ライオット・プラットフォームズ決算の内容:契約は98億から380億ドルへ跳ね、引き渡し済みは1,151MWのうち25MWだけ【RIOT・2026年7〜9月期】

3ヶ月前、この会社のいちばん大きな拠点は「拘束力のない意向書」の段階でした。

今回の決算説明会で、それは「当社史上最大のリース」に変わりました。相手は社名を伏せたAI開発企業で、期間は15年です。契約済みの総額は98億ドルから380億ドルへ増えました。1ドル150円で計算すると、約1.5兆円から約5.7兆円です。

会社の名前はライオット・プラットフォームズ。ビットコインの採掘で知られてきた会社です。最高経営責任者(CEO)は「1年前、当社のキャッシュフローはビットコインの価格に左右されていました」と振り返りました。AIの主役は半導体や計算機を作る会社ですが、その足元で、採掘会社が電力つきの土地を貸す側に回っています。

■ ライオット・プラットフォームズの決算説明会の内容(要点)

  • 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
  • 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月4日
  • 「拘束力のない意向書」が、署名済みの15年契約に変わりました
  • 当四半期の売上は1%増で、賃料はまだ小さいままです
  • 賃料が大きくなるのは2028年で、2027年はまだ2億5,000万ドルです
  • 融資は予定の時期を過ぎ、借り手はほぼ1社に集中しています
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※この記事で扱うのは、2026年11月4日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストへ説明し、質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。

目次

その前に——「電力つきの土地を貸す」とは、何でしょう

「データセンターの会社になった」と聞くと、巨大な建物を建てて、中の冷却まで面倒を見る大家を思い浮かべると思います。今回の契約は違います。貸すのは、土地と、そこまで引いた電気です。

普通のやり方は、貸す側が建物まで造る形です。ライオットも別の拠点ロックデールでは「Tier 3」と呼ばれる仕様で建てていて、費用は1メガワットあたり1,100万〜1,200万ドルです。

💡Tier 3=故障や保守のときも止まりにくいよう、設備に余裕を持たせたデータセンターの仕様。
💡メガワット(MW)=電力の単位で、1,000キロワットのこと。1,000メガワットで1ギガワットです。

ところがテキサス州のコルシカナの拠点では、分担を変えました。ライオットが用意するのは土地と電力設備、計算機を置く土台までです。計算機の調達、設置、所有、運用は借り手が行い、電気代を含む運営費も借り手が払います。

日本でいえば、幹線道路沿いでよく見る、地主が土地を貸して、チェーン店が自分で店を建てる形に近いものです。ひとつ違うのは、この地主は借り手の設備費も一部持つことです。1メガワットあたり200万ドルの敷地工事に加え、400万ドルを、各期の引き渡しと賃料の開始の後に借り手へ払い戻します。合計は約600万ドルで、ロックデールの約半分です。

建物の遅れや冷却の故障や稼働率の低さを、貸す側は抱えません。賃料は、全量を引き渡した後は、借り手がどれだけ使っても910メガワットぶん発生します。だから年平均の賃料が約18億ドルと大きいまま、賃料から運営費を引いて残る割合は約99%という見積もりになります。その代わり、収入の行方は借り手1社の支払いに乗ります。店が繁盛しなくても地代は入りますが、借り手が傾けば困るのは地主です。

「拘束力のない意向書」が、署名済みの15年契約に変わりました

いちばん大きく変わったのはここです。

3ヶ月前:「コルシカナの拠点全体が、現在、単一のテナントとの拘束力のない意向書の対象になっています」
今回:「当社史上最大のリースに署名しました。有力なフロンティアAI研究所との、15年のトリプルネットの電力つき土地リースで、コルシカナの拠点全体が対象です」

3ヶ月前、CEOは2026年の残りの優先事項に「コルシカナの意向書を署名済みのリースに変えること」を挙げていました。その言葉が、今回は事実になっています。

💡トリプルネット=税金、保険、維持費などの運営費を借り手が負担するリースの形。

署名のほかに、4つの数字と言葉が動きました。

  • 貸せる容量:「756メガワットの可能性」から、「同じ1ギガワットの電力で910メガワット」へ
  • 契約済みの容量:241メガワットから1,151メガワットへ
  • 会社の名乗り:「電力を第一とする会社」から、「データセンター・インフラのプラットフォーム」へ
  • 増資の言い方:「外部からの株式調達への依存を減らす」から、「2026年は増資をしておらず、発表済みの案件のために行うことも現時点で想定していません」へ

取引の形も、前回の説明とは別物になりました。3ヶ月前は「リースが結ばれれば、特注の施設を早期に完全な形で引き渡せる」よう準備していると話していました。今回のCEOは「従来の特注型ではありません」と言っています。質疑応答では、アナリストの1人が「この取引のいくつかの点に驚きました」と口にしました。

CEOの言葉では、問いそのものも移りました。「リースを結べるかどうか」から、「リースが生む現金をどう使うか」へ、です。

当四半期の売上は1%増で、賃料はまだ小さいままです

今の数字は、契約の大きさとは桁が違います。

  • 総売上 1億8,100万ドル(前年同期比+1%)
  • 純利益 400万ドル/一株利益 0.01ドル(会計基準どおり・希薄化後)
  • 調整後EBITDA 1億9,100万ドル(前の四半期はマイナス7,000万ドル)
  • データセンター部門の売上 1,800万ドル(うちリース800万ドル、テナント工事1,000万ドル)

💡調整後EBITDA=減価償却費などを足し戻し、会社が一時的と考える項目も調整した利益の目安(non-GAAP)。会計基準どおりの利益とは別物です。

データセンター部門の売上は、全社の約1割です。売上の大半は、まだビットコインの採掘と、電気工事や機器を手がけるエンジニアリング部門から来ています。ビットコインの平均価格は前年同期より38%低く、データセンターとエンジニアリングの売上増4,600万ドルで、その減少を埋めました。

契約の側の数字は、こう動いています。

  • 契約済みのデータセンター収入:98億ドルから約380億ドルへ(延長をすべて使えば720億ドル)
  • 全面稼働時の平均年間NOI:4億1,600万〜4億6,200万ドルから約22億ドルへ
  • 投じた費用に対する年間の利回り(借入を考えない場合):全体で約28%、コルシカナは約33%

💡NOI=賃料などの収入から運営費を引いた利益。不動産を見るときの基本の数字です。

コルシカナだけで、15年の収入は約280億ドル、延長を2回使えば約540億ドルです。CEOは、借入を考えなければ約3年で費用を回収できる計算だと説明しました。

ただし、この賃料の数字には注記が付いています。借り手への払い戻しを償却する前の金額で、会計上は、報告されるリース収入が期間を通じて減ります。決算書に載る数字は、この380億ドルと同じ形にはなりません。

賃料が大きくなるのは2028年で、2027年はまだ2億5,000万ドルです

会社は、リース収入の道筋を年ごとに示しました。

  • 2026年:約2,300万ドル
  • 2027年:約2億5,000万ドル
  • 2028年:18億ドル
  • 2029年:23億ドル

コルシカナの引き渡しは3段階で、2027年9月に400メガワット、2028年1月に200メガワット、2028年7月に310メガワットです。賃料は、各段階の引き渡しから60日以内に始まります。

アナリスト予想の平均は、全社の売上で2026年が約6.8億ドル、2027年が約7.9億ドルです。2027年のリース収入2億5,000万ドルはその中の一部なので、単純には比べられません。会社は全社の数値見通しを出していません。だから、予想をどれだけ上回ったかは確定できません。予想との大きな差が表れるとしても、2028年以降です。

年初に示した全体のNOIの範囲、16億〜21億ドルは「上限を超える見込み」になりました。契約済みの約22億ドルは、上限の21億ドルより約5%多い水準です。意向書の存在も3ヶ月前に開示済みでした。大きな転換であることと、すべてが今回初めて分かった話であることは、別です。

融資は予定の時期を過ぎ、借り手はほぼ1社に集中しています

3ヶ月前の説明と並べると、進んでいない箇所と、説明が抜けている箇所があります。

  • 半導体大手AMDに貸す区画の融資:「第3四半期末までに完了する見込み」が、「まもなく完了する見込み」に。予定の時期を過ぎた理由の説明はありませんでした
  • ロックデールの与信の補強:「交渉はかなり早くまとまると見ています」が、3ヶ月後も「最終的な詰めを進めています」のまま

💡与信の補強=融資の返済を、信用力の高い別の会社に裏づけてもらうこと。

説明が抜けているのは、コルシカナの借り手の信用です。3ヶ月前、財務責任者(CFO)は融資戦略の枠組みに「質が高く、信用力のある借り手に貸す」を挙げていました。今回、AMDは投資適格の借り手と説明され、コルシカナと同じAI開発企業も、ロックデールでは高い投資適格の与信の補強が付く見込みと説明されました。コルシカナには、そうした説明がありません。CFOの言葉は「リースは融資を受けやすいよう設計しています」でした。

💡投資適格=格付け会社から、返済能力が一定以上と評価された信用の水準。

質疑応答でも、コルシカナの借り手の信用と、予定を過ぎた融資を聞いた人はいませんでした。

借り手の顔ぶれも偏っています。1,151メガワットのうち、社名を伏せた同じAI開発企業がコルシカナとロックデールで1,101メガワットを占めます。残りの50メガワットがAMDです。

資金の環境については、前回には無かった言葉が出ました。CFOは「引き締まった信用市場」という言い方で、9月以降の上乗せ金利の拡大と、貸し手が借り手の信用や電力、納入実績をより深く調べていることを挙げました。コルシカナの融資はこれからで、「2027年に手続きを始める見込み」です。組めない場合の代案もあり、借り手が払い戻し分を立て替え、賃料から差し引いて回収します。この差し引きには12%相当の金利が乗るので、資金は確保できても実入りは減ります。

増資をしないという説明を支えているのは、次の計算です。自社の現金で必要な額は8億〜15億ドルと示されました。一方で近いうちに使える資金は約12億ドルで、ここには未完了のAMD区画の融資の1億8,000万ドルが入っています。コルシカナの最終段階の引き渡しまでに入る契約賃料の約9億ドル(借入の返済前)まで足すと約21億ドルです。計算は成り立っていますが、融資と引き渡しが予定どおり進むことが前提です。

元手だったビットコインは3ヶ月で11,380枚から2,418枚へ減りました。CFOの言葉は「意図的な減少です」。期末の現金とビットコインの合計(総流動性)も、約12億ドルから9億5,000万ドルに下がっています。先ほどの「近いうちに使える約12億ドル」は、この9億5,000万ドルに融資などの入金見込みを足した別の数字です。

当四半期の数字でいちばん大きく動いたのは、ビットコインの時価です。調整後EBITDAの1億9,100万ドルには、時価の変動による利益1億7,200万ドルが入っています。会社の調整表でも、この項目は除かれていません。前の四半期のマイナス7,000万ドルには7,500万ドルの損失が入っていたので、2億6,100万ドルの振れのうち約2億4,700万ドルはこの差です。純利益の400万ドルも、この利益を含んだ数字です。価格は6月末の58,527ドルから9月末の83,554ドルへ上がりました。保有は2,418枚、約2億ドルまで減ったので、同じ大きさの振れは起きにくくなります。

ほかにも、続くとは限らないものが3つ入っています。夏に採掘を絞って受け取った電力のクレジット2,500万ドル(前の四半期は1,000万ドル)、開発の進み具合で増減するテナント工事の収入1,000万ドル、そしてエンジニアリング部門の粗利率です。粗利率は27%超から15%へ下がり、低採算の大型ケーブル案件が理由とされました。CFOは次の四半期の改善を見込んでいますが、同部門の受注残は1億7,710万ドルから1億4,200万ドルに減っています。

💡粗利率=売上から直接の原価を引いて残る割合。
💡受注残=注文を受けたものの、まだ納めていない分。

リース本体には一時的な要素がありません。契約は長期で、賃料は使用量に関係なく発生します。ただ、引き渡しが済んでいるのは25メガワットで、その実績もこの1件だけです。

建設費について、CEOは断言を避けています。ロックデールのコスト超過を聞かれ、予算の約70%を上限価格つきの契約に入れる見込みだと答えたうえで、「すべてのリスクが消えるわけではありませんし、ゼロだとも言いません」と続けました。AMDが持つ追加150メガワットの権利については、「これ以上はお話しできません」で終わりました。

採掘のために集めた電力に、AIの計算機が並ぼうとしています

この取引が成り立つのは、電気がすでに通っているからです。

ビットコインの採掘は、大量の専用計算機を電気で回し、報酬を受け取る事業です。そのためこの会社は、コルシカナで1ギガワット、ロックデールで700メガワットの接続を持っていました。どちらも何年も稼働してきた拠点で、コルシカナには変電所もすでにあります。説明会の前夜にあった選挙のリスクを聞かれると、CEOは既存の2拠点について「ここでの開発に追加の承認は必要ありません」と答えました。新規の開発への影響には、数字が出ていません。

CEOの言い分は「当社はこの業界で最も希少なものを持っています。土地と、完全に承認された電力と、それを届ける設備です」というものです。話をした借り手の候補は全員が拠点全体を望んだ、とも説明しました。

速さも売り物になっています。計算機を組み立て式にしたことで、2027年9月に最初の引き渡しができます。CEOは、いま発表される普通のTier 3の案件では「不可能な引き渡し日です」と言いました。

借り手は2社で、契約の形は3つに分かれます。

  • AI開発企業(コルシカナ):910メガワット、15年、土地と電力を貸す形
  • 同じAI開発企業(ロックデール):191メガワット、20年で約91億ドル、Tier 3を建てる形。最初の96メガワットは2027年12月の予定
  • AMD(ロックデール):50メガワット。最初の25メガワットは2026年5月に稼働し、次の10メガワットは2026年11月、全量は2027年5月の予定

もう一方の採掘は、順番に場所を譲ることになります。コルシカナの最初の400メガワットでは止めなくてよく、第2段階の準備で止める必要があるとのことです。縮小は2027年の夏ごろからの見込みで、詳しい日程はまだありません。自社のエンジニアリング部門も、受注残の90%超がすでにデータセンターの仕事です。

2027年9月の400メガワットが、最初の確認点です

いまの読みは「契約は本物だが、現金になるのはこれから」です。引き渡し、融資、増資のどれかが次の形で動けば、この読みは変わります。

  1. コルシカナ第1段階の400メガワットの引き渡しが、2027年9月から遅れる
  2. コルシカナの融資が本命の案で組めず、12%相当の代案に移る
  3. 発表済みの案件のために増資をする

逆の方向で確かめたいのは、もっと手前の話です。AMD区画の融資が次の決算説明会までに完了しているか。同じ説明会で、ロックデールの与信の補強が「最終的な詰め」を終えているか。この2つが閉じれば、資金の話の見え方は変わります。

署名は終わりましたが、1,151メガワットのうち1,126メガワットは、まだ引き渡されていません。CEOの言葉を借りれば、ここから先に残っているのは「実行」です。

3ヶ月前の優先事項だった署名は、今回事実になりました。今回の「まもなく」と「2027年9月」がどうなるかは、次の回からの決算説明会と突き合わせて追っていきます。


※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。

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