AIのデータセンターが増えるほど、電気が要ります。その電気をどこから持ってくるのかという問いの、ど真ん中にいる会社のひとつがビストラです。アメリカの主な電力の卸市場の全域に、原子力・ガス・石炭・再生可能エネルギーの発電所を合わせて約5万メガワット持っています。
■ ビストラの決算説明会の内容(要点)
- 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
- 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月6日
- 過去最高の利益と、初めて出した2027年の見通し
- ただし、2027年の上積みは3ヶ月前に予告されていた
- 「開発は力強い」から「ペースは選挙の前から影響を受けていた」へ
- Helixへの資金は、来年寄りにずれた
日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。
※この記事で扱うのは、2026年11月6日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、編集部の予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。
💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストに向けて説明し、質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。
今回の数字は、会社として過去最高でした。来年(2027年)の見通しも初めて出しました。それでも、説明会で経営陣が使った、データセンターの建設のペースについての言葉は、3ヶ月前より一段弱くなっています。
その前に——発電会社が「データセンターと契約する」とは
電力会社と聞くと、家に電気を届けて毎月請求書を送ってくる会社を思い浮かべると思います。ビストラは少し違います。主な仕事は、発電所で電気をつくり、それを卸の市場で売ることです。
テキサス州にはERCOT、東部の13州とワシントンD.C.にはPJMという、大きな電力の卸市場があります。発電会社はそこへ電気を出し、その時々の値段で売ります。値段は天気と需要で動きます。暑い夏は高く売れ、涼しい年は安くなります。
これに対して、データセンターを持つ大手IT企業と結ぶ長期の電力購入契約(PPA)は、何年も先まで量と値段を決めて買ってもらう約束です。卸市場の高い日の儲けは一部あきらめる代わりに、収入が天気や市況に左右されにくくなります。
💡ハイパースケーラー=メタやアマゾン(AWS)のように、巨大なデータセンターを自前で何十か所も持つ大手IT企業。
この会社の利益は、この2つの足でできています。市況で動く卸市場の部分と、契約で固まる部分です。だから決算を読むときは、伸びた利益がどちらの足から来たのかで、意味がまったく変わります。
過去最高の利益と、初めて出した2027年の見通し
- 調整後EBITDA 23億7,800万ドル(前年同期比 +50%超・会社として過去最高。1ドル150円で約3,570億円)
- うち発電の部門が22億8,000万ドル(前年同期は15億4,400万ドル)、小売の部門が約9,800万ドル
- 1〜9月の累計は約56億3,900万ドル(+35%超)
💡調整後EBITDA=本業で稼いだ現金に近い利益の目安。借入の利息・税金・設備の減価償却を引く前の数字で、会社が「一時的」と考える項目も除いています(会計基準どおりの数字ではない、non-GAAPの指標です)。
見通しも動きました。2026年の調整後EBITDAは71億〜75億ドルに幅を狭め、中心の値は当初の見通しより上がっています。会社は「当初の見通しの中心を上回って着地すると見込むのは、5年連続」と言いました。
そして2027年の見通しを初めて出しています。調整後EBITDAが77億〜85億ドル(約1兆1,550億〜1兆2,750億円)、成長投資の前の調整後フリーキャッシュフローが43億〜51億ドルです。
💡ガイダンス=会社が自分で出す業績見通し。
見込みの話が、会社の正式な数字になりました。3ヶ月前、財務責任者は2027年について、テキサスの市況の逆風を埋めきれず「その幅の下のほうに向かう」と言っていました。今回は、2027年を見込みの話ではなく、会社の正式な見通しとして幅つきの数字で示しています。
ただし、2027年の上積みは3ヶ月前に予告されていた
この2027年の見通しには、中身の注記が付いています。社長自身がこう説明しました。
「2027年の調整後EBITDAの見通しを77億〜85億ドルとして示します。これにはコジェントリクスの買収と、メタとの電力購入契約から見込まれる寄与が含まれます」
コジェントリクスは、ビストラが10月30日に買収を完了した発電会社です。約5,500メガワットを、正味約40億ドルで買いました。社長は、この発電所群の利益の見込みが「意味のある形で改善した」と言っています。
問題は時期です。3ヶ月前の説明会で、財務責任者はすでにこう言っていました。
「(買収とメタとの契約が)私たちの中心の値の見込みに、おおよそ7億ドルを加えると結論づけてもよいでしょう」
3ヶ月前の2027年の見込みは74億〜78億ドル(買収とメタとの契約を含まない幅)。財務責任者はその下のほうに向かうと言い、そこへ約7億ドルが加わると言っていました。今回の見通しの中心(81億ドル)は、合計ではほぼその計算どおりになりました。社長はコジェントリクスについて「この見通しに入れた分よりも、さらに上振れの余地がある」とも言いましたが、数字は示していません。
今期の過去最高の利益にも、ほかの要因が重なっています。
- 売れた電気の平均の値段が、前年より10%以上高かった。東部の市場で発電所の「容量」に払われる収入(いざという時に発電できる状態でいることに払われるお金)も増えています
- 市況に合わせてガス発電所の動かし方を最適化したこと
- 2025年10〜12月期にロータスから買った発電所
- テキサスのマーティン・レイク発電所1号機の再稼働
- 暑さ。小売の利益は「平年より暑い天候」によるところが大きい、と会社は説明しています(発電所も、記録的な天候で需要が高まる中で高い稼働を保ちました)
市況とガス発電所の運転、買収、再稼働、それに小売では暑さです。会社が挙げた要因の中に、データセンターとの長期契約は入っていません。
「開発は力強い」から「ペースは選挙の前から影響を受けていた」へ
数字が正式な見通しになった一方で、データセンターの建設のペースについての言葉は、はっきり後ろへ下がりました。
開発の勢いについて。
3ヶ月前(社長):「データセンターの開発活動は、引き続き力強いです」
今回(社長):「はっきり言っておくと、そのペースは選挙の前からすでに影響を受けていました。ただ、私たちの計画は、もともとAIの建設について、より保守的な見方をしてきました。もっと簡単に言えば、選挙の結果は、ビストラが持つ機会についての私たちの基本的な見方を変えるものではありません」
2030年の1株あたりフリーキャッシュフローの見通しの前提を聞かれた質疑応答では、社長はテキサスの先々の電力価格の落ち込みを認め、その原因としてテキサスの電力需要の伸びが遅いことを挙げて、こう言っています。
「依然として力強い成長です。ただ、私たちが想定していた水準ではありません」
ただし、言葉が一方向に下がったわけではありません。同じ説明会で社長は「顧客との対話と活動の水準は高いままです」と言い、データセンター担当の責任者も、ハイパースケーラーが設備投資を増やしていることを挙げて「その面での減速はまったくありません」と答えています。2030年までのテキサスの需要の伸びを年4〜6%、東部(PJM)を年2〜3%と見る見通しも「変わっていない」としました。
下がったのは、建設のペースについての言葉です。
顧客の契約の姿勢について。
3ヶ月前(データセンター担当の責任者):「顧客は、契約するのに完全な見通しを必要としていません」(この前後で「もちろん顧客はもっとはっきりした見通しを望んでいます」「見通しははっきりしているほど良いのは当然です」とも言っています)
今回(社長):「顧客は、見通しがはっきりしていることを望んでいます。ただ、一緒に取り組むことで、不確実性を乗り越える方法を見つけています」
こちらは、言っていることが3ヶ月前とほとんど同じです。「見通しを望むが、待たずに契約の工夫で乗り越える」。この点では、言葉は弱くなっていません。
Helixへの資金は、来年寄りにずれた
ビストラが出資するデータセンターの基盤づくりの事業(Helix)では、資金を出す時期が後ろへずれました。3ヶ月前、データセンター担当の責任者はこう強調していました。
「主要なハイパースケーラーのすべてと、これについて直接話をしています」
今回、Helixについてハイパースケーラーとの直接の対話には触れていません。社長が語ったのは、Helixと複数の案件に取り組んでいることと、資金を出す時期のずれでした。
「時期の面では、今年より来年のほうに寄ると、単に想定しています」
社長はその理由を、政治の環境がどの市場でも活動を一部遅らせたためと説明し、「それは持ち直すと見ている」と続けています。
新しい契約は、規模の小さいものです。会社は原子力とガスの発電所で、これまでに合計4ギガワット超の長期契約を結んできました。この四半期に発表したのは、テキサスの既存のガス発電所(オデッサ)の契約1件で、9月に相手先のデータセンター開発会社(ニュー・エラ・エナジー・アンド・デジタル)が、20年・200〜207メガワットの契約として公表しています。原子力のビーバーバレー発電所と、コマンチピーク発電所の第2期については「まだ契約していない」と答えています。
4社のアナリストが聞いて、答えが出なかったこと
質疑応答でいちばん多く聞かれたのは、選挙の後のテキサスのデータセンター政策でした。4社のアナリストが角度を変えて聞き、あるアナリストは「データセンターの新設を一時停止する措置(モラトリアム)」が出た場合のリスクを名指しで聞いています。
社長の答えは定性的でした。停止措置には州の立法が要ること、コマンチピークのアマゾン向け案件は着工済みであること、議論の中心は基準の引き上げで次の知事も成長を望んでいること。そのうえで、停止措置が出るとしたら「実際にどんな形になるのか、分かりません」と言っています。
別のアナリストに契約の環境を聞かれたデータセンター担当の責任者は、「いつものとおり、新しい案件の時期についてはコメントしません」と答え、そのうえで原子力の追加の契約は結べると自信を示しました。名前と時期は、ここでも出ていません。
テキサスの電力価格の弱さも、3社のアナリストから繰り返し聞かれました。社長はERCOTの先々の電力価格に「いくらかの落ち込み」があると認めました。会社は、近い時期は大口の需要家の接続の遅れが価格を押し下げると説明しています。2029〜30年には従来の見方と同じ水準に落ち着くと見ているものの、その回復は数字の前提に入れていません。発電の利益のうち、テキサスが占める割合は4割弱です。
💡先々の電力価格(フォワード)=何ヶ月も先に受け渡す電気を、いま取引している値段。市場がこの先の電気の値段をどう見ているかの目安になります。
ひとつだけ、具体的に答えた質問がありました。2030年に向けて会社が示した「1株あたりのフリーキャッシュフローの成長」の前提です。会社は、成長投資前の調整後フリーキャッシュフローが1株あたり2025年の10.50ドル弱から2027年に約14ドルへ、2027〜2030年にはさらに約70%伸びると示しています。財務責任者はその前提を分解しました。年10億ドルの自社株買い、年3億ドルの配当、発表済みの案件の支出を織り込み、残りの年約20億ドルも自社株買いに回す。
「このグラフでは、実質的に年におよそ30億ドルの自社株買いを想定しています」
1株あたりの伸びの一部は、株の数を減らすことで作る前提です。テキサスの価格の大きな回復は置いていない、と社長も同じ質問への答えで言っています。
なぜ、この会社の利益が伸びる時期は先にあるのか
ここまでを並べると、ビストラの今回の決算は、2つの時間でできています。
足元の利益は、市況とガス発電所の運転、買収、再稼働、それに小売では暑さで過去最高になりました。この部分は来年の天気や価格で揺れます。一方で、データセンターとの長期契約という、市況に左右されにくい足は、確かに育っています。ただ、その足が利益になる時期は、多くが先です。
- メタとの原子力発電所の契約は、2027年から利益に効き始める
- 石炭火力からガスへの転換と、テキサス西部(パーミアン)でのピーク時用のガス発電所の新設は、2028年から
- アマゾン(AWS)向けのコマンチピークの案件は、最終的な立ち上がりを2032年と想定
- 東部の原子力発電所の出力増強は、2031年から
そして、大口の需要家を電力網につなぐ手続きそのものが、特にガスの電気の供給で「時期の制約になり続けている」と、データセンター担当の責任者が言っています。
2028年の分は78%をすでにヘッジ(値段の固定)しています(テキサスはそれより低い比率です)。借金は買収込みで調整後EBITDAの約2.8倍です。自社株買いの枠は約25億ドル残っていて、これまでに約1億7,200万株を平均約39ドルで消しています。利益の土台と株主への還元は、数字で揃っています。
揃っていないのは、建設のペースを語る言葉のほうです。今回の説明会で経営陣は、2027年の利益の見通しを示した同じ口で、データセンターの建設のペースが鈍っていることを認めました。
ここに書いたのは、2026年11月6日の説明会までに分かっていることです。
次の決算で確かめるべき点は、数字よりも、建設のペースを語る言葉が戻るかどうかです。テキサスの政策がどんな形で決まるのか。来年寄りになったHelixの資金拠出が、本当に動き出すのか。200〜207メガワットのオデッサの次に、ビーバーバレーやコマンチピークの第2期のような大きな契約が出てくるのか。そして、77億〜85億ドルという2027年の見通しが、天気と価格の追い風が無い回でも保たれるのか。
経営陣の言葉が3ヶ月で変わる会社は、次の3ヶ月でもまた変わります。
※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。