見ている、ということになります。スポーツだけでなく、暗号資産の値段や、ほかの出来事を対象にした契約もあります。

ふつうのスポーツ賭け(スポーツブック)と比べると、違いがはっきりします。スポーツブックは、会社が胴元になってオッズを決め、客と向き合います。アメリカではこれを州ごとに合法化してきたので、認めていない州では出せません。予測市場は、客どうしが契約を売り買いする「取引所」の形をとり、連邦の先物の規制当局(CFTC)の枠組みで運営されています。そのため、スポーツ賭けが合法になっていない州、たとえばカリフォルニアやテキサスの人にも届けられる、という建て付けです。

日本でいえば、株の取引所で、株の代わりに「Aが勝つ」という権利を売り買いしている、と考えると近いです。

ドラフトキングスは、この取引所(DKX)と、客の注文を取り次ぐ窓口、値段を出す値付け役(マーケットメーカー)を、全部自社で持っています。

💡マーケットメーカー=いつでも買い値と売り値を出して、取引の相手になる役。取引が成り立ちやすくなり、その差額が収入になります。

スポーツ賭けを出せなかった州の客に、初めて手が届く。 だから会社は大きくお金をつぎ込みました。ただし、この建て付けそのものが裁判で争われています。会社は「2028年半ばに最高裁の判断が出る」ことを基本シナリオに置いていて、今回の質疑応答も、多くがこの点をめぐるものでした。

予測市場は「立ち上げ」から「3番手の取引所」になった

3ヶ月前と今回で、予測市場についての言葉はこう変わりました。

3ヶ月前:「今年に入ってから、60万人を超えるお客様が予測市場を利用しました」「4月から7月で、年換算の総取引量はほぼ5倍、23億ドルから110億ドルに増えました」
今回:「今年に入ってから、160万人を超えるお客様が予測市場を利用しました」「10月の年換算の総取引量は568億ドルに達し、7月から5倍を超えて増えました」

568億ドルは、1ドル150円で約8.5兆円の規模です。そして今回、こう言い切りました。

「わずか数ヶ月で、私たちは総取引量で、はっきりとした3番手の予測市場の取引所になりました」

3ヶ月前には無かった、お金の稼ぎ方の数字も初めて出てきました。

  • 取引に対する取り分(テイクレート):9〜10月で約11.1%。そのうち約3分の2を自社が受け取り、残りは外部の値付け役の分
  • 今年獲得した客にかけた費用の回収期間:約20ヶ月(会社の目標は2年)
  • 今年獲得した客が生む粗利の年換算:すでに約3億5,000万ドル
  • 組み合わせ契約(コンボ)の割合:10月に客の取引額の27%(3ヶ月前は「20%に近づいている」)

💡テイクレート=取引されたお金のうち、会社の取り分になる割合。

スポーツ以外も伸びています。予測市場の客の2割近くが、すでにスポーツ以外の契約を取引しており、ここ数週間は暗号資産の契約が客の取引額の1割に近づいていると言います。社長は、スポーツ以外の取引は、ほとんど力を入れていないのにスポーツの取引量の約10%に達したとして、将来は「いまのスポーツの規模の25〜30%、あるいはそれ以上」になりうると話しました。

本業の言葉は、3ヶ月で一段下がった

予測市場の言葉が強くなった一方で、本業(スポーツ賭けとオンラインカジノ)についての言葉は、前回より控えめになりました。

3ヶ月前:「コア事業は、2026年の調整後EBITDAで約10億ドルを生む軌道に乗っています」「下半期に想定していることを達成し、もしかすると上回るかもしれないという、大きな自信があります」「私たちは攻めています。コア事業は絶好調です」
今回:「コア事業の調整後EBITDAは8億7,500万〜9億2,500万ドルを見込みます」

ここで出てくる利益は、すべて会社が調整した数字です。

💡調整後EBITDA=本業でどれだけ稼いだかを見るために、会社が独自に調整した利益(non-GAAP)。会計基準どおりの利益とは別物です。この会社は、売上以外の損益の数字を、すべてこの調整後の基準で説明しています。

「約10億ドル、上回るかもしれない」から「8億7,500万〜9億2,500万ドル」へ。財務責任者は理由として、オンラインカジノの伸びにさらに投資すると決めたことと、「客にやや有利だった試合結果」の影響を挙げました。あるアナリストにこの引き下げ分の内訳を聞かれた社長は、「約6割は試合結果」で、残りはオンラインカジノの新規客の獲得だと答えています。

予測市場への投資額(費用)も膨らみました。3ヶ月前は今年「2億〜3億ドル」の見込みでしたが、今回は6億5,000万〜7億ドル(約975億〜1,050億円)へ。当初の2倍を超える額です。

3ヶ月前に出していて、今回出てこなかった数字もあります。

  • 投資家向け説明会で示した、長期の「調整後EBITDAの利益率で少なくとも30%」と、2030年の業界の総売上の機会「550億〜800億ドル」
  • スポーツ賭けが合法の州では、予測市場の取引の「80〜90%はプロの賭けの集団や機関投資家のもの」という社内の見積もり
  • 自社のスポーツ賭けの客と、最大手の予測市場の運営会社の客が重なっているのは「約1%だけ」という数字

3ヶ月前、会社は2つ目と3つ目の数字を、「予測市場は自社のスポーツ賭けの売上に目に見える影響を与えていない」という主張の裏づけにしていました。今回も「目に見える影響はない」という言葉は出てきますが、裏づけは賭け金と売上が伸びていること(スポーツ賭けの賭け金+12%、純売上+36%)に置き換わり、客の重なりやプロの比率という直接の数字は付いていません。

オンラインカジノのシェアの言い方には、食い違いもあります。3ヶ月前は「数四半期シェアを失ったあと、シェアはしっかり安定しました」と述べ、これから数ヶ月でシェアを伸ばし始めたい、と話していました。今回は「オンラインカジノのシェアは、これで3四半期連続で伸ばしています」。3四半期連続なら、3ヶ月前に話していた四半期も伸びていたことになり、当時の「安定した」「これから伸ばしたい」とはそのままではかみ合いません。前年比で測るか前の四半期比で測るかの違いかもしれませんが、どの物差しかの説明はありませんでした。

7〜9月期の売上は16%増、利益はマイナス3億1,700万ドル

数字そのものは、売上が伸びて、利益は赤字という形でした。

  • 売上:13.3億ドル(前年同期比 +16%)
  • 月に1回以上お金を使った利用者:410万人(+13%)
  • スポーツ賭けの純売上:+36%(賭け金の総額は+12%、賭け金に対する純売上の割合は約1.2ポイント上がって6.4%)
  • オンラインカジノ:新規客の獲得は+76%、総売上は+7%、純売上は+2%
  • 調整後EBITDA:マイナス3億1,700万ドル(主に予測市場への投資のため)

オンラインカジノの総売上と純売上の差は、主に新しい客を迎えるための販促(ボーナスなど)です。10月は総売上が+12%まで加速した、と会社は述べています。

手元の現金は、この投資の期間を通じて約11億ドルを保ってきたと言います。

今年の見通しは下げ、来年は予測市場の売上が乗る

今年(2026年)の通期見通しは、売上も利益も下がりました。

  • 売上:65億〜69億ドル → 63億5,000万〜65億5,000万ドル
  • 調整後EBITDA:7億〜9億ドル → 1億7,500万〜2億7,500万ドル

利益の中心の値は8億ドルから2億2,500万ドルへ、約7割の引き下げです。売上の中心(64億5,000万ドル)は、市場の予想(約66億5,000万ドル)にも届いていません。

💡ガイダンス=会社が自分で出す業績の見通し。比べる相手は前回の自分の数字だけでなく、アナリストたちの予想の平均(コンセンサス)です。

そして今回、初めて来年(2027年)の見通しが出ました。

  • 売上:73億5,000万〜77億5,000万ドル(中心で前年比+17%)
  • うち予測市場の売上:6億5,000万〜7億5,000万ドル
  • うち本業の売上:67億〜70億ドル(+4〜9%)
  • 調整後EBITDA:8億〜10億ドル(本業だけで11億5,000万〜12億5,000万ドル、利益率は約18%)

売上の中心(75億5,000万ドル)は、市場の予想(約75億9,000万ドル)とほぼ同じか、わずかに下です。+17%のうち、本業の分は中心値で約6ポイント(本業の伸びは+4〜9%)、残りの約11ポイントは予測市場の売上が乗る分です。

ここで大事なのは、今年の予測市場の売上の中身です。社長はこう説明しました。

「今年、予測市場では数億ドルの総売上を上げますが、純売上はほぼゼロに近い。純売上がほぼゼロなのは、ほぼ全部(90%)が新規のお客様向けの販促によるものです」

今年の予測市場は、客を集めるための販促で売上がほぼ相殺されている、ということです。来年は純売上で約7億ドル、粗利で約5億ドルを見込みますが、これは「いまの運転状況のまま」が前提で、製品の改善による上積みは入れていない、と付け加えています。

答えが出ていないのは、裁判の後のこと

この決算で最も繰り返し聞かれたのは、スポーツの予測市場が裁判で止められたら、どうなるのかでした。

最初の質問への答えは具体的でした。今年の客は約20ヶ月で回収でき、会社の基本シナリオである2028年半ばの最高裁の判断までに回収が終わる。来年の客は、スポーツの契約が2028年7月に止まった場合でも、スポーツ以外の予測市場などほかの商品へ移ってもらうことで、4年以内に回収できる、という説明です。

ただし、同じ論点はその後も角度を変えて何度も出ました。

  • 「止まる/止まらない」の両極端でなく、一部だけ残る中間の結末はどうか(答え=中間ならむしろ回収は良くなる。ただし数字は無し)
  • 予測市場が無くなったとき、そこへの宣伝費の効果は本業に戻るのか(答え=ほかの商品で客は残るが、スポーツ賭けが合法な州でのブランド効果は「あったとしても最小限」)
  • スポーツ賭けが合法化されれば本業で取れる客を、なぜ予測市場で取りにいくのか(答え=全部の州が合法化するとは当てにできない。中核の客層を守るため)
  • 2028年はどうなるのか(答え=スポーツの契約が1年を通して残れば、2026年と2027年に獲得した客から10億ドルを超える粗利が出る見込み)

ユタ州での撤退を受けて、ほかの州からも撤退するリスクと、それが見通しに効く境目を聞かれた場面では、社長は「ほとんどの州は裁判の結論を待っている」と答えましたが、境目は示しませんでした。予測市場の7〜9月期の損失額を確かめたいという依頼にも、数字は出てきていません。本業の費用の内訳を数字で求められたときも、「来年は全社の宣伝費が減る」と方向を述べるにとどまりました。

来年の予測市場への投資額が上限なのかも聞かれました。会社が示している来年の予測市場への投資額(費用)は2億5,000万〜3億5,000万ドルで、今年の6億5,000万〜7億ドルの半分以下に減らす計画です。社長の答えは「来年、予測市場への投資総額が増えたら驚きます」。ただし、裁判で早めに良い兆しが出れば増やすことを検討し、悪い兆しなら減らすかもしれない、とも述べています。来年の6億5,000万〜7億5,000万ドルという予測市場の売上の見通しも、同じ裁判の行方の上に立っています。

数字の中にも、動きやすいものが入っています。スポーツ賭けの純売上の割合(6.4%)と、スポーツ賭けで試合結果が出たあと会社の手元に残った割合(ホールド率・11%超)は、試合の結果で上下します。また賭け金の総額の伸び(+12%)については、ワールドカップの押し上げがあったものの、大学フットボールとNFLの試合が前年より1週少なかった分で相殺され、前年と同じ条件で比べた数字だ、と会社は説明しています。

来年の決算説明会で確かめること

今回の決算は、新しい事業に資金を振り向けた決算でした。今年の利益の見通しが約7割下がり、その大半は予測市場への投資の積み増しによるものです(残りは試合結果とオンラインカジノへの投資)。それでも予測市場で客を集めるほうを選んでいます。その判断を支えているのは、約20ヶ月という回収期間と11.1%の取り分という、今回初めて出した数字です。一方で、3ヶ月前に本業の強さを示していた数字のいくつかは、今回は出てきませんでした。

この見立てが外れていたと分かるのは、たとえば次のような場合です。

  1. 来年の予測市場の売上の見通し(6億5,000万〜7億5,000万ドル)が引き下げられる
  2. 来年の予測市場への投資額(2億5,000万〜3億5,000万ドルの計画)が増額される
  3. ユタ州のような撤退が、ほかの州にも広がる
  4. 最高裁や州、規制当局の判断で、スポーツの予測市場の契約が止められる

逆に、来年の決算説明会で、回収期間が約20ヶ月より短くなったり、スポーツ以外の取引が社長の言う「25〜30%」に向かって伸びていたりすれば、裁判の結果に左右されにくい事業に育ちつつある、ということになります。


3ヶ月前に「上回るかもしれない」と言った本業の見通しは、今回、試合結果と投資を理由に下がりました。今回初めて出た「約20ヶ月」と「11.1%」が次の説明会でも同じ形で出てくるか、消えた「30%」の長期目標が戻ってくるか。その2つで、この会社の言葉の重心がどちらに動いたかが見えます。


※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。

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