グローバルファウンドリーズ決算の内容:光通信は2027年まで予約で埋まり、筆頭だった量子案件は語られず【GFS・2026年7〜9月期】

3ヶ月前、この会社の最高経営責任者(CEO)は「この四半期の3つの重要な進展」を挙げ、その1つ目に量子コンピュータを置きました。「これからの10年とその先で、高性能計算の次の章を定義するパラダイムシフト」という言葉つきです。

今回、量子の顧客案件についての話は出てきませんでした。代わりに語られたのは、データセンターの中を走る光と、その光の部品を作る工場の話です。

会社の名前はグローバルファウンドリーズ。顧客が設計した半導体を受託で作る会社で、ニューヨーク州マルタやバーモント州バーリントンに工場を持っています。

■ グローバルファウンドリーズの決算説明会の内容(要点)

  • 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
  • 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月4日
  • 売上は13%増、粗利率は過去最高の31.4%でした
  • 10倍にもできるという話が、来年3倍にする計画に変わりました
  • 建物を建てず、顧客と政府のお金も入れて増やします
  • 量子も、買ったばかりのIVRも、今回は語られませんでした
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※この記事で扱うのは、2026年11月4日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストの質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。

光の工場について、言葉は3ヶ月前よりはっきり強くなりました。来年の設備投資は約40億ドルです。それでも、5月に置いた全社の長期目標の数字は動かず、株数は増えます。その両方を並べます。

目次

その前に——データセンターの中で起きている「ADSLから光回線へ」

家のインターネットが、銅の電話線を使うADSLから光回線へ替わったのを覚えている方は多いと思います。同じ置き換えが、いまデータセンターの中で進んでいます。CEOの言葉はこうです。

「データセンターのあらゆる場面で、光の接続が銅線を置き換えていて、需要は本当に急騰しています」

ただ、コンピュータの中身は電気で動いています。だから線の両端で、電気と光を変換する部品が要ります。その部品が光トランシーバーで、中に入る半導体が2種類あります。

  • シリコンフォトニクス=電気と光を行き来させる回路を、半導体の工場で作る技術。半導体そのものが光って計算するわけではありません
  • シリコンゲルマニウム=電気と光の境目で、信号を送り出し、受け取って増幅する高速な半導体

この会社は両方を作っています。つまり光の配線が増えるほど、同じ会社の同じ工場に、2種類の注文が同時に来ます。 今回の決算の明るい話は、ほぼ全部ここから出ています。

売上は13%増、粗利率は過去最高の31.4%でした

  • 売上 18億9,900万ドル(前年同期比 +13%、前の四半期比 +6%)
  • 粗利率 31.4%(前年同期比 +5.4ポイント、過去最高)
  • 純利益 約2億9,800万ドル(前年同期から約6,600万ドル増)
  • 一株利益 0.53ドル(希薄化後)

💡粗利率=売上から製造にかかった費用を引いた残りの割合。ここに並べた粗利率以下の3つは調整後(non-IFRS)の数字です。株式報酬などを除いた、会社が自分で示す数字で、会計基準どおりの数字(IFRS)とは別物です。

伸びの中身はきれいに割れています。光通信を含む「通信インフラ・データセンター」は売上の約17%で、前年同期比 +81%。家庭・産業IoTは約20%で +49%、自動車は約19%で +20%。一方、いちばん大きいスマートフォン向けは約32%で −19% でした。

売上は、3ヶ月前の会社見通し(18億8,500万ドル、上下2,500万ドル)の範囲内で、中心から1,400万ドル上でした。経営陣は「レンジの上限付近」と表現しています。この部門が8割伸びても、全社で見れば小幅な上振れです。この部門はまだ売上の6分の1ほどで、最大の部門が2割近く縮んでいるということです。

10倍にもできるという話が、来年3倍にする計画に変わりました

3ヶ月で変わったのは、約束の具体さでした。

予約は、どこまで埋まったか。

3ヶ月前:「シリコンゲルマニウムの需要は強いままで、2027年を通じて注文が供給を上回っています」
今回:「2027年までは完全に予約で埋まっていて、2028年も埋まりつつあります」

3ヶ月前はシリコンゲルマニウムの話で、今回はシリコンフォトニクスとシリコンゲルマニウムの両方を聞かれた質問への答えです。2028年は「埋まりつつある(increasingly)」で、埋まったとは言っていません。

目標の時期。

3ヶ月前:「2028年末から2030年にかけて置いた成長目標に対して、シリコンフォトニクスの伸びはとても順調で、先行している可能性もあります」
今回:「2027年の終わりには、シリコンフォトニクスの売上が年率約10億ドルの水準に達すると見ています。従来の想定より丸1年早いものです」

「可能性もあります」が消えて、金額と時期が付きました。10億ドルは、1ドル150円で計算すると約1,500億円です。2026年の見込みは約5億ドルで、この会社の2026年の売上(約73億ドル)の7%弱です。

💡年率=その時点の四半期の売上が1年続いたらいくらになるか、という換算です。2027年に10億ドルを売るという意味ではありません。

生産能力。

3ヶ月前:「長期の計画で考えると、光の生産能力は今の建屋の中で10倍にすることもできます」
今回:「来年にかけて、シリコンフォトニクスの生産能力を約3倍にする計画です」

できるという話が、やるという話になりました。財務責任者はその費用も出しています。2027年の純設備投資(政府の補助金などを差し引いた額)は約40億ドル(同じレートで約6,000億円)。2026年の売上は実績と見通しを足して約73億ドルなので、その半分を超える金額です。

顧客の立場。

3ヶ月前:顧客がこう言ってくる、とCEOが紹介した言葉「確保が足りません。もっと確保したい。こちらで何かお手伝いできますか」
今回:「どの案件でも、顧客はその投資を支えるために、自社のバランスシートを使う用意があります」

バランスシートは、ここでは顧客自身の資金のことです。財務責任者によれば、2027年の純設備投資の約3分の1は顧客の前払いで支える見込みです。

通信インフラ・データセンターの2026年の成長見通しも、高い30%台から50〜60%へ、そして今回60〜70%へと、2回続けて上がりました。この部門の前年比2桁成長は、これで8四半期続いています。

建物を建てず、顧客と政府のお金も入れて増やします

なぜ、この会社にこれができるのか。理由は工場の中にあります。

過去3年、この会社の設備投資は売上の10%強に抑えられてきました。財務責任者は、需要を基準に判断してきた結果、比較的投資が足りていなかったと振り返っています。そしてCEOによれば、自動化の進んだ300ミリの工場の中には、まだ広いクリーンルーム(ほこりを抑えた製造の区画)の余地があります。

「増設は既存の建屋の中でできます。ですから、売上になるまでの時間も短くなります」

他社のように新しい工場を建てることに頼らず、今の建物の中へ装置を入れて増やす。これが財務責任者の説明です。

お金の出どころも3つに分かれています。顧客の前払いに加えて、投資税額控除(率は35%)と政府の補助金です。米商務省とは、既存の補助金のうち9億5,500万ドルをマルタとバーリントンの工場へ振り向ける合意をしました。別の合意でアメリカ政府に株式も発行し、これまでの発表分と合わせて、政府の持分は約7%になる見込みです。さらに日米の工場拡張の枠組みで、マルタの工場を大規模化する計画も発表しました。会社は「資本を投じずに、より速く能力を広げられる」と説明しています。

契約の裏づけは、光通信だけではありません。

  • TSMC と5年で20億ドルの製造契約。AI半導体とメモリを並べて載せる土台(シリコンインターポーザー)をアメリカで作るもので、量産の開始は2028年前半
  • マーベル と複数年の提携(シリコンゲルマニウムの増産)。説明会では金額の言及なし
  • モノリシック・パワー・システムズ と電源管理半導体の提携。説明会では金額の言及なし
  • 買収したMIPSなどを生かすカスタム半導体で、この四半期に生涯売上(製品の寿命全体で見込む売上)ほぼ10億ドル分の設計を獲得。説明会では期間の言及なし

💡設計獲得=顧客が自社製品にこの会社の半導体を使うと決めること。売上になるのは量産が始まった後です。

今回の説明会で、相手の名前と金額がそろって語られた契約はTSMCの1件で、その量産も2028年前半からです。

自動車とIoTも、この会社の土台です。自動車は2026年に2桁前半の成長を見込み、IoTは10〜15%の見込みのままです。スマートフォン向け以外の売上は、初めて全体の3分の2を超えました。

量子も、買ったばかりのIVRも、今回は語られませんでした

量子。 3ヶ月前は、量子コンピュータの有力企業8社と組んでいること、専門チームの発足から3ヶ月で4件の顧客案件が始まったことを、具体的に話していました。今回「量子」という語が出たのは2回だけで、政府の持分と補助金の説明の中です。顧客案件の進み具合は語られず、質疑応答でも話題になっていません。

やめたとは言っていません。3ヶ月前の説明でも、量子の売上はこの先1〜3年は技術開発の受託が中心で、量産は2020年代の終わりにかけてでした。1回語らなかっただけで裁ける話ではありません。ただ、筆頭の話題が1四半期で補助金の説明の中に退いたのは事実です。

電源の3本目の柱。 3ヶ月前、CEOはデータセンターの成長の柱を3つ挙げ、3本目を電源と言いました。プロセッサのすぐ近くで電圧を整える部品(IVR)の設計チームを、買収して迎え入れたばかりでした。今回、IVRという言葉は1度も出ません。電源の話そのものは続いています。別の電源部品のテープアウトと、窒化ガリウム(GaN)の設計獲得が報告されました。消えたのは電源ではなく、買って語ったばかりのIVRです。

💡テープアウト=設計を終えて、製造の工程へ渡すこと。

予告したテープアウト。 光を計算チップのすぐ近くまで引き込む新世代の実装(NPO、CPOと呼びます)に向けて、3ヶ月前は「7〜9月期にもう1件テープアウトする見込み」と言っていました。今回、実施の報告はありません。NPOとCPOの開始時期も、3ヶ月前の「2027年にNPOの立ち上がりが始まり、2028年にCPOの立ち上がりが始まる」から、今回は「その移行は続くと引き続き信じています」に変わり、年が付かなくなりました。

設計獲得の数。 3ヶ月前は「光通信で新規7件」「設計獲得で過去最高の四半期」と数えていました。今回の光通信は「獲得した」という言い方で、件数がありません。

逆に、前進に見えて比べられないものもあります。光トランシーバーの大手との取引は、3ヶ月前の「上位5社のうち4社」が今回「上位10社のうち7社」になりました。母数が変わったので、増えたとは言えません。はっきり増えたのはシリコンフォトニクスの顧客数で、40社超から50社超へ、です。

次の四半期の売上見通しは、市場の予想とほぼ同じです

会社の見通しは、10〜12月期の売上が20億ドル(上下2,500万ドル)、粗利率が約31.5%、調整後の一株利益が0.59ドル(上下0.05ドル)です。

市場の2026年通期の売上予想は約73億1,000万ドルでした。決算の前後で動く数字なので、目安です。そこから1〜3四半期の実績を引くと、10〜12月期に期待されている額はおよそ19億9,000万ドルになります。20億ドルの見通しは、ほぼ同じ水準です。

💡市場の予想(コンセンサス)=アナリスト予想の平均。ここでは、400メートル走の残り100メートルについて、周りの予想タイムと本人の申告がほぼ同じだった、という状況です。

引き上げは、光の部門と先の年に集中しています。スマートフォン向け・自動車・IoTの2026年の見通しは変わりませんでした。

そして全社の長期目標も変わりません。粗利率を2028年末に40%へ、という5月の目標について、財務責任者は「数ヶ月前に示した目標に変更はありません」と言いました。今期が31.4%なので、まだ距離があります。提携の発表が目標への上乗せになるのかを聞かれた経営陣の答えは、「戦略目標の数字を更新するには早すぎます」でした。達成して超えていける自信は増した、とも添えています。

もう1つは株数です。今期の約5億5,800万株が、政府への株式発行を反映して10〜12月期に約5億7,500万株、2027年からは約6億株になる見込みです。約7.5%の増加です。今期の純利益2億9,800万ドルを6億株で割ると、0.53ドルは約0.50ドルになります。会社全体が伸びても、1株あたりでは、その分を差し引いて読むことになります。

前払いの大半はまだ締結前で、手元に残る現金は前払いと補助金を除くとマイナスです

前払いの大半は、まだ締結されていません。 2027年の純設備投資の約3分の1を支えるはずのお金です。

「それらの大半は、10〜12月期から2027年初めにかけて締結されると見ています」

バランスシートを使う「用意がある」は、まだ用意です。聞かれて出なかった数字もあります。

  • 署名済みの割合:2027〜28年の生産能力のうち、どれだけ署名済みの約束なのか。方向感だけでもと聞かれましたが、割合は出ず、答えは「予約で埋まっている」でした
  • 40億ドルが生む売上:質問者が「たぶん答えてもらえないでしょうが」と前置きして聞きました。売上の額は出ず、出たのは回収期間で、「挙げた技術の大半で、おおむね2年以内」です
  • 粗利率目標への上乗せ:粗利率の先行きを4人が角度を変えて聞きました。40%への上乗せを問う質問も出ましたが、目標の数字は変わりませんでした
  • シリコンフォトニクスとシリコンゲルマニウムの構成比:「実質的に両方とも売り切れています」までで、比率は出ませんでした

増産の速さを決めるのも、需要ではなく自社です。CEOは「あとは私たちの実行次第です」と言い、装置の据え付けを挙げました。他社の参入も続いていて、2028年に光トランシーバーが作りすぎにならないか、という質問も出ています。

数字のほうでは、フリーキャッシュフローに注意が要ります。調整後で1億3,600万ドルでしたが、そこに顧客の前払いと政府の補助金が約1億5,000万ドル入っています。それを除くとマイナスです。 買収したMIPSと、設計ソフト大手シノプシスの事業も、2026年の売上に1億〜1億2,000万ドル(3ヶ月前の見通し)を足しています。

💡フリーキャッシュフロー=本業で稼いだ現金から設備投資を引いて、手元に残るお金。

自動車の前の四半期比 +11% には、前の四半期の −13% の反動が混ざっている可能性があります。財務責任者は当時、あの減少を「主に顧客主導の出荷時期のずれ」と説明していました。全社の平均販売価格は前年同期比で5%近く上がり、前年比での上昇は2023年以来初めてでしたが、需給が緩めば逆へ動きうる数字です。

前払いが「締結」になるかどうかを見ます

この決算から読めるのは、「光の工場の中身は売れている。ただし、その売上が大きくなるのは来年以降で、会社全体の目標はまだ動いていない」という姿です。この姿を崩しうるのは、次の3つです。

  1. 2027年の純設備投資の約3分の1という前払いの比率が、締結が進まずに下がる
  2. 2027年末の年率約10億ドルという目標が、取り下げられるか先送りされる
  3. 「埋まりつつある」と言った2028年が、次の説明会で「埋まった」に進まない

逆に、この読みより良い方へ外れる形も1つあります。5月に置いた全社の長期目標そのものが引き上げられることです。今回は、粗利率の見方や提携の上乗せを聞かれても動きませんでした。次に動けば、言葉だけでなく会社の約束が変わったことになります。

量子については、次の説明会で顧客案件の話が戻るかを確かめます。


ここまでは、2026年11月4日の説明会の時点で分かっていることです。契約の締結も、装置の据え付けも、これから四半期ごとに進みます。次回の説明会でも、今回の言葉と並べて、何が進み、何が語られなくなったのかを確かめます。


※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。

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