コヒレント決算の内容:5年200億ドルの契約に署名、「18カ月で回収」は語られなかった【COHR・2026年7〜9月期】

AIのデータセンターは、計算するチップだけでは動きません。チップとチップの間でデータを運ぶ線が要ります。その線を銅から光へ置き換えていく流れの真ん中にいるのが、コヒレントです。光を作るレーザーの材料から部品、完成品の通信モジュールまでを手がけ、売上の82%をデータセンター・通信部門が占めています。

3ヶ月前の説明会で、この会社の新しい光製品について名前が出ていた顧客との契約は、3月に公表したエヌビディアとの1件でした。今回は、大手AI企業ともう1件、5年で総額約200億ドルの契約を結んだと発表しました。一方で、3ヶ月前に自分から出していた「投資は約18カ月で回収」という数字は、設備投資がさらに増えたこの回に語られませんでした。

■ コヒレントの決算説明会の内容(要点)

  • 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
  • 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月4日
  • 売上は過去最高の23.7億ドル、データセンターは85%増でした
  • エヌビディアに続くもう1件は、5年200億ドルの契約でした
  • 粗利率の目標は、42%に届く前に45%へ上がりました
  • 10〜12月期の売上見通しは最大27.5億ドル、30億ドルの目標は据え置きでした
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日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。

※この記事で扱うのは、2026年11月4日に行われた、2026年7〜9月期(同社の会計年度では2027年度の第1四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、編集部の予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストへ説明し、質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。

目次

その前に——データセンターの「光」は、照明の話ではありません

ここでいう光は、明かりでも加工用のレーザーでもありません。データを運ぶ信号です。

銅線は電気で信号を送ります。ただ、速度を上げるほど、銅線で信号が届く距離は短くなります。光は髪の毛ほどの細いガラスの繊維を通るので、高速でも遠くまで届きます。だからデータセンターでも、離れた機器の間はすでに光でつながっています。

実物は、ご自宅にあるかもしれません。光回線の家に置かれている「ONU」という箱です。光ファイバーで来た信号を、機器が使える電気に戻しています。データセンターの「光トランシーバー」は同じ役割の小さな部品で、機器に差し込んで使います。これが、いまのコヒレントの主力製品の1つです。

次の段階が、光の部品をチップのすぐそばまで寄せる方式です。チップと同じパッケージに載せるものをCPO、すぐ隣に置くものをNPOと呼びます。銅線が残っている場所、とくにサーバーを収める棚(ラック)の中でAIチップ同士を束ねる配線を光に換える技術です。この領域はスケールアップと呼ばれます。コヒレントはこの方式向けの部品一式を、9月に「PhotonLink(フォトンリンク)」という名前で打ち出しました。

トランシーバーとPhotonLinkを分けて読まないと、200億ドルの大きさを読み違えます。トランシーバーは、いま売れている商品です。PhotonLinkは、時間をかけて主に銅線の置き換えで増えていく新しい売上です。ただ、最初の出荷先は、すでに光でつながっている領域です。200億ドルの契約はPhotonLinkの話で、売上が立つのは2028年の初めからです。

売上は過去最高の23.7億ドル、データセンターは85%増でした

  • 売上 23.7億ドル(前四半期比+16%、前年同期比+50%。売却済みの事業を除くと前年同期比+56%)
  • 調整後の粗利率 40.6%(前四半期比+0.37ポイント、前年同期比+1.84ポイント)
  • 調整後の一株利益 2.09ドル(前年同期比+80%)

💡調整後=会社が除外した項目を除いた数字(non-GAAP)で、会計基準どおりの数字とは別物です。この記事の粗利率と一株利益は、すべて調整後です。
💡粗利率=売上から製造原価などを引いて残る割合。40.6%なら、100ドル売って40.6ドルが残る計算です。
💡一株利益=会社の利益を株数で割った、1株あたりの利益。

会社が3ヶ月前に出した見通しは、売上22億〜24億ドル、一株利益1.85〜2.05ドルでした。売上は上半分に入り、一株利益は上限を超えました。粗利率は見通しの中央(40.5%)とほぼ同じです。

伸びの中身は偏っています。データセンターは前年同期比+85%で、3ヶ月前に経営陣が口にした「80%超」を実現しました。通信は+84%で、伸びの大半は離れたデータセンターの間をつなぐ需要でした。この領域の売上は四半期で2億ドルを超え、前年同期のほぼ4倍になりました。両方を合わせた部門は、4四半期続けて伸びが加速しています。残りの工業部門は横ばいでした。

エヌビディアに続くもう1件は、5年200億ドルの契約でした

「第1四半期に、大手AI企業ともう1件、大きなPhotonLinkの長期契約を結びました。この新しい契約の売上総額は5年間で約200億ドルで、売上は2028年の初めから立ち上がり始めます」

200億ドルは、1ドル150円で計算すると約3兆円です。2026年6月期の年間売上71.2億ドルの約2.8倍にあたります。ただし、これは5年分の総額を1年分の売上と比べた数字です。エヌビディアとの長期契約は3月に公表済みで、今回の契約はそれとは別です。

ほかの顧客との協議は、3ヶ月前は「複数の顧客と深い協議を進めています」という言い方でした。9月の製品発表で件数が示され、今回も同じ数字が繰り返されました。CPOが10件超、NPOが10件超、チップとチップを直接光でつなぐ接続が5件超です。最後の接続はラック内の配線(スケールアップ)の先にある段階で、経営陣によると2029〜2030年ごろの話です。チップ1枚(データの出入りが毎秒100テラビットの場合)あたりの受注機会は最大で約1万5,000ドルと見積もっていますが、これは全部品を採用した場合の試算で、どこまで採用するかは顧客によると経営陣も話しています。

足元の売上も時期つきで語られました。200億ドルの契約の売上が始まる前の数字です。PhotonLinkの売上は10〜12月期は少額で、2027年1〜3月期に1億ドル超、2027年末までに四半期2.5億ドル超を見込んでいます。

市場規模の数字は、3ヶ月前の「150億ドル超」から今回の「2030年に約300億ドル」(9月の製品発表で公表済みの数字)へ変わりました。ただし呼び方も範囲も同じではなく、今回はチップ同士を直接つなぐ接続が名指しで入っています。市場が2倍になったという話としては読めません。

粗利率の目標は、42%に届く前に45%へ上がりました

3ヶ月前の財務責任者は、42%超を目指す姿勢をこう語っていました。

「42%超に到達することに、非常に集中しています」
「42%超の目標に到達したら、間違いなく目標を引き上げます」

今回は、到達する前に引き上げました。

「粗利率の目標を引き上げる必要があるのは明らかです。2028年末より前に、粗利率が45%を超える最初の四半期を達成すると見込んでいます」

足元の実績は40.6%で、次の四半期の見通しは40〜42%です。42%はまだ通過していません。

同じ説明の中で、順番も変わりました。3ヶ月前、粗利率の改善要因は「投入コストの低下、歩留まりと効率の改善」が先で、価格の最適化は最後でした。今回は「主に価格の最適化、投入コストの低下、歩留まりの改善」で、価格が先頭に来ています。

💡歩留まり=作ったもののうち、正常に使えるものの割合。100個作って90個が使えるなら90%です。
💡価格の最適化=製品の価値に見合う値段へ付け直すこと。会社は値上げという言葉を使わず、この表現で説明しています。

ただ、45%までの道のりを順位づけしてほしいと聞かれた財務責任者は、新製品の立ち上がりと、レーザーの材料を直径6インチの円盤で作る生産設備の稼働を上に置き、価格はその次としました。価格は今期もこれまでの四半期も大きな要因で、この先も効き続けるものの、45%までで最も大きいのは新製品と生産設備だという説明です。

10〜12月期の売上見通しは最大27.5億ドル、30億ドルの目標は据え置きでした

2026年10〜12月期の会社見通しは、売上25.5億〜27.5億ドル、一株利益2.28〜2.48ドルです。中央値は、説明会の後に確認したアナリスト予想の平均(売上25.4億ドル、一株利益2.21ドル。発表を受けた見直しがどこまで入っているかは分かりません)を、売上で約4%、一株利益で約8%上回ります。

💡ガイダンス=会社が自分で出す業績予想。
💡コンセンサス=アナリスト予想の平均。平均が2.21ドルのところへ会社が2.38ドルと言えば、周りの見方より強い見通しということになります。

3ヶ月前は「大きく加速する」という言葉だけでしたが、今回は通年の数字も出ました。2027年6月期の売上成長率は、売却事業を除く基準で「60%超」です。基準を前年度の約70億ドルとすると112億ドル超になり、同じ時点のアナリスト平均の106.3億ドルを約5%上回る計算です。基準額が厳密ではないので、概算として読んでください。

見落としやすいのは、目標が上がった箇所と上がっていない箇所の差です。「2027年6月期の終わりまでに四半期売上30億ドル」は「順調に進んでいる」という据え置きでした。新しく加わった「2028年6月期中に四半期売上40億ドル」も、2028年6月期のアナリスト平均147.4億ドル(四半期あたり約37億ドル)から大きくは離れておらず、年度のいつなのかも示されていません。

それでも、経営陣自身は今回の出し方を「普段より少し長めの見通しをお出ししています」と説明しました。「なぜ今、長めの見通しを出すのか」と聞かれた答えで、理由には受注残と長期契約による見通しのよさを挙げました。

「18カ月で回収」も、200億ドルの最低引取り額も、数字は出ませんでした

一番大きな変化は、言葉が消えた箇所にあります。

3ヶ月前:「データセンター事業への投資は、回収期間がおよそ18カ月です」
今回:「これらの投資は、優れた財務リターンを伴って、データセンターと通信事業の将来の成長を直接支えます」

この間に、四半期の設備投資は5億5,600万ドルから7億7,600万ドルへ増えました。1ドル150円で約1,160億円、売上の約33%で、前年同期の1億400万ドルからは約7.5倍です。次の四半期もさらに増えると言っています。財務責任者が示した現金残高(短期投資と使途制限付きの現金を含む)は25.9億ドルから23.4億ドルへ減り、借入の倍率(借金の重さを年間の稼ぎと比べて示す指標)は0.7倍から1.1倍へ上がりました。

回収が遅れたと経営陣が言ったわけではありません。消えたのは数字です。支えになる材料もあります。長期契約には顧客の前払いなどが付き、経営陣は「署名したほぼすべての長期契約が、その形です」と話し、前払いを設備投資の資金の助けにすると説明しました。ただ、この説明会と決算資料に、その金額は出ていません。

ほかにも、3ヶ月前と並べると数字や言葉が細くなった箇所と、時期の言い方に幅がある箇所があります。

  • 新規受注:3ヶ月前は「またも過去最高の受注」。今回は「過去最高」が受注残の側にしか付いていません
  • 200億ドルの中身:顧客名は「皆さんが間違いなく知っている」までで、最低引取りの金額もありません(3ヶ月前の一般論では、長期契約に最低引取りの保証があると説明)
  • 光スイッチ(OCS=光のまま経路を切り替える装置):3ヶ月前に並んでいた「2027年6月期を通じて大きく伸びる」が消え、「次第に大きく寄与していく」だけが残りました。売上の金額は今回も出ていません
  • スケールアップの開始時期:用意された説明では、CPOとNPOとも「2027年後半に出荷を始める」でした。質疑では「2027年の終わりごろ」とも話し、導入の時期は「CPOが先、NPOはその後で、どちらも2027年の終盤か2028年の初め」としました。遅れるとは言っていません

💡受注=その期間に新しく入った注文。受注残=まだ出荷していない注文の残高。受注残が過去最高なので需要が消えたという話ではなく、新規受注が過去最高だったかどうかが語られなかった、という話です。

質疑では、アナリストの問いが同じ場所に集まりました。4人が角度を変えて、供給の裏付け、データセンターの資金調達と許認可、レーザーの材料の調達、業界の供給過剰を聞いています。供給過剰については「2028年に向けて、大きな供給過剰は見ていません」と答え、自社で作ったレーザーは全量を自社製品に使っているので主要な懸念ではないとも話しました。これは見立てであって数字はありません。供給の裏付けは契約と内製だと答えましたが、比率を聞かれても数字は出ませんでした。

中国勢についての質問は2人から出ました。1人目の質問は超高出力レーザーでの競合を聞くもので、経営陣の答えも400ミリワットのレーザーに絞った「そこでの競合は、私たちに見える限り、実質1社だけです」というものです。もう1人の質問はトランシーバーの価格競争まで含んでいましたが、財務責任者は音声が途切れたと断ったうえで、粗利率の要因だけを答えました。トランシーバーでの競争には、この回では答えが出ていません。

売却益のような一時的な項目の説明は、この回には出てきませんでした。注意が要るのは価格です。経営陣は社内の製品に回すレーザーすら足りないと話しており、財務責任者は価格の改善を「持続的」と表現し、3ヶ月前には長期契約で価格を取り決めているという説明もありました。ただ、その条件は示されていません。供給が足りるようになった後の値段は、まだ試されていません。

2027年の注文は埋まり、足りないのはレーザーの生産能力です

需要の側については、経営陣はこう言い切りました。

「2027暦年は基本的に受注で埋まっていて、顧客はいま2028暦年の分を押さえにきています」

だから売上を決めているのは供給です。カギは、レーザーを作る半導体材料のインジウムリンです。3ヶ月前の説明会でも、トランシーバーの制約はインジウムリンの生産の立ち上がりだと語っていました。

💡インジウムリン=通信用レーザーの土台になる半導体材料。コヒレントは基板(材料を育てる土台の円盤)を3インチから6インチへ大きくして増産しており、テキサスとスウェーデンのラインの歩留まりは3インチを上回っていると説明しています。

内製の生産能力は1年で2倍になり、これは計画より1四半期早い達成でした。2027年末までに、さらに2倍超を目指しています。基板は5社超から調達し、この増産に要る分は確保できたと見ています。レーザーを作った次の四半期にトランシーバーとして出荷する、という関係なので、増産はそのまま先の売上につながります。

2倍にしたのに、変わっていない数字があります。

「内製と外部の比率は、いまも1年前とほぼ同じです」

比率が動かなかったのは、トランシーバーの売上も同じ速さで伸びたからです。比率の数字そのものは開示されていません。内製の方がコストで大きく有利で、経営陣は「増産による粗利率の恩恵の大半は、まだこれから」と話しています。つまり45%の目標の一部は、この比率がこの先動くことに支えられています。

需要の源は2つあります。1つはデータセンターの中です。もう1つは、AIの計算が複数のデータセンターにまたがることで増える、拠点間の通信です。こちらは2027年末までに、1〜3月期から始まる新製品も含めて四半期売上が今の約2倍になると見込んでいます。さらに経営陣は、銅から光への置き換えはデータセンターの需要とは別に進む技術の流れだと主張しています。資金調達や許認可の懸念への答えとして出した言葉で、当事者の見方として受け取るのが正確です。

競合のルメンタムをマーベルが買収する計画(11月2日に発表、完了はこれから)を聞かれた場面では、最高経営責任者は、利害の衝突がない独立した光の供給者として有利になると答えました。数字のない答えなので、顧客の発注に表れるかどうかは、これから確かめるしかありません。

1〜3月期のPhotonLinkは1億ドルに届くのか

今回の決算は「大きな約束が署名され、そのための支出が先に走っている回」です。この読みを崩す事実は、次の3つです。

  1. 2027年1〜3月期のPhotonLink売上が1億ドルに届かない
  2. 2027年4〜6月期に四半期売上30億ドルへ届かない
  3. インジウムリンの「さらに2倍超」が2027年末に間に合わないと経営陣が言う

良い方向に外れる形もあります。回収期間の数字が戻ってくること、200億ドルの中の最低引取り額や前払いの金額が開示されること、内製の比率が動いたと数字で言えることです。


200億ドルの契約は、まだ売上になっていません。設備投資は、それより先に毎四半期出ていきます。署名された金額と出ていく金額が次の回でどう並ぶのか、前の回の言葉と突き合わせながら、決算のたびに読み続けます。


※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。

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