トースト決算の内容:通期見通しを上げた説明会で、「100億ドル」の目標は語られなかった【TOST・2026年7〜9月期】

アメリカのレストランにレジと決済を一式で提供している会社が、また見通しを引き上げました。店の数は約18万9,000店。引き上げは3四半期続けてです。数字だけなら、順調な決算です。

ただ、3ヶ月前の決算説明会でCEOが2度口にした「継続収入を100億ドルへ」という言葉が、今回は一度も出てきません。次に財務責任者になる人は、来年の利益率の上がり方を「ごくわずか」と言いました。3ヶ月前には無かった、連邦取引委員会(FTC)からの訴訟も加わっています。

強い数字と、小さくなった言葉が、同じ説明会に並んでいました。

■ トーストの決算説明会の内容(要点)

  • 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
  • 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月3日
  • 定期粗利は27%増、通期の見通しは3四半期続けて上がりました
  • 「過去最高の9,500店」は「8,500店」になりました
  • 月額は加速し、決済は鈍りました
  • 来年の利益率は「ごくわずか」——財務責任者の交代と同時に出た言葉
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※この記事で扱うのは、2026年11月3日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。

💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストへ説明し、質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。

目次

その前に——トーストはレジの会社ですが、レジで稼いでいません

レジの会社と聞くと、レジの機械を売って稼ぐ会社を思い浮かべると思います。トーストは逆です。機械と導入サービスの部門の粗利は赤字で、この四半期も赤字のままでした。

日本でいえば、Airレジやスマレジのようなレジのサービスをレストラン向けに作り込んで、カード決済、シフト作成、給与、集客、店向けの融資まで一式にしたものを思い浮かべてください。機械は入口で、稼ぎは入った後に毎月積み上がります。

稼ぎ方は大きく3つです。店が毎月払うソフトの利用料。店を通るお金にかかる決済の手数料。そして店への融資です。

💡定期粗利=ソフトの利用料と、決済・融資などの金融サービスから毎期入ってくる粗利の合計(会社の呼び名は recurring gross profit)。会計基準にそのまま載る数字ではなく、会社が調整して示す数字(non-GAAP)です。

会社は通期の見通しを、売上高ではなくこの定期粗利で出します。今回の決算は、ここで分かれました。合計はきれいに伸びていますが、中身の月額と決済で、伸び方が割れています。

定期粗利は27%増、通期の見通しは3四半期続けて上がりました

粗利の伸びに対して、会計基準どおりのGAAP営業利益は前年のほぼ2倍です。

  • 定期粗利 +27%(前年同期比)
  • 調整後EBITDA 2億4,000万ドル(+36%。利益率は37%で前年より2.6ポイント上昇)
  • GAAP営業利益 1億6,500万ドル(前年のほぼ2倍。営業利益率26%)
  • GAAPの一株利益 0.29ドル(前年は0.16ドル)

💡調整後EBITDA=営業段階の利益に、減価償却費や株式報酬など会社が定めた項目を足し戻した数字(non-GAAP)。会計基準どおりのGAAPの数字とは別物です。

店の数は約18万9,000店で+21%。店を通った決済の総額は620億ドル(1ドル150円で約9.3兆円)で+20%でした。その総額に対する定期粗利の割合は1.04%で、前年より0.06ポイント上がっています。店を通ったお金1万円につき、トーストの手元に104円の粗利が入る計算です。

3ヶ月前に会社が出していた7〜9月期の見通しは、定期粗利が+22〜24%、調整後EBITDAが2億1,000万〜2億2,000万ドルでした。実績はどちらも上限を超えています。通期の見通しは次のように上がりました。

  • 定期粗利の伸び:+23〜25% → +26%
  • 調整後EBITDA:8億500万〜8億2,500万ドル → 8億4,000万〜8億5,000万ドル

💡ガイダンス(見通し)=会社が自分で出す業績の予想。

「過去最高の9,500店」は「8,500店」になりました

3ヶ月前のCEOの言葉と、今回の言葉です。

3ヶ月前:「この四半期の店舗の純増は過去最高の9,500店で、これまでの最高を1,000店上回りました」
今回:「この四半期は8,500店を純増させ、すべての顧客層でシェアを伸ばしました」

財務責任者の説明も、「過去最高」から「前年から二桁の伸び」に変わりました。

💡純増=新しく増えた店から、やめた店を引いた数。

ただ、8,500店は弱い数字ではありません。3ヶ月前の質疑でCEOは、それまでの最高が8,500店だったと述べています。今回の数字は、つい3ヶ月前までの最高と同じ水準で、前年同期も二桁%上回っています。

変わったのは内訳の見え方です。3ヶ月前は「大半が中核の事業から」と説明していました。今回は、中核の純増は「非常に強い」、新しい市場の純増は「加速している」という言葉だけで、割合は出ていません。

月額は加速し、決済は鈍りました

合計の27%を分けると、2つの違う動きが出てきます。

月額のソフト側は、3ヶ月前より強くなっています。

  • ソフトの年換算の継続収入:+27% → +28%
  • 月額の粗利:+32% → +36%
  • ソフトの粗利率の改善幅(前年比):2.4ポイント → 3.2ポイント

💡年換算の継続収入(ARR)=今の契約が続くとして、1年で入ってくる継続収入を見積もった数字。

財務責任者は、サポートへの問い合わせのうちAIの道具がさばく割合が増えていることを、粗利率の改善の重要な要因の1つに挙げました。

決済側は、はっきり鈍っています。

  • 店を通った決済の総額:+22% → +20%
  • 決済の年換算の継続収入:+23% → +21%
  • 金融サービスの粗利:+26% → +21%

3ヶ月前の決済の総額には、6月末のワールドカップの小さな追い風が入っていたと会社は説明していました。また次期財務責任者は、1店あたりの決済額は今年の大半を通じて同じ範囲で安定していると述べています。お客さんが急に財布を閉じた、という話は出ていません。ただ、金融サービスの粗利が5ポイント鈍った理由は説明されず、質疑でも聞かれませんでした。

全体の年換算の継続収入は、+25%から+24%へ。合計で見れば1ポイントですが、その内側で月額と決済が反対に動いています。

10〜12月期の見通しは、定期粗利が+22〜24%です。実績の27%より低いので減速の予告に見えますが、3ヶ月前に出した7〜9月期の見通しも同じ+22〜24%で、結果は27%でした。この数字だけで減速とは言えません。調整後EBITDAの見通しが7〜9月期より低い2億〜2億1,000万ドルなのも、7〜9月期は決済の季節性で利益率が高くなるという財務責任者の説明と合っています。

来年の利益率は「ごくわずか」——財務責任者の交代と同時に出た言葉

6年近く務めた財務責任者が退き、社内で5年近く働いてきた後任が来年初めに就きます。その後任が質疑で最初に具体的に語ったのが、2027年の話でした。

3ヶ月前(現在の財務責任者):「2026年は、控えめな利益率の拡大を前提に運営しています」「時間をかければ、はるかに高い利益率に至る道筋があると考えています」
今回(次期財務責任者):「来年の利益率の上昇は、ごくわずかなものになると見ています」

「控えめ(modest)」が「ごくわずか(very modest)」になりました。3ヶ月前の「はるかに高い」は長い時間軸の話で、今回は来年の話なので、撤回とは言えません。それでも、来年の利益率について今回出た言葉は、控えめな側のものでした。

会社の説明は単純です。2026年の利益率は約36%で着地する見込みで、投資家向け説明会で掲げた中期目標をすでに超えています。だから余力は投資に回す、という話です。会社全体の利益率は「新しい成長分野にどれだけ投資すると決めるかで変わる」と言い、柔軟性を残したいとも述べました。

成長率については「20%超という枠組みに自信があります」と答えています。正式な2027年の見通しは、2月の決算説明会で出ます。

「100億ドル」は語られず、「2億ドル」が語られました

3ヶ月前、CEOは同じ説明の中で2度、この数字を出していました。

「これらの優先事項を実行していくことで、トーストの継続収入を100億ドル、さらにその先まで伸ばせると引き続き信じています」

100億ドルは、1ドル150円で1.5兆円です。今回の説明会には、この数字が一度も出てきません。出てきたのは「今後5〜10年にわたる持続的な成長」「数十億ドル規模の成長機会」という言い方です。

3ヶ月前に数字つきで語っていた、スポーツ・娯楽施設の「米国だけで5億ドルの年換算の継続収入の機会」も、ホテルチェーンのベストウェスタンの推奨業者に選ばれた話も、今回は出てきません。

言わなかったことは、取り下げたこととは違います。会社は目標を下げたとは言っていません。質問もされていません。

代わりに厚くなったのが、新しい市場の採算の話です。企業向け、海外、小売の3つを合わせた継続収入は、年内に2億ドルへ向かい、2年続けて倍増します。これは3ヶ月前と同じ数字です。3ヶ月前に無く、今回出たのは次の2つでした。

  • 同じ2億ドルに、中核の事業のときより25%少ない直接の開発投資で届く
  • 顧客獲得の費用を回収する期間を、20ヶ月以下で管理していく

回収期間の20ヶ月は目標で、いまの値は示されていません。遠い目標の数字は出ず、近い採算の数字が増えました。

検討から発売へ上がったのは、IQ Teamの1つだけでした

3ヶ月前に検討の段階だった話で、発売まで進んだのは1つです。

3ヶ月前:「時間をかけて、シフト、給与、税務といった用途を検討しています」
今回:「この四半期、シフトと人員の管理を助けるToast IQ Teamを発売しました」

トーストは、店の仕事を代わりにこなすAIの道具(エージェント)を増やそうとしています。IQ Teamは、売上の見込みや従業員の都合をもとにシフト表を作るものです。

一緒に出た数字は「残業時間が41%減」でした。ただ、この数字は説明の中で扱いが揺れています。準備した説明では「Scheduling Pro」という製品を使う店の実績として語られ、質疑ではIQ Teamを入れた店の話として語られました。CEO自身が「非常に初期」とも言っています。発売したばかりの製品の実績として読むには、まだ早い数字です。

先に出ている集客の道具「IQ Grow」の目標は、年換算の継続収入1,000万ドルで、3ヶ月前と同じです。今回はそこに「年内に」という期限が付きました。CEOは「事業の規模から見れば、もちろんまだ初期です」と付け加えています。

訴訟、店への融資、メモリの値上がり——答えが足りなかったことと一度きりのもの

新しく出てきた最大の論点は、FTCの訴訟です。

CEOは「この訴訟を起こしたFTCの判断に、非常に失望しています」と述べ、1年ほど協力してきたこと、店ごとに個別交渉する企業間の契約にROSCAを当てはめるのは前例がないこと、争う用意があることを語りました。ただ、影響の大きさを問われても、数字は出ていません。何を訴えられているのか、具体的な中身は説明会では語られていません。

💡ROSCA=ネット上の定期課金について、条件の明示や簡単な解約手段を事業者に求めるアメリカの法律。

ほかに、答えが足りなかった点が4つあります。

  • IQ Growの浸透度:どのくらいの店が使い、見通しにいくら織り込んでいるかを問われて、販売は主に既存客向けの担当が行っているという説明に移り、割合も金額も出ませんでした
  • IQ Growの効果:使っていない店と比べて「とても良い売上の伸び」と言いましたが、数字はありません
  • 店への融資を自社で持つこと:第三者と組んで出してきた融資の一部を、自社の帳簿でも持ち始めました。アナリストの質問によると、自社で買い取った貸付は今期に約6,500万ドル、年初から約1億4,500万ドルで、昨年末の残高はゼロです。財務責任者は自然な次の一歩と呼び、第三者を通さない分は利益が全部自社に残ると答えましたが、どこまで増やすかは示しませんでした
  • メモリの値上がり:レジ端末の部品である半導体メモリの値上がり(ハードウェアの原価の話)について、財務責任者の答えは「前の四半期から変更なし」です。旧世代の機器の活用や低コストのメモリへの切り替えなどで影響は当初の想定より抑えられていて、吸収できるとも説明しました。ただ金額は出ていません。3ヶ月前は、損益への影響は2026年より2027年のほうが大きいと述べていました

融資については、大半は第三者と組む従来の仕組みを通すとも説明しています。融資を含む決済以外の金融サービスの粗利は、3ヶ月前の5,700万ドルから6,900万ドルへ増えました。貸倒れと与信関連の費用も、3ヶ月前の2,900万ドルから3,500万ドルへ増えています。債務不履行は想定の範囲内だと会社は言っています。

数字を飾る一度きりのものは、語られた範囲では今回は目立ちません。3ヶ月前の調整後EBITDAには、見通しに入っていなかった関税の還付が約1,000万ドル入っていました。今回はその話が出ておらず、それでも2億4,000万ドルです。

逆に費用の側では、アナリストの質問によれば600万ドルの退職金が計上されています。財務責任者は資源配分を最適化する取り組みで、定期的に行うと答えています。

フリーキャッシュフローは1億8,100万ドルで、調整後EBITDAのうち現金として残った割合は75%です。前年より下がっていますが、これはハードウェアの在庫を意図して積んでいるためです。10〜12月期には改善を見込み、在庫を減らす段階でも戻ると説明しています。

💡フリーキャッシュフロー=本業で入ってきた現金から、設備などへの投資を引いて手元に残る現金。

なぜトーストは利益率より投資を選ぶのか

背景には、稼ぐ事業と育てる事業の差があります。

稼ぐ側は中核の事業、アメリカの中小・中堅のレストランです。ここは調整後EBITDAの利益率が40%を超え、さらに上がっていくと会社は言っています。決済額のシェアは主要な競合のどこよりも速く伸ばしていて、特に売上250万ドルを超える店でのシェアの伸びが大きいと述べました。ソフトの1店あたりの収入も、1桁台半ばの伸びが続いています。ここが稼ぎ頭で、利益の源です。

育てる側が新しい市場です。大手チェーン向けでは、アインシュタイン・ブラザーズなどを持つベーグル・ブランズの800店。海外ではアウトバック・ステーキハウスのオーストラリアの店。小売では、3,000品目を扱うジンガーマンズの食料品店。カナダのケベックにはフランス語版で参入しました。ただ、ベーグル・ブランズの800店は「導入する」という言い方で、これからの話です。金額も出ていません。

会社の説明では、新しい市場の機会はすでに中核の市場より大きく、利益率も育てば中核に近づきます。中核の利益で新しい市場を育てる。だから来年の利益率は、経営の選択で決まります。次期財務責任者の「ごくわずか」は、その選択を先に言葉にしたものと読めます。

この選択がうまくいくかどうかは、2億ドルの先で分かります。いまの段階では、回収期間が20ヶ月以下に収まっているかすら、外からは確かめられません。

下限の22%と、2月に出る20%の線

中核で稼いで新しい市場を育てる、という説明が通らなくなる線は、数字で2本、訴訟で1つあります。

  1. 10〜12月期の定期粗利の伸びが、見通しの下限22%を割る
  2. 2月に出る2027年の見通しで、定期粗利の伸びが20%を割る
  3. FTCの訴訟で、店と結ぶ契約のやり方そのものを変えることになる

反対に、良い方へ外れる形もあります。決済の総額と金融サービスの粗利の伸びが戻ること。回収期間のいまの値が開示されること。そして「100億ドル」が説明会に戻ってくることです。


8,500店は弱くありません。22〜24%も、そのまま減速とは読めません。それでも、遠い目標の数字は出てこず、来年の利益率の言葉は小さくなりました。ここに書いたのは11月3日の説明会までに分かっていることで、訴訟の行方も来年の見通しも、まだ動きます。次は2月です。今回の言葉と並べて、「100億ドル」が戻るのか、出ないままなのかを見ていきます。


※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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この記事を書いた人

圧倒的な熱量で世界の相場を毎日14時間以上監視している専業トレーダーです。トレード、バックテスト、調査で得た学びを初心者の方にもわかりやすく発信しています。

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