アムジェン決算の内容:最終試験の好結果が3本並び、説明会では心臓の新薬の名前が消えた【AMGN・2026年7〜9月期】

マドリードで開かれた欧州の腫瘍学会で、肺がんの薬の試験結果が発表されると、会場の聴衆が立ち上がって拍手を送った。アメリカのバイオ医薬品大手アムジェンの営業責任者は、今回の決算説明会でそう語りました。

■ アムジェンの決算説明会の内容(要点)

  • 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
  • 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月3日
  • 売上は8%増の104億ドル、伸びを作ったのは6つの柱でした
  • 「謙虚でもある」と言っていた病気で、結果が出ました
  • 通期の見通しは今年3回続けて上がり、2027年の利益率にも触れました
  • 心臓の新薬の名前も、骨の薬の減収も、説明会では語られませんでした
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※この記事で扱うのは、2026年11月3日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストの質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。発言は記録に残ります。

良い話はこの1本で終わりません。この四半期、会社は最終段階の試験で3つの陽性結果を報告しました。3ヶ月前に「謙虚でもある」と話していた病気の試験も、その1つです。

同じ説明会から、消えたものもあります。前回あれだけ語った心臓の新薬オルパシランは、今回一度も名前が出ませんでした。売上を2桁伸ばした製品の数は、22から17へ減っています。

目次

その前に、最終試験の「陽性」は、なぜまだ売上ではないのか

「陽性」と聞くと、検査で病気が見つかったときの言葉を思い出すかもしれません。製薬会社の決算では意味が違います。薬の試験があらかじめ決めた目標を達成した、という意味です。

薬は、人で試す試験を3つの段階に分けて進めます。最後が第3相試験で、多くの患者で効果と安全性を確かめます。ただ、ここを通っても薬はまだ売れません。

運転免許にたとえると分かりやすいと思います。第3相の陽性は、教習所の卒業検定に受かった段階です。その先に免許センターにあたる規制当局への申請と審査があり、承認という免許証が出て、医師が処方して初めて売上になります。

これがこの決算を読むうえでの分かれ目です。今回の売上は、すでに売っている薬が作った数字です。 3本の陽性が開く新しい用途は、今回の売上にまだ入っていません。数字は過去の話で、試験は先の話です。同じ説明会で語られても、混ぜて読めません。

売上は8%増の104億ドル、伸びを作ったのは6つの柱でした

  • 売上 104億ドル(前年同期比 +8%。1ドル150円で約1兆5,600億円。前の四半期は+10%)
  • 調整後の一株利益 6.45ドル(前年同期は5.64ドル、+14%)
  • 会計基準どおりの一株利益 7.08ドル(前年同期は5.93ドル)
  • フリーキャッシュフロー 37億ドル

💡調整後=会社が一時的と考える項目などを除いた数字(non-GAAP)。今回は会計基準の数字のほうが高く出ています。保有する株式の値上がりなどの純利益14億6,500万ドルが含まれ、調整後ではそれが除かれるためです。
💡フリーキャッシュフロー=本業で稼いだ現金から設備投資を引いて、手元に残るお金。

伸びを作ったのは、会社が「6つの成長の柱」と呼ぶ製品群です。合計で前年比+27%、製品売上の70%超を占めるまでになりました。前の四半期は+26%で、70%近くでした。

中身は1つの病気に偏っていません。

  • 心臓:コレステロールの薬レパーサ 約11億ドル(+37%)
  • 骨:骨粗しょう症の薬イベニティ 7億5,100万ドル(+39%)。日本でも、骨を作るタイプの薬で数量シェア60%近くを持っています
  • 炎症:重いぜんそくの薬テゼスパイア 5億3,800万ドル(+43%)
  • 希少疾患とがん:希少疾患群 16億ドル(+21%)、がんの新薬群 21億ドル(+21%)

6つ目の柱はバイオシミラーで、9億7,700万ドル(+26%)でした。

💡バイオシミラー=特許が切れたバイオ医薬品の後続品。飲み薬のジェネリックのバイオ医薬品版にあたります。

伸びが際立つのは2つです。希少疾患の薬ユプリズナは、前の四半期の3億3,500万ドル(前年同期比+90%)から4億5,100万ドル(同+191%)へ。肺がんの薬イムデトラは、前の四半期の2億8,800万ドルから4億600万ドル(前年同期の2倍超)へ増えました。

逆算すると別の姿も見えます。製品売上が全体で+8%、7割を占める柱が+27%ということは、残りの3割弱は、概算で2割前後減っています。 柱の伸びは、減っていく古い製品を埋めながらの数字です。

「謙虚でもある」と言っていた病気で、結果が出ました

3ヶ月前と今回で、経営陣の言葉はこう変わっています。

シェーグレン症候群の新薬ダゾダリベプについて。

3ヶ月前:「大いに期待していますが、謙虚でもあります。とても難しい病気です」
今回:「プラセボ対照の第3相試験で、陽性かつ臨床的に意味のある結果が出たことに、私たちは興奮しています」

3ヶ月前は病気の難しさを語り、今回は結果を語っています。

💡シェーグレン症候群=免疫が自分の体を攻撃し、涙や唾液が出にくくなるほか、全身に症状が出ることもある病気。会社によると、病気の進行そのものを抑える承認薬はまだありません。
💡プラセボ=有効成分の入っていない偽薬。薬の効果は、偽薬を使った群と比べて判断します。

肺がんの薬イムデトラ、最初の治療に近い段階での使い方について。

3ヶ月前:「第一選択の進展型小細胞肺がんのデータを楽しみにしています。この薬の影響をさらに広げる可能性があります」
今回:「診療を変える結果(practice changing results)を発表しました」「世界中の規制当局への速やかな申請に取り組んでいます」

ぜんそくの薬テゼスパイアの、食道の炎症の病気(好酸球性食道炎)への試験について。

3ヶ月前:「第3相試験は、下半期に完了する見込みです」
今回:「24週の時点で、2つの主要評価項目をどちらも達成しました」

結果を待つ段階から、結果が出た段階に変わったわけです。ただ、結果の数字は言葉と同じ重さで読めるとは限りません。

イムデトラの試験では、生存期間の中央値(患者を生存期間の順に並べたときの真ん中の値)が、もとからの薬だけの群の12.7ヶ月に対して21.1ヶ月でした。一方で、データを区切った時点の経過観察の中央値は15.9ヶ月です。会社も、最終的な生存の結果はデータが成熟してから報告するとしています。

ダゾダリベプでは、病気の活動性を測る指標が、月1回の投与で5.6ポイント、3ヶ月に1回の投与で5.2ポイント改善しました。ただし偽薬との差は1.8ポイントと1.4ポイントです。偽薬の群でも3.8ポイント改善した計算で、差はその上に乗った分です。 口の渇きなどの副次的な指標で統計的に有意だったのは、月1回の投与でした。詳しいデータは11月11日の学会で発表される予定です。

通期の見通しは今年3回続けて上がり、2027年の利益率にも触れました

3ヶ月前:売上382億〜394億ドル、調整後の一株利益22.30〜23.50ドル
今回:売上389億〜397億ドル、調整後の一株利益22.90〜23.70ドル

1〜3月期、4〜6月期の決算に続く、今年3回目の引き上げです。中央の値で売上が388億ドルから393億ドル(約5兆9,000億円)へ+1.3%、一株利益が22.90ドルから23.30ドルへ+1.7%です。下限を大きく上げ、上限は小さく上げました。

💡ガイダンス(見通し)とコンセンサス=前者は会社が自分で出す業績の予想、後者はアナリストたちの予想の平均です。文化祭の来場者の見込みを500人から520人に上げても、周りがもともと510人と思っていれば、驚きは小さくなります。

市場の予想の平均は、売上389億7,000万ドル、一株利益23.02ドルでした。新しい見通しの中央は、売上で約0.8%、一株利益で約1.2%上回ります。上ではありますが、差はわずかです。

新しいのは来年の話です。今回が初めての説明会となった新任の財務責任者は、こう言いました。

「2027年に向けて、2026年の見通しと比べて営業利益率が段階的に下がるとは見ていません」

前回の説明会に、2027年の利益率への言及はありません。今年の設備投資は約26億ドルを見込み、そこには肥満症の薬マリタイドの発売の可能性への備えも含まれています。費用が膨らむ材料がある中で、利益率の下限について先に線を引いた形です。

心臓の新薬の名前も、骨の薬の減収も、説明会では語られませんでした

ここからは、説明会で語られなかったことと、答えが出なかったことです。

3ヶ月前の説明会で、オルパシランは重要な位置にいました。遺伝的に決まるリポタンパク質(a)を下げる心臓病の新薬候補で、研究開発の責任者は「心血管での私たちのリーダーシップは、オルパシランにも広がります」と話し、最高経営責任者も第3相を進める3つの薬の1つに挙げていました。質疑でも繰り返し話題になり、競合薬との設計の違いを問われた経営陣は、7,297人を登録した試験の組み立てを具体的に答えています。

今回は、説明会のどこにも出てきません。最高経営責任者の挙げた例はマリタイドで、財務責任者が投資先として挙げる3つの薬からも、オルパシランが外れてダゾダリベプが入りました。質問も出ていません。

開発をやめたという話ではありません。 同じ日の決算資料には、第3相試験が3本進行中と記されています。語られなくなった理由の説明が無い、というのが正確なところです。

もう1つ、骨の薬プロリアとエクスジーバ(米国での製品名)です。特許が切れて、後続品との競争にさらされています。前回の営業責任者は、合計11億ドルで前年比33%減、想定どおりだと自分から説明しました。今回の説明会では触れていません。決算資料によると、プロリアは6億3,200万ドル(−45%)、エクスジーバは2億8,800万ドル(−47%)で、合計は9億2,000万ドル。減り方は前回より大きくなっています。

2桁成長の製品の数も同じです。前回は最高経営責任者が「特筆すべきことに、22製品が2桁成長」と強調しました。今回は「17製品」。なぜ5つ減ったのかの説明はありません。年間売上10億ドル超のペースの製品が17のままなのは、前回と同じです。

質疑で答えが出なかったのは、次の3つです。

  • シェーグレン症候群の承認への道筋:3つの証券会社がダゾダリベプについて尋ね、うち2社が規制や申請の道筋を聞きました。答えは「今日お話しできることはありません」「規制戦略の全体には今日は深入りしません」。症状が中心の患者を対象にしたもう1本の試験についても「読み替えは難しい」と答えました。患者の集まりが違うので今回の結果をそのまま当てはめられないという説明で、結果は年内に待つ形です
  • マリタイドの忍容性:進行中の試験のデータを見られるかという問いに、「試験の結果が出る時点で、より多くを共有します」
  • イムデトラの規模:質問者の「最初の段階の維持療法だけで50億ドル以上か」に、「製品別の見通しは出しません」

数字のほうで割り引いて読むものもあります。甲状腺眼症の薬テッペーザの−6%は、前年同期に在庫を積み増した反動だと説明されました。逆に利益を助けた側では、販売管理費の−1%があり、主な理由は財務責任者によると投資の時期です。前回は「第3四半期に費用が大きく増える」と言っており、今回は同じ表現を第4四半期に使いました。今回の調整後の営業利益率は47%(前の四半期は48%)で、通期の45〜46%という見通しは変わっていません。10〜12月期の利益率は下がる前提で読むのが自然です。

会計基準の一株利益7.08ドルも、株式の値上がりなどを含む数字です。売上を引っぱった製品については、会社は患者の需要で説明しており、一時的な要因の説明は出ていません。

処方を押し上げたのは、医師の指針の改訂と監視時間の短縮でした

なぜ、いまこれらの薬が伸びるのか。会社の説明には、どの薬にも「使う側の壁が下がった」という共通点があります。

レパーサでは、アメリカの心臓病の学会の指針が改訂されました。営業責任者の説明では、新しい指針は早めに強くコレステロールを下げることを求め、別の飲み薬を先に試さなくてもレパーサのような薬を使えるようにしました。新たにこの薬を始める処方は、アメリカで前年比60%超増えています。前の四半期は50%超でした。

イムデトラの壁は、投与後の監視の時間でした。最初の2回の投与の後、22〜24時間とされていた監視が、FDA(アメリカの医薬品の規制当局)の判断で6〜8時間に短くなりました(質疑では「6時間未満」とも説明しています)。営業責任者は、主に地域のがん診療所で治療を始めやすくなっていると説明しました。今回の試験では監視が1〜2時間で行われ、営業責任者はラベルのさらなる短縮に期待を示しました。

対象の患者数も語られています。承認されれば、この維持療法だけでアメリカで2万3,000人です。前回は早い段階の使い方全体で最大2万8,000人と言っていたので、数える範囲が違います。小細胞肺がんの対象患者は全体で3万5,000人という説明も出ました。

この薬で会社が描いているのは、「遅い段階の治療」から「最初の治療に近い段階」への移動です。営業責任者によると、病気の進行が速いので、2番目の治療までたどり着ける患者は多くありません。使う時期が早くなれば、対象が増え、使う期間も長くなる可能性があります。ただ、ここから先は承認を待つ話です。申請は準備中で、会社は承認の時期を示していません。

買収についての質問にも、会社の立ち位置が出ました。記録的な買収の局面で静かなのはなぜかと聞かれ、最高経営責任者は「質問の前提を認めるかは分かりません」と返しました。売上の相当部分は導入や買収で得た薬から来ていて、それは今後も変わらないとしたうえで、外から買うのは「売り手の株主だけでなく、自社の株主がリターンを得る道が見える」場合だと答えています。

3本の陽性が売上に届くか、答えは一度には出てきません

売上を支えているのは既存の処方で、試験の好結果はまだその先の話です。この構図を動かす材料のうち、まず時期が見えているものです。

11月11日の学会で出るシェーグレン症候群の詳しいデータと、年内に出る、もう1本の試験の結果。もう1本が目標を外せば、同じ薬の見え方は変わります。肥満症の薬マリタイドの結果は、質問者の言葉では来年です。

時期が見えないものもあります。イムデトラは、「速やかな申請」がいつ受理されるかで、会社は時期を示していません。

数字のほうでは、6つの柱の+27%が、古い製品の減少を埋め続けられるかです。プロリアとエクスジーバの減り方が速いほど、柱に求められる速さも上がります。

そしてオルパシランの名前です。次の説明会で戻ってくるのか、今回の沈黙が続くのか。これは1回の決算では分かりません。だから同じ言葉を前回と並べる作業を、次の説明会でも続けます。


※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。医薬品の効能・安全性を保証するものでもありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。

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