今年のデュオリンゴは、お金より利用者を選びました。社長の言葉では「本当に大事なのは1日の利用者の伸びを加速させることだと、会社全体に伝えた」年です。全社にボーナスまで用意しました。
その賭けは、数字の上では当たっています。毎日使う人の伸びは、前の四半期の23%から29%へ上がりました。ところが同じ決算説明会で、財務責任者は有料会員の伸びについて「おそらく2〜3四半期後に底を打つ」と言いました。利用者はもう加速しているのに、会員の伸びはまだ下り坂の途中です。
緑のフクロウの語学アプリ、と言えば分かる方も多いと思います。基本は無料で、語学のほかにチェスや数学も教えています。収入の柱は有料プランで、ほかに広告やアプリ内課金などがあります。
■ デュオリンゴの決算説明会の内容(要点)
- 次回の決算:2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)
- 今回:2026年7〜9月期・決算説明会は2026年11月3日
- 上位10カ国のうち8カ国で、利用者の伸びが加速しました
- 最上位プラン「Max」は「終了するかもしれない」から「もう始めています」へ
- 定着率、2028年の1億人、手元のお金。3ヶ月前の数字が説明会から消えました
- デュオリンゴの通期見通しは上がりましたが、年初に引いた枠の中です
日足チャート(価格/出来高/RSI(2)/ニュースセンチ/RSランク)。毎日自動更新。
※この記事で扱うのは、2026年11月3日に行われた、2026年7〜9月期(第3四半期)の決算説明会です。会社の開示と、その場での経営陣の発言に基づく事実で、予測ではありません。次回の決算は2027年2月上旬ごろの見込み(会社の正式発表待ち)です。
💡決算説明会=決算発表の後に、経営陣が投資家やアナリストへ説明し、質問に答える電話会議(カンファレンスコールとも呼びます)。
その前に——デュオリンゴの「ブッキング」は、売上より先に動きます
この決算は「ブッキング」という言葉が分からないと、半分しか読めません。
名前からホテルの予約を思い浮かべるかもしれませんが、ここでは違います。ブッキングは、その期間に会社が受け取った金額のことです。中心は有料プランの代金で、広告やアプリ内課金なども入ります。売上とは、数字に出る時期がずれます。
スポーツジムの年会費で考えてみてください。4月に1年分の1万2,000円を一括で払ったとします。ジムが受け取る金額は4月に1万2,000円増えます。これがブッキングです。ところが会計の売上は、サービスを提供した月ごとに1,000円ずつ立っていきます。これは金額を分かりやすくしたたとえですが、4月に申し込みが急に増えても、売上にはその12分の1ずつしか出てきません。デュオリンゴの有料プランも、大半は12ヶ月契約です。
デュオリンゴの場合、さらに手前があります。無料で使っている人が、ある日お金を払い始めるまでに時間がかかるのです。社長は新しい利用者について「その多くは、お金を払うようになるまで、ときには何年もかかります」と述べました。
会社の説明を順番に並べると、こうなります。利用者が増える。一部が有料になってブッキングが増える。売上が後を追う。有料会員の伸びは、そのさらに後から数字に出る。財務責任者は有料会員の数を「おおむね売上の後をついていく」と説明し、「だいたいは計算上の話です」と言いました。
いま利用者だけが先に加速しているのは、この順番どおりなのか。それとも、増えた利用者がお金を払わないからなのか。今回の決算の論点は、この一点に集まっています。
上位10カ国のうち8カ国で、利用者の伸びが加速しました
社長は決算説明会の冒頭で、ブッキング、売上、利益のいずれも想定を上回ったと述べました。そのうえで語られた数字はこうです。
- 1日あたりの利用者数 6,490万人・前年同期比+29%(前の四半期は+23%。2四半期連続の加速)
- 上位10カ国のうち8カ国で利用者の伸びが加速
- チェスの1日あたり利用者数が1,000万人に到達
- 直近1ヶ月のA/Bテスト数 前年比約+90%(従業員数の伸びは約+10%)
💡1日あたりの利用者数(DAU)=その日に実際にアプリを開いた人の数。登録者数と違い、使うのをやめた人は入りません。
💡A/Bテスト=アプリの一部を変えた版と元の版を別々の利用者に見せて、どちらが良いかを数字で比べる実験。
社長の説明では、利用者の伸びの大半は、毎週何百もの小さな実験でアプリを改善してきた結果です。実験の数が増えた理由は、全部ではないものの多くがAIの活用で、簡単な変更なら、技術者でない企画担当者やデザイナーが1人で出せるようになったといいます。
10〜12月期も、利用者の伸びは7〜9月期と同じ程度を見込んでいます。
お金の側は、売上が3億900万ドル(前年同期比+14%。1ドル150円で約464億円)、ブッキングが3億1,610万ドル(+12%)、有料会員が1,310万人(+14%)でした。財務責任者によると、有料プランのブッキングは、大半の地域で2桁の伸びでした。一株利益は0.54ドルで、前年同期の5.95ドルから大きく減っています。ただ前年同期には、税金にかかわる一度きりの利益2億2,270万ドルが入っていました。
💡一株利益(EPS)=会社の最終的な利益を株数で割った数字。
最上位プラン「Max」は「終了するかもしれない」から「もう始めています」へ
3ヶ月前と並べると、いちばん動いたのは最上位プラン「Max」の扱いです。
3ヶ月前:「もう一つの可能性は、正直に言って、Maxを実際に終了するかもしれないということです」
今回:「Maxを終了するのが正しい判断だと、はっきりしました。そこで、もう始めています」
Maxが作られたのは、AI機能の原価が高かったからです。その代表が、会話を練習するビデオ通話でした。社長によると、1通話あたりのAI費用は当初およそ30セント。それが、主に中身が公開されているモデルへの切り替えで、1セントを大きく下回るところまで下がりました。
だから機能を標準の有料プラン「Super」へ移せました。使える人は約10倍になるといいます。テストでは売上にもプラスで、短期のブッキングへの影響については「少しプラスですが、大きな影響ではありません」と社長は述べています。Maxはブッキングでも有料会員数でも、すでに1桁%まで縮んでいました。
新規の販売は実質的に止めました。個人のMaxの契約者は、ほぼ同じ価格の家族向けプラン「Super Family」へ移します。ただ、家族向けのMaxは今年の年末時点ではまだ残ります。
もう1つ動いた言葉が、ボーナスです。
3ヶ月前:「その基準に届くかどうか現時点では不確かなので、2026年の見通しには含めていません」
今回:「目標を達成できる見込みなので、費用の計上を始めました」
3ヶ月前に示された条件は、10〜12月期の利用者の伸びが25%以上であること。達成した場合の支払いは「およそ1,000万ドル、伸びが高ければそれ以上」という話でした。今回は7〜9月期だけで1,100万ドル(1ドル150円で約16.5億円)を計上し、10〜12月期にも第2弾を見込んでいます。総額は説明会では出ていません。
定着率、2028年の1億人、手元のお金。3ヶ月前の数字が説明会から消えました
良い話が増えた一方で、前回は語られていて今回は語られなかったものがあります。
1つ目は、利用者の定着率の数字です。 会社が重視する指標に、いま使っている人が使い続ける割合を示す「CUR」があります。
3ヶ月前:「利用者の定着に関する指標は、ほぼすべて過去最高です」(CURはこの1年でおよそ1ポイント上がったとも説明)
今回:「CURの見通しや最新値を毎四半期出すような商売はしたくありません。ですから正確な数字の話はしませんが、基本的には上がり続けています」
社長は同じ答えの中で、利用者の伸びの大半はCURの上昇から来ているとも言っています。今回の決算でいちばん良い数字を支える指標の、数字が出なくなりました。
2つ目は、期限のついた目標です。 3ヶ月前は財務責任者も社長も「2028年に1日あたり利用者1億人」を口にしていました。今回の説明会にこの目標は出てきません。代わりに出てきたのは「最終的には10億人の学習者に届く」という言い方で、こちらに期限はありません。取り下げたという発言もありません。
3つ目は、手元のお金の話です。 3ヶ月前は「今年は3億7,500万ドルを超えるフリーキャッシュフロー」という見込みと、自社株買いの実績を語っていました。今回の説明会では、どちらも語られていません。
💡フリーキャッシュフロー=本業で入ってきたお金から設備などへの支出を引いた、手元に残るお金。
発表と同時に出た株主向けの書簡には、7〜9月期のフリーキャッシュフロー7,530万ドルと、自社株買い640万ドル(10月30日までの累計は8,200万ドル)が載っています。数字そのものが隠されたわけではありません。ただ、3億7,500万ドルという通期の見込みは書簡にも見当たらず、CURの数字と2028年の目標もありません。ここで言えるのは、今回の説明会と書簡に出てこなかった、というところまでです。取り下げたとは言えません。
デュオリンゴの通期見通しは上がりましたが、年初に引いた枠の中です
通期の見通しは、3ヶ月前の数字から上がりました。
- 通期ブッキング 約+11% → +12%
- 通期売上 約+16% → +18%
通期の調整後EBITDAマージンは26.5%の見込みです。
💡調整後EBITDA=会社が一時的と考える費用などを除いた利益の目安(non-GAAP)。会計基準どおりの利益とは別の数字です。
💡マージン=売上のうち、その利益が占める割合。
ただし年初から示してきた範囲は、ブッキングが+10〜12%、売上が+15〜18%でした。今回の数字は、どちらも範囲の上限です。利用者の伸びは6ポイント上がったのに、ブッキングの見通しは1ポイントしか動いていません。書簡によると、為替の影響を除いた通期の伸びはブッキングが+11%、売上が+16%です。今回の+12%と+18%には、為替の追い風が1〜2ポイント入っている計算です。3ヶ月前の約+11%と約+16%は為替を除いた数字ではないので、上方修正の全部が為替だとまでは言えません。
市場の予想(コンセンサス)と比べても、差は小さいものです。売上の予想の平均は約12.1億ドル(22人の平均)。会社の通期見通しは12億2,100万ドルで、上回っている幅は1%ほどです。
💡コンセンサス=その会社を調べているアナリストたちの予想の平均。テストで言えば、本人の「80点はいける」ではなく、周りが「あの子は80点くらいだろう」と思っている点数です。
四半期で見ると、順番どおりに進んでいるようにも見えます。ブッキングは、4〜6月期の約+8%、7〜9月期の+12%と上がり、10〜12月期の見通しは+13%です。7〜9月期は、3ヶ月前に示した見通しの+9%も上回りました。一方の売上は、1〜3月期の約+27%、4〜6月期の約+18%、7〜9月期の+14%と落ちてきて、10〜12月期の見通しも+14%です。
利益は重くなります。7〜9月期の調整後EBITDAは7,870万ドルで、前年同期より2%減りました。10〜12月期は約8,400万ドルで、前年同期とほぼ同じ見込みです。売上が14%伸びても調整後EBITDAが増えない理由として、財務責任者はビデオ通話を全有料会員へ広げることで粗利率が前の四半期より1ポイントほど下がること、投資とボーナス第2弾で費用が売上より速く伸びることを挙げました。
💡粗利率=売上から直接の原価を引いた残りが、売上に占める割合。
粗利率そのものは、7〜9月期に想定より上振れました。3ヶ月前に示した7〜9月期の見通しは71%で、実績は72.9%(前年同期は72.5%)です。財務責任者は、AIの費用が思ったほどかからなかったと説明しています。1ポイントほど下がるのは、その次の10〜12月期の話です。
2027年の見通しは、2月まで出ません。
増えた利用者はいつお金になるのか。少なくとも5社が聞き、数字の答えは出ませんでした
質疑応答では、言い方を変えて同じことが聞かれ続けました。少なくとも5社のアナリストが、増えた利用者がいつお金に変わるのかを尋ねています。
いちばん具体的だったのは、財務責任者の「おそらく2〜3四半期後に底を打つ」です。ただ、これは有料会員の伸びがこれ以上減速しなくなる時期の話で、加速する時期の話ではありません。2027年のブッキングとの時間差を聞かれた社長は「27年の見通しはまだ出しません」と答えました。
有料への転換率が上がるのかと割って入ったアナリストには、社長はこう答えています。
「ご質問の答えは分かりません。上げられるのかどうか。もちろん上げたいとは思っています」
ただ社長は続けて、長い無料体験などで今年は転換率が上がったものがあり、「ある程度は上がると思います」と言いました。どれくらいかは出ていません。
ほかにも、はっきりしないものがあります。安い広告つきプラン「Superlight」について、3ヶ月前の社長は「どうなるか分かりません」と言いつつ、今後数ヶ月で実験すると話していました。今回はそこに「テストの結果はホームランではありません」が加わりました(いくらかの成果はありそうだ、とも言っています)。
広告は四半期全体でほぼ横ばいで、期末にかけて伸びていたというのが財務責任者の説明です。
Maxから移る人が入るSuper Familyは、5人を追加で招待できます。1人分の料金を分け合う人が増えないのかと聞かれた社長は、「多少の食い合いはあると思いますが、数字には出ていません」と答えました。
利用者の伸びには、アプリの改善とは別の追い風も入っています。7〜9月期は人気ゲームのBrawl StarsやEggy Partyとの提携で、ゲームの報酬を得るためにデュオリンゴを数日続けて使う企画がありました。社長は「確かに利用者を連れてきた」と認めたうえで、大半はアプリの改善の成果だと強調しています。提携で来た人は定着も良く、お金のやり取りは無いそうです。提携は年に2〜3回ほどの見込みです。
その前の4〜6月期には、途切れた連続学習記録を復活させる一度きりの企画があり、1,500万人を超える人が記録を復活させました。どちらも、利用者の伸びの何ポイント分だったのかは示されていません。アプリの改善の取り分がどれだけか、外からは分けられません。
利用者の数字には改善以外の追い風が混ざっていて、利益の数字には反対にボーナスの重しが乗っています。
来年のデュオリンゴは、無料の体験を削らずに稼ごうとしています
今年を、社長は「特別な年」と呼びました。来年の話はこうです。
「来年は少し違います。みんなに伝えているのは、利用者の伸びには引き続き集中する、なぜならそれだけ大きな機会があるから、ということです。でも、もう1つ大事なものがあります。収益化です」
条件が1つ付いています。アプリに手間を戻して稼ぐときに2025年の教訓を繰り返さないか、とアナリストに聞かれると、社長は「あれは学んだ教訓です。無料の体験をもう台無しにしたくありません」と答えました。収益化のために、無料の利用者に不便を足すことはしない、という約束です。
では何で稼ぐのか。説明会に出てきたのは次のようなものです。
- 長い無料体験の拡大:7日間だった体験を1ヶ月へ。まだ全員には出していません
- チェスの収益化:社長の言葉は「完全に収益化が足りていません」
- ビデオ通話を入れたSuperの売り込み:Maxより手頃になったので前面に出しやすい
- 広告の質の入れ替え:広告ネットワーク任せから、より高い単価の広告へ
どれも金額の約束はありません。出てきた数字は、AI機能の一部を無料の利用者にも出すための費用が、来年は「数百万ドル台」になるという話くらいです。A/Bテストの数は、来年は今年の何倍かになると社長は言いました。やり方そのものは今年と同じで、実験の狙いをお金の側にも向けるということです。
2月の説明会で、この順番の話は確かめられます
会社の説明どおりなら、次の説明会では順番の次の段が見えてくるはずです。反対に、次の3つのどれかが起きれば、この順番の話は怪しくなります。
- 10〜12月期の利用者の伸びが、ボーナスの条件である25%を下回る
- 2月に出る2027年の見通しで、ブッキングの伸びが今年の12%を下回る
- 「2〜3四半期後」という有料会員の底の時期が、後ろへずれる
逆に、チェスや長い無料体験の効果が金額で語られたり、消えたCURの数字が説明会に戻ってきたりすれば、話は一歩進みます。
利用者を増やすのは難しい、と社長は言いました。7〜9月期までそれを実現したのは事実です。ただ、今回分かったのは利用者が増えたところまでで、その人たちがお金を払うかどうかは、まだ会社自身も数字で語っていません。ここに書いたのは2026年11月3日の説明会までの話で、ボーナスの総額も2027年の見通しもこれから出てきます。2月の説明会の後で、チェスや長い無料体験がいくらになったのかを確かめます。
※本記事は、決算説明会での経営陣の発言と公表数値を自分の言葉で整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。