エヌビディアのGPUは、買ってきただけでは計算を始めません。棚に組み込み、冷やし、電気を通して、ようやく動きます。
その棚を丸ごと作って納めている会社の売上が、1年で約4倍になりました。スーパー・マイクロ・コンピューター(以下、スーパーマイクロ)です。
■ スーパー・マイクロ・コンピューターの決算説明会の内容(要点)
- 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
- 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月3日
- 売上199億ドル、当初の見通しを約3割上回りました
- 「純粋に時期の問題」は、23億ドルの数字で返ってきました
- 3か月前の「大口9社」は語られず、「1社で44%」が出てきました
- 粗利率の言葉は「伸ばし続ける」から「下期は上期を下回る」へ
日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。
※この記事で扱うのは、2026年11月3日に行われた、2026年7〜9月期(同社の会計年度では2027年度の第1四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。
💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストへ説明し、質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。
数字だけなら、文句をつけにくい四半期でした。変わったのは、顧客についての語り方です。3か月前は「顧客は分散が進んでいる」と言っていた会社が、今回は1社で売上の44%という数字を出しました。
その前に——スーパーマイクロは、何を売っている会社でしょう
社名に「コンピューター」と付きますが、パソコンの会社ではありません。売っているのは、データセンターに並べるサーバーです。それも1台ずつではなく、ラック(棚)単位で納めます。
サーバーを1台ずつ運んで現地で組み上げるのではなく、工場で組み、試験まで済ませて、棚のまま現地へ届ける。家の工事でいえばユニットバスに近い形です。工場で出来上がった浴室を、現場に据え付けるあの方法です。
会社はこの棚に、管理ソフトと現地での設置・保守を組み合わせて「DCBBS」と呼んでいます。略号は覚えなくて構いません。データセンターを建てるためのセット商品、とだけ分かれば十分です。
この商売の形から、今回の決算に効く性質が2つ出てきます。
ひとつは、売上は大きくなるのに、粗利の割合は薄くなりやすいこと。AI向けの棚の中身は、エヌビディアやAMDなどのGPUです。大規模なAI案件はほかの事業より粗利率が低い、と会社自身が説明しています。
もうひとつは、棚が完成していても、受け取る建物と電気が間に合わなければ売上が遅れること。今回の決算は、この2つの話の続きです。
売上199億ドル、当初の見通しを約3割上回りました
- 売上 199億ドル(前年同期比 +298%、前の四半期比 +79%)。1ドル150円で約3兆円です
- 調整後の粗利率 12.8%(会社の見通しは10.4〜10.8%)
- 調整後の一株利益 1.81ドル(見通しは1.01〜1.10ドル)。会計基準どおりでは1.75ドル(見通しは0.89〜0.98ドル)
💡粗利率=売上から原価を引いて残る割合。12.8%なら、1,000円売って128円残る計算です。
💡調整後=会社が一時的などと考える項目を除いた数字(non-GAAP)。会計基準どおりの数字(GAAP)とは別物です。
当初の売上見通しは145億〜155億ドルでした。会社は10月20日に速報で185億〜195億ドルへ引き上げていて、実績はその上限も超えています。
「純粋に時期の問題」は、23億ドルの数字で返ってきました
3か月前の決算は、売上が見通しの下限近くにとどまった回でした。そのとき、創業者で最高経営責任者のチャールズ・リャンはこう言っています。
「第4四半期の売上は、電力不足や冷却、ネットワークをめぐる顧客側の短期的な遅れにより111億ドルとなりました。これは純粋に時期の問題だと分かっています」
会社がよく使う種類の言い訳にも聞こえます。ところが今回、新任の財務責任者が金額を出しました。
「約23億ドルは、顧客とデータセンターの準備の都合で、もともとそれより前の期に予定されていた導入分でした。それを除くと、基礎となる売上は約176億ドルです」
遅れていた分が、実際に計上されました。しかも23億ドルを除いた176億ドルでも、当初の見通しの上限155億ドルを超えています。3か月前の説明は、数字で裏づけられました。
3か月前の「大口9社」は語られず、「1社で44%」が出てきました
3か月前、顧客について語ったのは前任の財務責任者です。
「私たちの顧客基盤は分散が進んでいます。2026年度に売上が10億ドルを超えた顧客は9社で、2025年度の4社から増えました」
今回、大口の社数は語られていません。代わりに、新任の財務責任者からこの数字が出ました。
「この四半期は、大型データセンターの顧客1社が売上の44%を占めました。2026年度全体では28%でした」
199億ドルの44%は、計算すると約88億ドルです(1ドル150円で約1.3兆円)。会社はこの顧客の名前を出していません。さらに、四半期末の売掛金の49%と17%を、それぞれ別の1社が占めています。
💡売掛金=売ったけれど、まだ受け取っていない代金。
公平に書いておくと、9社という数字は年度の集計です。年度末の回に出て、四半期の回に出ないのは不自然ではありません。ただ、前回の主張は「分散が進んでいる」でした。今回出てきた数字が指している向きは逆です。
財務責任者は、集中をこう説明しました。
「いまや1件の導入が、わずか1年前の四半期の売上全体を超えることがあります」
集中はこの建設が続く間は高いままで、一般企業向け(エンタープライズ)や政府系の事業が伸びれば和らぐ、という見方です。大口案件では手付金を求めることが多く、信用力を確かめてから生産能力を割り当て、この四半期に重大な貸し倒れは無かったとも述べました。条件の合わない案件は断ってきた、とも言っています。
言わなくなったことは、ほかにもあります。
受注額です。 3か月前は「600億ドルを超える新規受注」を開示していました。今回は「過去最高の受注残」という言葉だけで、金額はありません。
💡受注はその期に新しく取った注文、受注残は取ったけれどまだ売上になっていない注文の残高です。
DCBBSの比率です。 3か月前、粗利に占める割合の約20%という目標について聞かれ、リャンは「20%は遠くないはずです」と答えていました。今回も「利益率の高いDCBBSの売上の寄与が伸びている」とは言いましたが、比率の数字は出ていません。
これとは別に、3か月前の質疑では取締役会の調査の進捗も聞かれていました。2026年3月に、当時会社と関係のあった3人が輸出規制の対象製品の横流しの疑いで起訴されたのを受け、独立取締役が率いて進めた調査です。当時の財務責任者は「まもなく説明できる見込みです」と答え、会社はその9日後の8月20日に完了を発表しました。現在の経営幹部が知っていたことを示す証拠は見つからなかった、というのが会社の説明で、政府の調査には協力を続けるとしています。完了を発表済みの件なので、今回の説明会で話題に出なかったことは、上の2つと同列には置けません。
粗利率の言葉は「伸ばし続ける」から「下期は上期を下回る」へ
3か月前のリャンの言葉です。
「今後を見れば、全体の粗利率を一貫して伸ばしていきます」
今回の財務責任者です。
「通期の見通しの幅は、下期の粗利率が上期を下回ることを意味します。これは構成の影響です」
AI案件の比率が上がるほど、粗利率は下がる。その比率についても言葉が動きました。3か月前は「売上の80%超がAI関連になる」、今回は2027年度で「およそ70〜80%」です。この四半期の実績は71%でした。会社は今後、この幅の上のほうへ向かうと見ています。
ただ、数字を素直に並べると悪化とは言い切れません。3か月前の粗利率17.6%には、低い粗利の契約が今期へずれた影響と、リャン自身が「一度きりのプラス」と呼んだものが入っていました。比べる相手としては高すぎます。前年同期と比べれば今期は3.3ポイント高く、2027年度の見通し11.8〜12.2%も、2026年度の10.9%を上回ります。財務責任者も「各カテゴリーの中では、マージンは維持または改善すると見ている」と述べています。
「伸ばし続ける」という言葉は、今回、財務責任者の「粗利率12%前後というこの土台」に置き換わりました。顧客と製品の分散が進めば、そこから広げる余地がある、とも添えています。崩れたのではなく、言葉の強さが一段下がりました。
現金は、顧客の前払いで回り始めました
この四半期でいちばん様子が変わったのは、現金の回り方かもしれません。
2026年度の会社は、売上391億ドルに対して営業活動で68億ドルの現金を使っていました。売れば売るほど、先に在庫へ現金が消えていく商売です。今四半期は、売上199億ドルに対して現金の流出が4.3億ドルで済みました。
中身は次の通りです。
- 繰延収益が約31億ドル増えました。その圧倒的な大部分は、納品前に顧客が払った前払いだと説明されています
- キャッシュ・コンバージョン・サイクルは149日から97日へ、1四半期で52日短くなりました
- 在庫は129億ドルから151億ドルへ増えました。これから先の売上のための積み増しだそうです
💡キャッシュ・コンバージョン・サイクル=部品に現金を払ってから、売上の現金を回収するまでの日数。短いほど手元の現金が楽になります。
💡繰延収益=代金は受け取ったけれど、まだ売上にしていない分。
日数の短縮は、今の売上の規模でいえば、本来なら商売を回すために用意しておく必要があった現金約100億ドル分に相当する、と財務責任者は言っています。それでも、フリーキャッシュフローはまだマイナス4.8億ドルです。また、部品会社への支払い日数は29日から13日へ縮み、約30億ドルの現金を使いました。部品が足りない環境では、会社のほうは急いで払う側に回っています。
💡フリーキャッシュフロー=本業で得た現金から、設備投資を引いた残り。
資金繰りについては、質疑で具体的な答えが出た数少ない論点でした。現金は69億ドル、借金から現金を引いた純負債は17億ドル。増資はあるのかと問われ、財務責任者は「現時点で、株式での調達を検討する計画はありません」と答えています。
次の四半期は市場の予想を超え、下期は計算上ゆるみます
次の四半期(2026年10〜12月期)の会社見通しです。
- 売上 195億〜215億ドル(中央の値は205億ドル。市場の予想は約175億ドルで、約17%上)
- 調整後の一株利益 1.66〜1.90ドル(中央の値は1.78ドル。市場の予想は1.14ドルで、約56%上)
- 粗利率 12〜12.5%
💡市場の予想=アナリストたちの予想の平均。市場の予想が175億ドルなら、会社が170億ドルと言っても期待外れになります。
10月20日に速報が出ているので、予想の平均がどこまで更新された後の数字かは割り引いて読む必要があります。それでも差は小さくありません。
通期の売上見通しは、650億〜720億ドルから720億〜820億ドルへ上がりました。中央の値で約12%の引き上げです。市場の予想の約703億ドルは、新しい見通しの下限にも届いていません。
ここで引き算をしてみます。会社は下期の数字を出していないので、以下は記事側の計算です。
第1四半期の199億ドルと第2四半期の中央値205億ドルで、上期は約404億ドル。通期の中央値770億ドルから引くと、下期は約366億ドル、1四半期あたり約183億ドルになります。上期の1四半期あたり約202億ドルを下回ります。 通期の上限820億ドルでも、下期は約416億ドルで、ようやく上期を少し超える程度です。
この計算と経営陣の言葉は、そのままでは重なりません。財務責任者は、通期の幅は「基礎的な需要が四半期ごとに伸び続けること」を前提にしていると述べました。質疑で「下期は成長が鈍る見通しに読める」と問われると、その幅は供給制約とデータセンターの準備の読みによるものだと答えています。リャンはこう言いました。
「部品不足が大きな問題にならず、景気も健全であれば、下期は上期よりずっと大きくなるはずです。(中略)そうなれば、720億〜820億ドルはとても、とても保守的な数字になります」
条件が2つ付いています。部品と景気です。リャンは冒頭でも、主要部品の入手と変動する価格について「慎重でありたい」と述べました。部品への慎重さも「景気」も、前回の説明にはありませんでした。
財務責任者は、幅を決めているものをこう説明しました。
「幅を決めているのは需要でも、作る力でもありません。顧客の施設が、すでに製造済みのものを受け入れられるようになるペースと、主要部品の入手状況です」
誰がどれだけ買う約束なのかは数字が出ず、23億ドルは今期かぎりです
質疑の冒頭で、こう聞かれました。通期の見通しとその先の案件のうち、計算能力を実際に買って使う最終の需要家と、確約された数量がどれくらい見えているのか。比率を聞いた質問です。
リャンの答えは「顧客とシェアを獲得し続けているので、かなり楽観しています」でした。比率は出ていません。
最後の質問は、見通しが良くなった理由そのものでした。この90日で顧客との会話の何が変わったのか。リャンは受注残が大きいので健全な顧客を選べると答え、財務責任者は「とても大きな顧客からも、そこそこ大きな顧客からも、見通しが得られている」と続けて、エンタープライズの伸びも挙げました。この90日で何が変わったのかは、語られないままです。
下期の鈍化は最大の顧客の比率が下がることと関係があるのか、という質問もありました。財務責任者は供給制約とデータセンターの準備の話で答え、最大の顧客には触れませんでした。
一度きりのものと、分けきれないものがあります。
- 遅れて計上された23億ドルは今期の売上だけのものです。通期の見通しはこれの再発を前提にしていません
- 関税の軽減と在庫評価減の減少は粗利の追い風でしたが、粗利の低い繰延収益の計上でおおむね相殺されたと説明されています
- 部品価格の上昇の転嫁は、売上の伸びのうち数量と価格の内訳を聞かれても、数字が出ませんでした。下期の見通しには大きな価格上昇を含めていない、とだけ述べています
つまり、23億ドルを除いても、今期の売上は当初の見通しを超えました。そこは強い。一方で、見通しの確度を支えるはずの「誰が、どれだけ買うと確約しているか」は、正面から聞かれても数字が出ませんでした。
大型データセンター向けなどが売上の74%に、一般企業・代理店向けは前の四半期より減りました
売上の中身は、はっきり二手に分かれています。
大型データセンター向けなどは147億ドル、売上の74%です。前年同期比+321%、前の四半期比+167%。いくつかの大型AIデータセンター案件の生産が立ち上がったことが理由です。
エンタープライズとチャネルは49億ドル、売上の25%。前年同期比+229%ですが、前の四半期比は−12%です。3か月前は56億ドルで、売上の半分を占めていました。
💡チャネル=販売代理店経由の販売。
粗利が厚いのはエンタープライズの側で、集中を和らげる先として会社が挙げているのもエンタープライズです。シスコ、ネットアップ、ニュータニックスとの提携も発表しましたが、金額は出ていません。
会社の見立てでは、この業界全体のAI建設の制約はいま「土地、電力、データセンターの建屋」にあります。そして作る側は、今年12月までに月8,000ラック超(うち液冷4,000超)を生産できる軌道にあると言っています。3か月前は月6,000ラック超(うち液冷3,000超)でした。
💡液冷=風ではなく液体で熱を運んで冷やす方式。車のエンジンの冷却水に近い考え方です。
需要は部品の供給を大きく上回る、と財務責任者は言いました。それが正しければ、前払いの条件が通るのも、売り手の立場が強いからでしょう。前払いは幅広い顧客から増えていると述べています。ただ、大口案件では手付金を求めることが多いとも言うので、その一部は44%と同じ建設に乗っている可能性があります。建設のペースが落ちれば、その分は一緒に動くはずです。
3か月後、44%と前払いはどう動いているか
次の決算で、今回の読みが外れていたかどうかは、このあたりで分かります。
- 2026年10〜12月期の売上が195億ドルを下回るか、通期の720億〜820億ドルが引き下げられる
- 繰延収益(前払い)が減少に転じ、同時に最大の顧客の比率が急に下がる。そうなれば、この四半期の強さは1社の建設ペースに大きく寄っていた、と読むことになります
- 粗利率が通期見通しの11.8〜12.2%を割り込む
良いほうへ外れる形もあります。受注額や大口顧客の数が、数字つきで説明に戻ってくること。 そして通期の見通しが、下期が上期を超える形へ上がることです。リャンの言う「保守的」が本当なら、次の回の数字に出てきます。
44%の顧客の名前も、前払いがいつまで続くのかも、11月3日の説明会では分かりませんでした。3か月後の説明会でも、今回の言葉のどれが残り、どれが消えたかを同じように突き合わせます。
※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。