ニューヨーク州で20年動いていた石炭火力発電所。ある会社がそれを止め、跡地を計算機を並べるための建物に変えました。
いま、その建物から入るお金が、直近の四半期でほぼ倍になりました。そして同じ決算説明会で、社長は「次の契約がいつ決まるかは予言しない」と言いました。すぐ後に「ただ、顧客の関心の強さには強い自信がある」と続けています。
テラウルフという会社です。電気を確保した土地にデータセンターを建て、それを丸ごと長期で貸しています。借り手は、AIの開発会社アンソロピックと、計算資源を貸し出すフルイドスタックです。
■ テラウルフの決算説明会の内容(要点)
- 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
- 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月6日
- 「支えられる予定」が、「確保した」に変わりました
- リース収入は2四半期で3倍になりました
- 7億ドルの年換算は、建物が増える分だけ見えています
- 4棟目の家賃は「9月下旬」から「まもなく」へずれました
日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。
※この記事で扱うのは、2026年11月6日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。
💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。発言はそのまま記録に残ります。
その前に——「データセンターを貸す」と「信用補完」は、何の話でしょう
「データセンターの会社」と聞くと、半導体やサーバーを持っている会社を想像すると思います。テラウルフは違います。持っているのは、電気と土地と建物です。 中に並ぶ計算機は、借り手が持ち込みます。
普通は、計算機を使う会社が自分でデータセンターを建てます。ただ、いま足りないのは建物ではなく電気です。送電網につなぐ許可と設備がそろうまでに何年もかかるので、すでに電気を確保している土地そのものに値段が付くようになりました。テラウルフはそこに建物を建て、10〜20年の長い契約で貸しています。
日本で近いのは、オフィスビルの大家です。ビルを建てるお金の大半は借金で、銀行は「家賃が20年間きちんと入るか」を見てお金を貸します。
ここで「信用補完」が出てきます。アパートを借りるときの連帯保証人を思い出してください。借り手が若い会社でも、保証人がしっかりしていれば大家は安心して貸せます。
今回の最大の借り手アンソロピックは、まだ上場していない会社(上場の申請書は提出済み)で、まだ信用の格付けで「投資適格」と呼ばれる水準にありません。そこでグーグルが、この契約の保証人の役を引き受けました。 財務責任者の説明では、借り手が払えなくなったときにグーグルが契約を引き受けるか、借金を減らすための解約金を払う形です。アンソロピックが投資適格になれば、この保証は外れます。
この記事の結論に効くのはここです。家賃の確かさが、借金の金利を決めます。 保証人が付いたことで、20年分の契約を担保に、建設のお金を借りられる道筋が見えました。今回の決算で一番大きく進んだのは、売上ではなく、この「お金を借りられる形」のほうでした。
「支えられる予定」が、「確保した」に変わりました
同じ財務責任者の言葉が、3ヶ月で「予定」から「確保」に変わりました。
3ヶ月前:「ホーズビルの契約は、投資適格の信用によって支えられる予定だ、と繰り返しておきます」
今回:「アンソロピックとの190億ドル・20年の契約を支えるプロジェクト融資について、グーグルの信用補完を確保しました。そして、フルアと施工契約を結びました」
ホーズビルは、ケンタッキー州にある拠点の地名です。会社はここを「ジャスティファイド」と呼んでいます。
190億ドルは、1ドル150円で約2兆8,500億円です。この契約そのものは、前回(8月5日)の決算説明会の時点ですでに発表されていて、今回新しく決まったのは、保証人と、建てる会社のほうです。
建てる会社は、アメリカの大手建設会社フルアです。前の四半期、社長はフルアとの「関係にとても期待している」と言うにとどまっていました。今回は、話が契約書の段階まで進みました。
「正式な施工契約は、3棟のデータセンターすべてを対象にしています。設計と調達が進むにつれて、上限価格が確定していきます」
ここで出てくる「上限価格」が、施工契約の中身の要です。
💡上限価格(GMP)=工事の値段に天井を決めておく契約。天井を超えた分は、原則として建設会社の側が負います。
ただし、上限価格はまだ確定していません。「確定していく」途中です(社長は結びで「上限価格がある」とも言っていますが、発表文の言い方は「確定していく途中」です)。技術責任者によると、設計図面は90%まで進んでいて12月1日に100%、納期の長い機器の発注は80%を超え、年末に100%の見込みです。
リース収入は2四半期で3倍になりました
数字を3つ並べます。
- 総売上 7,620万ドル(前の四半期は4,480万ドル)
- データセンターのリース収入 6,300万ドル(前の四半期の3,190万ドルから +97%)
- 調整後EBITDA マイナス1,280万ドル(前の四半期はマイナス1,830万ドル)
💡調整後EBITDA=本業でどれだけ現金を生んだかを見るための利益の目安で、会社が一時的と考える項目を除いた数字(non-GAAP)。会社は前の四半期に、マイナスの理由を「稼働前の運営費と開発費が、契約済みの容量の稼働に先立って出ているため」と説明していました。
リース収入は、970万ドル(2025年10〜12月期)、2,100万ドル、3,190万ドル、6,300万ドルと、3四半期続けて増えています。ニューヨーク州の拠点「レイク・マリナー」では、3棟目の建物(CB3)が今期すべて稼働し、家賃を生み始めました。
レイク・マリナーの建設費の見積もりも、小さく下がりました。1メガワットあたりの総コストの見積もりは、前の四半期の910万ドルから890万ドルへ。当初示した800万〜1,000万ドルの範囲の中ほどです。
💡メガワット(MW)=電力の大きさの単位。データセンターでは「何メガワット分の計算機を動かせるか」が、建物の大きさの代わりに使われます。
ただし、この売上は全部が家賃ではありません。リース収入6,300万ドルのうち、家賃そのものは4,600万ドルで、1,130万ドルは借り手のための内装工事の売上(ほぼ同額の費用が裏に立っています)、540万ドルは電気代の立て替え分です。
利益率も、見る数字で大きく変わります。会計基準どおりのリース事業の利益率は約17%(前の四半期は28%)。内装工事の分、稼働前の運営費、開発費を除き、さらに今回は電気代の立て替え分も売上と費用の両方から抜いた調整後は約83%です。前の四半期の調整後80%は電気代を抜かずに出した数字なので、83%と80%は同じ物差しではありません。会社は長期で約85%を目指しています。同じ事業で17%と83%。差の大半は、稼働前の費用と開発費がどれだけ乗っているかです。残りは、内装工事と電気代の立て替えを売上から抜いたかどうかの、物差しの違いです。
7億ドルの年換算は、建物が増える分だけ見えています
今回、初めて出てきた見通しがあります。
「第1四半期の終わりまでに、契約済みの容量の約半分が稼働して売上を生む見込みです。そして、年換算で約7億ドルのリース収入の水準で、その四半期を終える見込みです」
7億ドルは、1ドル150円で約1,050億円です。「第1四半期」は2027年1〜3月期を指します。
この数字は、建物を数えれば筋道が見えます。財務責任者の説明では、いまレイク・マリナーで家賃を生んでいるのは102メガワット。年末にかけて4棟目(CB4)の168メガワットが加わり、2027年の第1四半期末までに5棟目(CB5)の168メガワットが加わります。102が、半年たらずで438になります。
💡年換算=ある時点の1四半期の売上を4倍して、1年分に引き直した数字。「この状態が1年続けば」という仮定の数字で、実際の年間売上とは別物です。
一方で、会社は正式な売上の見通し(ガイダンス)を、前の四半期も今回も出していません。市場の予想は、2026年通期の売上が約2億5,000万ドル、2027年が約8億9,000万ドルです。1〜9月の売上は合計約1億5,500万ドルなので、2026年の予想に届くには10〜12月期だけで約9,500万ドルが要ります。4棟目の稼働時期を考えると、ここは楽な数字ではありません。2027年のほうは、7億ドルは3月末時点の水準なので1〜3月はこれを下回ります。上限の仮定として、この水準が1月から丸1年続いたとしても7億ドルです。予想の8億9,000万ドルとの差の約1億9,000万ドルを埋めるには、7億ドルの水準の外にある売上が要ります。2027年の終わりから稼働が始まるホーズビルや、リース以外の売上(今期は約1,300万ドル)がそれにあたります。予想を大きく追い越す見通しの上積みは、今回はありませんでした。
💡ガイダンス=会社が自分で出す業績予想。今回の7億ドルは、売上予想ではなく「ある時点での年換算の水準」として出された数字です。
4棟目の家賃は「9月下旬」から「まもなく」へずれました
進んだ話の裏で、ずれた話もあります。
3ヶ月前(技術責任者):「予定どおり、9月下旬に最初のデータホールで家賃収入を生み始めます」
今回(技術責任者):「CB4の最初の2つのデータホールの商業運転と家賃の開始は、まもなくの見込みです」
11月6日の時点で、最初のデータホールの家賃はまだ始まっていません。9月下旬と言っていたものが、少なくとも1ヶ月以上ずれています。残りの2つのデータホールは「10〜12月期の残りの期間」に稼働の予定で、決算リリースも「10〜12月期中に段階的に家賃を開始」と書いています。財務責任者は、信用状を差し替える時期を「12月にCB4の契約が始まるとき」と言っています。
しかも、日程に手が入るのは今回が初めてではありません。前の四半期にも、借り手との契約の修正で、データホールごとの引き渡し日程を組み直しています。「9月下旬」は、その組み直しの後で示された日付でした。2四半期続けて、4棟目の日程に手が入りました。
前の四半期から言い方が変わった3つのこと
数字の外で、前の四半期から言い方が変わったところがあります。ただし、説明会で消えたように見えて、別の発表では言っているものもあります。
1つ目は、ケンタッキー州のもう1つの拠点「マスキー」です。 3ヶ月前、社長はこう言っていました。
「マスキーの拠点を、最大2ギガワットまで広げられる可能性について、ますます楽観的になっています」
今回の説明会では「マスキーの最終的な規模についての見方は、大きくなり続けています」まで。2ギガワットという数字は説明会では出てきませんでした。ただ、会社は10月5日の発表で「最大2ギガワットを支えられる可能性を引き続き検討している」と書いています。数字を引っ込めたわけではありません。 そのうえで社長は、こう言っています。
「次の契約をいつ結ぶか、その顧客が誰になるかは、予言するつもりはありません。ただ、マスキーが成果を出すこと、顧客の関心の高さには、強い自信があります」
マスキーは、まだ借り手が決まっていません。社長は「非常に質の高い複数の見込み客と、具体的に話をしている」と言い、急いで最初の借り手と契約するつもりはない、という立場です。
電気のほうは進んでいます。10月5日に電力会社との供給契約を改め、契約済みの電力を500メガワットから1ギガワットに増やしました。最初の500メガワットは2028年に供給が始まります。次の500メガワットのためには、地元の電力会社が760メガワットのガス火力発電所をつくる計画があり、数週間のうちに州の規制当局へ承認を申請し、2027年半ばの承認を見込んでいます。技術責任者は「2029年末までに、まるごと1ギガワットの電力」と言いました。電気の段取りは前に進み、借り手はまだ決まっていない。今回のマスキーはそういう形です。
💡ギガワット(GW)=1,000メガワット。1ギガワットは、大きな原子力発電所1基ぶんに近い規模です。
2つ目は、チェサピークです。 3ヶ月前、社長は「連邦エネルギー規制委員会(FERC)が、モーガンタウンの拠点の買収を承認しました」と言っていました。ただ、そのときも「残りの完了条件しだい」と付けていました。今回、アナリストに聞かれて出てきた言葉は、トーンが下がっていました。
「規制上の承認は、ほとんど手元にそろっています。……ただ、完了の前提条件で、売り手の側がまだ満たしていないものがあります。……もし満たされれば結構。そうならなければ、それは残念なことです」
社長は「満たされれば、すぐに動ける。満たされなければ、考え直す」とも言っています。規制の関門を1つ越えたと話していた買収が、「流れたら残念」とも言われる案件になりました。資金の使い道の説明からも、前の四半期にあった「チェサピークの買収と、積極的に追っている他の新しい拠点」が消え、今回並んだのは、レイク・マリナーの残り、ホーズビルへの出資の残り、マスキーの信用状の3つだけでした。
3つ目は、海外です。 前の四半期、社長は候補地の1つが「海外でのデータセンター開発の最初の試みになるのは確実」と言っていました。今回、海外の話は説明会でも決算リリースでも一度も出てきません。社長は代わりに「年250〜500メガワットの契約目標は、いま持っている拠点で達成できる。パイプラインを大きく見せるためだけに拠点を買う必要はない」と言っています。
経営陣が答えなかったことと、利益を大きく見せたもの
質疑応答では、10人のアナリストのうち7人が、資本コスト・信用・資金調達のどれかを聞きました。
もっとも踏み込んだのは、「契約を結んだ後で資本コストが上がったら、利回りの差をどう守るのか」という質問です。財務責任者の答えは「契約条件は機密なので、詳しくは言えません」でした。グーグルの保証のコストは借り手から回収できる、という説明はありましたが、仕組みの中身は「資金調達を始めるときに公開する」として出ていません。
株式を発行して資金を集めることについては、財務責任者から強い言葉が出ました。
「会社がこれまでに結んだ中でも最大級の契約を結んでおいて、この水準で株主の持ち分を薄めることを強いられる。それは絶対にしません」
手元の計画については答えが出ています。ホーズビルは出資分のお金をすでに持っていて、残りはプロジェクト単位の借り入れで賄う。レイク・マリナーの残り、ホーズビルへの出資の残り、マスキーの信用状は、手元の資金とアバナシーの売却代金で、株式を発行せずに賄える、という説明です。次の大きな契約(マスキー)の資金については、借り手からの前払い、借り手による高い値段での出資、稼働した資産への借り入れの上乗せ、インフラファンドへの持ち分の売却と、選択肢を並べました。ただ、どれを使うかは決まっていません。社長も冒頭から「資金調達のコストの上昇は、重要です」と、資本コストの話を前に出していました。何度も聞かれて、何度も同じ答えが返る。マスキーの資金の形は、まだ解けていません。
利益の数字には、本業の稼ぎとは別のものが大きく入っています。
- 会計基準どおりの純利益は7億990万ドル。ただしその大半は、グーグルに渡したワラント(株を買う権利)の評価替えと、アバナシーの合弁持ち分を売った益で、現金を伴わない、または一度きりの益です
- 合弁の売却代金は約5億3,000万ドルです。2億5,000万ドルは今期中に受け取り済みで、残りは2026年末までに1億5,000万ドル、2027年4月末までに約1億3,000万ドルと、分けて入ってきます
- 費用の側でも、将来の開発に向けた用地の造成と解体の費用が1,230万ドル出ています(前の四半期は330万ドル)
7億ドル台の純利益と、マイナス1,280万ドルの調整後EBITDA。同じ四半期の数字です。家賃で稼ぐ体になりつつあるのは本当ですが、まだ稼ぎより建てる費用のほうが大きい段階です。
なぜ、いまテラウルフにこれが起きるのか
社長は冒頭で、こう言っています。
「計算資源への需要は、引き続き極めて強い。実際に届けられる電力は、引き続き乏しい」
何十億ドル分の計算機を買う会社にとって、半年の遅れ、1年の遅れは致命的です。だからいますぐ電気が来る土地の値段が上がりました。テラウルフの強みは、建物を建てる腕より先に、ニューヨークで20年動かしていた発電所の跡地と、ケンタッキーで結んだ電力供給の契約にあります。
ただ、同じ理由がこの会社の弱点にもなっています。電気のある土地を持っていても、建てるお金は借りるしかありません。借りられるかどうかは、借り手と保証人の信用で決まります。今回の決算は、その両面がそろって出た回でした。保証人を付けて、お金を借りられる形をつくった。 その一方で、資金の使い道を絞り、新しい拠点を買い足す話を引っ込めた。 広げる話は、レイク・マリナーを約750メガワットまで伸ばす計画やマスキーの前倒しのように、いま持っている拠点の中に移りました。
ホーズビルの稼働開始は2027年の終わりから2028年の第2四半期にかけてで、まだ1年以上先です。目の前で数字になるのは、レイク・マリナーの4棟目と5棟目です。
次の決算で確かめること
今回の読みは「借りられる形は整った。ただ、建てる日程と次の借り手は、まだ確かめられていない」です。これが違っていたと分かるのは、次のどれかが起きたときです。
- 4棟目(CB4)の4つのデータホールの家賃が、2026年12月末までにそろって始まらない
- 5棟目(CB5)の4つのデータホールが、2027年3月末までにそろって稼働しない
- 2027年3月末の年換算リース収入が、7億ドルに届かない
- ホーズビルの建設資金の借り入れ(プロジェクト融資)がまとまらない
- ケンタッキー州の規制当局が、760メガワットの発電所を承認しない
1と2は、日付で白黒がつきます。4棟目の日程は、前の四半期に組み直され、今回また後ろへずれました。もう一度ずれなければ、7億ドルは建物の数どおりに出てくる計算になります。
ここに書いたのは、2026年11月6日の説明会までに分かっていることだけです。保証人が付いた契約も、まだ借り入れの形にはなっていません。
電気のある土地を持つ会社が、家賃の会社に変わっていく途中を、四半期ごとに見ています。次は、4棟目の家賃が本当に始まったかどうかから確かめます。
※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。