3ヶ月で調整後の利益の見通しが上がり、2027年の具体的な見通しまで出ました。利益率も調整後で四半期の過去最高です。
同じ決算説明会で、与信・審査の責任者は、融資の中身がどう変わったのかを聞かれて、こう切り出しました。
「実行額が大きく伸び、リスク損失も大きく伸びました。こうした変化は、経済性を考えて意図的に決めたことの結果です」
調整後の利益が大きく伸びた決算で、損失を増やす判断をしたという説明です。
💡実行額=実際に貸し出した額。
💡リスク損失=貸したお金のうち、返ってこないと見込んで費用にする分。
💡調整後=会社が定めた基準で一部の費用を除いて計算した数字(non-GAAP)。会計基準どおりの数字とは別物です。
ブロックは、お店のレジと決済を担う「スクエア」と、個人向けの送金・決済アプリ「キャッシュアプリ」を持つアメリカの会社です。社名は以前、スクエアでした。率いるのはジャック・ドーシーです。
■ ブロックの決算説明会の内容(要点)
- 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
- 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月3日
- 粗利は22%増え、調整後の一株利益は2倍を超えました
- 融資の伸びは59%から40%へ。損失も増えましたが、会社は狙いどおりだと言います
- 3ヶ月前は時期を言わなかったAIの収益に、時期が付きました
- ネイバーフッズの50億ドルは、経由額ではなく参加店の決済額全体です
日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。
※この記事で扱うのは、2026年11月3日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。
💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストへ説明し、質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。
その前に——キャッシュアプリの「Borrow」は、利息でなく定額の手数料で貸しています
決済の会社と聞くと、手数料を薄く取るだけの商売を思い浮かべるかもしれません。でも今回の決算の中心にあるのは、キャッシュアプリの中で貸す、ごく短期の融資です。
クレジットカードのリボ払いは、残高に金利がかかり、返し終わるまで何ヶ月も続きます。Borrow はそれと違って、期間も手数料も最初から決まっています。上限は今のところ最高で1,500ドル(9月時点の平均は300ドル)です。中身は次のように切り替わりました。
- 以前の中心=4週間で手数料5%
- 今の中心=6週間で手数料7.5%
仮に1,000ドル借りると、手数料は50ドルから75ドルになります。週あたりに割ると、どちらも1.25%で同じです。借りる期間が1.5倍に延び、1回の手数料も1.5倍になった、という変更です。
日本でいえば、スマホ決済のアプリの中にある「後払い」や少額ローンに近いものです。アプリがふだんの入出金を見ているので、その情報を使って貸す相手と額を決めています。
この変更が決算の数字に2つの形で出てきます。上限を据え置いたまま期間を延ばしたので、利用者は借りる回数が減り、実行額(実際に貸し出した額)の伸びは鈍ります。 一方で1回あたりの手数料は増えるので、粗利の伸びは支えられます。 今回の決算で「融資が鈍ったのに粗利は強い」という形になっているのは、この仕組みが働いているからです。与信・審査の責任者も、粗利の伸びを支えていると言っています。
💡粗利=売上から、その売上を作るのに直接かかった費用を引いた額。
粗利は22%増え、調整後の一株利益は2倍を超えました
ブロックが説明会の中心に置く数字は、売上でなく粗利です。
- 粗利 32.4億ドル(前年同期比 +22%。1ドル150円で約4,860億円)
- 調整後営業利益 9億2,300万ドル(前年同期比 +92%、利益率は過去最高の29%)
- 調整後の一株利益 1.13ドル(前年同期比 +109%)
- 消費者向け融資の実行額 190億ドル(前年同期比 +40%。1ドル150円で約2.85兆円)
会計基準どおりの営業利益は4億2,800万ドル、前年比+5%です。この差には後で触れます。
3ヶ月前の見通しは、粗利が+18%、調整後の一株利益が+89%でした。どちらも上回っています。財務責任者は、見通しを出した指標はすべて超えたと言っています。
事業別の粗利は、キャッシュアプリが+27%(前の四半期は+31%)、スクエアが+14%(同+13%)です。キャッシュアプリの伸びが落ち、スクエアの伸びが上がりました。
融資の伸びは59%から40%へ。損失も増えましたが、会社は狙いどおりだと言います
3ヶ月前、消費者向け融資の実行額は+59%でした。今回は+40%です。ここだけ見ると急減速ですが、3ヶ月前の説明会で会社は「後半は正常化を見込む」と予告していて、不意打ちではありません。
説明は、質疑応答で与信・審査の責任者がしました。1顧客あたりの実行額は、切り替えの期間中に前の四半期より7%減りました。上限を据え置いたので想定どおりだ、というのが本人の言葉です。さらに、去年の7〜9月期は Borrow を銀行子会社へ移すという大きな手を打った時期で、比べる相手の数字が高くなっています。10〜12月期と来年1〜3月期も、特典プログラム Cash App Green を始めた時期と比べることになるので、前年比は厳しい形が続きます。
肝心なのは損失のほうです。会社は「より利幅が大きく、より損失も大きい商品」へ、意図して構成を動かしたと説明しています。損失を据え置くこともできたが、そうはしなかった、と。財務責任者は別の質問への答えで、これを「リスク損失に投資すること」と呼び、変動利益の強い伸びにつながっていると言いました。損失を増やす判断とセットで示した数字が、Borrow の目標の変動利益率を2%から2.8%へ引き上げたことと、資本利益率の目標37%です。
💡変動利益率=融資で入る手数料から、貸し倒れなど融資の量に応じて増える費用を引いて残る額の、実行額に対する割合。
💡資本利益率=融資に投じた資金に対して、どれだけ利益が出たかの割合。
ただ、この2つは目標です。融資商品の実績について財務責任者が言ったのは、変動利益率は「前年同期と同じ水準」で、ずっと大きな規模でそれを保った、というところまででした。株主向けの書簡(決算と一緒に会社が出す、株主への報告書)には、前の四半期からはわずかに改善したともあります。目標は上がり、実績は前年と同じ水準。対象の範囲は同じではありませんが、並べると差があります。そして説明会の発言の中で、キャッシュアプリの融資の損失の額や率は出てきませんでした。
融資のこれからの伸びしろは、2人のアナリストが別々に聞きました。会社の答えはかなり具体的です。Borrow の上限を引き上げる実験を始めています。今の上限は1,500ドルで、同じ6週間の後払い商品の上限は3,000ドルです。買った後に分割へ変える後払いは、発売から同じ段階の Borrow と比べて3倍の実行額です。キャッシュアプリのカードに付けた Afterpay(後払いサービス)は、同じ比べ方で20倍を超えています。
3ヶ月前は時期を言わなかったAIの収益に、時期が付きました
言葉がいちばん動いたのは、AIの話です。
3ヶ月前(CEO・AIの収益化について):「そうするつもりです。ただ、情報がもっと揃わないうちに、1つの形に決めてしまいたくはありません」
今回(財務責任者):「第4四半期に最初のAI収益を見込んでいます。ブロックのAIの機能や操作画面を、BuilderLab と Buzz を通じて外へ出し始めます」
Buzz は、もともと社内で使うために作ったAIの共同作業の道具です。それを他社へ出す枠組みが BuilderLab で、説明会では11月10日にイベントを開くと予告されました。
ただし、金額は出ていません。最初の質問で、機会の大きさと収益モデルを正面から聞かれた CEO の答えは、収益化の道をいくつも試している、課金の仕方は固定せず柔軟にしたい、というものでした。時期は出たが、大きさと値付けは出ていません。
会社自身も、ここに重みを置いていません。財務責任者は2027年の見通しについて、はっきりこう言っています。
「2027年の成長の見通しは、これらの施策に依存していません」
これらの施策とは、BuilderLab、加盟店向けのAIアシスタント、外部に与信の点数を売る Cash App Score のことです。AI収益の予定は、見通しの外に置かれています。
利用者数の言葉も、1段階上がりました。3ヶ月前は「2026年は1桁台前半の伸びを引き続き見込む」。今回は「2027年は少なくとも1桁台前半の伸びを見込む」です。9月の月間利用者は6,000万人で前年比+4%、6月の+3%から上がりました。
ネイバーフッズの50億ドルは、経由額ではなく参加店の決済額全体です
その利用者の伸びに効いたと会社が言うのが、ネイバーフッズ(Neighborhoods)です。キャッシュアプリの利用者と、スクエアを使う店をつなぐ仕組みで、客は報酬を受け取り、店は客にフォローされます。報酬は今のところブロックが負担しています。
💡GPV=店がスクエアで処理した決済額の合計。
数字はこう動きました。
3ヶ月前:「プラットフォーム上の店の年換算GPVは、6月に10億ドルを超えました」
今回:「プラットフォーム上の店は、年換算GPVで約50億ドルにあたります」
発言どおりに読むと、この50億ドルは参加している店の決済額全体で、ネイバーフッズを経由した額ではありません。経由した割合について言っているのは、1年以上参加している店で約10%です。そしてこの間に、会社は8月下旬に約3万店を自動で有効にしています。10億ドル超から約50億ドルへの増え方には、会社が店の側で仕組みの電源を入れた分が大きく含まれているはずです。
利用者の側には、もう少し実体のある数字が出ました。9月のネイバーフッズの利用者は50万人を超え、そのおよそ半分は、それがなければキャッシュアプリで取引しなかった人たちだといいます。この半分という割合は、始めた時からずっと変わっていないと事業責任者は説明しました。
ただ、この仕組みにどれだけ投資が要るのかを聞かれて、金額の答えは出ませんでした。報酬の率は自社で調整できる、という説明です。
スクエアの決済は、2023年初め以来の伸びになりました
融資の話に目が行きますが、もう片方の事業は静かに加速しています。スクエアのGPVは+14%で、2023年1〜3月期以来の高い伸びです。前の四半期は+13%でした。
動いているのは売り方です。
- 飲食、中堅の店、海外は、いずれも決済額が+20%以上
- 自分で登録する経路の新規の決済額は、この10年余りで最速の伸び(8月までの累計)
- 外部の販売代理店(ISO)は、1年で0から400社超へ(3ヶ月前は200社超)
ISOを経由して加わる新しい店は前の四半期比+90%で、3ヶ月前の+150%超からは落ち着きました。財務責任者は、ISOはまだスクエア全体の中では小さいと認めています。粗利の伸びしろとして挙げたのは、スクエアを使うアメリカの店のうち、有料のソフトを使っているのが16%しかないことです。
2027年については、財務責任者が別の質問への答えで、販売経路への投資、今年出した180の新機能、Kiosk や SquareMates といった新しい商品を挙げ、こう言いました。
「それが、2027年にスクエアのGPVの伸びを3年連続で加速させられると考える自信の一部になっています」
通期の引き上げは約1%で、その大半は終わった四半期の上振れでした
2026年の見通しは、3ヶ月前からこう動きました。
- 粗利:125.1億ドル → 126.26億ドル
- 調整後営業利益:34.7億ドル → 35.19億ドル
- 調整後の一株利益:前年比+70% → 4.15ドル、前年比+75%
粗利の引き上げ幅は1.16億ドルです。一方、7〜9月期が見通しの+18%を超えて+22%で着地した分は、発言の数字から計算すると、およそ1億ドルになります。通期の上方修正の大半は、もう終わった四半期の上振れです。 もう返ってきた答案の点を、年間の合計に足した形です。10〜12月期の見通しも上げたと会社は言っていますが、その伸びは「15%超」で、7〜9月期の22%から大きく下がります。
一株利益の4.15ドルは、市場の予想の平均4.05ドルを約2.5%上回りました。上回ってはいますが、大差ではありません。
話が大きくなるのは2027年です。
「前年比で少なくとも15%の粗利の成長と、32%の調整後営業利益率、言い換えると調整後営業利益の前年比30%の成長を見込みます」
調整後営業利益の額は、株主向けの書簡に45.75億ドルとあります。去年の投資家説明会で示した2027年の計画は35.1億ドルで、今回の額はそれより10億ドル以上高い水準です。
15%と30%という伸び率は、投資家説明会で掲げていた2027年の数字そのものです。つまり率は変わらず、2026年が想定より大きくなったぶん、金額だけが上に乗りました。 会社はこれを、大きくなった土台からの「高い目標」と説明しています。また、増えた利益は新しい事業へ再投資するとも言っています。
一株利益の2027年の見通しは出していません。市場の予想の平均5.21ドルと直接は比べられません。
説明会でも書簡でも Borrow の損失の数字は出ず、預金と自前の決済処理の話は説明会から消えました
強い決算ですが、確かめられていない点が残っています。
いちばん大きいのは、説明会の発言と書簡に Borrow 単独の損失の数字が無いことです。株主向けの書簡には、取引・融資・消費者債権を合わせた損失が6億170万ドル(前年同期3億6,350万ドル、前年比+66%)とあり、理由には融資の量の増加と商品構成の変化が挙げられています。10〜12月期にはこの伸びがさらに鈍る見込みだとも書いています。
ただしこの6億170万ドルは、取引の損失まで含む全社の合計です。Borrow の損失率について書簡が言うのは「健全だった」までで、率は示していません。融資は粗利と調整後の利益を支えている部分なのに、説明会で損失について聞けたのは「大きく伸びた」までで、利幅も目標と「前年同期と同じ水準」までです。貸したお金に対する収益は、利用歴の長い Borrow 利用者の月ごとの数字を投資家向けの別の資料に載せたと財務責任者は言い、説明会では「一貫して強い」という言葉だけでした。
もう1つ、Borrow の切り替えは一度きりです。切り替えが一巡すれば、手数料の押し上げも実行額の押し下げも、理屈の上では前年比から消えていきます。今の粗利の伸びのどれだけがこの切り替えから来たのかは、説明されていません。
次に、利用者の深さです。1人あたりの入金額の伸びは、3ヶ月前の9%から今回は約6%へ落ちました。ネイバーフッズや10代・家族の新しい層を除くと約2ポイント高くなるので、新しい層が平均を薄めた面はあります。それでも除いた数字も9%には届きません。
主な銀行口座として使っている層(PBA)についても、事業責任者はこの四半期に伸びが鈍ったことを認め、「もっとうまくやれると思います」と言いました。PBAからの入金額そのものは+23%で、弱いわけではありません。2027年の見通しはここの再加速を前提にしていない、とも付け加えています。PBAの人数は説明会では示されませんでしたが、書簡の表では940万人で前の四半期と同じ、前年比の伸びは+17%から+13%へ落ちています。
利益率の面では、一般管理費(本社の人件費や事務の費用など)が調整後で21%減ったことが効いています。財務責任者はまだ削る余地があると言いますが、金額は出していません。ただ、この21%減は調整後の話です。会計基準どおりの一般管理費は書簡によると前年比+56%で、主な理由は訴訟などに備えて積んだ費用の増加です。営業利益の調整後+92%と会計基準どおり+5%の開きには、この費用も入っています(これだけが差のすべてではありません)。
そして、3ヶ月前に語っていて今回出てこなかった話があります。
3ヶ月前、財務責任者は銀行子会社の預金について「スクエアの貯蓄口座に1万ドル以上置く店は3.5%の利回りを受け取れます」と語り、6月に自前での決済処理(アクワイアリング)を初めて行ったと言っていました。今回の説明会では、預金も自前の決済処理も1回も出てきません。銀行子会社の名前は融資の話で出てきますし、銀行サービスの利用を広げるという話もありますが、この2つの続報はありません。自前の決済処理は複数年かかる取り組みだと言っていたので、やめたとは限りません。それでも3ヶ月前の言葉はこうでした。
「今の位置とこれから向かう先を見ると、かなりわくわくしている重要な節目が2つあると思います」
キャッシュアプリの決済用の小さな道具 Tags も同じです。3ヶ月前は「次の販売の通知を希望した人が300万人を超えた」と数字がありましたが、今回の説明会では成長の要因として名前が並ぶだけで、台数も人数も出ていません。
2月に分かるのは、AI収益の中身と「少なくとも15%」の行方です
財務責任者は、2027年の詳しい話を2月の説明会ですると言っています。そこで見られるものは、はっきりしています。
- AIの最初の収益が実際に計上されたか。金額か課金の形が語られるか
- 2027年の粗利「少なくとも15%」が保たれるか
- Borrow の変動利益率が、目標の2.8%に近づいたと数字で言えるか。上限引き上げの実験の結果が出るか
逆に、スクエアのGPVの伸びが14%から落ちていけば、3年連続の加速という話の足場が揺れます。預金と自前の決済処理の話が戻ってくるかどうかも、同じ説明会で分かります。
融資の損失を増やして利幅を取る判断が正しかったかは、貸したお金が返ってきて初めて答えが出ます。6週間で返す融資なので、答えは早く出ます。ただ、Borrow 単独の損失の数字を説明会や書簡で語るかどうかは会社次第です。四半期ごとに同じ場所を読み直していきます。
※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。